生活保護「受給者バッシング」の正体・安田浩一 ほか/講談社「G2」から

2012-12-31 20:45:10 | 社会
小高い丘を登り切ったところに、その墓はあった。墓誌はない。縦型の墓石には「佐野家之墓」とだけ刻まれている。

周囲を囲むように植えられたヒマワリの花が真夏の日差しを受けながら、夕張山地から吹く穏やかな風に乗って揺れていた。

この墓には、最近になって佐野湖末枝さん(死亡時42歳)と妹の恵さん(同40歳)の遺骨が納められた。

姉妹の父親は、この近くの町で炭鉱夫をしていた。だが長女の湖末枝さんが中学生の時に病死。その後、病弱だった母親も父親を追うように亡くなっている。

一家はようやく同じ場所で再会した。あまりに悲痛な再会ではあるけれど―。

軽く手を合わせてから、墓石を背にして町を見下ろす。寂しい町だなあと思う。メインストリートに人影はなく、草木が風でザワザワと擦れる音以外に、耳へ響くものもない。

北海道歌志内市。札幌の北東約100キロに位置する山間の小さな町である。人口4300人。「日本一人口の少ない市」として知られる以外、これといった特徴はない。典型的な僻地だ。いや、特徴らしきものを挙げれば、もう一つだけある。歌志内は「人口一人当たりの生活保護費がもっとも高い自治体」でもあるのだ。

なにか因縁めいたものを感じた。都市の片隅で生活保護の助けを得ることができずに死んだ姉妹は、遺骨となって日本一の“生活保護”市にたどり着いたのである。

途中に立ち寄った質素な建物の市役所では、保健福祉課の長野芳智主査が、節電のために照明を落とした薄暗い庁舎内で応対してくれた。

「結局、炭鉱を失ったことで、この町は衰退の一途をたどっているんですよ」

歌志内は1950年代までは炭鉱の町として栄えていた。ピーク時の48年の人口は4万6000人。それが炭鉱の閉山によって、現在は10分の1にまで激減している。しかも人口の4割が65歳以上の高齢者で占められるという。

生活保護世帯の割合が高いのは当然だ。現在、人口における受給率は4・3パーセント。

「産業らしいものは何もないし、企業誘致もうまくいかない。高齢化率も生活保護の受給率も高いってことは、ある意味、日本の未来を先取りした先進的な自治体かもしれませんけどね」

長野主査は自嘲ぎみに言うと、フフと小さく笑った。
http://g2.kodansha.co.jp/17703/17849/17850/17851.html

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『ピストルと荊冠』著者・角岡伸彦インタビュー 
小西邦彦、そして飛鳥会事件とは何だったのか〈上〉
インタビューにあたって

2006年5月、解放同盟・大阪府連合会飛鳥支部の支部長が逮捕された。支部長の名は小西邦彦。被差別出身者である。彼は、大阪市から駐車場の管理を委託されていたが、収益を過少に申告しその差額を自分のものとしていた。そのため、業務上横領などの罪で逮捕・起訴された。世に言う飛鳥会事件である。一審で実刑判決を受けるが、小西は逮捕からおよそ1年半後に病死する。

小西邦彦に対して、「支部長が、その立場を利用し利権を漁っていた」という言い方は必ずしも正確ではない。なぜならば、彼はもともとヤクザだったからだ。1969年に同和対策事業(以下、「同和対策」を「同対」と表記)が始まるにあたり、彼の親分にあたる金田組組長が、同対事業の金に目を付けて小西を解放同盟飛鳥支部へ支部長として送り込んだのである。

小西は大阪市や国税局、三和銀行とも密接な関係を持ち、巨額の富を得た。生涯に得た金は100億円とも言われている。そしてその金であらん限りの豪遊をし、逮捕された時に所持していた貯金は1億円だったとされる。つまり彼はヤクザとの二つの顔で、生涯に99億円を散財したのである。

「ピストルと荊冠」は小西邦彦の生涯を描いた一代記である。だが単なる評伝ではない。彼を通して飛鳥会事件を含む利権の構造、小西の周辺で蠢いていた人間たちが描かれる。そしてまた、解放運動の正義も問われる。この事件は、小西邦彦を中心にした人間の損得計算と欲望のるつぼのようなものだ。私は作者の角岡伸彦さんに本書の背景を伺うことにした。
http://g2.kodansha.co.jp/279/280/19186/19187.html

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G2 Vol.11その他のラインナップ

★安田浩一 生活保護「受給者バッシング」の正体
講談社ノンフィクション賞・受賞第一作!
★青木理「小沢一郎妻に『離縁状』を書かせた男」
あのスクープの裏側と意義に迫る秀作
★佐野真一「無罪のゴビンダを15年牢獄に繋いだ『警察と司法』」
時を経て、再び「東電OL殺人事件」に巨人が迫る!
★清武英利「辞めても幸せ ソニー退職者『第二の人生』」
読売を告発した男が「明日」を訪ね歩いて……

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