仏外国人部隊に21年間在籍、陸自にも 拘束の斎藤さん。戦争の「民間化」のなかで米英の汚い戦争が続いている証。戦争・占領を請け負い、戦争で稼ぐ「民間会社」。ファルージャで抵抗勢力に殺害されたアメリカ「民間人」も、この手の「民間」戦争請負会社だった。会社員はもちろんプロの戦争屋。このことはしっかりとおさえておこう。
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政府関係者によると、イラクで武装勢力に拘束された可能性のある斎藤昭彦さん(44)は、陸上自衛隊に79年から2年間在籍した。フランスのマルセイユ在住で、21年間にわたって同国の外国人部隊に勤務、小隊長も務め、中東やアフリカなどの戦場を経験した。昨年12月にハート社のコンサルタントとしてイラクに入国したとされる。
実家は千葉市花見川区にある。地元中学を卒業後、76年に千葉市内の県立高校に入学。同校によると、翌77年6月末、「一身上の都合」で中退した。近所の主婦(70)は「03年11月に母親が亡くなった際に、昭彦さんは参列していなかった。遠くに行っていると思っていた」と話した。
陸上自衛隊習志野駐屯地(千葉県船橋市)などによると、斎藤さんは79年1月に陸上自衛隊に入隊し、81年1月に任期満了退職。第6普通科連隊(北海道)に配属され、退職時の所属は、第1空挺(くうてい)団普通科群第2中隊という。いずれの部隊でも小銃手を務めたという。 (朝日)
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テロや武力衝突が相次ぐイラクで10日未明、日本人がまた拘束されたという情報が飛び込んできた。被害に遭ったのは、陸上自衛隊の中でも精鋭とされる空挺(くうてい)団に所属していた斎藤昭彦さん(44)(本籍・東京)とみられる。
邦人が、米軍の警備業務を受注した民間会社から紛争地帯に派遣されるのは、政府にとって全くの想定外。第一報から半日以上たっても、消息に関する情報はほとんどなく、対応にあたる外務省幹部は苦渋の表情を浮かべた。
「びっくりして言葉が出なかった。10年ほど前に会ったのが最後。兄はその時、外国でエンジニアをしていると言っていたのに」
斎藤さんとみられる日本人が、イラクの武装勢力に拘束されたとのニュースが流れた10日朝、千葉市花見川区の住宅街にある斎藤さんの実家では、弟の博信さん(34)が、インターホン越しに報道陣に応対した。
外務省から電話で連絡があったのは同日午前2時。パスポートの映像で本人と確認したという。「本人は危険を百も承知で行っていると思うが、大変迷惑をかけて申し訳ない」。博信さんはそう話した。
斎藤さんは3人兄弟の長男で、実家には、父親と三男の博信さんの2人が住んでいる。
近所の主婦(68)は「昨年春、お母さんが亡くなった時も斎藤さんの姿は見なかった。20歳過ぎに見たのが最後で、寡黙でおとなしい感じの人だった」と話した。
外務省幹部によると、斎藤さんは、1979年に陸上自衛隊に入隊した。北海道の部隊などでの勤務を経て、80年8月からは、習志野駐屯地(千葉県船橋市)の第1空挺団に配属され、約半年後に退職したという。
第1空挺団は、輸送機などから落下傘で隊員や物資を降ろし、任務を遂行する陸自唯一の落下傘部隊。危険と隣り合わせの厳しい訓練を重ねることで知られ、能力や練度の高さから、陸上自衛隊の中でも精鋭部隊とされている。
その後、斎藤さんは21年間、フランスの外国人部隊に勤務し、海外での戦場を経験した。この間、連絡先は、フランス南部のマルセイユにしていたという。
防衛庁では「自衛隊を退職した後に外国の警備会社に勤めたケースは把握していない」としているが、関係者によると、過去には、第1空挺団を辞めた隊員が、斎藤さんと同じように海外の傭兵(ようへい)部隊に入った例もあったという。同駐屯地では、被害に遭った邦人が斎藤さん本人かどうか確認を急いでいる。 (読売)
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実態見えぬ警備会社、イラクで米軍から業務委託
【カイロ=柳沢亨之】イラクで武装勢力に拘束されたと見られる斎藤昭彦さん(44)は、米軍の業務委託を受けていた英警備会社ハート・セキュリティー(本社・ロンドン、キプロスなど)の従業員だった。
単純な警備にとどまらず軍事分野でも活動を行う警備会社は、「民間軍事会社」とも呼ばれ、イラクで多数が活動している。ハート社は、その中でも最大級。バグダッドと南部バスラを拠点に、イラク戦争開戦以降、イラク国内で活動する外国企業や英BBCなどの報道機関の警備を行ってきた。
ハート社のホームページによると、警備の対象は、人員、施設など広範にわたり、1月のイラク国民議会選挙の際には、連合軍と共に各地の警備を担当。また、イラク国内で再建された350キロにわたる送電線を襲撃から守るとともに、同施設警備のため、イラク軍兵士1500人を訓練し、成功したとしている。
警備会社は、イラク戦争と戦後の復興で、不可欠の役割を果たしている。その背景には、人件費削減を目指す米軍などが業務委託を進めたことがあるが、その活動実態は、見えにくい。多くは、要人警護に加え、ハイテク兵器の運用、物資の補給、イラク治安部隊の教練、石油パイプラインなど重要拠点の警護などにも従事。実戦に参加しているとの情報もある。
米ブルッキングス研究所のピーター・シンガー研究員は、イラクで活動する「民間軍事会社」従業員を2~3万人と推計する。一つのグループととらえた場合、駐留米軍約14万人に次ぐ規模だ。2004年4月には、中部ナジャフで、米国のブラックウオーター・セキュリティー社社員8人が、シーア派の反米指導者ムクタダ・サドル師支持者と見られる数百人の武装集団と交戦。実戦部隊としての能力の高さを実証した。
イラクで活動する警備会社は、高額の給料にひかれて入社する元特殊部隊員らが多いとされる。元特殊部隊員ともなれば、日給1000ドル(約10万5000円)が支払われるという。
一方で、警備会社の活動には問題も指摘されており、アブグレイブ刑務所でのイラク人収容者虐待に関与したと米兵が証言している。だが、警備会社関係者の罪は問われていない。 (読売)
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カイロ=柳沢亨之】イラクのイスラム過激派組織が同国西部で日本人1人を拘束したと見られる事件で、英国の警備会社「ハート・セキュリティー」からロンドンの日本総領事館に10日未明(日本時間)、同社イラク支店にコンサルタントとして勤務する日本人、斎藤昭彦さん(44)(本籍・東京)が武装勢力との銃撃戦に巻き込まれ、行方不明になったとの連絡が入った。
一方、過激派組織が「近く公表する」と予告している斎藤さんのビデオ映像は、まだ公表されていない。
イスラム過激派組織アンサール・スンナ軍を名乗る武装勢力は、斎藤さんのものと見られる旅券や写真付き身分証明書をウェブサイト上で公表した。このうち旅券については、日本の外務省が「本物」と判断、斎藤さんが行方不明であることを確認したが、拘束の事実は確認しておらず、日本政府は情報収集を急いでいる。
ハート社からの連絡によると、事件が発生したのは現地時間の8日午後5時半から6時半(日本時間同10時半から11時半)の間。斎藤さんは1年以上前から同社に勤務し、当初からイラクで活動していたという。外務省幹部によると、斎藤さんは米軍基地の警備を担当していた。
アンサール・スンナ軍がウェブサイト上に出した声明文などによると、武装勢力は、バグダッド近郊の米軍基地を出て西方約150キロのヒートへ向かった車列を待ち伏せ攻撃した。車列に乗っていたイラク人12人、外国人5人と武装勢力との間で激しい銃撃戦となり、米軍がヘリコプターなどで応援に駆けつけたが間に合わず、襲撃された外国人らの遺体を回収するにとどまったという。
◆戦闘が頻発…首都西方ヒート◆
ヒートはバグダッドの西方約150キロにある町。スンニ派武装勢力の活動が活発な、いわゆる「スンニ派三角地帯」の西端に位置しており、米軍と武装勢力による衝突が頻発している。
地元部族指導者の1人が数か月前に米軍によって拘束されたことから、最近では、米軍やイラク軍に対する武力攻撃が活発化し、治安情勢が悪化している。
2003年6月には、近郊を通る石油やガスのパイプラインが爆破された(読売)
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警備ビジネス急成長、武装勢力から敵視 イラク邦人拘束
イラクで武装勢力に襲われ、拉致されたとみられる斎藤昭彦さんは英国系の警備会社で働いていた。復興事業にかかわる民間企業の技術者や欧米の外交関係者を守る警備会社のビジネスは、治安がイラク戦争の後に悪化するなかで急成長してきた。反米武装勢力からは米国の手先として敵視され、標的になっている。
外国の警備会社がイラクで重宝されるのは、米軍は民間企業や米国以外の大使館の警備をしないし、イラクの警察や国家警備隊は熟練度や装備に欠けるからだ。地元の治安関係者が反米武装勢力と通じている可能性もあり、外国勢への依存が続いている。
警備会社は、イラクの復興事業の情報を提供するインターネットサイトなどに登録されている欧米系の会社だけでも30社以上ある。イラク国内の会社を含めると100社近くといわれる。英ガーディアン紙は昨年4月にイラク全体で1万5000人が警備スタッフとして働き、うち6000人が武器を携帯していると報じた。
米国防総省が発注する復興事業を受けることもある。しかし、主な需要は建設や電源開発、道路整備などの復興事業を請け負う民間会社への治安情報の提供や、イラク国内の警備や護衛サービスだ。在バグダッドの外国大使館関係者や外国メディア、イラク要人の護衛などもする。
米国や米軍が主導する復興事業を請け負う欧米の業者は、反米武装勢力の標的なので、24時間態勢の警備が必要な状況だ。昨年4月の英ガーディアン紙は、英国の警備産業の総収益はイラク戦争前の2億ポンド(380億円)に対し、戦後は10億ポンド(1900億円)に跳ね上がったと推計した。「イラク特需」で急成長する警備会社のスタッフが攻撃で死ぬケースは多い。
03年4月のフセイン旧政権崩壊から今年5月初めまで、復興の請負業者の死者数は名前が判明した人だけで234人にのぼる、と犠牲者数をまとめたインターネットサイトは伝えている。警備関係者が3分の1以上の85人を占め、被害に遭った警備会社は「ブラックウオーター」「グローバルリスク」「アーマー」「オリーブ」など大手企業の名前があがる。斎藤さんが働くハート・セキュリティーも、今年1月にバグダッドの自爆テロで英国人スタッフ1人が死んだと伝えられる。
これまでの欧米の報道やイラクの警備関係者の話によると、警備会社の欧米人スタッフは各地の特殊部隊などの出身者が多い。日給は1000ドル(約10万円)以上でアジア系外国人は500ドル程度とされる。イラク人スタッフは月給が300ドルから600ドルが相場だ。イラク人スタッフが最も危険な場所で護衛するのが一般的で、欧米人は監督者として指示を与える立場という。
斎藤さんを拉致したとみられる武装グループの声明によると、車両に乗っていたのは「イラク人12人、外国人5人」という。警備会社の車列は通常3台か4台で、外国人の復興請負業者が乗った車を前後から挟む形で移動する。護衛グループは少数の外国人と、イラク人が参加する。今回も殺されたイラク人の多くは、警備会社の現地スタッフと見られる(朝日)
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日本人拘束の武装組織「アンサール・アルスンナ」とは
2005年05月10日12時31分
日本人を拉致した声明を出したイスラム教スンニ派武装組織「アンサール・アルスンナ」は、イラク北部と中部を中心に、外国人の拉致や米軍とイラク治安機関への自爆テロなどを繰り返してきた。イラクで最も活動の激しい組織の一つだ。
外国人の殺害、米軍とイラク治安機関に対する自爆テロや待ち伏せでも知られる。「イスラムに基づいたイラク解放」を掲げ、米軍の撤退を求め、イラク国民議会選挙などの政治プロセスも否定。声明には「背教者を殺害した」「十字軍の手先を殺した」といった宗教色の強い表現が並ぶ。
拉致の声明を出してしばらくしてから、ネットで「神の裁きとして処刑した」と殺害現場の映像をつけて流すケースが多い。これまで報道された限りでは、捕まった外国人が解放された例は確認されていない。
グループの名称は「スンナ(イスラム教の預言者ムハンマドが示した規範、慣行)の支持者」を意味する。少数民族のクルド地域を本拠とする武装組織「アンサール・イスラム(AI)」と、イラク戦争後にできたイラクのスンニ派組織が核になって発足した、との声明を03年9月に出して存在が確認された。
北部モスルの米軍基地内で04年12月に自爆テロをしかけ、米兵ら22人を殺した。移行政府内で力を握るシーア派や少数民族のクルド世俗派への敵意が強く、北部の都市アルビルで60人が死んだ4日の自爆テロでも、「背教者のバルザニ(大統領)よ、我々にはまだまだ準備がある」との声明を出した。
AIはイラク戦争前、アフガニスタンにあるアルカイダの軍事キャンプで訓練を受けており、AI関係者を通してアルカイダと間接的なつながりを保っている可能性がある。ザルカウィ幹部率いる「イラク・アルカイダ機構」とも連携している模様だ。
昨年10月にトルコ人運転手を殺した事件では、同機構員を名乗る男が犯行に及ぶ映像がアンサール・アルスンナ名の声明文と合わせて公表されている。同年12月末はスンニ派武装組織イラク・イスラム軍とムジャヒディン軍の連名で選挙妨害を宣言した。
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*写真は・・・・武装勢力がウェブサイトで公開した身分証など(右上から時計回りに、発行元など主な内容)(1)バスラ空軍基地(右上) ハート・セキュリティー、作戦エリアのみアクセス可、武器携行可、護衛可、有効期限06年1月19日(2)CPA(米英暫定占領当局)武器許可局事務所(右中央、アラビア語) 暫定的な武器携行証 (3)斎藤さんの写真(右下)(4)多国籍軍(下中央) インターナショナルゾーン、イラク全土 有効期限06年4月14日(5)米国防総省(左下) 契約業者 発行日05年4月26日 有効期限06年4月20日(6)TF・RIE(左中央) セキュリティー・コンポーネント、セキュリティー・マネジャー、有効期限05年8月31日(7)HART・GMSSCO(現ハート・セキュリティー、左上) セキュリティー・マネジャー
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政府関係者によると、イラクで武装勢力に拘束された可能性のある斎藤昭彦さん(44)は、陸上自衛隊に79年から2年間在籍した。フランスのマルセイユ在住で、21年間にわたって同国の外国人部隊に勤務、小隊長も務め、中東やアフリカなどの戦場を経験した。昨年12月にハート社のコンサルタントとしてイラクに入国したとされる。
実家は千葉市花見川区にある。地元中学を卒業後、76年に千葉市内の県立高校に入学。同校によると、翌77年6月末、「一身上の都合」で中退した。近所の主婦(70)は「03年11月に母親が亡くなった際に、昭彦さんは参列していなかった。遠くに行っていると思っていた」と話した。
陸上自衛隊習志野駐屯地(千葉県船橋市)などによると、斎藤さんは79年1月に陸上自衛隊に入隊し、81年1月に任期満了退職。第6普通科連隊(北海道)に配属され、退職時の所属は、第1空挺(くうてい)団普通科群第2中隊という。いずれの部隊でも小銃手を務めたという。 (朝日)
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テロや武力衝突が相次ぐイラクで10日未明、日本人がまた拘束されたという情報が飛び込んできた。被害に遭ったのは、陸上自衛隊の中でも精鋭とされる空挺(くうてい)団に所属していた斎藤昭彦さん(44)(本籍・東京)とみられる。
邦人が、米軍の警備業務を受注した民間会社から紛争地帯に派遣されるのは、政府にとって全くの想定外。第一報から半日以上たっても、消息に関する情報はほとんどなく、対応にあたる外務省幹部は苦渋の表情を浮かべた。
「びっくりして言葉が出なかった。10年ほど前に会ったのが最後。兄はその時、外国でエンジニアをしていると言っていたのに」
斎藤さんとみられる日本人が、イラクの武装勢力に拘束されたとのニュースが流れた10日朝、千葉市花見川区の住宅街にある斎藤さんの実家では、弟の博信さん(34)が、インターホン越しに報道陣に応対した。
外務省から電話で連絡があったのは同日午前2時。パスポートの映像で本人と確認したという。「本人は危険を百も承知で行っていると思うが、大変迷惑をかけて申し訳ない」。博信さんはそう話した。
斎藤さんは3人兄弟の長男で、実家には、父親と三男の博信さんの2人が住んでいる。
近所の主婦(68)は「昨年春、お母さんが亡くなった時も斎藤さんの姿は見なかった。20歳過ぎに見たのが最後で、寡黙でおとなしい感じの人だった」と話した。
外務省幹部によると、斎藤さんは、1979年に陸上自衛隊に入隊した。北海道の部隊などでの勤務を経て、80年8月からは、習志野駐屯地(千葉県船橋市)の第1空挺団に配属され、約半年後に退職したという。
第1空挺団は、輸送機などから落下傘で隊員や物資を降ろし、任務を遂行する陸自唯一の落下傘部隊。危険と隣り合わせの厳しい訓練を重ねることで知られ、能力や練度の高さから、陸上自衛隊の中でも精鋭部隊とされている。
その後、斎藤さんは21年間、フランスの外国人部隊に勤務し、海外での戦場を経験した。この間、連絡先は、フランス南部のマルセイユにしていたという。
防衛庁では「自衛隊を退職した後に外国の警備会社に勤めたケースは把握していない」としているが、関係者によると、過去には、第1空挺団を辞めた隊員が、斎藤さんと同じように海外の傭兵(ようへい)部隊に入った例もあったという。同駐屯地では、被害に遭った邦人が斎藤さん本人かどうか確認を急いでいる。 (読売)
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実態見えぬ警備会社、イラクで米軍から業務委託
【カイロ=柳沢亨之】イラクで武装勢力に拘束されたと見られる斎藤昭彦さん(44)は、米軍の業務委託を受けていた英警備会社ハート・セキュリティー(本社・ロンドン、キプロスなど)の従業員だった。
単純な警備にとどまらず軍事分野でも活動を行う警備会社は、「民間軍事会社」とも呼ばれ、イラクで多数が活動している。ハート社は、その中でも最大級。バグダッドと南部バスラを拠点に、イラク戦争開戦以降、イラク国内で活動する外国企業や英BBCなどの報道機関の警備を行ってきた。
ハート社のホームページによると、警備の対象は、人員、施設など広範にわたり、1月のイラク国民議会選挙の際には、連合軍と共に各地の警備を担当。また、イラク国内で再建された350キロにわたる送電線を襲撃から守るとともに、同施設警備のため、イラク軍兵士1500人を訓練し、成功したとしている。
警備会社は、イラク戦争と戦後の復興で、不可欠の役割を果たしている。その背景には、人件費削減を目指す米軍などが業務委託を進めたことがあるが、その活動実態は、見えにくい。多くは、要人警護に加え、ハイテク兵器の運用、物資の補給、イラク治安部隊の教練、石油パイプラインなど重要拠点の警護などにも従事。実戦に参加しているとの情報もある。
米ブルッキングス研究所のピーター・シンガー研究員は、イラクで活動する「民間軍事会社」従業員を2~3万人と推計する。一つのグループととらえた場合、駐留米軍約14万人に次ぐ規模だ。2004年4月には、中部ナジャフで、米国のブラックウオーター・セキュリティー社社員8人が、シーア派の反米指導者ムクタダ・サドル師支持者と見られる数百人の武装集団と交戦。実戦部隊としての能力の高さを実証した。
イラクで活動する警備会社は、高額の給料にひかれて入社する元特殊部隊員らが多いとされる。元特殊部隊員ともなれば、日給1000ドル(約10万5000円)が支払われるという。
一方で、警備会社の活動には問題も指摘されており、アブグレイブ刑務所でのイラク人収容者虐待に関与したと米兵が証言している。だが、警備会社関係者の罪は問われていない。 (読売)
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カイロ=柳沢亨之】イラクのイスラム過激派組織が同国西部で日本人1人を拘束したと見られる事件で、英国の警備会社「ハート・セキュリティー」からロンドンの日本総領事館に10日未明(日本時間)、同社イラク支店にコンサルタントとして勤務する日本人、斎藤昭彦さん(44)(本籍・東京)が武装勢力との銃撃戦に巻き込まれ、行方不明になったとの連絡が入った。
一方、過激派組織が「近く公表する」と予告している斎藤さんのビデオ映像は、まだ公表されていない。
イスラム過激派組織アンサール・スンナ軍を名乗る武装勢力は、斎藤さんのものと見られる旅券や写真付き身分証明書をウェブサイト上で公表した。このうち旅券については、日本の外務省が「本物」と判断、斎藤さんが行方不明であることを確認したが、拘束の事実は確認しておらず、日本政府は情報収集を急いでいる。
ハート社からの連絡によると、事件が発生したのは現地時間の8日午後5時半から6時半(日本時間同10時半から11時半)の間。斎藤さんは1年以上前から同社に勤務し、当初からイラクで活動していたという。外務省幹部によると、斎藤さんは米軍基地の警備を担当していた。
アンサール・スンナ軍がウェブサイト上に出した声明文などによると、武装勢力は、バグダッド近郊の米軍基地を出て西方約150キロのヒートへ向かった車列を待ち伏せ攻撃した。車列に乗っていたイラク人12人、外国人5人と武装勢力との間で激しい銃撃戦となり、米軍がヘリコプターなどで応援に駆けつけたが間に合わず、襲撃された外国人らの遺体を回収するにとどまったという。
◆戦闘が頻発…首都西方ヒート◆
ヒートはバグダッドの西方約150キロにある町。スンニ派武装勢力の活動が活発な、いわゆる「スンニ派三角地帯」の西端に位置しており、米軍と武装勢力による衝突が頻発している。
地元部族指導者の1人が数か月前に米軍によって拘束されたことから、最近では、米軍やイラク軍に対する武力攻撃が活発化し、治安情勢が悪化している。
2003年6月には、近郊を通る石油やガスのパイプラインが爆破された(読売)
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警備ビジネス急成長、武装勢力から敵視 イラク邦人拘束
イラクで武装勢力に襲われ、拉致されたとみられる斎藤昭彦さんは英国系の警備会社で働いていた。復興事業にかかわる民間企業の技術者や欧米の外交関係者を守る警備会社のビジネスは、治安がイラク戦争の後に悪化するなかで急成長してきた。反米武装勢力からは米国の手先として敵視され、標的になっている。
外国の警備会社がイラクで重宝されるのは、米軍は民間企業や米国以外の大使館の警備をしないし、イラクの警察や国家警備隊は熟練度や装備に欠けるからだ。地元の治安関係者が反米武装勢力と通じている可能性もあり、外国勢への依存が続いている。
警備会社は、イラクの復興事業の情報を提供するインターネットサイトなどに登録されている欧米系の会社だけでも30社以上ある。イラク国内の会社を含めると100社近くといわれる。英ガーディアン紙は昨年4月にイラク全体で1万5000人が警備スタッフとして働き、うち6000人が武器を携帯していると報じた。
米国防総省が発注する復興事業を受けることもある。しかし、主な需要は建設や電源開発、道路整備などの復興事業を請け負う民間会社への治安情報の提供や、イラク国内の警備や護衛サービスだ。在バグダッドの外国大使館関係者や外国メディア、イラク要人の護衛などもする。
米国や米軍が主導する復興事業を請け負う欧米の業者は、反米武装勢力の標的なので、24時間態勢の警備が必要な状況だ。昨年4月の英ガーディアン紙は、英国の警備産業の総収益はイラク戦争前の2億ポンド(380億円)に対し、戦後は10億ポンド(1900億円)に跳ね上がったと推計した。「イラク特需」で急成長する警備会社のスタッフが攻撃で死ぬケースは多い。
03年4月のフセイン旧政権崩壊から今年5月初めまで、復興の請負業者の死者数は名前が判明した人だけで234人にのぼる、と犠牲者数をまとめたインターネットサイトは伝えている。警備関係者が3分の1以上の85人を占め、被害に遭った警備会社は「ブラックウオーター」「グローバルリスク」「アーマー」「オリーブ」など大手企業の名前があがる。斎藤さんが働くハート・セキュリティーも、今年1月にバグダッドの自爆テロで英国人スタッフ1人が死んだと伝えられる。
これまでの欧米の報道やイラクの警備関係者の話によると、警備会社の欧米人スタッフは各地の特殊部隊などの出身者が多い。日給は1000ドル(約10万円)以上でアジア系外国人は500ドル程度とされる。イラク人スタッフは月給が300ドルから600ドルが相場だ。イラク人スタッフが最も危険な場所で護衛するのが一般的で、欧米人は監督者として指示を与える立場という。
斎藤さんを拉致したとみられる武装グループの声明によると、車両に乗っていたのは「イラク人12人、外国人5人」という。警備会社の車列は通常3台か4台で、外国人の復興請負業者が乗った車を前後から挟む形で移動する。護衛グループは少数の外国人と、イラク人が参加する。今回も殺されたイラク人の多くは、警備会社の現地スタッフと見られる(朝日)
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日本人拘束の武装組織「アンサール・アルスンナ」とは
2005年05月10日12時31分
日本人を拉致した声明を出したイスラム教スンニ派武装組織「アンサール・アルスンナ」は、イラク北部と中部を中心に、外国人の拉致や米軍とイラク治安機関への自爆テロなどを繰り返してきた。イラクで最も活動の激しい組織の一つだ。
外国人の殺害、米軍とイラク治安機関に対する自爆テロや待ち伏せでも知られる。「イスラムに基づいたイラク解放」を掲げ、米軍の撤退を求め、イラク国民議会選挙などの政治プロセスも否定。声明には「背教者を殺害した」「十字軍の手先を殺した」といった宗教色の強い表現が並ぶ。
拉致の声明を出してしばらくしてから、ネットで「神の裁きとして処刑した」と殺害現場の映像をつけて流すケースが多い。これまで報道された限りでは、捕まった外国人が解放された例は確認されていない。
グループの名称は「スンナ(イスラム教の預言者ムハンマドが示した規範、慣行)の支持者」を意味する。少数民族のクルド地域を本拠とする武装組織「アンサール・イスラム(AI)」と、イラク戦争後にできたイラクのスンニ派組織が核になって発足した、との声明を03年9月に出して存在が確認された。
北部モスルの米軍基地内で04年12月に自爆テロをしかけ、米兵ら22人を殺した。移行政府内で力を握るシーア派や少数民族のクルド世俗派への敵意が強く、北部の都市アルビルで60人が死んだ4日の自爆テロでも、「背教者のバルザニ(大統領)よ、我々にはまだまだ準備がある」との声明を出した。
AIはイラク戦争前、アフガニスタンにあるアルカイダの軍事キャンプで訓練を受けており、AI関係者を通してアルカイダと間接的なつながりを保っている可能性がある。ザルカウィ幹部率いる「イラク・アルカイダ機構」とも連携している模様だ。
昨年10月にトルコ人運転手を殺した事件では、同機構員を名乗る男が犯行に及ぶ映像がアンサール・アルスンナ名の声明文と合わせて公表されている。同年12月末はスンニ派武装組織イラク・イスラム軍とムジャヒディン軍の連名で選挙妨害を宣言した。
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*写真は・・・・武装勢力がウェブサイトで公開した身分証など(右上から時計回りに、発行元など主な内容)(1)バスラ空軍基地(右上) ハート・セキュリティー、作戦エリアのみアクセス可、武器携行可、護衛可、有効期限06年1月19日(2)CPA(米英暫定占領当局)武器許可局事務所(右中央、アラビア語) 暫定的な武器携行証 (3)斎藤さんの写真(右下)(4)多国籍軍(下中央) インターナショナルゾーン、イラク全土 有効期限06年4月14日(5)米国防総省(左下) 契約業者 発行日05年4月26日 有効期限06年4月20日(6)TF・RIE(左中央) セキュリティー・コンポーネント、セキュリティー・マネジャー、有効期限05年8月31日(7)HART・GMSSCO(現ハート・セキュリティー、左上) セキュリティー・マネジャー