[新聞と権力] 対沖縄 牙むく国/沖縄タイムス ほか

2014-04-07 11:50:16 | 沖縄
[新聞と権力](1)対沖縄 牙むく国
2014年4月6日

「懇談に移りますので、退席をお願いします」

 2005年初夏。那覇防衛施設局の記者会見室で、広報担当者が沖縄タイムス記者に通告した。

 西正典局長が月に1回開く定例会見が終わり、局長と記者がオフレコ(メモなどの記録をしない場)で意見交換する「懇談」から、本紙記者は締め出された。

 この時、普天間飛行場の移設先とされた名護市辺野古沖で、施設局はボーリング調査を進めていた。

 移設に反発する市民は現場の海に設置されたやぐらに上り、24時間態勢で抗議を続けた。

 本紙は05年5月、夕方から早朝まで繰り広げられる施設局側と市民のにらみ合いをやぐらの上で取材。14日付の紙面にルポ記事を掲載した。

■「許せない」

 「これは許せない」

 記事を読んだ西局長は激怒した。広報担当者を通じ、施設局の取材を担当する別の記者に「局長懇談」への出入り禁止を通告した。

 当時を知る防衛省関係者は「西氏は、国が設置したやぐらに無断で上る行為が建造物侵入に当たると問題視していた」と振り返る。

 施設局はやぐらでの取材後、掲載の見送りを執拗(しつよう)に求めた。だが、本紙は受け入れなかった。

 長元朝浩編集局長は「海中に設置され足場の悪いやぐらの上で24時間の監視が続き、県民の命に関わる事態が起きかねない危険な状況が続いている。地元紙として危険性を取材し、読者に伝える必要がある」と判断した。

 同じころ、東京・市谷の防衛施設庁でも、本紙記者は山中昭栄長官の懇談への出入り禁止を告げられた。

 オフレコ懇談は、記者が政府関係者の本音を聞く貴重な機会だ。政府はこうした「ニーズ」を熟知しているからこそ、効果的な措置として“出禁”に踏み切る。琉球新報にも、同様の処分を発動することがある。

 通常は1週間、1カ月などの期限付きだが、西氏は06年1月に離任するまで出席を認めなかった。

 「やぐらから下りろと言ったのに下りず、タイムスは国に立ち向かってきた。そこが許せなかったんだ」。防衛省関係者は、内実を明かした。

■正当性強調

 施設庁の記者クラブでは05年夏、ある「上映会」が開かれた。辺野古沖の船上で抗議する市民を撮影した動画を職員が再生し、全国紙の防衛庁担当記者に見せていた。

 「市民団体がやっていることは、こんなに危ないんですよ」。職員は記者団に、市民側がいかに危険な存在かという施設庁側の見解を伝え、ボーリング調査の正当性を強調した。

 報道から約4カ月後の05年9月、施設局は台風による危険性を理由にやぐらを撤去し、その後は再設置できなかった。

 当時、知事だった稲嶺恵一氏は昨年12月、本紙の取材に「(やぐら撤去で)普天間問題はもう進まないなって思った。歴史のターニングポイントはここだと思う」と振り返った。

◇    ◇

 防衛省はことし2月、石垣島への陸自配備計画を報道した地元紙を問題視し、全国のマスコミ約130社が会員に名を連ねる日本新聞協会に抗議した。前例のない措置だった。抗議の文書は、くしくも05年に那覇施設局長だった西事務次官の名前で送付した。

 「やぐら問題」にも通底するが、政府は沖縄メディアの報道に敏感に反応する。ただ、05年当時は公式の記者会見への出席を認めるなど、表立った圧力は控えていた。

 個別の新聞社への“制裁”を越え、政府・与党という権力が沖縄メディアに公然と牙をむき始めた。

 6日から始まった春の新聞週間に合わせ、新聞と権力の関係を考える。(政経部・吉田央)

 =政府機関の名称、登場人物の肩書は当時

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[新聞と権力](2)自作自演 報道へ抗議
2014年4月7日

「この記事について、記者にぜひ質問させてほしい」

 2月23日、岐阜市であった記者会見。小野寺五典防衛相は琉球新報の記事について質問するよう、事前に事務方を通して同行記者に依頼していた。予定通り質問を受けると「全く事実ではない」と答えてみせた。

 陸上自衛隊の配備計画をめぐり、新報は同日付で「石垣に2候補地」と報じた。その場には全国メディアしかおらず、関心が高いとはいえない。記事のコピーまで配らせる自作自演。小野寺氏は「今日はくしくも石垣市長選の告示日。社会の公器としていかがなものか」と力説した。

 以前から沖縄の2紙について「何をしても評価してくれない」と、こぼしていた小野寺氏。翌24日には、さらに「反撃」を強める。新報と日本新聞協会に内容証明郵便で抗議文書を送った。

 防衛省は表向き、沖縄タイムスもその日に配備計画を報じたことを挙げ「地元で懸念が広がっている。防衛省として判断した」と説明した。ただ実際には、石垣市長選で現地入りした自民党の石破茂幹事長らの意向も大きく影響した。「普段から批判的な沖縄の地元紙に、おきゅうを据えるチャンスだったのだろう」。防衛省関係者は明かした。

■警戒感は共通

 異例の抗議を受けた新聞協会は3月19日、「加盟各社の個々の報道について指導・監督する団体ではなく、申し入れを受け入れる立場にはない」と、突っぱねる文書を防衛省に送った。

 タイムスの武富和彦編集局長は、対応を協議した編集委員会の委員。複数の他紙編集局長と話すと、今後、報道の自由への圧力が増すことへの警戒感は共通していたという。

 タイムスは抗議を受けなかったが、新報や協会への抗議が発覚するとスペースを割いて報じた。武富局長は「特定の会社ではなく、マスコミ全体に向けられた圧力だ」と語る。「特に沖縄の各社は、政府側から見れば思い通りにならない目障りな存在かもしれない。だが、県民世論を代表して報道する基本線は譲れない」と強調した。

■「各社連帯を」

 政府が管理する電波を使う放送と違って、新聞には監督官庁がない。新聞労連の日比野敏陽(としあき)委員長は「戦前は紙の供給を通じて統制した。政府は今も、業界団体を通じて新聞を締め上げる仕組みを欲しがっている」と指摘する。防衛省を批判する声明では「『うちは琉球新報ではないから』『沖縄ではないから』と放置すれば、いずれ新聞業界全体が弾圧の対象になる」と警鐘を鳴らす。日比野氏は「各社が連帯して圧力と闘うべきだ」と訴える。(社会部・阿部岳)

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週のはじめに考える 民主主義のルールとは/東京新聞 6日社説
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014040602000122.html?ref=rank

【社説】集団的自衛権、解釈改憲は権力の横暴(神奈川新聞3月14日)
http://www.kanaloco.jp/article/67756/cms_id/69964
【社説】集団的自衛権 各党・政府は議論見せよ(神奈川新聞3日)
http://www.kanaloco.jp/article/68978/cms_id/73364
(社説)集団的自衛権 砂川判決のご都合解釈(朝日新聞6日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11070230.html?ref=editorial_backnumber
(社説)集団的自衛権 「限定容認」という詭弁(東京新聞5日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014040502000148.html?ref=rank

「禁じ手」破り──武器輸出三原則も撤廃(水島朝穂「今週の直言」7日)
http://www.asaho.com/jpn/bkno/2014/0407.html

秘密保護法 成立4カ月 監視機関設置 自公に溝(東京新聞6日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014040602000114.html


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