在日コリアン差別の現状と課題(2)/人権白書Tokyo要約

2009-12-23 22:29:33 | 社会
人権白書Tokyo要約/韓統連などが分担執筆担当
    在日コリアン差別の現状と課題(後半)

(2)社会的差別

 ①就職差別

 「在日朝鮮人の生活の実態」(日本赤十字社一九五六年)によれば、一九五四年十二月現在の在日コリアンの完全失業率は日本人の八倍でした。一九七一年の東京都立大学教育研究室による資本金三十億円以上の民間企業に対するアンケート調査では、「採用にあたって在日朝鮮人であることを問題にする」と答えた企業は四十一・五%でした。二〇〇〇年代の国勢調査でも、全体に比べて失業率が高くなっています。採用の時点で「日本人ではない」ことから不採用、あるいはこころない言葉を投げつけられることが多く、就職後も本名(民族名)で働くことへの理解はまだまだ不足しています。

 ②入居差別

 賃貸物件を探す際に、ほとんどといってよいほど国籍が問題になります。

 いまや外国籍者が区民の十%にも及んでいる新宿区の調査結果によると、住宅を探すときに「外国人だからと断られた」という回答が四割を超えています(「新宿区における外国籍住民との共生に関する調査」〔財〕新宿文化・国際交流財団二〇〇四年)。

 依然として家主が在日コリアンをはじめ外国籍者の入居を嫌うことが多く、不動産業者も外国籍者の斡旋には消極的な態度をとるところが少なくないのが現状です。

 ③朝鮮学校生徒らへの暴言暴行、日本学校内における差別

 日本のマスコミによる朝鮮民主主義人民共和国に対する過剰で悪質な報道が日常化している中で、在日コリアン学生に対する暴言や暴行、嫌がらせが後を絶ちません。

 「在日コリアンの子どもたちへの嫌がらせを許さない若手弁護士の会」が、関東地方の朝鮮学校二十一校の児童・生徒二千七百十人を対象に調査したところ、二〇〇二年九月十七日以降約六カ月の間に「被害を受けた」と答えた児童・生徒数は五百二十二人(十九・三%)に及ぶという結果が出ました。「在日コリアンの子どもたちへの嫌がらせを許さない大阪弁護士の会」が大阪府下十二校千七百六十八人を対象に行った同様の調査では二〇〇二年九月十七日以降の約八カ月の間に「被害を受けた」と答えた児童・生徒数は四百十六人(二十三・五%)に及ぶという結果が出ました。

  関東や大阪府以外の地域でも同様に嫌がらせ事件が起きているという状況から、おそらく約半年の間で千件以上の暴言、暴行等の事件が日本全国で起きたと推測されます。また、これ以外にも朝鮮学校への嫌がらせ電話、脅迫電話が相次ぎ、学校のホームページの掲示板への差別的書き込みが相次ぎました。

  日本の学校においても、先にあげたように教師や同級生から不当な差別をうけています。足立区のある小学校で、本名で通学している在日コリアン学生が同級生から「このキムチヤロー、カンコクジン、チューゴクジン」とからかわれ不登校になったケースもあります。事実はたまたま母親が家の近くでその場面を目撃したことから発覚しましたが、そのような差別が日常的にクラスの半数以上から行われていたにもかかわらず、また入学の際の「家庭状況報告書」や家庭訪問の際にたびたび父母から担任教師に注意を促していたにもかかわらず、学校からは何の報告もありませんでした。多くの在日コリアンが日本名を名乗っているのは、このような差別の現実が背景にあるからです。大阪市外国人教育研究協議会による調べ(一九九九年)では、「本名使用率」は小学校十三・六%、中学校十四%、高校十・八%です。

 ④石原都知事発言

 ○「三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返しており、大きな災害では騒擾(そうじょう)事件すら想定される。警察の力に限りがあるので、みなさんに出動していただき、治安の維持も大きな目的として遂行してほしい」(二〇〇〇年四月九日、陸上自衛隊練馬駐屯地、創隊記念式典での挨拶。朝日新聞二〇〇七・三・十八より)

 ○石原慎太郎東京都知事は二十八日、北朝鮮による拉致問題の解決を訴える「救う会東京」の集会で基調講演した際、一九一〇年の日韓併合に触れ、「(日本は)決して武力で侵犯したんじゃない。むしろ朝鮮半島が分裂してまとまらないから、彼らの総意でロシアを選ぶか、シナを選ぶか、日本にするかということで、近代化の著しい同じ顔色をした日本人の手助けを得ようということで、世界中の国が合意した中で合併が行われた」と話した。また、「私は日韓合併を百%正当化するつもりはない」としたうえで「彼らの感情からすれば、そりゃやっぱりいまいましいし、屈辱でもありましょう。しかし、どちらかといえば彼らの先祖の責任であってね」と述べた。(毎日新聞二〇〇三年十月二十九日より抜粋)

 このような発言が在日コリアンをはじめ外国人に対する差別と偏見を助長する結果しか生まないことは明らかです。

 3.在日コリアン差別をなくすための行政施策の現状

 総務局の東京都人権施策推進指針のなかで外国人の人権問題を扱っていますが、一般的な呼びかけでは不十分で、具体的な対策が必要です。

 生活文化スポーツ局では、「外国人都民会議」を経て「地域国際化推進検討委員会」を二〇〇一年度に設置しており、検討テーマには防災・緊急時の対策等が挙げられてきました。国際交流・協力を推進するための情報提供や普及啓発等も行われていますが、隣の神奈川県と比べても多くの面で非常に遅れています。同委員会には民間団体の代表らが含まれていますが、歴史的な背景をもつ在日コリアンは同委員会発足以降、一度も委員に選ばれておらず、在日コリアンをはじめ在住外国人の人権問題は検討テーマには挙げられないままとなっています。

 4.在日コリアン差別の現実に即した行政施策の確立を!

 (1)国のレベルで行うべき施策

 ①民族学校への処遇改善。民族学校を正規の学校と位置づけ、補助金その他の財政援助を得られるようにすること。民族学校卒業資格を大学入学試験の受験資格として承認すること等。

 ②学校教育での歴史、人権教育の実施。日本学校における在日コリアンの子どもの継承語・継承文化教育の保障。

 ③制度的無年金状態に放置されたままの障害者・高齢者の救済。

 ④在留管理制度の改正。特別永住者、永住者に対する身分証の常時携帯義務や再入国許可制度の廃止、罰則制度の改正。(出入国管理及び難民認定法の改定案が〇九年通常国会で成立し、一二年には施行される見込みだが、改定法でもこれらの問題の多くがそのままとなっている)。

 ⑤公務就任権、家事調停員、司法委員など国籍差別の撤廃。(多民族・多文化共生の観点から)

 ⑥植民地支配被害者(元「従軍慰安婦」、強制連行被害者、戦傷病者、戦没者遺族、被爆者、空爆犠牲者など)への個人補償(賠償)と謝罪、名誉回復、原状回復。関東大震災時の朝鮮人虐殺の真相究明等。

 ⑦差別状況や生活実態、意識に関する実態調査。

 ⑧差別是正のための施策。(当事者を蔑ろにしたものではなく、当事者からの意見を聴取、反映する仕組であるべき)

 ⑨政府などからの独立性を担保された人権擁護機関の設置。(差別状況の是正施策のチェック機能を有し、被差別当事者が相談できる機関として)

 ⑩人種差別禁止法の制定。

 ⑪国際人権規約の自由権規約(B規約)の第一選択議定書(個人通報制度)の批准。(日本国内の裁判所等でも救済されない問題を国際人権期間に訴える道をひらくためのもの)

(2)東京都で行うべき施策

 ①民族学校への学校助成。

 ②歴史、人権教育の充実。都下の教職員、公務員などの職務研修中に在日コリアンについて学ぶ機会を設けることと都内にある民族学校との交流の活性化など。

 ③制度的無年金状態に放置されたままの障害者・高齢者の救済。として、東京都から福祉給付金を支給すること。

 ④関東大震災時の朝鮮人虐殺に関する真相究明調査と虐殺事件の原因や虐殺主体の明記された追悼碑建立。東京大空襲朝鮮人犠牲者の調査と被害者や遺族に対する補償。

 ⑤差別状況や生活実態、意識に関する実態調査。

 ⑥人種差別禁止条例の制定。

 ⑦当事者からの意見を聴取、反映する仕組み。現在の「地域国際化推進検討委員会」は指名制のみではなく公募でも委員になれるよう改善し、同委員会の機能を向上させるべき。

 ⑧外国籍住民の住まい探しの負担の緩和。(川崎市などで外国人の住まい探しの保証人制度、神奈川県では外国人居住支援制度を実施している) 

⑨国のレベルで行うべき施策についても東京都から積極的にそれを促していく必要があります。

(在日本朝鮮人東京人権協会、在日韓国民主統一連合東京本部)
http://www.korea-htr.com/jp/171180/117311cr.htm

在日コリアン差別の現状と課題(1)/人権白書Tokyo要約

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