法律の周辺

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気分が高揚したので落書きしてしまった人達について

2008-06-26 21:13:19 | Weblog
asahi.com 京産大生もイタリアの大聖堂に落書き 3人の処分検討

 公園内の公衆便所の外壁にペンキで「反戦」等と大書した行為が建造物損壊にあたるとしたものに,最判H18.1.17がある。第三小法廷は,次のとおり判示。

1(2) その大書された文字の大きさ,形状,色彩等に照らせば,本件建物は,従前と比べて不体裁かつ異様な外観となり,美観が著しく損なわれ,その利用についても抵抗感ないし不快感を与えかねない状態となり,管理者としても,そのままの状態で一般の利用に供し続けるのは困難と判断せざるを得なかった。ところが,本件落書きは,水道水や液性洗剤では消去することが不可能であり,ラッカーシンナーによっても完全に消去することはできず,壁面の再塗装により完全に消去するためには約7万円の費用を要するものであった。
2 以上の事実関係の下では,本件落書き行為は,本件建物の外観ないし美観を著しく汚損し,原状回復に相当の困難を生じさせたものであって,その効用を減損させたものというべきであるから,刑法260条前段にいう「損壊」に当たると解するのが相当であり,これと同旨の原判断は正当である。


さて,油性ペンで世界遺産に落書きとか。仮に,平等院で同じことをしたらどうなるだろう。写真などからして,さすがに「損壊」と認定されることはないとは思うが,「き棄」として文化財保護法違反に問われる可能性は十分あり得る。もっとも,地元で大学名を書いて落書きでもないか。
なお,建造物損壊罪については,属人主義がとられておらず,日本国民が国外でこれを犯しても日本刑法の適用はない(刑法第3条)。この点,「世界遺産については世界主義を採用し,国外犯も処罰すべき。語呂もいいし。」という声があるかどうかについては,管理人は知らない。

判例検索システム 平成18年01月17日 建造物損壊被告事件


刑法の関連条文

(国内犯)
第一条  この法律は,日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。
2  日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても,前項と同様とする。

(すべての者の国外犯)
第二条  この法律は,日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。
一  削除
二  第七十七条から第七十九条まで(内乱,予備及び陰謀,内乱等幇助)の罪
三  第八十一条(外患誘致),第八十二条(外患援助),第八十七条(未遂罪)及び第八十八条(予備及び陰謀)の罪
四  第百四十八条(通貨偽造及び行使等)の罪及びその未遂罪
五  第百五十四条(詔書偽造等),第百五十五条(公文書偽造等),第百五十七条(公正証書原本不実記載等),第百五十八条(偽造公文書行使等)及び公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録に係る第百六十一条の二(電磁的記録不正作出及び供用)の罪
六  第百六十二条(有価証券偽造等)及び第百六十三条(偽造有価証券行使等)の罪
七  第百六十三条の二から第百六十三条の五まで(支払用カード電磁的記録不正作出等,不正電磁的記録カード所持,支払用カード電磁的記録不正作出準備,未遂罪)の罪
八  第百六十四条から第百六十六条まで(御璽偽造及び不正使用等,公印偽造及び不正使用等,公記号偽造及び不正使用等)の罪並びに第百六十四条第二項,第百六十五条第二項及び第百六十六条第二項の罪の未遂罪

(国民の国外犯)
第三条  この法律は,日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。
一  第百八条(現住建造物等放火)及び第百九条第一項(非現住建造物等放火)の罪,これらの規定の例により処断すべき罪並びにこれらの罪の未遂罪
二  第百十九条(現住建造物等浸害)の罪
三  第百五十九条から第百六十一条まで(私文書偽造等,虚偽診断書等作成,偽造私文書等行使)及び前条第五号に規定する電磁的記録以外の電磁的記録に係る第百六十一条の二の罪
四  第百六十七条(私印偽造及び不正使用等)の罪及び同条第二項の罪の未遂罪
五  第百七十六条から第百七十九条まで(強制わいせつ,強姦,準強制わいせつ及び準強姦,集団強姦等,未遂罪),第百八十一条(強制わいせつ等致死傷)及び第百八十四条(重婚)の罪
六  第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪
七  第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪
八  第二百十四条から第二百十六条まで(業務上堕胎及び同致死傷,不同意堕胎,不同意堕胎致死傷)の罪
九  第二百十八条(保護責任者遺棄等)の罪及び同条の罪に係る第二百十九条(遺棄等致死傷)の罪
十  第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪
十一  第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取及び誘拐,営利目的等略取及び誘拐,身の代金目的略取等,所在国外移送目的略取及び誘拐,人身売買,被略取者等所在国外移送,被略取者引渡し等,未遂罪)の罪
十二  第二百三十条(名誉毀損)の罪
十三  第二百三十五条から第二百三十六条まで(窃盗,不動産侵奪,強盗),第二百三十八条から第二百四十一条まで(事後強盗,昏酔強盗,強盗致死傷,強盗強姦及び同致死)及び第二百四十三条(未遂罪)の罪
十四  第二百四十六条から第二百五十条まで(詐欺,電子計算機使用詐欺,背任,準詐欺,恐喝,未遂罪)の罪
十五  第二百五十三条(業務上横領)の罪
十六  第二百五十六条第二項(盗品譲受け等)の罪

(国民以外の者の国外犯)
第三条の二  この法律は,日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に適用する。
一  第百七十六条から第百七十九条まで(強制わいせつ,強姦,準強制わいせつ及び準強姦,集団強姦等,未遂罪)及び第百八十一条(強制わいせつ等致死傷)の罪
二  第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪
三  第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪
四  第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪
五  第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取及び誘拐,営利目的等略取及び誘拐,身の代金目的略取等,所在国外移送目的略取及び誘拐,人身売買,被略取者等所在国外移送,被略取者引渡し等,未遂罪)の罪
六  第二百三十六条(強盗)及び第二百三十八条から第二百四十一条まで(事後強盗,昏酔強盗,強盗致死傷,強盗強姦及び同致死)の罪並びにこれらの罪の未遂罪

(公務員の国外犯)
第四条  この法律は,日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国の公務員に適用する。
一  第百一条(看守者等による逃走援助)の罪及びその未遂罪
二  第百五十六条(虚偽公文書作成等)の罪
三  第百九十三条(公務員職権濫用),第百九十五条第二項(特別公務員暴行陵虐)及び第百九十七条から第百九十七条の四まで(収賄,受託収賄及び事前収賄,第三者供賄,加重収賄及び事後収賄,あっせん収賄)の罪並びに第百九十五条第二項の罪に係る第百九十六条(特別公務員職権濫用等致死傷)の罪

(条約による国外犯)
第四条の二  第二条から前条までに規定するもののほか,この法律は,日本国外において,第二編の罪であって条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされているものを犯したすべての者に適用する。

(建造物等損壊及び同致死傷)
第二百六十条  他人の建造物又は艦船を損壊した者は,五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は,傷害の罪と比較して,重い刑により処断する。

(器物損壊等)
第二百六十一条  前三条に規定するもののほか,他人の物を損壊し,又は傷害した者は,三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

文化財保護法の関連条文

(指定)
第二十七条  文部科学大臣は,有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定することができる。
2  文部科学大臣は,重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので,たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定することができる。

第百九十五条  重要文化財を損壊し,き棄し,又は隠匿した者は,五年以下の懲役若しくは禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。
2  前項に規定する者が当該重要文化財の所有者であるときは,二年以下の懲役若しくは禁錮又は二十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

第百九十六条  史跡名勝天然記念物の現状を変更し,又はその保存に影響を及ぼす行為をして,これを滅失し,き損し,又は衰亡するに至らしめた者は,五年以下の懲役若しくは禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。
2  前項に規定する者が当該史跡名勝天然記念物の所有者であるときは,二年以下の懲役若しくは禁錮又は二十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

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