法律の周辺

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社会奉仕を義務づける制度の法的位置付けについて

2008-01-07 19:59:26 | Weblog
清掃や落書き消去,判決に「社会奉仕」導入…政府方針 YOMIURI ONLINE

 記事には,11回の審議で,執行猶予の条件として導入することでほぼ意見が一致,とある。
社会奉仕を義務づける制度の法的位置付けについては,昨年11月9日開催の「法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会」第10回会議の配布資料に,当面考えられるものとして以下の5つがあげられていた。

① 独立の刑罰
② 短期自由刑の代替刑
③ 罰金刑の代替執行手段
④ 起訴猶予・執行猶予・宣告猶予の条件
⑤ 保護観察の遵守事項とするなど,保護観察の一内容とするもの

結論として,④説中の「執行猶予の条件」説が採られたということか。
なお,現行の執行猶予者保護観察法第5条には,保護観察に付された者が遵守すべき事項のひとつとして「善行を保持すること。」(第1号)がある。

法務省 法制審議会被収容人員適正化方策に関する部会 第10回会議(平成19年11月9日開催)


刑法の関連条文

(刑の種類)
第九条  死刑,懲役,禁錮,罰金,拘留及び科料を主刑とし,没収を付加刑とする。

(刑の軽重)
第十条  主刑の軽重は,前条に規定する順序による。ただし,無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑とし,有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるときも,禁錮を重い刑とする。
2  同種の刑は,長期の長いもの又は多額の多いものを重い刑とし,長期又は多額が同じであるときは,短期の長いもの又は寡額の多いものを重い刑とする。
3  二個以上の死刑又は長期若しくは多額及び短期若しくは寡額が同じである同種の刑は,犯情によってその軽重を定める。

(執行猶予)
第二十五条  次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは,情状により,裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間,その執行を猶予することができる。
一  前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け,情状に特に酌量すべきものがあるときも,前項と同様とする。ただし,次条第一項の規定により保護観察に付せられ,その期間内に更に罪を犯した者については,この限りでない。

(保護観察)
第二十五条の二  前条第一項の場合においては猶予の期間中保護観察に付することができ,同条第二項の場合においては猶予の期間中保護観察に付する。
2  保護観察は,行政官庁の処分によって仮に解除することができる。
3  保護観察を仮に解除されたときは,前条第二項ただし書及び第二十六条の二第二号の規定の適用については,その処分を取り消されるまでの間は,保護観察に付せられなかったものとみなす。

(執行猶予の必要的取消し)
第二十六条  次に掲げる場合においては,刑の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし,第三号の場合において,猶予の言渡しを受けた者が第二十五条第一項第二号に掲げる者であるとき,又は次条第三号に該当するときは,この限りでない。
一  猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ,その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
二  猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ,その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
三  猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。

(執行猶予の裁量的取消し)
第二十六条の二  次に掲げる場合においては,刑の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。
一  猶予の期間内に更に罪を犯し,罰金に処せられたとき。
二  第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず,その情状が重いとき。
三  猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ,その執行を猶予されたことが発覚したとき。

(他の刑の執行猶予の取消し)
第二十六条の三  前二条の規定により禁錮以上の刑の執行猶予の言渡しを取り消したときは,執行猶予中の他の禁錮以上の刑についても,その猶予の言渡しを取り消さなければならない。

(猶予期間経過の効果)
第二十七条  刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは,刑の言渡しは,効力を失う。

刑事訴訟法の関連条文

第三百三十三条  被告事件について犯罪の証明があつたときは,第三百三十四条の場合を除いては,判決で刑の言渡をしなければならない。
2  刑の執行猶予は,刑の言渡しと同時に,判決でその言渡しをしなければならない。刑法第二十五条の二第一項 の規定により保護観察に付する場合も,同様である。

第三百四十九条  刑の執行猶予の言渡を取り消すべき場合には,検察官は,刑の言渡を受けた者の現在地又は最後の住所地を管轄する地方裁判所,家庭裁判所又は簡易裁判所に対しその請求をしなければならない。
2  刑法第二十六条の二第二号 の規定により刑の執行猶予の言渡しを取り消すべき場合には,前項の請求は,保護観察所の長の申出に基づいてこれをしなければならない。

執行猶予者保護観察法の関連条文

(この法律の目的)
第一条  この法律は,刑法 (明治四十年法律第四十五号)第二十五条の二第一項 の規定により保護観察に付された者がその期間中遵守しなければならない事項を定めるとともに,保護観察の方法及びその運用の基準等を定めることによつて,保護観察の適正な実施を図り,もつて,保護観察に付された者の速やかな更生に資することを目的とする。

(保護観察の方法と運用の基準)
第二条  保護観察は,本人に本来自助の責任があることを認めてこれを補導援護するとともに,第五条第一項に規定する事項を遵守するように指導監督することによつて行うものとし,その実施に当つては,画一的に行うことを避け,本人の年齢,経歴,職業,心身の状況,家庭,交友その他の環境等を充分に考慮して,その者にもつともふさわしい方法を採らなければならない。

(保護観察をつかさどる機関)
第三条  保護観察は,保護観察に付されている者の住居地(住居がないか,又は明らかでないときは,現在地又は明らかである最後の住居地若しくは所在地とする。)を管轄する保護観察所がつかさどる。

(保護観察開始前の環境調整)
第四条  保護観察所の長は,刑法第二十五条の二第一項 の規定により保護観察に付する旨の言渡しがあつて,その裁判の確定前本人から申出があつたときは,保護観察の開始を円滑ならしめるため,その者の境遇その他環境の状態の調整を図ることができる。

(遵守すべき事項)
第五条  保護観察に付された者は,速やかに,一定の住居を定め,その地を管轄する保護観察所の長にこれを届け出るほか,保護観察に付されている期間中,次に掲げる事項及び次項の規定により定められた特別の事項を遵守しなければならない。
一  善行を保持すること。
二  住居を移転し,又は七日以上の旅行をするときは,あらかじめ,保護観察所の長の許可を受けること。
2  保護観察所の長は,刑法第二十五条の二第一項 の規定により保護観察に付する旨の言渡しがあつたときは,法務省令で定めるところにより,その言渡しをした裁判所の意見を聴き,これに基づいて,その者が保護観察の期間中遵守すべき特別の事項を定めなければならない。
3  保護観察所の長は,前項の特別の事項を定めたときは,本人に対し,書面で,保護観察の期間中遵守すべき事項を指示し,署名又は押印をもつて,その事項を遵守する旨を誓約させなければならない。ただし,本人が重病又は重傷である場合には,この限りでない。

(補導援護)
第六条  補導援護を行うにあたつては,公共の衛生福祉その他の施設にあつせんする等の方法によつて,本人が就職し,又は必要な職業の補導,医療,宿所等を得ることを援助し,その他本人が更生するために必要な助言,連絡その他の措置をとるものとする。
2  前項の措置によつては必要な援護を受けることができないため,本人の更生が妨げられるおそれがある場合には,本人に対し,金品を給与し,又は貸与し,宿泊所を供与し,教養,訓練,医療又は就職を助け,職業を補導し,社会生活に適応させるために必要な生活指導を行い,環境の改善又は調整を図る等更生のために必要な援護を行うことができる。
3  前項の援護は,更生保護事業法 (平成七年法律第八十六号)の規定により更生保護事業を営む者その他の適当な者に委託して行うことができる。

(指導監督)
第七条  指導監督を行うにあたつては,本人の更生の意欲を助長することに努めるとともに,本人が遵守しなければならない事項の範囲内で,その性格,環境,犯罪の動機及び原因等から見て,違反のおそれが多いと思われる具体的事項を見出してこれを本人に自覚させた上,その遵守について適切な指示を与える等,本人をして遵守事項を遵守させるために必要な措置をとるものとする。

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