法律の周辺

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医療刑務所による認知症受刑者の受け入れ拒否について

2008-01-05 18:34:35 | Weblog
毎日jp 認知症受刑者:高齢化で激増 医療刑務所は受け入れ拒否

 高齢化の波は刑務所にも及んでいるようだ。

さて,記事には「「懲役」ができない」とある。この意味,今ひとつはっきりしない。
刑訴法第480条には「懲役,禁錮又は拘留の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは,刑の言渡をした裁判所に対応する検察庁の検察官又は刑の言渡を受けた者の現在地を管轄する地方検察庁の検察官の指揮によつて,その状態が回復するまで執行を停止する。」とある。
記事には,福岡刑務所に収監中の70歳代の認知症の受刑者は,窃盗をしたことを覚えておらず,係官との会話も成立しない,とあるから,普通に考えれば,この受刑者の場合,刑の執行はできない状態にあるように思われる。
なお,同第314条第1項には「被告人が心神喪失の状態に在るときは,検察官及び弁護人の意見を聴き,決定で,その状態の続いている間公判手続を停止しなければならない。但し,無罪,免訴,刑の免除又は公訴棄却の裁判をすべきことが明らかな場合には,被告人の出頭を待たないで,直ちにその裁判をすることができる。」とある。

判例検索システム 平成7年02月28日 窃盗被告事件


刑事訴訟法の関連条文

第二十八条  刑法 (明治四十年法律第四十五号)第三十九条 又は第四十一条 の規定を適用しない罪に当たる事件について,被告人又は被疑者が意思能力を有しないときは,その法定代理人(親権者が二人あるときは,各自。以下同じ。)が,訴訟行為についてこれを代理する。

第三百十四条  被告人が心神喪失の状態に在るときは,検察官及び弁護人の意見を聴き,決定で,その状態の続いている間公判手続を停止しなければならない。但し,無罪,免訴,刑の免除又は公訴棄却の裁判をすべきことが明らかな場合には,被告人の出頭を待たないで,直ちにその裁判をすることができる。
2  被告人が病気のため出頭することができないときは,検察官及び弁護人の意見を聴き,決定で,出頭することができるまで公判手続を停止しなければならない。但し,第二百八十四条及び第二百八十五条の規定により代理人を出頭させた場合は,この限りでない。
3  犯罪事実の存否の証明に欠くことのできない証人が病気のため公判期日に出頭することができないときは,公判期日外においてその取調をするのを適当と認める場合の外,決定で,出頭することができるまで公判手続を停止しなければならない。
4  前三項の規定により公判手続を停止するには,医師の意見を聴かなければならない。

第四百七十九条  死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは,法務大臣の命令によつて執行を停止する。
2  死刑の言渡を受けた女子が懐胎しているときは,法務大臣の命令によつて執行を停止する。
3  前二項の規定により死刑の執行を停止した場合には,心神喪失の状態が回復した後又は出産の後に法務大臣の命令がなければ,執行することはできない。
4  第四百七十五条第二項の規定は,前項の命令についてこれを準用する。この場合において,判決確定の日とあるのは,心神喪失の状態が回復した日又は出産の日と読み替えるものとする。

第四百八十条  懲役,禁錮又は拘留の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは,刑の言渡をした裁判所に対応する検察庁の検察官又は刑の言渡を受けた者の現在地を管轄する地方検察庁の検察官の指揮によつて,その状態が回復するまで執行を停止する。

第四百八十一条  前条の規定により刑の執行を停止した場合には,検察官は,刑の言渡を受けた者を監護義務者又は地方公共団体の長に引き渡し,病院その他の適当な場所に入れさせなければならない。
2  刑の執行を停止された者は,前項の処分があるまでこれを刑事施設に留置し,その期間を刑期に算入する。

法務省設置法の関連条文

(目的)
第一条 この法律は,法務省の設置並びに任務及びこれを達成するため必要となる明確な範囲の所掌事務を定めるとともに,その所掌する行政事務を能率的に遂行するため必要な組織を定めることを目的とする。

(任務)
第三条 法務省は,基本法制の維持及び整備,法秩序の維持,国民の権利擁護,国の利害に関係のある争訟の統一的かつ適正な処理並びに出入国の公正な管理を図ることを任務とする。

第八条 本省に,次の施設等機関を置く。
刑務所,少年刑務所及び拘置所
少年院
少年鑑別所
婦人補導院
入国者収容所
2 前項の刑務所,少年刑務所及び拘置所は,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成十七年法律第五十号)の規定による刑事施設として置かれるものとする。

(刑務所,少年刑務所及び拘置所)
第九条 刑務所,少年刑務所及び拘置所は,次に掲げる事務をつかさどる。
一 懲役,禁錮又は拘留の刑の執行のため拘置される者,刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定により勾留される者及び死刑の言渡しを受けて拘置される者を収容し,これらの者に対し必要な処遇を行うこと。
二 前号に規定する者のほか,法令の規定により刑事施設その他これに附置する施設に収容すべきこととされる者及び収容することができることとされる者を収容すること。
2 法務大臣は,刑務所,少年刑務所又は拘置所の所掌事務を分掌させるため,所要の地に,刑務所,少年刑務所又は拘置所の支所を設けることができる。
3 刑務所,少年刑務所及び拘置所並びにそれらの支所の名称,位置及び内部組織は,法務省令で定める。

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