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フィギュアスケートの、シニアの年齢下限を引き上げるべきかの議論について

2018-06-05 | フィギュアスケート全般について

2018年6月5日追記: 年齢制限引き上げ問題は、ISU総会で、そもそも議題から外れることとなったとのこと。こちらの記事より 必要な賛成数が得られなかったことと、議論がまだ成熟していない、というのがその理由のようです。

 

ロシアのフィギュアスケート連盟が、この最低年齢の引き上げに反対であることを表明したようです。こちらの翻訳記事より (翻訳感謝です!)

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シニアへ移行できる年齢下限を、現行の15歳から、17、または18歳に引き上げるべきだ、という議論が起きています。

 

The Answer というところが出してきた、この年齢下限引き上げ問題に関する記事で、プルシェンコさんが言ったとされる内容が、元の記事と比べて、一部がカットされているがゆえに、明らかにニュアンスが異なってしまった印象になっています。

The Answer が書いてきた記事は、こちら。

それと比べて、元の記事を全て翻訳して下さったものは、こちら。

 

読み比べてみればわかると思いますが、元の記事では、プルシェンコさんはエテリコーチの批判などはしていないし、それどころか、最近のエテリ組のジュニア女子が成し遂げた4回転の実績についても確実に評価していて、さらに、ザギトワ選手については、ごく一部にだけ存在する天才として高く評価していて、大人のスケートだったと述べています。

(プルシェンコさんは、前からザギトワ選手を高く評価していますね。)

 

さらに、「自分も今後、ジュニアの女子選手たちに4回転を教える」と明言していて、スポーツである以上、「この方向で前進することが必要なのだ」とも話していて、女子においては困難が伴うものの、決して後退してはならないという考えをも、きちんと強調しておられます。

これは今までプルシェンコさんが一貫して主張してきたことと、全く同じで、変わっていないわけです。

プルシェンコさんは、今までご自身が身をもって示してこられたように、

「フィギュアスケートの選手たちは 長く滑らなければならないという考えに賛成している」だけであって、同時に、「フィギュアスケートは進歩しなければならない。われわれは4回転ジャンプからはどこにも逃げられない。全てがここに至る。」とまで語っていて、この点も変わっていません。

上の、The Answer の記事は、これらの一部がカットされてしまっているために、元の記事とは、かなりニュアンスが異なって伝わる内容になっています。

 

ここの出してくる記事は、少し前に出された、メドベデワ選手の移籍問題についても、オーサーコーチが羽生選手に事前に確認して、羽生選手が「問題ない」と語った、などと書いていましたけど、

少なくとも元の英語の記事にはそのような記述は一つもなく、元の英語では、羽生選手がただ、「自分はクリケットで競技を継続するつもりである」という意思を(時期は不明ながら)既にコーチに伝えてあったことの説明が後ろにつけ加わっていただけでした。

ここの記事は以前も、プルシェンコさんがロシアの有望な女子選手たちの名前を挙げた時に、元の英語の記事では、プルシェンコさんの挙げた複数の名前の中に、あげられていなかったメドベデワ選手の名前が勝手に付け加えられていたことがあったりして、ただの翻訳ミスや訳の勘違いならまだしも、「明らかに書かれていない言葉」がなぜか勝手に付け加えられていて、元の記事とは違った内容で日本で拡散されていくことに、私は、(おかしいな…)と思っていました。

他にも、元の記事と違っている、ということは、私の見てきた限り、何度も起きています。

自分たちが独自取材して、新たに確認したことが加えられているというのならまだわかりますが、そうではなくて、元の記事のただの翻訳からの紹介に過ぎないのなら、そこに付け加えられた内容は、自分たちの意見だったり、自分たちの憶測や願望だったり、自分の推測だったりすることを、きちんとわかるように明記すべきであって、誰かがまるでそう言ったかのように書いてしまうことは、非常に問題だと思います。

 

日本のマスコミではこういうことが非常に多くて、先日も、ザギトワ選手がある番組で、「アニメは小さい頃は見ていたけれども、大きくなった最近は全く見ていないです」と映像付きでハッキリと明言していたのに、

すぐ後で放送された日本の別の番組では、勝手に(ザギトワ選手が)アニメ好きということにされて、そのような説明のナレーションがつけ加わって流されていたのを見て私は驚きましたし、

本当に呆れるほど、自分たちの利益やどこかの宣伝のために、選手に何かを強要したり強制したり、お願いしたり、強制できなければ勝手にねつ造コメントやナレーションをつけ加えたりしてまで宣伝に利用するのは、いい加減やめていただきいと強く思います。

 

少なくとも、こういう意図的な誘導や、一部のねつ造は今後も繰り返されるべきではないし、

私たちは、そういうことが日常的に起こっている可能性をも考慮しながら、何事も考えていかなければならないと思います。

 

最近も、羽生選手の名前を利用した「ゲスの極みコンテスト」が、ねつ造や人権侵害の前科持ちの雑誌間で散々行われていましたけど、その記事の中で、「何が」「誰が」「どこが」どさくさに紛れて「一緒に宣伝されているのか」を見れば、その記事の意図や目的は明確であり、そういった記事が出てくる背景に、それらを宣伝したいところや、そういう組織や関係組織が裏で大きく絡んでいることは、明白です。

そしてそういうところは、羽生選手のことなど、本気では全く考えていないどころか、ただ利用したり、貶めて平気なわけですし、自分たちの儲けしか考えていないことも、見ていれば良くわかりますね。

 

 

さて、プルシェンコさんがシニアの年齢引き上げにはどうやら賛成であるのは確かなようですが、(記事は女子だけみたいな書き方ですし、プルシェンコさんが男子についてどう思っているのかはよくわかりませんが、元の「案」自体は、男子も対象となっていたはずです)

私は正直、この案にはかなり複雑な気持ちですし、疑問を感じています。

理由は、プルシェンコさんが上の記事で語られていたことと、ほぼ同じ理由から、です。

 

シニアに移行できる年齢の下限を、「男女ともに」17歳か18歳に引き上げた方が良いという議論が出ているわけですが、

これを、4回転を跳びまくりだったネイサン選手のコーチが主張しておられるようで、まず、そこがちょっと驚きでしたが、ネイサン選手の身体は、公表されていなくても、今までのダメージが酷い状態なのでしょうか?(それならまだわかりますが…)

もし今回、羽生選手ではなくて、ネイサン選手が五輪で金メダルをとっていたら、それでも、このような議論になっていたのかな?という思いも少なからずあります。

 

また、15歳だったザギトワ選手が金メダルをとったことや、

ロシアのエテリコーチのチームのジュニア女子たちが、4回転や3回転アクセルをどんどん跳べるようになってきていることから 

危機感を感じている人たちがいて、そんな話になっているようにも思います。

日本でも、ジュニアだった紀平選手が、3回転アクセルからのコンビネーションという難しい技を、軽々と跳んでしまって、今後の有望選手として非常に期待が高まっています。

 

シニアへの移行の年齢下限の引き上げというのは、身体の問題などが主な理由にあがっていますけれども、

ただ、たとえそんな制限をしても、ジュニアで4回転が跳べちゃう天才系の女子、天才系の男子というのは、跳べたら、跳べるうちに跳んでしまうのではないかと思いますけど、違うのでしょうか?

(かつてプルシェンコさんは、14歳で4回転を跳んじゃいましたよね。当時、そんな年齢では誰も跳んでいませんでしたけど、だからこそ、当時の最年少記録だったかと。)

シニアの年齢下限を引き上げると、特に女子は、シニアのスポーツ性や競技性がやや低下して、ジュニア女子の方がジャンプの難易度が上がったりしていく可能性もあるように思います。

 

かつて安藤美姫さんが女子初の4回転サルコウを跳んだときは、「遊びでやってみたら、3回転アクセルは跳べなかったけど、4回転サルコウは跳べちゃったの♪」みたいな感じで成功していたかと思います。

遊びで跳べちゃったのを見たら、指導者としてはやはり、跳べてしまうものをセーブしてわざわざ負けることを選ぶことは少ないと思うので、

跳べるんなら跳びましょう!という感じで試合に入れてくることになったと思いますし、そうなるのは自然かなと思います。

そうすると、「あの人がやれるなら私も…」と挑戦する選手が出てきて、結果、やっぱり跳べちゃった、となったら、勝つためにはやはり試合に入れてくることでしょう。

結局、跳べる選手が出てくるか出てこないか、にかかるだけだと思うのです。

あとはせいぜい、練習量や回数への制限をかけるかどうか、でしょうか。

 

ジュニアでも跳べる人たちが、シニアでも勝つために、果たして今を制限するのかというと、(跳びすぎは防止できるかもしれませんが)

特に女子は、年齢が変わり、体型も変わるシニアの年齢になった時にも、同じように跳べる保証というのがあるわけではないと思うので、私にはよくわかりませんが、

ただ単に、今はシニアに移行できる15~18歳の間に何かの新記録を作った人が、今までのような高評価やメダルをシニアの大会や五輪でもらえなくなってしまう、ということになるだけのようにも思えて、それはどうなのかという思いもあります。

 

男子のボーヤン選手も、4回転ルッツを跳んだのは、「なんとなくやってみたら、2回目で跳べちゃいました!」っていう調子で成功したと、ご本人が証言されていましたし、

天才と呼ばれる人たちが何かを開拓するときって、本人が夢中になっているうちに予想以上の何かに到達しちゃいました、という感じが多いように思うので、

それを年齢制限をかけて、あえて五輪で優勝できないようにするっていうのは、それもどうなのかな…?とも思います。

15,16歳の技術力に優れた女子選手が金メダルを取るのは、過去に何度もあったことで、当然のように予想できたことだと思うし、今さらな気持ちも大きいですし、

今回五輪で優勝したザギトワ選手は、今までの、過去の15,16歳での金メダリストたちと比べても、後半にすべてを跳ぶことのリスクやプレッシャーなどをも考えあわせると、3回転ルッツ+3回転ループという、今回の最高難度ジャンプを、しかもプログラムの最後のほうで、あっさりと成功させてしまったことは、技術的にはやはりかなりレベルが高かったと言えると私は思っています。

 

最近の例外はむしろ、23歳で金をとったトリノ五輪での荒川さんなわけですが、あの時は、優勝候補だった他の選手たち、イリーナ・スルツカヤ選手も、サーシャ・コーエン選手も20代でしたので、誰が勝っても20代の金メダリストになる大会でした。

あの年にグランプリ・ファイナルで優勝して、世界で大注目を浴びていた当時の浅田真央さんはまだ15歳で、年齢制限にギリギリ引っかかって出られませんでしたが、荒川さんが後のインタビューでも語っていたように、もしあの直前に、15歳の浅田真央さんに負けるという体験をしていなければ、ご自身のスケートを(実際にやったように)見直すこともなく、トリノ五輪で荒川さんは逆に金メダルを取れていなかっただろうという話でしたし、それは見ていた側からも、強くそう感じられる展開でした。

荒川さんの金メダルは、15歳でシニアに上がってきた浅田真央さんの存在があってこそだった、と荒川さんご自身も過去に語っています。

もし、浅田真央さんがシニアに17歳まで上がって来られなかったのだとしたら、シニアの世界であの年に2人が同じ大会で演技することもなかったわけで、そうだとしたら、荒川さんがあのように危機感をもって、プログラムの変更を含めて、作戦を練り直すこともなかっただろうと、荒川さんご本人もそう仰っていたわけですし、観ていた側に過ぎない私にも、そう感じられました。

 

この年齢下限引き上げは、女子だけでなく、男子も対象のようですから、そこも、私にはちょっと複雑な気持ちです。

男子はむしろ、今までずっと、20代の金メダリストばかりでしたので、

羽生選手のソチ五輪での 19歳での金メダルは、近年では最年少記録に該当するようなもので、羽生選手はやや例外なケースでした。(歴代でも2番目に若いですし。)

 

私が複雑な気持ちになるのは、もし、羽生選手が、シニア移行を15歳で許されていなかったとしたら、さすがに羽生選手が19歳の時に五輪で金メダルをとれることはなかったように 思うからです。

羽生選手が、色んな意味で精神的に成長し、飛躍のきっかけをつかんだと思われる、高校2年の震災後のシーズンは、羽生選手はまだ16歳でしたので、「17歳までシニアになれない規定」なるものがもしあの時にあったら、あのシーズンも羽生選手はまだジュニアのままだったということになります。

初めて4大陸選手権で銀メダルをとったのも、高校1年の終わりごろでしたから、羽生選手はまだ16歳だった時ですし、

シニアの頂点争いである「世界選手権」で、堂々の銅メダルを初獲得した時も、17歳になって、まだ数か月後でした。

でも、その15~17歳頃から、普通より早く、シニアの世界に入って刺激を受け続けて頑張ってきたことが、結局、ソチ五輪で優勝することに、大きく影響したのは間違いないですし、あのシニアに移行してからの高校生時代(15~18歳)の羽生選手の凄さ、あの時期のものすごいワクワク感や深い感動を覚えている私としては、

「男子もシニアは17歳を下限に」と言われると、

なんだかなぁ… ちょっと寂しいね、という気持ちです。

 

実際、今の規定のままだったとしても、普通の男子シングル選手たちは、15歳でシニアに上がってくることはしていないわけで、羽生選手のような、本当にごく一部の天才選手たちだけが15歳でシニアにあがってきているのが現状で、

17歳だとまだジュニアで頑張っている人の方がずっと多いわけですが、

羽生選手は、当時15歳でジュニアの世界選手権で優勝しちゃったので、その後もジュニアに留まる動機はもうなかったわけです。

 

羽生選手は15歳でシニアにあがったからこそ、「シニアの世界に入ってみたら、僕はまだまだ」と自覚して、15歳の当時はそれをむしろ喜び、ワクワクしながら、向上心を持って試合に臨んでいました。

ジュニアのトップになったことに甘んじることなく、シニアに移行し、さらに上を見上げて頑張ってきたからこその卓越した演技が、あの頃の羽生選手には沢山あったと思うだけに、

その時期をジュニアの枠内に強制しようとする今の議論は、

規制の概念を破ってくるような天才が現れるのを妨げたり、そういう驚くべき発見の楽しみが減ってしまうような印象で、私は複雑な気持ちです。

 

早熟なのか遅咲きなのか、というのは、人によって違うとも思うので…

どちらが良いとも悪いとも言えません。

安藤さんが、シニアになってから跳べなくなったとしても、ジュニアの時に4回転サルコウを跳べたことが悪いのかと言えば、そんなことはなく、

その後のプレッシャーはあったし大変だったとしても、ご本人からしたら、跳べる時に跳んで記録を作っておけたのは、良かったのでは?としか、今は言えません。

 

人は誰でも、その時、その時期にしか出来ないこと、というのが、あるように思うので。

 

 羽生選手が、今にすべてをかけ、常にその時の全力を尽くす方針でずっとやってきており、それが可能だったのは、やはりあの未曽有の大震災を体験して、

「人はいついきなり人生を終えるかわからない」し、「いついきなり(ケガなどで)選手としての未来がなくなるかわからない」という、そういった意識が常に働いてきたこと、それゆえに「今を大事にする」という徹底した方針があったこと、そしてその結果として出来たのが今の記録であることは、間違いないだろうと私は思うのです。

 これは、「今を真剣に生きる」という意味であって、決して「今を刹那的に生きろ」という意味ではありません。

「今を、決して後悔なきよう真剣に生きる」「今を徹底的に大事にする」のと、「今を刹那的に生きる」のは、表面上は一見、似ているように見えることがあったとしても、その本質は 全然違います。

また、このことと、羽生選手が語った、「何回も死のうとした」ほど、心が落ち込んだり、落ち込ませられたりした問題というのは、全然別の問題です。

(これらを混同して、被災者なのに命を無駄にしようとするなんて、という批判は全く的外れなものであって、当てはまりませんし、羽生選手も気にする必要はないです。)

(また、大災害などでは、多くの生死を目の当たりにしたり、生きがいとなっていた大事なものを失ったりするため、普通の人であっても、死が身近な問題となりますし、大事な人や家族を失った方々は、悲しみのあまり…という想いになることもよくあることで、それは決して命を無駄にする、とか、軽視している、というわけではなく、これらもまた別の問題です。)

 

先日の平昌五輪で、女子の金メダリストになったザギトワ選手も、こちらの記事の最後に、同じようなことを述べています。 「今日を一生懸命生きることしか、考えていない」と。

 

彼女を指導されている エテリコーチは、私の知る限りでは確か、

アメリカでテロに巻き込まれて生命の危機を感じた経験をお持ちで、それゆえに、羽生選手が大震災で体験したのと同じような意識や、「未来への考え方」をもっているからこそ、

「常に、今できる最善を尽くさせる」ことに徹底しているようですし、その考え方が、強く結果に影響していると私は感じます。

 (ただし、エテリコーチがどうも誤解しているらしいのは、アジア的なスパルタ的練習が、今の羽生選手を始めとしたアジア系男子がトップ層に集まった理由では 決してないだろう、と私には思えるところです。体型や体質はそれなりに影響しているとは思いますが。

ネイサン選手はアジア系だけど中身は私から見ると完全にアメリカ育ちの「ザ・アメリカ人」に見えるし、ボーヤン選手は、中国でそもそもフィギュアスケートをやっているだけでも異質なタイプだと私は思うし、羽生選手はむしろ「自ら考え、研究する人」でオーサーコーチと意見をぶつけて議論することも厭わないところは、いわゆる典型的な日本人とされてきたイメージとは程遠いタイプと言えますし、そうやって自分の在り方やベストを模索できたことは確実に結果につながったと思います。)

 

女子が、フィギュアスケートにおいて、長くトップでい続けるには、ある種の体型が維持できなければ難しい、というのはやはり本当で、だからこそ、エテリコーチは跳べるときに跳ばせる方針でいるようにも思います。

コストナー選手や、既に引退された浅田真央さんのような体型を20代でも維持できて、ジャンプの技術力を(本人比で)落とさずにトップ層にい続けられる女性というのは、極めて稀であるというのもまた事実だと私は思いますし、

20代半ばになってから、むしろそれまでよりも活躍された鈴木明子さんが、引退されてから、色々なところでお話しされてきたように、20代で上位で活躍している女子選手たちは、その陰で多くの「女性としての機能や健康を、シーズン中は競技のために犠牲にする」ような闘い方を強いられる現状というのが女子アスリートにはあるようです。

こちらは、女子の体操の世界の話の記事ですが、これを読むと、多くの女性ファンはショックを受けるのではないでしょうか。

少なくとも私は、初めて読んだとき、さすがにこの年齢には本当に驚きましたし、個人差があるとはいえ、これが女子の体操の世界の「普通」でもあったというのがものすごいショックでした。

フィギュアスケートはまた体操とは全然違うとはいえ、鈴木明子さんの証言を聞く限り、その辺は似たような面も多いであろう印象を受けます。

これを読んだら、フィギュアスケートで男性コーチたちが何を色々言おうとも、男性コーチたちよりも女子選手の実態を知っているであろう「女性コーチ」であるエテリさんがとっている方針を、そう簡単に揶揄したりはできなくなるのでは、と思いますし、いったい何が本当にその人のためになり、その人の人生のためになるのかというのは、また見方が変わるように思います。

 

荒川さんも羽生選手も、「太れない体質」なのだとご自分で仰ってきましたが、

(それが本当の事実だとして)

「太らないようにするための、ものすごい努力の必要な 多くの選手たち」と、

「頑張らなくても太らず、むしろ痩せてしまう」ような体質を生まれ持っている選手たちとでは、その辺の負担は大きく違うだろうし、

こういったことは、生まれ持った 個人の資質や体質にかなり大きく影響されていると思うので、

いつまで続けるか、いつやめるか、何を目指すのかという生き方も、その人がそれぞれよく考えて選択すべきなのではないかな、と私は感じます。

 

 また、コストナー選手は、長く競技を続けていられる最大の理由は、イタリアには国内に過酷な代表争いとしての競争がないのも大きな一つと思いますし、コストナー選手自体が、フィギュアスケートを愛していて、(色々試練もありましたけど、)

優勝だの、表彰台だのに必ずしもこだわりすぎてはいないところが良い方向へと影響して、今も現役でいられているように感じられます。(もちろん、スポンサーがついてくれていることも大きいでしょうけれども)

 

パトリック・チャン選手が、今年まで長く選手を続けたのも、トップでいなければならないという、トップへのこだわりやプライドを捨てて、別のものを追求していったからここまでできたことでもあり、 最後は団体戦での金メダルという、団体戦への貢献を一番の目標にしていたようですが、それはそれで尊いことだと私は思うし、

羽生選手も含めて、明らかの他の選手たちにも良い影響があったように見えましたし、彼がここまで長く続けたことと、シニアの年齢下限とは関係ないことでした。

 

17歳や18歳までシニアに移行できないとなると、

私の記憶の中には、15~18歳ごろに羽生選手や浅田真央さんたちが見せてくれた、シニア移行後のあの時期だからこそできた、「鮮烈な演技の記憶」というのもあるわけですが、

それらが今後は、同じような可能性をもつ選手が出てきても、全て、ジュニアとしての別枠の勝負になっていってしまうのかと思うと、

そこは正直、ちょっと寂しいなぁ… と思えます。

今後の競技の見方も 、フィギュアスケートへのとらえ方も、今までとはかなり変わってしまうかも? というのが、私の今の正直な感想です。

 

つい最近、羽生選手が「Continues with Wings」で、シニアに移行した高校生の頃に見せてくれていた、素晴らしい印象的な演技の数々を

今の羽生選手で、ジャンプなしでも再演してくれたのは、私は本当に嬉しかったし、

今は当時よりもレベルも上がっていて、さらに見ごたえもありましたけど、

やはり早期にシニアに移行して頑張ったあの時代があってこその今の羽生選手でもあり、五輪で2連覇することまでできた羽生選手だ、とも私は強く思っているので、

余計にこの議論には、複雑な気持ちになるのかもしれません…。

 

大震災で落ち込んでいた羽生選手が、再び奮起出来た理由の大きな一つに、ジュニア時代に共に闘っていた、ロシアのガチンスキー選手が、まだ日本が混乱の最中の時期に行われた「シニアの世界選手権」で活躍しているのを見て、ものすごく強く刺激を受けて、負けたくないと思った、というのがありました。

 

また、伝説にもなっている、数年にわたる有名なヤグ・プル対決も、プルシェンコさんという年下の跳び抜けた天才選手がシニアの世界に早期に出てきて、ヤグディンさんがすごい危機感を抱き、それまでよりもあらゆる面で本気になったからこその、すごい演技の数々だったように思うと、

もし、シニアへの移行年齢の下限が17,18歳だったら、また色々と違った展開だっただろうし、あれもなかったのかな、とも思えます。 

 

今、シニアに移行したばかりだったり、まさにこれからシニアに移行しようとしている15歳前後の選手たちは、突然のこの議論を、今はどう感じているのでしょうか。

 

そして、15歳でシニアに上がった過去を持つ羽生選手は、今、どう思っているのでしょうか。

 

 決まったら、規定に選手たちは従わなければならないだけだと思いますけれども、

誰かを勝たせるためとか、誰かが勝ってしまうのを防ぐため、とか、そういった「誰かの利益のため」や「誰かにだけ都合が良くなる」ような理由ではなく、

本当に全ての選手にとって、最終的に良い方向へと向かう結果になってほしいなと、

今はそう願うばかりです。

 

 


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