法律の周辺

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高齢者虐待防止法違反による逮捕について

2008-01-21 20:51:32 | Weblog
「高齢者虐待防止法」違反で初逮捕,調査に抵抗の43歳女 YOMIURI ONLINE

 件の女性,家に入るなら令状を見せろと抵抗したとのこと。
しかし,高齢者虐待の有無の立入調査は犯罪捜査を目的としておこなわれるものではない。高齢者虐待防止法第11条にも,立入調査する側に向けられた行為規範ではあるが,第3項に「第一項の規定による立入り及び調査又は質問を行う権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。」とある。立入が高齢者虐待防止法に基づくもので,虐待の有無の調査・質問を目的とする限り,令状は必要ない。
ただ,同条第2項には「前項の規定による立入り及び調査又は質問を行う場合においては,当該職員は,その身分を示す証明書を携帯し,関係者の請求があるときは,これを提示しなければならない。」とある。西東京市の職員,身分証明書を携帯していたことだろう。
なお,高齢者虐待防止法に基づく立入調査では,立入調査が拒否された場合でも鍵やドアを壊して立ち入ることはできない(刑訴法第111条参照)。
女性が取り押さえられたのは,家には誰も入れないとして玄関の鍵を閉めようとしたところとか。まさに,「(虐待が疑われる父親の安全を確認するには)今を措いて他にない」というタイミングだったようだ。

厚労省 高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律の施行を踏まえた高齢者虐待事案への適切な対応について


「高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」の関連条文

(目的)
第一条  この法律は,高齢者に対する虐待が深刻な状況にあり,高齢者の尊厳の保持にとって高齢者に対する虐待を防止することが極めて重要であること等にかんがみ,高齢者虐待の防止等に関する国等の責務,高齢者虐待を受けた高齢者に対する保護のための措置,養護者の負担の軽減を図ること等の養護者に対する養護者による高齢者虐待の防止に資する支援(以下「養護者に対する支援」という。)のための措置等を定めることにより,高齢者虐待の防止,養護者に対する支援等に関する施策を促進し,もって高齢者の権利利益の擁護に資することを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において「高齢者」とは,六十五歳以上の者をいう。
2  この法律において「養護者」とは,高齢者を現に養護する者であって養介護施設従事者等(第五項第一号の施設の業務に従事する者及び同項第二号の事業において業務に従事する者をいう。以下同じ。)以外のものをいう。
3  この法律において「高齢者虐待」とは,養護者による高齢者虐待及び養介護施設従事者等による高齢者虐待をいう。
4  この法律において「養護者による高齢者虐待」とは,次のいずれかに該当する行為をいう。
一  養護者がその養護する高齢者について行う次に掲げる行為
イ 高齢者の身体に外傷が生じ,又は生じるおそれのある暴行を加えること。
ロ 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置,養護者以外の同居人によるイ,ハ又はニに掲げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること。
ハ 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
ニ 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。
二  養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。
5  この法律において「養介護施設従事者等による高齢者虐待」とは,次のいずれかに該当する行為をいう。
一  老人福祉法 (昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三 に規定する老人福祉施設若しくは同法第二十九条第一項 に規定する有料老人ホーム又は介護保険法 (平成九年法律第百二十三号)第八条第二十項 に規定する地域密着型介護老人福祉施設,同条第二十四項 に規定する介護老人福祉施設,同条第二十五項 に規定する介護老人保健施設,同条第二十六項 に規定する介護療養型医療施設若しくは同法第百十五条の三十九第一項 に規定する地域包括支援センター(以下「養介護施設」という。)の業務に従事する者が,当該養介護施設に入所し,その他当該養介護施設を利用する高齢者について行う次に掲げる行為
イ 高齢者の身体に外傷が生じ,又は生じるおそれのある暴行を加えること。
ロ 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置その他の高齢者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。
ハ 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
ニ 高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。
ホ 高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。
二  老人福祉法第五条の二第一項 に規定する老人居宅生活支援事業又は介護保険法第八条第一項 に規定する居宅サービス事業,同条第十四項 に規定する地域密着型サービス事業,同条第二十一項 に規定する居宅介護支援事業,同法第八条の二第一項 に規定する介護予防サービス事業,同条第十四項 に規定する地域密着型介護予防サービス事業若しくは同条第十八項 に規定する介護予防支援事業(以下「養介護事業」という。)において業務に従事する者が,当該養介護事業に係るサービスの提供を受ける高齢者について行う前号イからホまでに掲げる行為

(国及び地方公共団体の責務等)
第三条  国及び地方公共団体は,高齢者虐待の防止,高齢者虐待を受けた高齢者の迅速かつ適切な保護及び適切な養護者に対する支援を行うため,関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間の連携の強化,民間団体の支援その他必要な体制の整備に努めなければならない。
2  国及び地方公共団体は,高齢者虐待の防止及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護並びに養護者に対する支援が専門的知識に基づき適切に行われるよう,これらの職務に携わる専門的な人材の確保及び資質の向上を図るため,関係機関の職員の研修等必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
3  国及び地方公共団体は,高齢者虐待の防止及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護に資するため,高齢者虐待に係る通報義務,人権侵犯事件に係る救済制度等について必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。

(国民の責務)
第四条  国民は,高齢者虐待の防止,養護者に対する支援等の重要性に関する理解を深めるとともに,国又は地方公共団体が講ずる高齢者虐待の防止,養護者に対する支援等のための施策に協力するよう努めなければならない。

(高齢者虐待の早期発見等)
第五条  養介護施設,病院,保健所その他高齢者の福祉に業務上関係のある団体及び養介護施設従事者等,医師,保健師,弁護士その他高齢者の福祉に職務上関係のある者は,高齢者虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し,高齢者虐待の早期発見に努めなければならない。
2  前項に規定する者は,国及び地方公共団体が講ずる高齢者虐待の防止のための啓発活動及び高齢者虐待を受けた高齢者の保護のための施策に協力するよう努めなければならない。

(養護者による高齢者虐待に係る通報等)
第七条  養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は,当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は,速やかに,これを市町村に通報しなければならない。
2  前項に定める場合のほか,養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は,速やかに,これを市町村に通報するよう努めなければならない。
3  刑法 (明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は,前二項の規定による通報をすることを妨げるものと解釈してはならない。

第八条  市町村が前条第一項若しくは第二項の規定による通報又は次条第一項に規定する届出を受けた場合においては,当該通報又は届出を受けた市町村の職員は,その職務上知り得た事項であって当該通報又は届出をした者を特定させるものを漏らしてはならない。

(通報等を受けた場合の措置)
第九条  市町村は,第七条第一項若しくは第二項の規定による通報又は高齢者からの養護者による高齢者虐待を受けた旨の届出を受けたときは,速やかに,当該高齢者の安全の確認その他当該通報又は届出に係る事実の確認のための措置を講ずるとともに,第十六条の規定により当該市町村と連携協力する者(以下「高齢者虐待対応協力者」という。)とその対応について協議を行うものとする。
2  市町村又は市町村長は,第七条第一項若しくは第二項の規定による通報又は前項に規定する届出があった場合には,当該通報又は届出に係る高齢者に対する養護者による高齢者虐待の防止及び当該高齢者の保護が図られるよう,養護者による高齢者虐待により生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認められる高齢者を一時的に保護するため迅速に老人福祉法第二十条の三 に規定する老人短期入所施設等に入所させる等,適切に,同法第十条の四第一項 若しくは第十一条第一項 の規定による措置を講じ,又は,適切に,同法第三十二条 の規定により審判の請求をするものとする。

(立入調査)
第十一条  市町村長は,養護者による高齢者虐待により高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認めるときは,介護保険法第百十五条の三十九第二項 の規定により設置する地域包括支援センターの職員その他の高齢者の福祉に関する事務に従事する職員をして,当該高齢者の住所又は居所に立ち入り,必要な調査又は質問をさせることができる。
2  前項の規定による立入り及び調査又は質問を行う場合においては,当該職員は,その身分を示す証明書を携帯し,関係者の請求があるときは,これを提示しなければならない。
3  第一項の規定による立入り及び調査又は質問を行う権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(警察署長に対する援助要請等)
第十二条  市町村長は,前条第一項の規定による立入り及び調査又は質問をさせようとする場合において,これらの職務の執行に際し必要があると認めるときは,当該高齢者の住所又は居所の所在地を管轄する警察署長に対し援助を求めることができる。
2  市町村長は,高齢者の生命又は身体の安全の確保に万全を期する観点から,必要に応じ適切に,前項の規定により警察署長に対し援助を求めなければならない。
3  警察署長は,第一項の規定による援助の求めを受けた場合において,高齢者の生命又は身体の安全を確保するため必要と認めるときは,速やかに,所属の警察官に,同項の職務の執行を援助するために必要な警察官職務執行法 (昭和二十三年法律第百三十六号)その他の法令の定めるところによる措置を講じさせるよう努めなければならない。

第三十条  正当な理由がなく,第十一条第一項の規定による立入調査を拒み,妨げ,若しくは忌避し,又は同項の規定による質問に対して答弁をせず,若しくは虚偽の答弁をし,若しくは高齢者に答弁をさせず,若しくは虚偽の答弁をさせた者は,三十万円以下の罰金に処する。

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