法律の周辺

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政治献金を禁止する訴訟上の和解の成立について

2008-06-01 21:01:32 | Weblog
asahi.com 五洋建設「もう政治献金しません」 株主代表訴訟で和解

 朝日の記事では五洋建設の訴訟参加の如何は明らかではないが,毎日には参加していた旨の記述がある。
プレスリリースの,概略,「原告,被告及び利害関係人である当社は和解に至った」は,五洋建設が原告株主・被告取締役間で成立した和解内容を承認した(会社法第850条参照)ということではなく,まさに和解の当事者になったと読むのが素直なところ。
第三者が訴訟上の和解に加わることができるかについては,伊藤眞教授の教科書(補訂版)に次のようにある。なお,この版は,平成13年12月の商法改正により,和解や補助参加の可否の整備等に係る株主代表訴訟制度の合理化がはかられる前のもの。

 訴訟上の和解は,当事者の訴訟行為にもとづくので,訴訟能力の存在や代理人への特別授権が要求される(32Ⅱ①・55Ⅱ②)。また,訴訟終了効の発生を目的とする以上,訴訟の両当事者が訴訟上の和解の主体として不可欠である。問題は,これに加えて第三者が和解当事者として加入しうるかどうかである。
たとえば,和解条項の内容として原告が被告に対して期限の猶予や債務の一部免除を与え,他方被告の債務の履行を確保するために,第三者を被告のための保証人とするなどの内容を考えれば,第三者の和解への加入を認めざるをえない。これらの第三者との関係では,もっぱら私法上の和解契約のみを考えるとすると,第三者に対しても確定判決と同一の効力が及ぶことの説明が困難になるので,第三者も訴訟上の和解の主体と考えるべきである。判例・学説とも,和解に第三者の加入を認めるが,学説は,訴訟係属が存在しない第三者との関係においては,和解は,起訴前の和解としての性質をもつという。しかし,第三者と当事者との間の和解が起訴前の和解の要件(275Ⅰ)を満たしているかについては疑問があり,起訴前の和解との説明は,比喩の域をでるものではない。むしろ,第三者に和解当事者としての地位を認め,当事者と第三者との間の訴訟物に関する合意は,それが調書に記載されることによって,訴訟上の和解の一部となり,執行力などの効力を与えられると解すべきである。



会社法の関連条文

(責任追及等の訴え)
第八百四十七条  六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては,その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は,株式会社に対し,書面その他の法務省令で定める方法により,発起人,設立時取締役,設立時監査役,役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。以下この条において同じ。)若しくは清算人の責任を追及する訴え,第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし,責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は,この限りでない。
2  公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については,同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては,その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは,「株主」とする。
3  株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは,当該請求をした株主は,株式会社のために,責任追及等の訴えを提起することができる。
4  株式会社は,第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合において,当該請求をした株主又は同項の発起人,設立時取締役,設立時監査役,役員等若しくは清算人から請求を受けたときは,当該請求をした者に対し,遅滞なく,責任追及等の訴えを提起しない理由を書面その他の法務省令で定める方法により通知しなければならない。
5  第一項及び第三項の規定にかかわらず,同項の期間の経過により株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には,第一項の株主は,株式会社のために,直ちに責任追及等の訴えを提起することができる。ただし,同項ただし書に規定する場合は,この限りでない。
6  第三項又は前項の責任追及等の訴えは,訴訟の目的の価額の算定については,財産権上の請求でない請求に係る訴えとみなす。
7  株主が責任追及等の訴えを提起したときは,裁判所は,被告の申立てにより,当該株主に対し,相当の担保を立てるべきことを命ずることができる。
8  被告が前項の申立てをするには,責任追及等の訴えの提起が悪意によるものであることを疎明しなければならない。

(訴えの管轄)
第八百四十八条  責任追及等の訴えは,株式会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。

(訴訟参加)
第八百四十九条  株主又は株式会社は,共同訴訟人として,又は当事者の一方を補助するため,責任追及等の訴えに係る訴訟に参加することができる。ただし,不当に訴訟手続を遅延させることとなるとき,又は裁判所に対し過大な事務負担を及ぼすこととなるときは,この限りでない。
2  株式会社が,取締役(監査委員を除く。),執行役及び清算人並びにこれらの者であった者を補助するため,責任追及等の訴えに係る訴訟に参加するには,次の各号に掲げる株式会社の区分に応じ,当該各号に定める者の同意を得なければならない。
一  監査役設置会社 監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては,各監査役)
二  委員会設置会社 各監査委員
3  株主は,責任追及等の訴えを提起したときは,遅滞なく,株式会社に対し,訴訟告知をしなければならない。
4  株式会社は,責任追及等の訴えを提起したとき,又は前項の訴訟告知を受けたときは,遅滞なく,その旨を公告し,又は株主に通知しなければならない。
5  公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については,同項中「公告し,又は株主に通知し」とあるのは,「株主に通知し」とする。

(和解)
第八百五十条  民事訴訟法第二百六十七条 の規定は,株式会社が責任追及等の訴えに係る訴訟における和解の当事者でない場合には,当該訴訟における訴訟の目的については,適用しない。ただし,当該株式会社の承認がある場合は,この限りでない。
2  前項に規定する場合において,裁判所は,株式会社に対し,和解の内容を通知し,かつ,当該和解に異議があるときは二週間以内に異議を述べるべき旨を催告しなければならない。
3  株式会社が前項の期間内に書面により異議を述べなかったときは,同項の規定による通知の内容で株主が和解をすることを承認したものとみなす。
4  第五十五条,第百二十条第五項,第四百二十四条(第四百八十六条第四項において準用する場合を含む。),第四百六十二条第三項(同項ただし書に規定する分配可能額を超えない部分について負う義務に係る部分に限る。),第四百六十四条第二項及び第四百六十五条第二項の規定は,責任追及等の訴えに係る訴訟における和解をする場合には,適用しない。

民事訴訟法の関連条文

(和解の試み)
第八十九条  裁判所は,訴訟がいかなる程度にあるかを問わず,和解を試み,又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる。

(和解条項案の書面による受諾)
第二百六十四条  当事者が遠隔の地に居住していることその他の事由により出頭することが困難であると認められる場合において,その当事者があらかじめ裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官から提示された和解条項案を受諾する旨の書面を提出し,他の当事者が口頭弁論等の期日に出頭してその和解条項案を受諾したときは,当事者間に和解が調ったものとみなす。

(裁判所等が定める和解条項)
第二百六十五条  裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は,当事者の共同の申立てがあるときは,事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。
2  前項の申立ては,書面でしなければならない。この場合においては,その書面に同項の和解条項に服する旨を記載しなければならない。
3  第一項の規定による和解条項の定めは,口頭弁論等の期日における告知その他相当と認める方法による告知によってする。
4  当事者は,前項の告知前に限り,第一項の申立てを取り下げることができる。この場合においては,相手方の同意を得ることを要しない。
5  第三項の告知が当事者双方にされたときは,当事者間に和解が調ったものとみなす。

(訴え提起前の和解)
第二百七十五条  民事上の争いについては,当事者は,請求の趣旨及び原因並びに争いの実情を表示して,相手方の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所に和解の申立てをすることができる。
2  前項の和解が調わない場合において,和解の期日に出頭した当事者双方の申立てがあるときは,裁判所は,直ちに訴訟の弁論を命ずる。この場合においては,和解の申立てをした者は,その申立てをした時に,訴えを提起したものとみなし,和解の費用は,訴訟費用の一部とする。
3  申立人又は相手方が第一項の和解の期日に出頭しないときは,裁判所は,和解が調わないものとみなすことができる。
4  第一項の和解については,第二百六十四条及び第二百六十五条の規定は,適用しない。

(和解調書等の効力)
第二百六十七条  和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは,その記載は,確定判決と同一の効力を有する。

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