法律の周辺

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首都機能移転の現実味について

2008-01-29 08:56:57 | Weblog
毎日jp 首都機能誘致:愛知,岐阜が活動打ち切りへ…現実味薄れ

 国会等の移転ホームページには「早わかり!国会等の移転(Q&A)」が掲載されている。
その中の 「なぜ移転するのですか?」には,国会等の移転には,主として,「国政全般の改革の促進」「東京一極集中の是正」「災害対応力の強化」という3つの意義・効果が認められるから,とある。この辺りは「国会等の移転に関する法律」の前文からも読み取ることができる。
愛知,岐阜両県の活動打ち切りは国会等(首都機能)の移転に現実味が薄れてきていることを理由としているようだ。しかし,候補地県の思惑はさておき,国会等の移転に係る上記3つの意義・効果に期待されるところは以前にも増して大きくなっているのではなかろうか。
「国会等の移転に関する法律」の施行は平成4年12月とか。この法律の施行後,我が国は阪神・淡路大震災という未曾有の震災を経験している(同法前文第3段落参照)。
件の法の前文にも「このような状況にかんがみ,一極集中を排除し,多極分散型国土の形成に資するとともに,地震等の大規模災害に対する脆弱性を克服するため,世界都市としての東京都の整備に配慮しつつ,国会等の東京圏外への移転の具体化について積極的に検討を進めることは,我が国が新しい社会を建設するため,極めて緊要なことである。」とある。
最後になったが,記事からは,もう1つの候補地である栃木,福島両県の活動状況がどのようになっているかは明らかではない。

国交省 国会等の移転ホームページ


「国会等の移転に関する法律」の関連条文

 我が国は,国民のたゆみない努力により今次の大戦による荒廃の中から立ち上がり,かつてない経済的繁栄を築き上げてきた。そして今日,精神的充足を求める気運の増大,多様な地域文化をはぐくむことや全世界との連携を強化することについての認識の高まりに見られるように,時代は大きく変わろうとしている。
 しかるに,我が国の現状は,政治,経済,文化等の中枢機能が東京圏に過度に集中したことにより,人口の過密,地価の高騰,生活環境の悪化,大規模災害時における危険の増大等の問題が深刻化する一方で,地方における過疎,経済的停滞,文化の画一化等の問題が生じるに至っている。これらの諸問題は,単に国土の適正な利用を図るという観点からのみでなく,時代の変化に対応した新しい社会を築く上で,大きな桎梏となっている。
 とりわけ,阪神・淡路大震災による未曾有の被害の発生により,大規模災害時において災害対策の中枢機能を確保することの重要性について改めて認識したところである。
 このような状況にかんがみ,一極集中を排除し,多極分散型国土の形成に資するとともに,地震等の大規模災害に対する脆弱性を克服するため,世界都市としての東京都の整備に配慮しつつ,国会等の東京圏外への移転の具体化について積極的に検討を進めることは,我が国が新しい社会を建設するため,極めて緊要なことである。
 もとより,国会等の移転のみで問題が解決するものではなく,これと併せ,地方分権その他の行財政の改革等を推進することにより,自主的で創造的な地域社会の実現を図っていくことが肝要であり,また国会等の移転をそのような改革の契機として活用していくことが重要であると確信する。
 ここに,国会等の移転を目指して,その具体化の推進のために積極的な検討を行うべきことを明らかにし,そのための国の責務,基本指針,移転先候補地の選定体制等について定めるため,この法律を制定する。

(国の責務)
第一条  国は,国会並びにその活動に関連する行政に関する機能及び司法に関する機能のうち中枢的なもの(以下「国会等」という。)の東京圏以外の地域への移転(以下「国会等の移転」という。)の具体化に向けて積極的な検討を行う責務を有する。

(定義)
第二条  この法律において「多極分散型国土」とは,多極分散型国土形成促進法 (昭和六十三年法律第八十三号)第一条 に規定する多極分散型国土をいう。
2  この法律において「東京圏」とは,多極分散型国土形成促進法第二十二条第一項 に規定する東京圏をいう。

第三条  国は,国会等の移転について検討を行うに当たっては,広く国民の意見を聴き,その合意形成を図るとともに,この章に定めるところにより,広範かつ多角的にこれを行うものとする。

第四条  地方分権の総合的かつ計画的な推進,行政の各般にわたる民間活動に係る規制の改善の推進,行政の制度及び運営の改善の推進等行財政の抜本的な改革と的確に関連付けるものとする。

第五条  国会等の移転と多極分散型国土の形成の促進に関する施策との一体性を確保するものとする。

第六条  経済及び文化における国際的中枢機能並びに良好な居住環境等を備える都市としての東京都の整備との調和を図るとともに,国会等の移転先(以下「移転先」という。)の新都市と東京都との機能面での連携を確保するものとする。

第七条  移転先について,災害に対する安全性,地形の良好性,水の供給の安定性,交通の利便性,土地取得の容易性等の条件を配慮するものとする。

第八条  移転先の新都市が,交通通信体系の整備等により,世界及び我が国の各地域との交流が容易であり,かつ,自然環境と調和し,良好な居住環境等を備えた都市となるようにするものとする。

第九条  国会等の移転の計画は,社会経済情勢の変化に弾力的に対応することができる段階的なものとするものとする。

第十条  移転先の新都市の整備に際し,適切な土地対策を講じるものとする。

第十一条  地震等の大規模災害に対処する上での緊急性,東京都の災害対策の充実等に配慮するものとする。

多極分散型国土形成促進法の関連条文

(目的)
第一条  この法律は,人口及び行政,経済,文化等に関する機能が過度に集中している地域からこれらの機能の分散を図り,地方の振興開発と大都市地域の秩序ある整備を推進し,並びに住宅等の供給と地域間の交流を促進することにより,人口及びこれらの機能が特定の地域に過度に集中することなくその全域にわたり適正に配置され,それぞれの地域が有機的に連携しつつその特性を生かして発展している国土(以下「多極分散型国土」という。)の形成を促進し,もつて住民が誇りと愛着を持つことのできる豊かで住みよい地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(施策における配慮)
第二条  国及び地方公共団体は,この法律に規定する多極分散型国土の形成の促進に関する施策の策定及び実施に当たつては,地域における創意工夫を尊重し,並びに適正かつ合理的な土地利用の確保,環境の保全,国土の保全及び災害の防止に配慮するとともに,民間事業者,地域住民等の理解と協力を得るよう努めなければならない。

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