英国 : 150万人が年金ストライキ/樺浩志

2006-04-01 22:52:31 | 労働運動
フランスで300万人が行動に立ったその日、3月28日、イギリスでも150万人がストに立ちあがりました。英国現地の左翼新聞2紙の記事を翻訳紹介します。その参加人数だけでなく、内容の素晴らしさにもご注目下さい。
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百万人が年金デモ
『日刊モーニングスター』2006年3月29日付
http://www.morningstaronline.co.uk
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by ジョージ・バグレイ

昨日、100万人以上の公務員労働者が立ち上がった。1926年のゼネスト以来、英国最大の全国規模のストライキだった。

しかも労働者たちは、必要であれば、政府の年金攻撃を阻止するために何度でもストに立とうとしている。「これは素晴らしい日だ」と宣言したのは、公共部門労組UNISON(ユニソン)のデイブ・プレンティス書記長だ。「しかもこれは始まりにすぎない」と彼は付け加えた。

国会内の中央ホールで行われたエネルギーあふれる集会で、プレンティス書記長は語った。「スコットランド最北端のジョン・オ・グローツからイングランド最西端のランヅエンドまで、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド、そしてイングランドンの各地で本日、我が組合員は行動に立った」

公共部門の11労組が、公務員労組の年金に対する政府の攻撃を非難し、行動に立った。ほとんどの社会サービスが麻痺し、数百の学校や図書館が閉鎖された。街という街で数千の公務員労働者が市中心部をデモ行進し集会を行った。70万人以上のスト参加者が女性だった。地方自治体で勤務する女性労働者の平均年金受給額は、週たった31ポンド(約6千円)に過ぎないということ、この衝撃の事実を暴露し、女性は決然と立った。

UNISON労組の騒がしい活動家の一団が、オープントップの赤バスで国会前に乗り付けた。31ポンドと記した巨大なコインの模型を掲げ、投げ捨て、こんな額が平均年金受給額であることへの怒りを表現した。

地方政治大臣のフィル・ウーラスは、政府は直ぐにでも年金新法案を国会提出する予定だ、と頑迷に主張している。成立すれば、1953年3月31日より後の生まれの年金受給者から影響を受けることになる。

政府が一方的に年金受給開始年齢を60歳から65歳へと引き上げようとしていることに対し、公務員労働者は激怒している。政府は、いわゆる「ルール85」を破壊したいのだ。ルール85とは、年齢と勤続年数を足して85を上回るスタッフであれば、60歳で年金を全額受給できるという制度だ。

(了・一面トップ記事。4頁目に関連記事。2頁目に論説)


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年金ストは全て人々のための闘い
『週刊ソーシャリストワーカー』2006年4月1日付1994号
http://www.socialistworker.co.uk/article.php?article_id=8612
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その日、イギリスの労働者階級(British working class)はその力を全ての人々に思い出させた。

マージー・トンネルは閉鎖され、ニューカッスルの公共交通は完全に止まった。グラスゴーでは地下鉄が、北アイルランドでは実質全ての鉄道とバスが、その動きを止めた。オークニー諸島でも、ワイト島でも、フェリーは運航しなかった。デモや集会はどこでもたくさんの人々が集まった。プリマスでは少なくとも1500人がデモ行進した。

この一日ストは、英国史上最大の女性ストであり、最も民族構成的に多様で、あらゆる世代にとって最も政治的なストだった。上に述べたケースは最も注目を浴びた例だが、それだけじゃない。およそ全ての市町村で、毎日の公共サービスを担っている人々が固い団結でストに立った。

クラス・アシスタント(※教師の補佐的立場だが、場合によっては教師と全く同じ仕事もする)、ゴミ収集労働者、役所労働者、街頭清掃労働者、公園スタッフ、その他様々な職種の労働者が職場放棄した。

直接的な争点は、「勤続年数25年の公務員労働者は60歳で退職し年金を受け取れる」という「85」ルールだ。だがその背景では、公共セクターと民間セクターに渡る年金改悪へのもっと広い抵抗運動がある。更にこのストは、貧困賃金で労働時間だけが長くなっていくことに対し何十年にわたって蓄積してきた鬱憤の爆発でもあった。

<学校>

だからこそこのストは、教師等、直接ストに関係してない人々の連帯行動を勝ち取ることが可能だったのだ。英国全土で、過半数の学校が閉鎖された。

ウェールズでは少なくとも739の学校が、そしてロンドンでは70%の学校が閉鎖された。グラスゴーの市役所では、353の小学校と託児所の閉鎖を確認した。英国全土では17500の学校が閉鎖された。

イングランド北西部のオールダムから、マック・アンドラシーが報告する:

「全く初めてのことです。公務員労組UNISONと一般都市労組GMBの約20名の組合員が、カウントヒル学校でピケに立ちました。組合としてストに入っていない学校教員もピケに参加し、ピケを踏み越えるべきでない、少なくとも、公式に職務時間の始まる8時半以前に学校に入るべきでない、等と議論しました」

「3つの異なる教師組合の25人あまりの教師たちが、ピケットラインを越える事を拒否しました。8時45分、「先生たちがピケを越えなかったため授業はありません」という手紙を手に、生徒たちが大歓声をあげて走り出てきました。」

マンチェスターのイレーヌ・ダイヴィスは言う:

「北マンチェスター男子高校では、1名の技術労働者と19名の教師アシスタントの女性が活気あるピケに立ちました。そして、組合がピケを越えろと指示したにも関わらず、34名の教師がピケを越える事を拒否しました」

<画期的できごと>

カムデン女子学校のアグネル・ウィークスは伝える:

「ストを準備する過程で、UNISON労組に新たに5名が加入しました。ピケを越えなかった教師も含め、15人がピケに立ちました。授業は中止になりました。」

ブラックバーン大学のフィル・ウェブスターは言う:

「私はここで20数年勤めてきました。これまで大学講師組合NATFHEは何度も何度もストを打ってきましたが、今回はUNISONの初めてのストです。これは画期的なできごとです。教師以外の学校スタッフがこんなによく組織化されたことはこれまでありません」

「ストが宣言されたとき、NATFHE労組の支部は経営者に告げました。リスク・アセスメント(危険性事前評価)をすべきだ、健康や安全問題は発生しないか、と。経営者は降参して大学は一日閉鎖となりました」

メーディ・ハッサンは、タワーハムレッツ大学アーバースクエア地区で勤務するUNISON労組員であり、リスペクト党の5月地方議員候補でもある。ハッサンは言う:

「講師はほとんど構内に入って行きませんでした。一方で、15名の講師が私たちのピケに合流してきました」

この素晴らしい一日を無駄にしてはならない。

UNISON労組の全国執行委員の1人、ジョン・マクダモットは本紙『週刊ソーシャリスト・ワーカー』に個人として語った:

「労働者を分裂させるような2段階の『解決』など要りません。現在のスタッフのためにも、そして将来のスタッフのためにも、年金改悪は認められません」

(了・2面の記事。一面トップを含め他に特集記事多数)

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▼資料:それぞれの労組でのスト賛成率

地方公務員労組UNISON 80%
http://www.unison.org.uk
製造業労組AMICUS 90%
http://www.amicustheunion.org
全国都市一般労組GMB 82%
http://www.gmb.org.uk
運輸一般労組TGWU 80%
http://www.tgwu.org.uk
建設労組UCATT 90%
http://www.ucatt.org.uk
家庭裁判所スタッフと保護観察官の労組NAPO 87%
http://www.napo.org.uk
地域青年労働者組合CYWU 72%

北アイルランド公務員組合NIPSA 72%

教育心理学者組合AEP 76%


訳文中にもあるが、大学講師組合NATFHEや全英教師組合NUT等の教師組合・講師組合は、今回スト投票を行っていない。


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熱い春を迎えているフランスでは、在住日本人の中からも運動に関心がある人、運動に直接関わる人が次々出てきているようで心強い限りです。イギリスでも、是非現地の人々と共に日本人の運動参加を勝ち取っていきたいものです。また、必ずやそれが日本での運動の再活性化にもつながっていくと信じます。良くも悪くもこのグルーバル化(世界化)の時代に、時代から切り離された社会や人間というのはありえません。この熱い息吹は必ず伝わります。時間の問題です。あせらず、あきらめず、粘り強く、原則的に、そして創意を凝らしつつ、取り組みを続けましょう。ガンバ!


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レポート by 樺浩志
japan2world@hotmail.com
http://eikoku.fc2web.com


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