法律の周辺

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生活保護費不正受給を理由とする告訴について

2008-06-19 21:22:25 | Weblog
生活保護費795万円不正受給の男を告訴 鹿角市 - さきがけ on the Web

 生活保護については,不正受給が後を絶たず,これが,新たな受給者の抑制に繋がるという悪循環を生んでいるとの指摘もなされている。
因みに,秋田市では,2年前,生活保護を申請したところ,就労可能として2回にわたり申請を却下された男性が,市役所駐車場に止めていた車の中で練炭自殺するという衝撃的な事件が起きている。

さて,生活保護法第78条には「不実の申請その他不正な手段により保護を受け,又は他人をして受けさせた者があるときは,保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は,その費用の全部又は一部を,その者から徴収することができる。」とあり,同第85条には「不実の申請その他不正な手段により保護を受け,又は他人をして受けさせた者は,三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。ただし,刑法 (明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは,刑法 による。」とある。本事案では,詐欺罪(刑法第246条)が「正条」ということなのだろう。
地方公共団体に虚偽の申立等をおこなって何らかの給付を受けた場合,詐欺罪が成立するかについては,詐欺罪の保護法益との関係で考え方が分かれるが,生活保護費の不正受給に詐欺罪を適用したものとしては高松高判S46.9.9がある。

なお,本件とは関係ないが,重度障害者が,入院した場合の費用のことなどを考え,生活保護費を原資に貯蓄したところ,福祉事務所長がこれを収入と認定し,生活保護費を減額したため,この処分の違法性が争われたものに秋田地判H5.4.23がある。当時,定時のローカルニュースでも取り上げられるなど,話題になった。

厚労省 生活保護制度の概要


日本国憲法の関連条文

第二十五条  すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2  国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

生活保護法の関連条文

(この法律の目的)
第一条  この法律は,日本国憲法第二十五条 に規定する理念に基き,国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長することを目的とする。

(無差別平等)
第二条  すべて国民は,この法律の定める要件を満たす限り,この法律による保護(以下「保護」という。)を,無差別平等に受けることができる。

(最低生活)
第三条  この法律により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。

(保護の補足性)
第四条  保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2  民法 (明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3  前二項の規定は,急迫した事由がある場合に,必要な保護を行うことを妨げるものではない。

(この法律の解釈及び運用)
第五条  前四条に規定するところは,この法律の基本原理であつて,この法律の解釈及び運用は,すべてこの原理に基いてされなければならない。

(用語の定義)
第六条  この法律において「被保護者」とは,現に保護を受けている者をいう。
2  この法律において「要保護者」とは,現に保護を受けているといないとにかかわらず,保護を必要とする状態にある者をいう。
3  この法律において「保護金品」とは,保護として給与し,又は貸与される金銭及び物品をいう。
4  この法律において「金銭給付」とは,金銭の給与又は貸与によつて,保護を行うことをいう。
5  この法律において「現物給付」とは,物品の給与又は貸与,医療の給付,役務の提供その他金銭給付以外の方法で保護を行うことをいう。

(必要即応の原則)
第九条  保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行うものとする。

(種類)
第十一条  保護の種類は,次のとおりとする。
一  生活扶助
二  教育扶助
三  住宅扶助
四  医療扶助
五  介護扶助
六  出産扶助
七  生業扶助
八  葬祭扶助
2  前項各号の扶助は,要保護者の必要に応じ,単給又は併給として行われる。

(民生委員の協力)
第二十二条  民生委員法 (昭和二十三年法律第百九十八号)に定める民生委員は,この法律の施行について,市町村長,福祉事務所長又は社会福祉主事の事務の執行に協力するものとする。

(指導及び指示)
第二十七条  保護の実施機関は,被保護者に対して,生活の維持,向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。
2  前項の指導又は指示は,被保護者の自由を尊重し,必要の最少限度に止めなければならない。
3  第一項の規定は,被保護者の意に反して,指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。

(相談及び助言)
第二十七条の二  保護の実施機関は,要保護者から求めがあつたときは,要保護者の自立を助長するために,要保護者からの相談に応じ,必要な助言をすることができる。

(調査及び検診)
第二十八条  保護の実施機関は,保護の決定又は実施のため必要があるときは,要保護者の資産状況,健康状態その他の事項を調査するために,要保護者について,当該職員に,その居住の場所に立ち入り,これらの事項を調査させ,又は当該要保護者に対して,保護の実施機関の指定する医師若しくは歯科医師の検診を受けるべき旨を命ずることができる。
2  前項の規定によつて立入調査を行う当該職員は,厚生労働省令の定めるところにより,その身分を示す証票を携帯し,且つ,関係人の請求があるときは,これを呈示しなければならない。
3  第一項の規定による立入調査の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
4  保護の実施機関は,要保護者が第一項の規定による立入調査を拒み,妨げ,若しくは忌避し,又は医師若しくは歯科医師の検診を受けるべき旨の命令に従わないときは,保護の開始若しくは変更の申請を却下し,又は保護の変更,停止若しくは廃止をすることができる。

(調査の嘱託及び報告の請求)
第二十九条  保護の実施機関及び福祉事務所長は,保護の決定又は実施のために必要があるときは,要保護者又はその扶養義務者の資産及び収入の状況につき,官公署に調査を嘱託し,又は銀行,信託会社,要保護者若しくはその扶養義務者の雇主その他の関係人に,報告を求めることができる。

(譲渡禁止)
第五十九条  被保護者は,保護を受ける権利を譲り渡すことができない。

(生活上の義務)
第六十条  被保護者は,常に,能力に応じて勤労に励み,支出の節約を図り,その他生活の維持,向上に努めなければならない。

(届出の義務)
第六十一条  被保護者は,収入,支出その他生計の状況について変動があつたとき,又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは,すみやかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

(指示等に従う義務)
第六十二条  被保護者は,保護の実施機関が,第三十条第一項ただし書の規定により,被保護者を救護施設,更生施設若しくはその他の適当な施設に入所させ,若しくはこれらの施設に入所を委託し,若しくは私人の家庭に養護を委託して保護を行うことを決定したとき,又は第二十七条の規定により,被保護者に対し,必要な指導又は指示をしたときは,これに従わなければならない。
2  保護施設を利用する被保護者は,第四十六条の規定により定められたその保護施設の管理規程に従わなければならない。
3  保護の実施機関は,被保護者が前二項の規定による義務に違反したときは,保護の変更,停止又は廃止をすることができる。
4  保護の実施機関は,前項の規定により保護の変更,停止又は廃止の処分をする場合には,当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては,あらかじめ,当該処分をしようとする理由,弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。
5  第三項の規定による処分については,行政手続法第三章 (第十二条及び第十四条を除く。)の規定は,適用しない。

(費用返還義務)
第六十三条  被保護者が,急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたときは,保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して,すみやかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

第七十八条  不実の申請その他不正な手段により保護を受け,又は他人をして受けさせた者があるときは,保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は,その費用の全部又は一部を,その者から徴収することができる。

(罰則)
第八十五条  不実の申請その他不正な手段により保護を受け,又は他人をして受けさせた者は,三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。ただし,刑法 (明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは,刑法 による。

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