動かぬ米軍基地 募る怒り。10・21から満10年/沖縄タイムス

2005-10-22 11:13:31 | 沖縄
なぜ県内移設「県民の思い今も」/八万五千人の憤りが、日米両政府を震撼させた県民総決起大会。あれから満十年がたっても、「基地の島」の現実は変わらなかった。大会にかかわった県民は二十一日、あくまで県内移設を目指す両政府に怒りとやりきれなさを募らせた。普天間飛行場のゲート前には約三百人が結集し、居座り続ける基地に向かってこぶしを突き上げた。
 浦添市議の仲村和文さん(44)は当時、県青年団協議会(沖青協)の会長として関係省庁を回り、県民の怒りを訴えた。しかし、対応は冷ややかで「真剣に考えているようには見えなかった」。翌日、県民大会の壇上に。痛恨の思いで立ち上がった群衆の姿は、今も忘れられない。

 米軍再編協議で、少年時代を過ごした名護市東海岸に基地が集約されようとしている。牧港補給地区での訓練、うるま市でのヘリ飛行など、トラブルも後を絶たない。「米にこびる首相、沖縄への冷たい対応、わが物顔の米軍。十年前と何も変わっていない」

 運動組織とは無縁だった沖縄市の砂川孝児さん(37)は、当時普及し始めたインターネットを駆使し、県民大会に合わせて地位協定見直しを求める首相あての署名約三千人分を集めた。現状は目に見える成果は出ていない。

 「県民は立ち上がったけど基地は動いたわけでもなく、米兵犯罪も減っていない。『基地をなくしたい』という県民の意志がまだ弱いのではないか。発言力が増すように努力を続けていきたい」と語った。

 当時大学二年生で、大会の参加者数に圧倒された宜野湾市の公務員、宮城俊さん(30)は別の見方を示す。「この十年間、表面的には基地受け入れに動いたように見えるが、県民の思いは脈々と続いている」

 政府が提示するのは、いつも県内移設か現状固定かの二者択一。「なぜこの選択肢の中から選ばないといけないのか」との疑問がぬぐえない。

 「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の高里鈴代共同代表は「大会で訴えた日米地位協定の見直しや基地の整理・縮小は十年たっても実現しない。再編協議の中でも改善の方向ははっきりしない」と指摘。

 米兵犯罪も続き、「すべての事件で即座に身柄を日本側に引き渡し、裁判の長期化で被害者が二重に傷つかないよう、日本の司法制度の整備にも取り組むべきだ」と強調した。


移設2案反対訴え/宜野湾で市民集会
「再び県民集会を」


 普天間爆音訴訟団など三団体は二十一日夜、宜野湾市の普天間飛行場真栄原ゲート前で「10・21市民集会」を開いた。参加者は「移設二案にノーの声を出そう」「怒りを結集しよう」と口々に訴え、県民大会から十年経過してもなお過重な基地負担を強いられている沖縄の現状打破を訴えた。労組員や市民ら約三百人(主催者発表)が参加した。

 全員で同基地に向かいシュプレヒコールを上げた後、開会。伊波洋一市長は「結局、この十年、何も変わっていない。普天間を放置していることは許せない。県民集会を再び開くべき重要な時期だ」とアピール。

 同爆音訴訟団の島田善次団長も「これ以上危険な基地と生活を共にすることは限界」と怒りをあらわにし、「浅瀬案」をのまなければ普天間に居続けるとする米国を厳しく批判した。

 集会では日米両政府に普天間飛行場の県内移設断念を迫る市民決議を行い、浦添市の在沖米国総領事館までデモ行進した。


北部集約案で日米政府批判/国際反戦デー集会


 沖縄平和運動センター主催の「10・21国際反戦デー集会」が二十一日、那覇市の県民ひろばであり、労組員や県議ら約百五十人が参加した。シュプレヒコールで米軍基地の県内たらい回しや憲法改悪反対などと訴え、気勢を上げた。

 崎山嗣幸議長は「米軍再編はアジア太平洋における米軍基地強化以外の何物でもない」とあいさつ。北部地区労の仲村善幸事務局長は、普天間飛行場返還とセットになった北部への基地集約案などについて「日米両政府は本性を表し、県民の意見など聞かずに新たな基地を押し付け、固定化させる手法に転換した」と批判、「県民ぐるみの闘いこそが、両政府に対抗する最も有効な手段だ」と強調した。


「再編」に反対/東京でも集会


 米軍基地をなくし、アジアの平和を構築しようと二十一日夜、千代田区の日比谷公園で「10・21 国際反戦反基地集会」があり、全国から集まった労働組合や平和団体らのメンバーが、米軍再編に反対し、憲法改正を阻止しようと訴えた。
-------------------------------
3閣僚「沿岸案」を確認/普天間移設
官房長官・外相・防衛庁長官/24日に米側へ提示
 米軍普天間飛行場の移設先をめぐる問題で、細田博之官房長官、町村信孝外相、大野功統防衛庁長官の三閣僚が二十一日午前、対応を協議し、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ兵舎地区沿岸部に滑走路を造る「沿岸案」を米側に提案する方針を確認した。二十四日の日米審議官級協議で合意を目指す。海と陸地が接する沿岸部分は、埋め立てや桟橋方式など複数案の提示で最終調整している。米政府は辺野古沖の現計画より陸地に近い海上に滑走路を造るリーフ内縮小案(浅瀬案)を主張する考えを崩しておらず、合意を得られるかは不透明だ。
 審議官級協議が決裂した場合、今月二十九日にワシントンで開催予定の日米安全保障協議委員会(2プラス2)が見送られる可能性もある。

 同協議出席のため、ローレス米国防副次官は二十三日までに訪日する予定。普天間飛行場の移設先問題は、二十四日に集中的に取り上げる。

 日米両政府は今月十七―十九日にかけ、キャンプ・シュワブ周辺に調査チームを派遣し、沿岸案の実現可能性を調査した。

 米側は兵舎の移転が必要になることなどから沿岸案に難色を示したが、日本側は環境への影響が大きい海上滑走路の建設は難しいと判断しており、見解が分かれている。

 浅瀬案、沿岸案ともに位置や工法で複数の案があり、日米はこれらの中から実現可能性が最も高いものを探る方針だ。


     ◇     ◇     ◇     
[ニュース断面]
県・日・米三すくみ
沿岸案3閣僚確認
対立解けず紆余曲折も


 米軍普天間飛行場の移設先問題で、外務、防衛、官房長官の三閣僚は名護市辺野古のキャンプ・シュワブ兵舎地区に滑走路を造る「沿岸案」を日米審議官協議に提案することを確認した。米政府の主張する辺野古リーフ内縮小案(浅瀬案)に防衛庁が「環境問題があるうえ、基地の新設になる」と強く反対したことなどを踏まえた格好だ。ただ、米側は沿岸案を拒否する方針で、日米協議の行方は予断を許さない。

 政府内には、沿岸案で合意できるか「強気」と「慎重」の見方が交錯している。一方、県内では県内移設の日米二案に反発が強まっており、移設先決定までは紆余曲折が続きそうだ。


勝算


 「六―四くらいの勝算は出てきた」

 防衛庁幹部は二十四日の日米審議官級協議で「沿岸案」合意の可能性をこう指摘した。

 強気な予測の背景には、米国防総省のヒル部長と国務省のスティーブンス筆頭副次官補ら米政府の高官が相次いで来沖し、県幹部や与党県議に浅瀬案の受け入れを迫ったことが流れを変えたとの見方がある。

 米側は「普天間の県内移設と嘉手納以南の基地返還などの負担軽減は『パッケージ』だ」(スティーブンス副次官補)など、負担軽減の「アメ」をちらつかせて浅瀬案の受け入れを迫った。

 しかし、稲嶺恵一知事をはじめとする県関係者は「現行計画以外は県内移設だ」など、一様に反発。この間、浅瀬案に理解を示していた岸本建男名護市長も三選不出馬を表明した。

 結果的に、米側が浅瀬案を推す最大の根拠だった「地元の理解」の前提は崩れた。

 防衛庁内では「以前より沿岸案受け入れのハードルが下がった」(幹部)との見方が強まっている。


慎重


 一方、防衛庁首脳は「米側が簡単に折れてくるとは思っていない」と慎重姿勢を崩さない。

 大野功統防衛庁長官は審議官級協議が物別れに終われば、二十九日に予定される日米安全保障協議委員会(2プラス2)の開催を見送る方針を示している。

 日本政府が沿岸案を選択したことで、日米合意が遅れるケースも想定されるのが現状だ。

 「総理はまったくぶれていない」

 防衛庁首脳は二十一日、記者団に語った。

 小泉純一郎首相は九月二十二日、普天間飛行場の移設先で、シュワブ陸上案を確認。今月十三日には額賀福志郎元防衛庁長官に「環境問題は軽視できない」と指摘、ジュゴンやさんご礁への影響が避けられない浅瀬案に難色を示したとされる。

 ただ、小泉首相の真意は公式には示されていない。防衛庁が主導する「既存基地内」「沖縄の海に基地を造らない」との条件を満たす沿岸案か、スムーズな基地運用などを理由に米側が主張する浅瀬案か。来月中旬の日米首脳会談に向け、日米間の駆け引きが大詰めを迎えている。(東京支社・吉田央)

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
何で米側に立って (田仁)
2005-10-23 00:20:09
何で外務省も官邸も米国側に立って、重箱の隅を四:六だのと、誰から給料を。
返信する
Unknown (きむ)
2005-10-31 06:11:44
沖縄の方が米軍基地を嫌がるのはそりゃそうだとおもいます。

しかし、米軍基地をなくすなら自衛隊を増強しておかないと中国の脅威にたちむかえない現状のようにおもいます。

台湾を考えても多分沖縄より大幅に東には米軍基地は移動しないのではないでしょうか。

中国の脅威が減れば随分沖縄の軍事的要所としての不幸も減るとおもうのですが、東シナ海のことや領海侵犯をみてもなかなか一朝一夕には難しいのが現実のようにおもいます。

軍隊なんてイヤなものですが、現実に世界は弱肉強食の世界から抜けていません。今はアメリカの実質的属国として守られていますが、一方でアメリカも日本が軍事的に完全に独立することは許さないでしょう。

だから、長州藩の気持ちで(長州藩は毎正月、領主に「今年は江戸を撃つか」ときいて「時期尚早」という問答をくりかえしていたそうです)アメリカを撃つことはないとおもいますが、アメリカにもどうどうと渡り合える(軍事的にも独立する)ことを考え、徐々に力をたくわえるしかないとおもいます。

もちろん、昔のようなことにならないよう、軍の運用には厳しいシビリアンコントロールをする必要があるとおもうし、国民ももっと賢くならないといけないとおもいますが。

返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。