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世界選手権2017・羽生選手のSP「レッツゴー・クレイジー!」動画と、演技を観て圧倒された理由

2017-03-31 | プロアスリート羽生結弦・羽生選手関連ニュース

4月2日 羽生選手の演技動画を追加しました

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世界選手権2017の男子ショートが終わりました!

羽生選手、本当にお疲れさまでした!

もう、何から書くべきか悩むほどでしたが…(笑)

 

羽生選手の試合後のインタビューは、こちらのサンケイスポーツの記事によると、

「楽しむことはできたけど、なんだかんだいってまたサルコー-トーループを失敗してしまったので、そこはすごく悔しい。仕方がない。ループがきれいに決まってしっかり集中した結果がこれなので、実力が足りないと思った」

「すごく楽しかった。結果は結果なのでしっかり重く受け止めてフリーへ向けて全力を尽くしたい。絶対にノーミスにしたい。一つ一つ丁寧にやりながら、最後まで集中したい」

と語られました!

こちらがそのインタビューの一部映像

 

 また、こちらの動画ニュースの終わりの方(1:20~)で、羽生選手が、英語でインタビューに答え、

「応援が僕の力になってくれたので、僕は世界一幸せだと思います」と、言っています。

 

 

「すごく楽しかった」という言葉が聞けて、それは嬉しかったし、見ている側も、とても楽しかったですよ!… 私はむしろ、本当に「凄すぎて圧倒された」という感じでしたけど。

 

今回は、自分が演技を観ていて感じた「大きな感動」と、出されたスコアとの「かい離」が、かなり大きかったな、という印象でした。

もちろん、技術点で大幅減があった、つまり、コンビネーションが認められなかったのだな、とはすぐに思いましたけどね。

 

 

遠慮なく正直に書くと、私が見ていた感想としては、演技そのものは、もうお世辞でも誇張でもなく、本当に「総合的に」素晴らしかったです!! 

私は今季で一番感動した「レッツゴー・クレイジー!」だったと思いましたし、メリハリもあったし、曲の解釈・表現も恐らく一番良かったように見えたし、すごい気迫だったので、観ていてかなりカッコよかったです!!

会場の観客の盛り上がりの通りの反応が、ファンとしての素直な反応だと、本当に思えましたよ!

 

 

羽生選手のショート演技「レッツゴー・クレイジー!」

 

 

冒頭の4回転ループは、全く力みもなく、高さもあって、ものすごくカッコよくて、思わず目を疑うほど完璧なジャンプでした。

しかも、曲のあのタイミングで、あのような形で跳ぶループの、演技として表現されていることの深い意味まで感じとっている私としては、あれはもう、非の打ち所がない素晴らしさだったと思いました!

まずあれだけで、圧倒されたというか、本当に心奪われましたね。(笑)

 

4回転サルコウがコンビネーションとして認められなかったせいで、

明らかに10点は落としてしまい、スコアはあまり伸びなかったけど、

このプログラムでは、私には、今シーズンで間違いなく一番感動した演技でした!

 

4回転サルコウは、着氷で「あ!」と一瞬思ったのに、気合で、ほんの一呼吸おいてから直後にいきなり両手上げの2回転トウループをつけてきたのは本当に凄くて驚きました。

何度も書いていますけど、もともと羽生選手の両手上げが大好きだった私は、このプログラムで初めて見た、久しぶりのキレイな両手上げを見られたので、思わず大喜び。

 

それだけでなく、それ以上に凄かったのが、

日本人でこれに気が付いた人がどのくらいいるかわからないけど、

あの箇所って、歌が、「And if de-elevator  tries to bring you down」つまり、

「もし (悪魔の)引き下げ専門エレベーターが 君を引き下げようとしたら」って歌っている場面だったので、

まさにその歌詞のままが起きたように見えました。

つまり、

羽生選手が、4回転サルコウをキレイに跳んだにも関わらず、着氷で、後ろ足を垂直方向の真下に引っ張られたかのような、膝がつきそうな形の着氷になったのです。

そして、本来なら生じないはずの一瞬の間があって、

その後ろで歌われる、「Go, crazy!」 つまり、「無我夢中になって行け!」 の歌詞に合わせるかのように、

2回転トウループを、真上に両手を上げる形で、(つまり「天の方向」に垂直に向けて、)

いかにも障害を簡単に乗り越えそうな勢いと技術力で跳びあがり、美しい2回転トウループにして

演技をまとめて、続けていった羽生選手を見て、さらにビックリ。 

あれはなんか感動しました。

 

コンビネーションと認められなかったせいで、スコアでは大打撃でしたけど、

むしろ歌詞の歌われているタイミングも意味も、技とピッタリ合っていて、成功ジャンプの時のよりも、むしろより深い表現になってしまったように見えて、ちょっと驚きました。

 

ジャンプとしては得点で大損したけれども、演技の解釈、演技の意味としては、「むしろ完璧」になっちゃったように見えて、またそれがピッタリすぎて、信じられない気持ちで圧倒されたというか…

もう色んな意味で言葉を失う感じでしたね。 

演技としては見事なほど、完璧にまとめてくれたと思うんですよ、今回の羽生選手の演技は。(笑)

 

英語圏の人、キリスト教圏の人たちなら、私と同じことを感じた人は、絶対に世界中に大勢いるはずです。

だからある意味、ものすごい演技だったともいえる…  

得点だけを見たら、ミスあり演技、で片づけられてしまうかもしれませんけれども、

このプログラムは、そんなに軽いものでもないし、羽生選手がやっているのは、浅い演技じゃないですからね。

 

今回の演技は、絶対に狙ってできるような演技じゃなかっただけに、 

だからこそ、「やっぱり羽生選手、すごい天才だわ…」と思ってしまった私でした。

 

直前の公式練習の時は、4回転サルコウからのコンビネーションは完璧だったんですよね。

すごくキレイに跳んでいて、(ああ、あんなにキレイに跳べるんだね…)と思って見ていました。

 

あの4回転サルコウからのところは、プリンスさんが、「悪魔の引き下げ専門エレベーターが引き下げようとしたら…」、と歌っている箇所です。

この歌(曲)のタイトルは、その続きの歌詞ですよね、「 Go crazy!」で、もともとの全ての歌詞を見たら、「無我夢中になって上へ(神の方へ)行け」と歌われているわけなのですから。

 

だから、そういう部分も含めて、世界選手権で今回、こういう「歌詞に完璧に忠実な表現」の演技になっているのを見て驚くのみならず、

実際、こうして羽生選手は「その場合、どうするかのお手本」をリアルに世界中に、演技中に示してくれたわけで(笑)、

実際、同じことに気が付いている人、同じことを感じた人は、世界中に大勢いると、私は断言できます。(笑)

 

技術点がかなり損したにも関わらず、演技構成点で、ノーミスだったハビエル選手やパトリック選手と、ほとんど変わらないほどにまで、非常に高い評価を受けた、今回の羽生選手の演技。

「曲の解釈」で10点満点つけているジャッジがいたり、パフォーマンスで10点満点つけたジャッジがいますけど、きっとこういう細かい部分でも、私と同じような気持ちになって感動したのではないかと思いました。

 

今回は、演技への気迫も凄かったし、最初から4回転ループが終わるまでの冷静さと完璧さ、そこから一転して、4回転サルコウで「下に引き下げられかかった」かのような微妙で絶妙な着氷、さらにそれを打破するがごとくの、「尖頭型両手上げ2回転トウループ」と続き、

この2回転トウループは、確かに得点にもならなかったけど、

でも、演技としては非常に深い意味があったと思ったので、

そういう展開になっていくこと自体が、なんというか、私から見たら畏敬の念に打たれたというか…。

 

ラストの大盛り上がりのステップ部分で魅せた、余裕や笑顔も良かったし、観客を巻き込む…いや、世界中のテレビの前の人たちまでもを巻き込むほどの力といい、

4大陸の時は、背中をあまり反らせなかったレイバック・ランジでしたが、今回はすごくしなやかで見事な体勢で、見ごたえがすごくありましたし、迫力も凄かったです。

 

今回の演技は、構成としてはノーミスじゃなかったけど、

プログラム、あるいは、歌詞の持っていた意味を「表現」する「演技」として観るなら、

実はむしろこれこそが完璧であり、ノーミスだったと言えるのでは?!と本気で思ったほど、

色んな意味も含めて、ひたすら圧倒されました。

 

録画で繰り返し、あの4回転サルコウからの箇所を、歌詞を聞きながら確認してみると、見れば見るほど、あそこは逆に怖くなるほどの完璧さに見えてきます。(笑)

 

最初、解説の本田さんが、「なんとかコンビネーションにしました」って解説してくれたので、認められるのかな?とちょっと期待したけど、そこはダメで残念でしたね…

だけど、高橋さんがコメントしたみたいに、「あの後にあんなジャンプをつけるのは普通出来ないので凄い」というのが、見ていた側の受けた驚きと感動だと思います!

 

この曲は、本当は「的確に表現する」のは、ものすごく難しい曲だと思うし、

他にも色んな意味で、普通の人には決して滑ることが出来ないような、見えない世界での闘いのある、本当に凄く大変な、ハイレベルなプログラムだと、私は思っています。

 

表で見えている以上に、羽生選手が、今この時代、このタイミングで、このプログラムをやっていることの意味、その凄さというのは、もう言葉に出来ないほどの凄さだと言っていいと思います。 

それを解っている人は、世界中に、絶対に沢山いますから。

 

だからこそ、私は「ここまでやった」「ここまで表現出来ている」羽生選手を本当に凄いと思っているし、尊敬するし、

今日の演技そのものには、私は本当に圧倒されてしまって、何も言うことがなかったですね…!!

 

後続ジャンプの前に一瞬の間ができたせいで、技術点が伸びなかった点は確かに残念でしたけど、これだけ難易度の高いものを、リスクを負いながらやってきて、

これだけ多くの人を楽しませて、盛り上げることも出来て、ファンや観客を大勢巻き込んで…

一つ一つの質・加点レベルも、他選手と比べても極めて高いのは明らかでしたし、出ている総合得点以上に、非常に価値のある演技だったと私は思っています!(笑)

 

外国のファンたちが、「Still you are the best!! 」と書いているのを見て、私は凄く納得したし、

心の底から同意するし、嬉しかったですね!!

 

伝わる人たちには、ちゃんと伝わっているよ! と、私は羽生選手にお伝えしたいですね!!

 

正直、1番滑走の羽生選手に、あまりに圧倒されたせいで、後から滑った他の選手たちの、もっと高得点が出た演技を見ていても、(普段ならもっと感動したのだろうけど、)感動が薄くなっちゃったところが困りものでした。(笑)

 

1番滑走だったせいか、ちょっと演技開始時間が遅れて1点減点になっていたそうで… 

そこはもったいなかったですけど、

フリーもまた最終グループの1番滑走になったようなので、今度は気をつければ良いでしょうね。

 

難易度を決して落とさないという選択肢を、あえてとり続けてきた羽生選手。

羽生選手とネイサン選手という、超・高難度挑戦型ジャンパーが、ワンミスによって、5位と6位になってしまった、今回のショートですが、トップのハビエル選手とは、それでも約10点差。

およそ10点以内に6人がひしめいています。

これって、フリーのジャンプ一つで簡単に差がつく範囲内の得点なんですよね。

 

ネイサン選手がこの得点差を見て、一体どのような戦略に出てくるかもわかりませんし…

 

羽生選手は、自分の目指す演技に集中して、そしてやってきたことに自信をもって、フリーに臨んでほしいと思います!!

フリーの演技も、心から楽しみにしています!! 

めげずに、むしろこの状況をも感謝して、思いっきり試合を楽しんでほしいですね! 

 

まずは良くお疲れをとって、頑張れ~!!

 

 


今季のショートに、プリンスさんの「レッツゴー・クレイジー」を選んだ羽生選手に贈る言葉

2017-03-30 | 管理人のひとり言

 

今日は世界選手権2017の、男子シングル・ショートの日ですね。

 

今シーズンのショート・プログラムに、プリンスさんが知恵を使って作った「神様の歌」(※プリンスさん本人の証言より)である、

「レッツゴー・クレイジー!」を選んだ羽生選手に、

このプログラムに使われ、そしてここで歌われている歌詞の意味に、深く深ーく関連のある、聖書の一連の言葉を、3つ、贈ります!

 


新約聖書  「ヨハネの黙示録」3章7~12節より

 

『 聖なる方、真実な方、ダビデの鍵を持つ方、この方が開けると、だれも閉じることなく、

閉じると、だれも開けることがない。

その方が次のように言われる。

「わたしはあなたの行いを知っている。

見よ、わたしはあなたの前に門を開いておいた。だれもこれを閉めることはできない。

あなたは力が弱かったが、わたしの言葉を守り、わたしの名を知らないと言わなかった。

見よ、サタン(=悪魔)の集いに属して、自分はユダヤ人であると言う者たちには、こうしよう。

実は、彼らはユダヤ人ではなく、偽っているのだ。

見よ、彼らがあなたの足もとに来てひれ伏すようにし、わたしがあなたを愛していることを彼らに知らせよう。

あなたは忍耐についてのわたしの言葉を守った。

それゆえ、地上に住む人々を試すために全世界に来ようとしている試練の時に、わたしもあなたを守ろう。

わたしは、すぐに来る。

あなたの栄冠をだれにも奪われないように、持っているものを固く守りなさい。

勝利を得る者を、わたしの神の神殿の柱にしよう。

彼はもう決して外へ出ることはない。

わたしはその者の上に、わたしの神の名と、わたしの神の都、すなわち、神のもとから出て天から下って来る新しいエルサレムの名、そして、わたしの新しい名を書き記そう。」』




新約聖書 「ヨハネによる福音書」 15章16,17節より


「あなたがたがわたしを選んだのではない。

わたしがあなたがたを選んだ。

あなたがたが出かけて行って実を結び、その実が残るようにと、また、わたしの名によって父(=天地創造の神)に願うものは何でも与えられるようにと、わたしがあなたがたを任命したのである。

互いに愛し合いなさい。

これがわたしの命令である。」





新約聖書 「ヨハネの黙示録」 21章10~14節より


「この書物の預言の言葉を、秘密にしておいてはいけない。

時が迫っているからである。

不正を行う者には、なお不正を行わせ、汚れた者は、なお汚れるままにしておけ。

正しい者には、なお正しいことを行わせ、聖なる者は、なお聖なる者とならせよ。

見よ、わたしはすぐに来る。

わたしは、報いを携えて来て、それぞれの行いに応じて報いる。

わたしはアルファであり、オメガである。

最初の者にして、最後の者。

初めであり、終わりである。

命の木に対する権利を与えられ、門を通って都に入れるように(=天国のこと)、

自分の衣を洗い清める者は幸いである。」




※ 上に出てくる 「わたし」 とは、全て、イエス=キリストのこと



驚くほど勇敢で、いつも一生懸命な 羽生選手の上に、大きな祝福と守りがありますように…!!

 

 以下、同じ聖書の言葉の、英語版です。

(Good News  NEW TESTAMENT        Today's English Version  より)

 

゛This is the message from the one who is holy and true. He has the key that belonged to David, and when he opens a door, no one can close it, and when he close it, no one can open it.

I know what you do; I know that you have a little power; you have followed my teaching and have been faithful to me.   I have opened a door in front of you, which no one can close.

Listen!  As for that group that belongs to Satan, those liars who claim that they are Jews but are not, I will make them come and bow down at your feet.  They will all know that I love you.

Because you have kept my command to endure, I will keep you safe from the time of trouble which is coming upon the world to test all people on earth.

I am coming soon.  

Keep safe what you have, so that no one will rob you of your victory prize.

I will make those who are victorious pillars in the temple of my God, and they will never leave it.

I will write on them the name of my God and the name of the city of my God,  the new Jerusalem, which will come down out of heaven from my God.  I will also write on them my new name.

( Revalation 3:7-12 )

 

 

You did not choose me; I chose you and appointed you to go and bear much fruit, the kind of fruit that endures.  

And so the Father will give you whatever you ask of him in my name.

This , then, is what I command you:  love one another.

( John 15:16-17 )

 

 

゛Do not keep the prophetic words of this book a secret, because the time is near when all this will happen.

Whoever is evil must go on doing evil, and whoever is filthy must go on being filthy;

whoever is good must go on doing good, and whoever is holy must go on being holy."  

" Listen! "  says Jesus. " I am coming soon!  

I will bring my rewards with me,  to give to  each one according to what he has done.

 I am the first and the last, the beginning and the end."

Happy are those who wash their robes clean and so have the right to eat the fruit from the tree of life and to go through the gates into the city.

( Revalation 22:10-14 )

 

 


女子ショート終了・日本選手たちへのエール・世界選手権2017ヘルシンキ

2017-03-30 | プロアスリート羽生結弦・羽生選手関連ニュース

 

羽生選手! 演技はショートもフリーも、かなり良くなっていると思います!

落ち着いて、自信をもって、やる気に満ちて(笑)、集中して、頑張って下さい!!

充実した試合になりますように…♪


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女子の樋口選手、三原選手、本郷選手、本当にお疲れさまでした!

良く頑張ったと思います!

 

三原選手、昨年の状況や、初出場であることを思えば、とても良くやってきたと思いますので、自信をもってほしいと思います!

演技そのものは、喜びが伝わってきて、本当に素敵でしたし、滑りもとても美しくて、心洗われるような演技で、感動しました!

樋口選手と本郷選手は、不調続きだったという最近と比べても、明らかに迫力もあり、とても良い演技だったと思いますから、このままフリーまで良い感覚をもっていってほしいですね!

 

3選手とも、それぞれのフリーに向けて、落ち着いて調整して、思いっきりこの大舞台を楽しんできてください!

 

精一杯やれば、見ている側にはきちんと伝わりますから!(笑)

 

最後まであきらめず、滑れることを楽しんで、がんばれ~~!!

 

わくわくわく…♪ (笑)

 

 

日本女子3選手に、そして、羽生選手はもちろん、男子・ペア・アイスダンス含む、全ての日本代表選手たちに、この聖書の言葉を贈りたいと思います!


「思い煩いは、何もかも神にお任せしなさい。

神が、あなたがたのことを心にかけていてくださるからです。」

(ペトロの手紙第一 4章7節  新約聖書:新共同訳より)

 

 


羽生選手の公式練習映像とインタビュー in ヘルシンキ世界選手権2017

2017-03-29 | プロアスリート羽生結弦・羽生選手関連ニュース

羽生選手が現地到着後に語ったインタビュー映像で、長く内容を収録してあったと思われるニュース映像がこちら と、こちらのニュース動画(羽生選手のインタビューは4:25以降~)です。

「やるべきことはやってこれたなというふうに思っていますし、手ごたえもあります。」

「ジャンプ簡単にしてプログラム キレイにこなせたらいいかって言われたら、

多分それは僕のスケートじゃないし、やっぱりジャンプ難しくしてその質一つ一つが高いのが僕のスケートだと思っているので、

だから何かを落とせばいいという考えは僕には存在しなくて、

何もかもを全部(レベルを)上げてやるっていう気持ちでいます。」 


「今回も全力でその最大限の演技が出来たらなと」

「自分の今の究極のものを出来ればな とは思います。」

 

ユアタイムの映像からの抜粋

「悔しい思いもすごく引きずっているし」

「もうその悔しさしかないので」「悔しかった想いっていうのが一番強いですけれども」

「オリンピックの会場で闘ったっていうのは、非常に自分の中で大きな経験になっているので、

もちろん悔しい思いも強くありますけれども、それを晴らすためのこの世界選手権かなという風に思っています」

「もちろん、結果も点数も大事ですけれども、何が悔しかったかというと、

多分自分の演技がしきれなかったことが、一番悔しかったので、

自分の演技っていうものが、どういうものかっていうのを、この舞台で出せればいいなという風に思います」

「ジャンプ難しくして、そのうえで、全てのジャンプも、ステップもスケーティングもスピンも、その一つ一つが高いのが、僕のスケートだと思っているので、何かを落とせばいいという考えは僕には存在しなくて、何もかもをあげてやるっていう気持ちでいます」


「表現力って具体的に言葉にするのって難しいじゃないですか。言ってみれば、ポーズが綺麗だったらそれも表現力だし、極端なことを言ってみれば、「じゃあしゃべっちゃえばいいじゃん」って思うんですよね。

じゃあ、ジャッジの方に向かってしゃべっちゃえば、それはそれでもう表現しているってなっちゃうけど、でも、僕が考える表現力って、やっぱり毎回毎回感情とか、考えていることって全く違うから、その時にしかできない、にじみ出るものが、自分の表現だと思っているし、

そういったものも含め、全部が自分のスケートなのかなとは思っています。」


「自分の今の究極のものをできればなという風には思います」

(記者からの質問:究極のものを達成したら、次、何が見えてくるんですかね?)

「また難しくするだけじゃないですか(笑)」

 

 

色々なニュースで、インタビューがカットされて一部だけ報道になるので、全体というか、話の流れがあまりよくわかりませんでしたけど、ここまで出てきたら、何を言いたかったのか、何をあえて語ったのかが良くわかりましたね。 

ああ、なるほど、こう言っていたのか、と。

(それでもまだカットされているのでしょうけど)

とても羽生選手らしくて、インタビューを聞いているうちに、思わず笑ってしまいました!

特に下線を引いたところの言葉。(笑)

 

最後の言葉を聞いたらもう、「羽生選手、4回転アクセルまで、頑張って下さいね!」としか言えませんね。

 

「しゃべっちゃえばいいじゃん」は、確かに「話す」のは表現の一つの手段ではあっても、それだと、もはやフィギュアスケートじゃないですね…!!(笑)これ、話下手な選手や、話好きではない選手なら、絶対に思わないことだろうと私は思いましたので、何か可笑しかったです。(笑)

ただ、これでわかったのは、羽生選手は、「それ、違うのに」「自分が表現したつもりのものが伝わっていない」「話せばわかるのに」というような、もどかしい思いをしたことがきっと何度もあったのかな、と。

しかし、しゃべれば、あるいは書けば、正確に伝わるっていうものでもないですよね。

言葉で思いを伝えることも、それなりの技術が必要なことは確かです。

それがいつでもだれでも簡単に出来て、正確に伝わるなら、この世に誤解なんてなくなっているはずだし、誰も苦労しないです。

実際、羽生選手のインタビューや、何かの一言を聞いて、同じ言葉なのに、私の受け止め方と全く違う受け止め方をする人たちというのも、世の中には結構いるので、ビックリしてしまうことも多々あります。

あるいは、自分が伝えたつもりのことが、全く違ったふうに取られていて、驚いてしまうこともあります。

 

そして、私がフィギュアスケートを観ていていつも思うのは、「表現」は、受け取り手の側の問題というのも、必ずあるということ。

灰色のフィルターがかかっている状態で物事を見ると、何を見たとしても、結局全部「灰色」が重なって見えるものなんだな、というのを、他の人の、特に特定選手のアンチの人たちの感想を聞くと、すごく良く判ったりします。

表現されているものそのものに、「灰色」は全くなくても、そう見えてしまう。

 

そして、毎回にじみ出る感情や思いも表現の一つであるなら、あの時のあの場を感じた表現になったはずの、4大陸の演技も、それを良かった、素晴らしい!と思っている人も大勢いるので、決して失敗とは言い切れないと思うし、

その時の体調の中で、その制約や限界の中でだからこそやれたこと、その中で精一杯表現しようとしたからこそ出ている輝き、そういった美しさというのは、必ずあると私は思っています。

表現で重要なのは、独りよがりにならずに、出来るだけ多くの人に正しく「伝わる」「伝える」ことが出来る技術でもあり工夫でもあり、そうしようとする意思や努力であり、その源となっている「心」のあり方、がやはり最終的には非常に大きいと私は感じています。

 

フィギュアスケートについて言うなら、「氷の上では、その人の全てが表れてしまう」というようなことを言っていた歴代選手たちは、結構大勢いましたから、演技をやる側としてはそう感じるのかもしれません。 

 

 

 

さて、世界選手権2017(ヘルシンキ、フィンランド)の公式練習が、

月曜からずっと男子は行われていますが、(女子は29日水曜日からショート本番)

羽生選手の曲かけ通し練習(ランスルー映像)が、こちらのHPから見ることが出来ます。

 

日本時間27日(月)に行われた、ショート(Let's go crazy!)の曲かけ通し練習 (※音なしです) ←クリック

身体の動き、切れはとても良いように思いました。迫力もあったし。

皆様が言うところの「ズサー」(笑)、(羽生選手によれば「レイバック・ランジ」)は、

しなやかさも言うことなく… 全体もとても良くなっているように思いました。

 

日本時間28日(火)午後に行われた、フリー(Hope&Legacy)の曲かけ通し練習 ←クリック

こちらは、角度の違う現地動画

さらに、角度の違う、CBCスポーツ公式動画

 

前半の振付が一部また少し変わったようですが、集中力も良く、一つ一つの動作も美しくなっている感じですし、全く迷いがない…というか、表現するものへの思いがしっかりと定まったような印象を受けましたね。 流れと全体の印象はさらに良くなったと私は思いました。

ビールマンスピンが復活しています… (体調はいいということですね)

ただ、後半のジャンプがやや不調だったようで、その分、最後の最後に、リカバリー対策として、

3回転アクセル+1回転ループ+3回転サルコウ、の3連続を入れてきました!

まるでもともとそういう構成のプログラムだったかのような自然さで組み込まれていたので、

きっと色々練習してきたのだろうな…と。

 

 

ショートの本番は明後日ですけど、それまで、よくお疲れをとりつつ、良い練習&良い身体の調整が出来ますように…!!

 

 こちらのサンケイスポーツの記事によれば、羽生選手は、

「変なプレッシャーもなく、自信を持って落ち着いて本番へ向けて調整できている。曲がかかった段階でのジャンプ一つ一つが、すごく自信を持ってやれるようになってきている」

と語ったそうです。

良かったですね!(笑)

こちらの毎日新聞の記事によれば、羽生選手は、

「あまり世界選手権という感じはしていない。(タイトルへの執着も)特にない」と冷静に話したそうです!

 

こちらはインタビュー映像入り NHKニュース動画

「今の自分の状況にすごく集中できているなと思っていますし、非常にいい状態なんじゃないかなって思っています」

「自分が出来る限界値を、とにかく最大限にもってきた状態で試合に挑むこと、が一番大事かなと思います」

 

同じく、羽生選手のインタビュー入り 報道ステーション動画

「ジャンプがキレイに決まってくればもっとやはり盛り上がるし、自分ができる限界値をとにかく最大限に持ってきた状態で試合に挑むこと、が一番大事かなと思います」

 

こちらも 羽生選手のインタビュー入り ニュース動画

「変なプレッシャーもなく、自信をもって落ち着いて 本番に向けて調整出来ているのではないかなと思っています」

「自分が出来る限界値を、とにかく最大限にもってきた状態で試合に挑むこと、が一番大事かなと思います」

 






女子はいよいよ今日です。

初出場の三原選手と樋口選手は、気負い過ぎずに、自分たちが目指している演技に集中出来ますように…! 望んでも決して誰もが出られるわけではない、この大舞台を楽しんでほしいですね!

本郷選手は、チャンスが次々舞い込んでいることにも、深い意味があると思って、自信をもって臨んでほしいと思います!

なんてものは、ワクワクしていればきっと向こうから やってくる…♪ ♪ ♪

 

日本で見ているであろう宮原選手は、今は心穏やかに治療に専念してもらえれば、と思います。

骨がまだくっついていなかったのなら、休めて良かったですね。

 

 

 

 


羽生結弦選手の原点を知る!その4~ 卓越した滑りと表現力で魅了した銀盤の貴公子「ジェフリー・バトル選手」~

2017-03-24 | フィギュアスケート全般について

毎年バレンタインデーを中心に贈っていました、羽生結弦選手の原点を知る!シリーズですが、

今年は2月14日が4大陸選手権の公式練習中だったので、出すタイミングをずらし、羽生選手へのエールを込めて、世界選手権前の今、贈ることにします♪

 

「その4」となる今回は、羽生選手がカナダに渡って以降のショートプログラムの振付師であり、

現役時代には「銀盤の貴公子」だの「王子のよう」などと言われ、とても滑らかで美しいスケーティングと豊かな表現力で多くの人を魅了し、日本でも大人気だった、

トリノ五輪の銅メダリストで、2008年の世界選手権金メダリスト、ジェフリー・バトルさん(カナダ)を特集してみたいと思います!

 

 バトルさんのファンはとても沢山いましたが、当時の演技や映像を観れば、納得かと思います。

もともとバレエもやっていたそうで、身体の使い方が上手く、上品さと滑らかで卓越していたスケーティング、リズム感の良さ、繊細な表現力が、現役時代は本当に「貴公子」と呼ぶにふさわしい感じだったバトルさん。

ジェフリー・バトルさんは、プルシェンコ選手やヤグディンさんが最も激しくトップ争いをしていた全盛期にシニアデビューし、プルシェンコ選手が絶対王者として君臨した時代に20代前半を過ごしたので、ジャンプがやや苦手だったバトルさんは、表彰台争いには絡んでも、トップに来ることはなかなか出来ませんでした。

でも、見ると心和むようなその演技、卓越した表現力は、多くの人を惹きつけましたし、「4回転が跳べなくても見たい選手」の代表格のような存在でしたね。

ジャンプが得意な羽生選手が、少年時代にバトルさんについてどう思っていたのかは特に聞いたことがないように思いますが、スケーティングの上手さとそれを基礎にした表現力は、カナダに渡って以来、羽生選手が技術的にも目標としてきた一人でもありますし、

今は振付師として、羽生選手の数多くある魅力や才能のうちの一面を、上手く伸ばし、引き出して下さった一人だと言えるでしょう。

 

バトルさんの現役時の演技を観ていると、今の羽生選手のプログラムの中で使われている特徴ある要素を、色々と見つけることが出来ると思います!

 

こちらは、バトルさん19歳、2002年の世界選手権 ショート「ラスト・エンペラー」

 前月にソルトレイクシティ五輪があった、直後の世界選手権。

カナダ国内3位だったバトルさんは、五輪には出られなかったのですが、五輪代表選手たちが二人とも欠場、若手だったバトルさんが、代わりに世界選手権に出場出来て、注目を浴びたこの大会。

演技の最後、スケーティングで魅せるラストの一連の表現が、とても印象的なプログラムです。 

バトルさんは、演技終了後の笑顔でもファンを増やしていたと思います。(笑)

 

同じく2002年の世界選手権フリー演技 「道」 (バトルさん19歳)

 解説者たちが、「キレイですね…」という言葉を連発しています。

この演技には4回転はないのですが、とにかく、滑っていて気持ちよさそうで、楽しそうな演技で、バトルさんは人々を魅了していきます。最後の方、動画の4:35~ 逆回転のスピンを披露しています。

このバトルさんと同じ歳の時には、既に羽生選手は五輪金メダリストになっていたことを想うと、男子で、シニアデビューを15歳で果たし、シニアの世界で揉まれてきた羽生選手のその実力は、やはり今考えても、本当に凄いことだったのですよね。

 

 

 

こちらは、2003年の4大陸選手権の時の、ショート。(バトルさん20歳)

 

バトルさんが4回転を跳んだ演技というのは、あまり記憶にない方も多いかと思うのですが、この時のショートの演技では、動画55秒過ぎから、4回転トウループ+3回転トウループをあっさりと成功させる姿が見られます。 

この時の日本語の解説(女性)は、当時の城田監督です。

この時は、日本の本田さんとバトルさんが同じコーチについたので、バトルさんがコーチを変えたような説明がされています。

 

 

2003年 4大陸選手権のEX 「エンジェル」 (バトルさん20歳)

ひたすらスケーティングで魅せるのが得意だったバトルさん。

その全身を上手に使った表現力は、見ていていつも爽快なほどです。

解説者が延々と、バトルさんの長所がどこなのかを語って下さっています。(笑)

 

 

2004年 カナダ国内選手権(全カナダ選手権)の時の、ショート「テイク・ファイブ」

 

この演技で見てほしいのは、ズバリ、動画2:23~24頃に出てきます! 羽生ファン必見!(笑)

羽生選手のものよりもずっと短くて一瞬で終わっちゃうのですが、「パリの散歩道」でおなじみの、あの「へ型の変形ランジ」のポーズが、バトルさん本人によって行われているのを、一瞬ではありますけど、見ることが出来るのです!(笑) あれは、ここに原型があったんですね…! 

 

 

EX「High」

このEXで見どころなのは、動画の1分17秒~ からおよそ7秒間ほどに渡って披露される、非常に大きく弧を描きながら長く滑り続ける「イナバウアー」(※イナバウアーは、足の技のことです)です! 

これは本当に見事でカッコイイ!!

羽生選手のように「レイバック」(背中を後ろに倒す)はもちろんやりませんけれども、(普通の男性は出来ません!)それでも全身で表現された見事な形と滑りで、とても印象に残るイナバウアーで、バトルさんの得意とするところです。 

羽生選手にも、いつかこういうのもやってもらいたいですね~♪

2:41~ ひたすら片足でバックで滑りながら、こういうちょっとした仕草や、雰囲気で魅せるのもまた上手いですね…。

  

 

2005年世界選手権のショート「ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番」 (バトルさん22歳)

多くの選手たちが使っている有名なこの曲、それぞれかなり違うので、今見ると新鮮です。

今の羽生選手と同じ年齢の時の、演技です。

 

 

2006年トリノ五輪(銅メダル獲得)の時のショート、「sing sing sing」 (バトルさん23歳)

 

 

この「sing sing sing」は、見ても聞いても楽しいリズム感の良い曲でしたので、ソルトレイクシティ五輪での本田さんのEXを始め、色々な選手たちにとてもよく使われた印象があります。

羽生選手も大好きだったというこの曲。同じ曲でも、曲の使い方は、選手によって様々で、そこがまた面白いところでもあります。

羽生選手のはまたバトルさんのものとは結構印象が違いますが、私はやはり、羽生選手のものがすごく好きですね。参考→(最高おススメ演技その9参照

 

2006年トリノ五輪の時のフリー「サムソンとデリラ」 (バトルさん23歳)

ジャンプで2度ほどミスが出てしまったのですが、(一つは4回転トウ)、後半は粘って、それでも、総合では銅メダルを獲得できました。

(このトリノ五輪は、プルシェンコ選手の圧勝優勝で終わっています。)

この演技のタイトルは「サムソンとデリラ」ですけど、バトルさんがやると、「あら?サムソンはどこ?」という気分になります。(サムソンとデリラというのは、旧約聖書の「士師記13~16章」に出てくる有名な話で、その登場人物の名前です。サムソンは怪力男です。)

表現力もあるし、音楽と合わせて伝わってくるものは多々ある優れた演技で、後半は緊迫感もよく出ているとは思うのですが、それでも、残念ながらここまで「スタイルが良い」と、ハッキリ言って、「何かの悲劇に巻き込まれたどこかの貴公子」にしか見えてこない、という…(爆)

1:29~「インサイド・イーグル」なんかは、ものすごく斜めに傾いて、それをまた上手く表現面に活かしています。

バトルさんのスピンはいつも独創的な形が多いですが、一部は今の羽生選手のプログラムにも受け継がれていっている(使われている)のが、いくつか演技を見ると判りますね。(笑)

 

 

次は、2008年の世界選手権で優勝した時の、ショート「アディオス・ノニーニョ」

バトルさんのプログラムの中では、人気も評価も高かった演技で、ひたすら音に合わせる技術と細やかな表現力で最後まで魅せます。

このショートの成功で、バトルさんの優勝可能性が見えてきた、そんな大会でしたね。

 

 

さて、ここから、バトルさんの現役ラスト演技となった、フリーの「アララト」を、3つ続けてご紹介してみます。バトルさんはこの演技を、2シーズンにわたって演技しました。

下に載せるものは、衣装がそれぞれ全然違っていて、その部分だけでも、かなり印象が異なりますが、そこがまた面白いのであえて並べてみます。(笑)

 

まずこちらは、2007年のカナダの国内選手権(全カナダ選手権)でのフリー、「アララト」。

 

前半は、何とも言えない崇高さが全身から感じられるほど。 澄んだ、研ぎ澄まされた美しさに息を呑む感じの演技です。

「背中の疲労骨折」と言われた怪我からの復帰だった試合にも関わらず、見事な演技で観客が総立ちになって感動しています。この時点での、カナダ国内の歴代ベストスコア演技となりました。

 

そしてこちらは、その少しあと、2007年の世界選手権フリーで滑った「アララト」。

 

この時の衣装は、上の全カナダ選手権時と違っています。爽やかで上品なイメージです。(プログラムのテーマに合っている衣装かというと、爽やかすぎる気もしますが、私は好きでした。) 2008年にも、同じプログラムを滑るのですが、その時はまたさらに全くイメージが違った衣装で挑みます。それぞれ全然違うので、なかなか興味深いです。

この演技のバトルさんは、音楽に合わせた、豊かな表現力を見せてくれます。一つ一つがいちいち美しく、決まっています。

ジャンプで果敢に攻めてきたはずの演技だったのですが、冒頭の4回転と3回転アクセルを失敗してしまい、特に4回転が、この動画で本田さんが解説しているように回転不足の上に転倒が重なったため、得点で大きく損してしまいました。

難易度を上げたのに、ミスによりかえって点数は伸びず、ショートから大きく順位を落としてしまい、非常に落胆したバトルさんでしたが、演技そのものは印象に残りました。

 

下に載せる、翌年2008年の世界選手権のものと比較してみてみると、違いが面白いです。

この時のジャンプミスによる点数での惨敗の教訓は、結果的には翌年の戦略変更につながったようで、翌年の世界選手権での優勝をもたらしたことになります。

今はさすがに、4回転なしで優勝は絶対にあり得ないほどのハイレベルな状態になってますけど、その人独自の強みを最大限に活かすと、やはり「記憶に残る演技」になりますね。 

 

 

同じく、2008年の世界選手権で優勝し、世界王者になった時のフリー「アララト」

 

「アララト」2年目の演技。

前年とは全然違った、赤と黒の衣装に変わり、振り付けやイメージも少し変わりました。

この時のバトルさんのコーチは、今のネイサン選手のコーチである、アルトゥニアン・コーチでした。

演技が始まってすぐに、(あ、バトルさんは、これが現役最後の演技になる覚悟で滑っている!)と感じて、ハッとしたのを覚えています。 

いつもと気迫が全然違ったように思え、本当に、最初から最後まで、ものすごく強い覚悟、本気度が伝わってきた演技でした。

特に後半の迫力がものすごくて圧巻で、終わる前から観客の歓声がやまなくなり、最後は総立ち状態です。

この音楽は、以前このページでもご紹介したように、映画「アララトの聖母」からとられたもの。聖なる山とも呼ばれる有名なアララト山(トルコとアルメニアの境にある)のふもとであった、アルメニア人大虐殺という「史実」を、被害者視点で描いた、非常に重いテーマの映画音楽でしたが、そのテーマの重さに全く負けていない演技となりました。

4回転を回避したことに、一部では異論もありましたが、 ここで優勝したことで、バトルさんは結局、現役引退を決意することになっていきました。

 

 

 

ジェフリー・バトルさんの引退会見(2008年9月)に、日本語字幕をつけてくださったものを載せておきます。

 

2008年の世界選手権のフリーで、明らかに燃焼しきったように私の目には見えていましたので、私は当時、(やっぱり…)と思っただけで、引退は驚きませんでした。

4回転への挑戦というのは、羽生選手みたいな人はますます意欲を燃やすけど、バトルさんのような個性の方にとってはモチベーションにはならず、むしろ心身の負担に感じられていたのではないかと、当時の私には見えましたね。

人にはいろいろな個性と特技がありますから… 

それぞれに与えられている、唯一無二の個性を活かすのには、様々な道があります。

何かの道が塞がれたら、そこではない道にこそ、その人を本当に活かす世界が広がっていた、ということも、多々あると思うので…

一見、八方ふさがりのように見える時でも、希望を捨てずに前に進んで生きていきたいものですね…!

 

今、バトルさんが振付師で良かったと思っている人は、世界中に大勢いることでしょうから、この時、バトルさんにバンクーバー五輪で活躍してほしかったカナダの人たちはガッカリしたそうですが、やはり結果的には、この決断は素晴らしかったのではないかと思います。

 (バトルさん引退により、パトリック・チャン選手のカナダ王者時代へと変わります。)

 

 

こちらは、引退した2008年のアイスショーの演技、「ピアノと弦楽のためのエクローグ」。

バトルさんの長所が良く出た演技です。

羽生選手の「バラード第一番」と、雰囲気や印象がやや似ている演技かな、と思います。

 

 

最後に、羽生選手がインタビューで好きだと語っていた、「Uptown Funk」。

ショーの演目ですし、滑っているというより、踊っている印象の強い演技ですが、だからこそ、全体の滑りが解るような動画をあえて使わせてもらいました。

 

 

その後もショーなどで活躍されていますが、主に現役時代の演技を中心に、今回はご紹介してみました。

 

さらなるジェフリー・バトルさんの魅力は、根っからのバトルファンの皆様にお聞き下さい!(笑)

 

※ このページに書いた情報で、間違い等がございましたら、遠慮なくご指摘下さい。謹んで訂正させて頂きます。


最高おススメ演技 その21 魂を揺さぶられる渾身のEX、「天と地のレクイエム」

2017-03-16 | プロアスリート羽生結弦・羽生結弦選手・最高おススメ演技集

 

最高おススメ演技 その21は、東日本大震災から5年が経過するシーズンに、

羽生選手が故郷の東北の被災地を強く思い、多くの魂を思い、生き残った人たちのことをも思い、それらを少しでも多くの人に伝えたいと願って選んだ エキシビション 「天と地のレクイエム」です。

このシーズン、羽生選手はEXでこの演技を続けました。

 

この演技は、東日本大震災という「現実」に起きたことがベースとなり、非常に繊細な、人の死がテーマとなっていたこと、観る側の人たちにも、それぞれが抱えてきた辛い現実を思い起こさせる側面があることを踏まえて、

だからこそ、どのような心の状態の人であっても、全ての人に問題なくお勧めできると思われる演技を中心に、ご紹介してみたいと思います。

 

 

私から見た、世界中の誰にでも勧められる「ベスト演技」は迷わず、シーズン最後の世界選手権のエキシビションとして披露された、こちらの演技です。

 

 

 

世界王者奪還のため、本気で頑張ってきた羽生選手が、SPぶっちぎりのトップから、フリーでまさかの2位に終わり、

「悲しみと喪失感」を感じたと語った後に演じてくれた、このエキシビション。

 

「レクイエム」には、本来は絶対に不可欠要素である、「極度の悲しみと喪失感」。

羽生選手に、しかも世界選手権で、これらの感情を感じてほしかったファンなんて、恐らく一人もいないでしょう。

 

でも、計らずも羽生選手の心に、それらが強く感じられた時に演技することとなったこの回は、

そのことが逆に、この時のレクイエムを「正真正銘の本物」にしたかのように、見えました。

 

本当に優しい、深い深い思いやりに溢れ、一つ一つの動作にも、洗練された美しさと丁寧さが際立ち、

観る者の胸を打ち、思わず息を呑むような、本当に素晴らしい、珠玉のレクイエムとなりました。

私はこの演技を初めてみた時、「宝物のような」演技だと感じ、涙が止まりませんでした。

このような演技をシーズン最後に観られたことは、本当に嬉しかったし、幸せに思いましたね。

 

演技の最後、羽生選手の目に、涙が光るのが、この映像からも解ります。

隅々にまでにじみ出ている優しさが、見ている側にも優しく届く、そんな温かい演技です。

 

実はこの演技、羽生選手は後に、

「エキシビションの日は、これが人生で最後のスケートになるんだというような覚悟で滑りました」と語っています。

(アイスジュエルズVol.4のインタビューより)

この後羽生選手は2か月近く、氷に乗ることさえできない、全く滑れない状態になってしまいます。

本当はかなり酷い怪我を負っていたのを隠した状態に加え、様々な心の痛みを抱えながら、羽生選手が精一杯演じて下さったこの回は、そのくらいの試練の連続の果てに、あらゆる覚悟を決めた上での、全身全霊、渾身の演技だったのですね。

 

「レクイエム」は、日本語ではアバウトに、「鎮魂歌」と訳されてしまうことが多いですが、

正確な意味での日本の「鎮魂」とは、「レクイエム」の本当の意味は、かなり異なっています。

「レクイエム」とは、『亡くなった方の魂の、天における幸せ(または死後の世界の扱い)を、天地創造主である神様に祈り願い、残された者たちの心を深く慰め癒す神様のその慈悲深さと素晴らしさを賛美すること』なので、「心さえあれば」、世界中の誰であっても、天に捧げることが可能です。

 

この世界選手権の時の羽生選手のエキシビションの演技は、世界中の方から非常に高く評価されたようで、全選手のエキシビション演技の中で、アメリカ・ボストンの現地会場での人気が、一番だったとの投票結果が出ました。

世界中の人たちにも、等しく伝わるものがあったのでしょうね…!

本当に素晴らしい演技だったと思います!!

 

個人的には、羽生選手がこのシーズンで本当に伝えたかったもの、心の奥の願いが、実は一番叶えられ、世界中に伝わった瞬間だったのではないかと…  そんな風に、私には思えました。

 

 

 

次は、羽生選手がショートとフリーの両方で、世界歴代最高得点を更新した、2015年NHK杯の時のエキシビション。

日本の長野で行われたこの時、羽生選手は、試合でも非常に優れた演技を見せましたが、試合だけでなく、エキシビションでも本当に素晴らしい演技を見せてくれました。

 

 

 

強い気持ちで臨んだことが解るような、とても優しい、本当に優しいのに、羽生選手の真剣な思いがヒシヒシと伝わってくるような、胸にグッとくる渾身の演技になっています。

日本会場ですので、その分、込められている思いも、それまでより深まっているように思え、

人々の心の琴線に触れるような、癒しと慰めにつながるような、そんな演技に見えました。

最後が、ほんのりとした希望を感じさせてくれるような終わり方で、印象に残りますね。 

 

 

こちらは、2015年全日本選手権の時の、エキシビション。 

全日本4連覇を成し遂げた羽生選手が、作曲者とは別の奏者による「生演奏」で滑ったため、曲の雰囲気が少し他の演技とは異なって見えますが、生演奏特有の臨場感と共に、これもなかなか素晴らしい演技でした。

音楽に合わせ、羽生選手はいつも本気で、ありったけの想いを込めて演じて下さっているのが解ります。

 

 

 

トリプル・アクセルが、イーグルで入り着氷後もすぐイーグルにする難易度の高い技を、試合のみならずEXでも披露して下さいました。

この動画の最後には、アンコールで演じられた、「SEIMEI」のコレオ・シークエンス部分がついていますので、その点でもおススメの動画です。

衣装がこのままなせいで、ちょっと不思議な感じもありますが、レクイエムとは逆に、羽生選手の強さや、喜びが伝わってくるような、迫力に満ちた素晴らしいアンコール演技でした。

 

 

 

こちらは、シーズン初戦で2位に終わり、悔しい思いをしたはずの、スケートカナダの時のEX.

しかしさすがは羽生選手、そういった感情をこの演技に持ち込むことなく、むしろ良い形で影響したようにさえ見えました。

この演技は、カナダで行われた会場には震災と関係のない外国人も多かったためか、辛さや悲しみを前面に押し出すような演技にはなっておらず、とても穏やかで丁寧に、優しく、羽生選手の持つ深い思いやりと、震災に対する真剣な感情が伝わってくる演技で、激情はあえて抑えて演じてあるように見えましたが、その分細部にまで神経が行き届いていて、非常に美しくもカッコイイ演技となっています。

グランプリシリーズ最初の試合でしたが、羽生選手のこのエキシビション演技にかける想いや本気度が、本当に良く分かった回でした。

 

震災とは関係のなかった方たちの心にも、あるいは、日本から遠い国々の人にも、自然にその思いが伝わり広がっていくと思われるような、多くの人に受け入れられる形の演技になっていたため、羽生選手の本来の願いが実現されるという観点から見ると、文句なしに素晴らしい出来のレクイエムになっていたと、私は個人的には思いました。

 

特にこの映像は、「本当に美しい」という言葉がピッタリで、画面に映り込んだ背後の光や、虹色の光彩までもが、心を込めて丁寧に演じる羽生選手を包み込み、その未来を、まるで神様が祝福しているかのように私には見えました。 

この後、現地会場の外では、なんと本当に、地平線から地平線までの巨大な半円の虹が見られたそうですから、

この時の試合結果は2位に終わったものの、私はこのレクイエムを見た後で、非常に強い希望を感じました。

 

そしてこの大会の後から、羽生選手は、歴代最高得点を更新する演技を連発させることになっていきました。

 

 

これらの演技が、演じて下さった、羽生選手自身の心の癒しにもつながっていたら、嬉しいですね…! 

 



「 わたしたちの本国は天にあります。」

(フィリピの信徒への手紙 3章20節  新約聖書: 新共同訳より)

 

「 We  are citizens of heaven. 」 

(Phillippians 3:20   Today's English Version)




「1回転アクセル」「オープン・アクセル」「ディレイド・アクセル」「リバース・ディレイド」それぞれの定義と違い

2017-03-14 | フィギュアスケート技術と羽生選手

3月24日: タック・アクセルの動画を追加しました!

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 「Notte Stellata(星降る夜)」の羽生白鳥が跳ぶ、毎回少しずつ異なっている、優雅にアレンジされている 1回転アクセル(シングル・アクセル)は、私はとても好きです。(白鳥の演技全体が全て好きなのですが。)

 

ですから、羽生選手の素晴らしい演技に、余計な一言を加えることになりそうでなかなか気が進まなかったのですが、

羽生選手の、あの演技の中に出てくる、1回転アクセルは何と呼ぶべきなのか、について、出来るだけ正確な定義の下で書きたいと思い、できる範囲で、丁寧にみてみます。

 

スケート・カナダの後に出されたスケート関係の雑誌等では、羽生選手の白鳥の中に出てくる「1回転アクセル」が、どれも全てが「1回転アクセル」の表記で統一されていました。

 

中には、「あれはディレイド・アクセルでは?」と言う声もあったりしましたが、

実は、ディレイド・アクセルは前から、その技の定義や認知に、関係者の間でさえ混乱があったようで、それが過去の日本の解説で、きちんと説明されていたことがありました。

 

「出だしがディレイド(遅れた)な1回転アクセル」(=羽生選手が言うところの、ディレイドなジャンプ)と、いわゆる「ディレイド・アクセル」と呼ばれる技は、正確には別物なのだけど、混同されたまま広まってしまっている、という説明がされていたと記憶しています。

 

当時の同じものを見ていて記憶している方々もいらっしゃるかと思うのですが、ディレイド・アクセルを滅多に見ることがない昨今では、羽生ファンの多くの方は知らないと思いますので、当時の解説者による解説の記憶と、英語の解説書等にある「正確な定義」から、それらの違いを見てみたいと思います。

 

 

まず、これらのジャンプの、それぞれの定義について見てみます。

 

1回転アクセルは、「アクセル」ジャンプの定義に基づいて跳ぶ1回転、つまり、実際には1回転半のジャンプだということで、特に問題はないですね。

アクセルは、全ジャンプの中でも、「前向きに跳ぶ唯一のジャンプ」で、アウトサイドエッジ(刃の外側)を使って踏み切ります。 アクセル・ポールセンさんという方が最初に跳んだ人であることから、アクセルという名がついています。

(ジャンプについて、わからない人は、「フィギュアスケート技術」のジャンプの解説ページでどうぞ御確認下さい。)

 

 

次に、オープン・アクセル、についてです。

私の持っている英語の解説書(跳び方の指南書みたいな本・やや古い)に書かれている、

「オープン・アクセル」の定義は、以下のようになっています。


オープン・アクセル (The Open Axel)

「このアクセルでは、離氷の時の体勢を、少しの間維持させます。

空中に上がったら、開いた両腕を、僅かにだけ縮めて、まるで大きなビーチボールを抱えているかのような状態にします。

両腕が、空中では多少なりとも開いている状態にあるため、

着氷の時に回転を止めるのはより難しくなり、

より大きな力とコントロールが、通常のアクセルジャンプよりも必要となります。

ジャンプが高ければ高いほど、観客にはより大きなスリルが味わえます。 

このジャンプは、観客にとても好まれます。」

 

また、こちらの英語の解説ページでは、オープンアクセルはシンプルに、次のように説明されています。

 

オープン・アクセル… いくぶんか身体を開いた体勢のままで、回転が本来より不足気味で実行されるアクセル。


 

次に、ディレイド・アクセルについて、定義を見てみます。

上と同じこちらの英語解説では、こう説明されています。


ディレイド・アクセル… 跳びあがった後に、ワルツ・ジャンプの体勢をより長く維持してから、ジャンプの回転の終わりごろには、回転速度がより速まっていく、アクセル


こちらの英語の解説ページ(クリックどうぞ)では、このように説明されています。

(Delayed Axel )  It is identical to the regular axel, but there is an appearance that the rotation stops momentarily while the skaters is in the air.

ディレイド・アクセル…  普通のアクセルとそっくりだが、スケーターが空中にいる間に、回転が一瞬だけ止まったかのように見えるところが異なるアクセル。

 

私の持っている解説書では、この上の二つの文章に載った特徴を両方合わせたものが「ディレイド・アクセル」とされています。(後で詳述します)

 

さてここでちょっと先に、過去に日本の解説で、「正しいディレイド・アクセル」として説明されていた内容(私の記憶に残っている内容)を、説明してみたいと思います。

 

少なくとも羽生選手がスケートを始めるよりもは前の頃かと思われる、恐らくは20年前後~30年前の間頃だったように思うのですが、

当時の私があまり興味を持っていなかった外国人男子選手(誰だったか名前を思い出せません、本当に失礼でスミマセン)で、思わず目を見張るような、すごくカッコイイ印象的なディレイド・アクセルを跳んで、特徴のある、見事な着氷をしてみせた男子選手がいました。

 

その時に、日本のテレビでのベテラン解説者が、それを見て、

「今のが本当の、正しいディレイド・アクセルです!」という感じで声を大にして言いまして、

「ディレイド・アクセルというのは、実は、今のように、着氷の直前に、明確な空中での一時静止があってから、このように(力強く)着氷するのが正しいのであって、

そうでなくて、回転しながら普通の着氷をするものは、「出だしの遅れた1回転アクセルに過ぎない」のであって、

今現在、ディレイド・アクセルだと思われ、そう呼ばれてしまっているもののほとんどは、正確には実は、ディレイド・アクセルに なっていないんです!! 」

 

と (決して一言一句まで正確なわけではありませんけれども、) だいたいこういう内容を、

日本のベテラン解説者が、ここぞとばかりに力説されていたことがあったと記憶しています。

正確にはディレイド・アクセルではないという、「空中に上がってから回転を開始する、出だしが遅れた(=delayedになった)1回転アクセル」が、「ディレイド・アクセル」と呼ばれて認知され、広まってしまっている当時の現状に、解説者の方はお困りだった印象でした。

それで、「こういうのこそが、本当のディレイド・アクセルなんです!」と、その選手が跳んだのを見た時に、強調され、力説されたんですよね。

 

その時に、「へー!そうだったんだ…!なるほど~!」と大いに感動してしまった私は、そのジャンプの映像だけはしっかりと記憶に残っているのですが、それは、

跳びあがってから回転を始めることで、回転始めがディレイド(=delayed)になるだけでなく、回転し終え、着氷前のまだ空中にいる間に、「フッ!」という一瞬の静止状態があって、

(=両腕をバッと横に開いた、いわゆる「回転を止める」姿勢を、1回転半まわった後に、空中で行うことによって、ほんの一瞬の空中静止状態が起きる ) 

それから着氷するため、着氷のタイミングがほんの一瞬遅れたように見える(Delayed=遅れた)形になっていたのが、正しいディレイド・アクセル、と呼ばれていたと記憶しています。 

 

つまり、「正しいディレイド・アクセル」と呼ばれたそのアクセルは、

着氷直前に、止めの体勢による「空中一時静止」、すなわち「両腕を開いたポーズ」を行ってから、そのまま後方に落下するように、ズサッと、力強く印象的な着氷で終わるもので、

「明らかにただのアクセルジャンプとは違う」、「かなり特殊な技」として、誰にでも認知できる、明確な特徴のあるジャンプだった と思うのです。

 

例えば、羽生選手が良く言う、「シュッと跳んで、パッと降りる」 「シュッ・パッ」 という感じの言葉で表現するならば、

その時に「正しい」と説明された ディレイド・アクセルは、

「フワ~ン(まっすぐ方向へ離氷・長く空中を維持)」→「クルクッ(急速に1回転半・後半スピードアップ)」→ 「バッ(両手を広げて、回転の勢いを止める空中での一時静止)」→「ズサッ(両手を開いた姿勢のまま落下して力強く着氷)」

という感じで行われた技でした。

 

英語の解説書での技の説明と定義は、以下のようになっています。

  

ディレイド・アクセル (The Delayed Axel)

「 まっすぐに前方・地上から20フィートの高さの地点を目印として見つめ、前方の目印を見つめたまま(回転をかけずに)跳びあがり、両腕を離氷時の瞬間から前方で肩の高さの位置に保ったまま、空中の一番高いところに到達してから初めて回転を始めなければならない。

空中に上がりきってから、両腕と頭と足を急速に締めて回転姿勢に入り、

ここから急速にスピードアップしながら1回転半回り、通常の着氷ポジションに自然に入るより前に、1回転半を完全に回り切ってから、着氷しなければならない。

ジャンプの終わりごろ、空中での回転速度が増しているため、着氷の時には、

通常のアクセルジャンプの着氷よりも、より強い「止め」(=チェックと呼ばれる、両手を横に広げた体勢) が必要となる。」

 「 ディレイド・アクセルは、正しいテクニックとタイミングで行えば、通常の着氷体勢に入っていくより前に、アクセルの1回転半の回転を、しっかりと回り切ることが可能である。 」

 
 
と、書いてあります。(実際には跳び方の説明はもっと長い文章ですが、要約) 
 
 
ここには、空中一時静止が要件とは書いていないのですが、「着氷前に、1回転半をしっかりと回り切ってから着氷に入ること」 と「力強い『止め』(=両手を広げた体勢)が必要とされる」 ことは明確に書かれておりまして、
 
多分この点が、上の別の英語の解説文にもあった「まだ空中にいる間に一時静止したかのように見えるアクセル」と書かれ、また、昔の日本のベテラン解説者が仰っていた、
 
「回り切ってから、着氷直前に空中一時静止があるのが、正しいディレイド・アクセルであって、そうでないものは、出だしの(回転始めの)遅れた1回転アクセルに過ぎない」

と指摘していた点に該当する部分なのではないかな…?と、思われます。 
 
 
(※ 「今現在の正式な定義はこうだよ」ということがどこかで解説されて判明した場合で、ここに書いたものに間違いがある場合は、該当箇所を、謹んで訂正させて頂きます。 )
 
 

離氷と同時に回転を始める通常のジャンプと違って、空中に跳び上がってから初めて回転を始める「ディレイド(=delayed 遅れた)」になるところが、オープン・アクセルとディレイド・アクセルは共通しているのですが、

「ディレイド・アクセル」という名で呼べる技は、オープン・アクセルより長い滞空時間を、真っすぐの方向にむけて回転をかけずにギリギリまで維持する必要があるようで、さらに空中で回転を始めてからは、今度はジャンプ終わりに向かって、回転速度がスピードアップしていくのが、「ディレイド・アクセル」という技の特徴として、定義されています。

(オープン・アクセルは、回転速度の変化には言及されていません。) 

 

これらの基準で見ると、スケート・カナダのEX本番での羽生選手の、あの1回転アクセルは、

回転開始はディレイドだったとしても、ジャンプ後半の、特に着氷直前を見ると、白鳥っぽくアレンジしているせいで「普通に回転しながらの滑らかで優雅な着氷」になっているため、ジャンプ後半が明らかに定義から外れていて、正確にはディレイド・アクセルとは呼べない状態だろうと思えるのです。 

 

 スケート・カナダEX本番の演技  (動画3:00頃からのジャンプです)

 

 

かつて「正しい」「完璧」と言われたディレイド・アクセルを跳んだ選手が、いったい誰だったかを覚えていなくて、大変申し訳ないのですが、
 
ちょっと探してみた範囲で、まだそれに「近い」ように見え、当時の解説者の基準から見ても、きっと正しいディレイド・アクセルと呼べる範囲内と思えるジャンプの動画が、こちらです。 ↓
 
 
ジョセフ・ソバフチックさん   
動画の、1分17秒あたりで跳びますので、ご確認下さい。
 

 

私が見ていた「正しいディレイド・アクセル」なるものは、これよりもさらにもっと、「着氷直前に、明確な空中一時静止があった」ジャンプでしたが、

それでも、これは一応「ディレイド・アクセル」に該当するのでは、と思います。

(もっと適切なものを見つけたら、その時は差し替えるか、追加しておきたいと思います。)

 

 スケート関係の雑誌で、羽生選手の白鳥の1回転アクセルが、「ディレイド・アクセル」と書かれずに「1回転アクセル」の表記に統一されていたのは、以上のような理由では、と思います。 

 

また、私がこのブログでの、スケート・カナダの「白鳥」演技のページで、あの1回転アクセルを、最初に「オープン・アクセル」と書いておいた理由は、

本番ではなく、「公式練習」の時の1回転アクセルのジャンプを見て、当初、羽生選手が跳ぼうとしているのはオープン・アクセルなのでは?と思ったからです。

羽生選手がスケート・カナダ時の「EX公式練習」で練習していた1回転アクセルは、ディレイド・アクセルには該当せず、むしろオープン・アクセルに非常に近かったことと、「白鳥がテーマ」だと羽生選手は語っていたので、より白鳥に見えるのは、よりふんわり跳ぶオープン・アクセルだと思ったので、そう推測したまでです。

記憶に残っている「正確なディレイド・アクセル」は、私から見るとかなり男っぽいイメージで、カッコイイ技ではあるものの、あまり白鳥のイメージではなく、むしろ完全に別の鳥に見えてくる気がしたので、振付師がそう指示している可能性は極めて低いだろうと思ったのです。

 

その公式練習の時のジャンプとは、こちらです。 (スケート・カナダEX公式練習)

現地の動画主様たちが撮影したものを、使わせて頂きます。  

 

この動画、3:00あたりのところで、羽生選手が、1回転アクセルを跳んでいます。

右下の、歯車マークのところをクリックすると、「速度」という項目があり、スピードを変更できますので、

普通は「標準」となっている、そこの数字を「0.25」という、最もスローな設定に合わせてから再生してもらえれば、羽生選手の動きが、通常よりもスローにした状態で確認できます。

より正確に、羽生選手が跳んだ形がどうなのか確認できますし、細かく判明します。

(羽生選手、失礼します!)

 

ここでは明らかに全く両腕を閉じることもなく、ふんわりと開いた状態のまま(=オープン)になっており、もしディレイド・アクセルなら空中に上がってから、キュッと両腕と身体を締めなければならないのですけど、それが見られません。

着氷直前に、いわゆる「止め」=「チェック」と呼ばれる体勢で、空中で回転を止めてもおらず、だから「空中一時停止」もないですし、回転速度もほぼ一定のまま、回転しながらふんわりと優雅に着氷していますので、

これはディレイド・アクセルとは呼べず、むしろ「オープン・アクセル」に近いジャンプ になっているだろう、と私は思いました。 

(でも、だからこそ、白鳥らしく見えるのですが。)

 

もう一つ、同じ、練習の時の演技の、別の動画主様の動画を確認してみます。

同じく、動画3分頃から、羽生選手が跳びます。

こちらの映像でも、羽生選手はわずかに両腕を閉じかけただけで、広げたまま回転していて、さらには片腕だけを横に開き、回転しながら普通のアクセルのように着氷しているのがわかります。

昔の解説者が言っていた「正確な」という基準で見るならば、やはりディレイド・アクセルとは呼べないジャンプになっているだろうと、私は思いました。

だけど、このジャンプ、私は好きですね…!!とても良いと思います。

この公式練習の羽生選手の演技自体も、とても情感あふれる感じで、素晴らしいですね。(笑) 練習なので、イナバウアーを、「レイバック」なしでやっていますし、ハイドロも省略されてしまってはいるのですが、それでも見ていて思わず惹き込まれるような演技です。

 

 

次に、NHK杯の時の白鳥演技の、1回転アクセルについて見てみます。

この時は明らかに「オープン・アクセル」とは決して呼べない、両腕を途中で完全に閉じて(締めて)いる形の、1回転アクセルを羽生選手は跳んでいました。

 

日本のテレビ解説では、この時、織田さんはディレイド・アクセルだと語ってくれたのですが、確かに一番近いジャンプになっていたとは思いましたが、

ただそれでも、上に書いてきたような、昔の日本の解説者の解説による基準を思い出すと、ジャンプ前半の離氷については明らかにディレイド(=delayed)にはなっているのですが、ジャンプ後半や着氷を見ると、うーん、どうなのでしょう…?

でも、織田さんがそのように解説したのもちゃんとした理由があり、昔の解説が言っていたように、正確には「出だしの遅れた1回転アクセル」なものが、ディレイド・アクセルだと思われ、そのように広まってしまっている現状があったはずなので、今でもそれを受け継いでそのように思っている人たちが大勢いるのは判りますし、だからこそ、織田さんがそう解説したのも、特に驚きはないです。

 

ちなみに、羽生選手のこのNHK杯の1回転アクセルは、ジャンプの高さの頂点に達したあたりから、早くも「両腕も両足も開き始めている」ため、

むしろ、ジャンプの終わりごろに「ディレイド(=delayed)」要素を入れることが定義となる、

「リバース・ディレイド・アクセル」というものにちょっと近づいたジャンプになっています。

 

しかし、正しい「リバース・ディレイド・アクセル」の定義を見ると、この時の羽生選手の1回転アクセルは、正確には、ジャンプ前半部分がこれに該当しないことになるかと思います。

 

「リバース・ディレイド・アクセル」 (The Reverse Delayed Axel) とは

「delay」(遅れ)を、ジャンプの最初ではなく、ジャンプの終わりにだけ取り入れる。

(delay(遅れ)を、ジャンプの最初に取り入れているのが、ただの「ディレイド・アクセル」、逆に、ジャンプの終わりに取り入れているのが「リバース・ディレイド・アクセル」。)

離氷の時は、通常のアクセルジャンプと同じように跳びあがり、むしろ両腕と右脚を急いで引き寄せて回転体勢にもっていくことが重要で、

ジャンプの最も高い位置、すなわち、4分の3回転したところから両手と両脚を開いていき、残りの4分の3回転の間はスピードダウンさせていき、とても滑らかに流れるような着氷で終える1回転アクセルのこと。

着氷の瞬間には、既に両腕も両脚も開いた体勢でいなければならず、閉じていてはならない。 


 

また、こちらの解説では、リバース・ディレイドは、このように定義されています。

リバース・ディレイド・アクセル… 

(1回転半のうち、空中で)1回転を回り終えたあたりから、回転を解いていくアクセル。 

(ただのディレイド・アクセルとは逆に)ジャンプの回転始めのほうが、よりスピードが速く回っているアクセルのこと。

 

 結局、このNHK杯の時の羽生選手の1回転アクセルは、ディレイド・アクセルと、リバース・ディレイドを、前半と後半で合体させたような形になっているように思いました。

 

ディレイド・アクセルが、「空中に上がってから回転し始めさえすれば、それだけで ディレイド・アクセルと呼んで良い」 という基準だったら、確かに、羽生選手の跳んでいるものは、みんなディレイド・アクセルに該当することになっていくことでしょう。

しかし、全てのスケート雑誌で「1回転アクセル」と書かれていたのは、やはり正確な定義では、ディレイド・アクセルという技の名で呼ばれるための基準を満たしていないからだろうと…。

関係者が誰もディレイド・アクセルを知らない、などということは、絶対にあるはずがないですから。

 

 

羽生選手の1回転アクセルは、「優雅に、より白鳥らしく美しく魅せるため」のアレンジによる振付の影響であのような形になっていると私は思うので、

決して、「羽生選手が正確な技を跳べていない」などと言いたいのではなく、

「あのジャンプの形はどう呼べばいいのか?」という問題なだけですので、そこはどうか誤解なきよう、お願いいたします。(笑)

 

私はむしろ、正確にディレイド・アクセルを跳ばれるよりも、白鳥の演技としては、羽生選手が今現在跳んでいる形にアレンジされたもののほうが、ずっと白鳥らしいと思っていますので、演技そのものについては何も言うことはないのです。

 

 

最後に、グランプリ・ファイナル2016の時の白鳥の1回転アクセルについて見てみます。

グランプリ・ファイナル2016の「白鳥」

 

この時、羽生選手はそもそも、空中で「両腕を締めて」さえもいなくて、片腕だけを身体に引き寄せて、もう片腕だけを開いたままの状態にして回転しており、スピードアップもしていないし、空中一時静止もなく、回転途中から片腕だけを先に開ききって優雅にアレンジされていたため、回転速度(スピード)もジャンプの終わりごろにむけて、スピードが落ちてさえいますし、

回転しながら優雅に着氷していたので、やはりこれは明らかに「正確にはディレイド・アクセルではない」ジャンプになっていて、

やはり、「独自の優雅アレンジの施された、出だしを遅らせた1回転アクセル」ということになるかな、と思います。

 

オープン・アクセルは、「普通のジャンプと違って、身体を締め切らずに、いくぶんか身体が開いたままの状態で回転していればそれで良い」ようにも読める解説もあるのですが、

羽生選手のこのGPFの時みたいに、回転途中から片腕だけを完全に横に開いて、片腕は胸側に閉じているような形の場合は、一体どう判断するのか… よくわかりません。(笑)

両腕が、まるでビーチボールを持ったかのような形になっていないことは確かです。

結局、「1回転アクセル」の優雅なアレンジ版 と呼ぶのが一番無難なのかな、と思います。

 

 

 

  

こちらの雑誌のインタビューでは、羽生選手はあれを、練習の時に、空中に上がってから回転を始めるジャンプをよく跳んでいて、それを見て、振付師のデビッド・ウィルソンさんが気に入って、取り入れることになった、というエピソードを語っていました。 ↓

 

フィギュアスケート日本男子ファンブックQuadruple(クワドラプル)2017 (SJセレクトムック)
スキージャーナル
スキージャーナル

 

 

フィギュアスケートの技術の定義については、時々混乱していることがある印象というか、

指導者の流れによって、あるいは国によって、ちょっとずつ違っていたり、

うるさい点が違ったり、あるいは、定義そのものが、ある時からいきなりガラッと変わったり、ということがあるし、

また技術の定義や、評価のポイントなどで、関係者間でさえも、大きくもめていたり違っている様子も過去にはチラホラあったりしたので、難しい時があります。 

このディレイド・アクセルは、ここの解説を読む限りでは、アクセルジャンプを初めて跳んだ人である、アクセル・ポールセンさんが、アクセルのバリエーションとして跳んでいたジャンプの一つかのように読めますが、こちらの解説を読むと、オーストリアのフェリックス・カスパール選手が良いお手本だと書いてあり、でも、検索した限りでその映像は出てこないので、どのように跳んでいたのか、ちょっとわかりませんでした。

 

でも、20年前くらいの当時の日本の解説によれば、ディレイド・アクセルについては、選手やスケーターや関係者の間でさえ、かなりの誤解や混乱があったようでしたので、

私ごときがあまり余計なことには書きたくなかったのですが、

出だしがディレイドなジャンプになっている1回転アクセルと、「ディレイド・アクセル」という名で呼ばれる技とは、正確には違うのに混同されている、と解説されていた記憶がどうしても残っていたので、丁寧に書いてみたつもりです。

 

 

 

技の定義については、時々変更があったりするが難しいところです。

 

例えば、羽生選手たちが現在よく跳んでいる「1回転ループを挟んだ、3連続ジャンプ」ですが、

プルシェンコ選手の時代の頃は、この真ん中のループ・ジャンプは、「ハーフ・ループ(=半分のループ)」と呼ばれていまして、(先日、4大陸の時に、羽生選手もハーフ・ループという表現を使っていました)

その当時は「1回転ループ」とは決して認められていなかったのですが、その後、

「ジャンプの着氷の足は、左右のどちらで着氷してもよい」という重大な定義変更がされた結果、

それまでは「ハーフ・ループ」と認定だったものが、ある年からいきなり、「1回転ループ」と認定されるようになって、そう呼ばれ、得点もそのように計算されるようになりました。

このように、技術については、基準の変更や、大きな定義変更も、たまにあるので…。

 

 

羽生選手のファンである私としては、細かい定義や技の名前を気にしなければ、

あの素晴らしい「星降る夜」の演技において、その名前がなんであろうと、とても魅力的に思える、あの「1回転アクセル」はとても好きなので、私としては正直、どう呼ばれようと関係なく、演技そのものには何も問題はないです。

 

ですから、余計なことをあまり書きたくありませんでしたが、きちんと説明しておかないと、かえって皆様を混乱させそうで申し訳ないと思い、このページを作成しました。

参考になりましたら、幸いです。

 

 

さて、ここで有名なオクサナ・バイウル選手の、リレハンメル五輪EXの白鳥演技を観てみます!

 

この動画の2分40秒過ぎに跳んでいる1回転アクセルは、

これは明らかにディレイド・アクセルにはなっていなくて、もちろん、オープン・アクセルでもなく、

明らかにただの1回転アクセルなんですが、それを、優雅に美しく、白鳥っぽくアレンジした着氷になっているだけなんですよね。

羽生選手のも、これに非常に近いイメージで、特に着氷はこれと似たアレンジになっているように思います。

でも、羽生選手の1回転アクセルは、跳び始めが明らかに空中に上がってから回転を始める「ディレイド(遅れ)」の状態でスタートさせているところが、このオクサナさんのアクセルとも決定的に違うのですが、

こういうオクサナさんのような 「ただの1回転アクセルの優雅アレンジ」だけでも、演技としては十分白鳥らしくなっていて、これはこれで素晴らしいとわかると思います。

 

 

 

最後に、アクセルジャンプの、他のバリエーションの説明を載せておきます。

 

タック・アクセル (The Tuck Axel)… 

回転体勢に入りながら両腕を引き寄せる時に、両脚をも、スクワット・ポジションに引き寄せるアクセルのこと。

 

こちらの説明によれば、 タック・アクセルとは、スクワットの体勢のように、両足を曲げた状態で跳ぶアクセルのこと。

 

こちらの動画、2:35のところで、実際の「タック・アクセル」が見られます。↓ 

 

 


クロス・タック(・アクセル) (The Cross Tuck)…

基本的には、タック・アクセルと同じだが、スクワット・ポジションに両脚を曲げる時に、両脚をクロスさせるという点だけが異なる。

 

こちらの説明では、 両脚を曲げて、交差した状態で跳ぶ、アクセルのこと。


(タックアクセルとクロスタックアクセルは、定義から見ると、離氷の時にその姿勢を維持する、いわゆる「ディレイド」要素は必要なく、普通にすぐに回転を始めるアクセルの一つと見て良いようです。)



インサイド・アクセル (Inside Axel)…

左足・前向き・内側・エッジの踏切で跳びあがり、1回転半をまわって、右足・後ろ向き・外側・エッジで着氷するアクセル。


ワンフット・アクセル (One Foot Axel)…

通常のアクセルと同じように、「左足・前向き・外側エッジ」で踏み切って跳びあがるが、

踏切と同じ足である 左足で着氷し、「左足・後ろ向き・内側エッジ」を使って着氷する ところだけが、普通のアクセルとは異なるアクセル。

 

 

 

羽生選手には、より自分の理想とするイメージの演技に向けて、ますます頑張ってほしいと思います! 

 

今後の演技も、楽しみにしています!! 

 

 

※ このページに書いた内容で、間違いがある場合は、どうぞ遠慮なくご指摘下さい。

その他、訂正すべき内容等が発覚した場合は、その段階で、謹んで訂正させて頂きます。

 


4大陸後の羽生選手ロングインタビュー&プルシェンコ選手近況と、東京西川・春のキャンペーン

2017-03-13 | プロアスリート羽生結弦・羽生選手関連ニュース

 

 フィギュアスケートTVで、4大陸選手権のハイライト映像と、

試合後の羽生選手に語ってもらったロングインタビューが、公開されました! (←クリック)

(動画6分30秒過ぎから、羽生選手のインタビューです。)

 

なかなか素晴らしいインタビューでしたね。

もう色々な意味で、「さすが羽生選手だよ」って笑っちゃうような、ものすごい意欲的な言葉ばかりでした。しかも、とても良い表情で。

出来ればもっと早くに公開してもらいたかったですね!(笑) 既に1か月近くが経っていますので…。

これ、本当に試合直後っぽいですね。羽生選手の胸元からチラリと見えている衣装が、フリーの衣装ですよね。エキシビションよりもは前ということかと思います。ネイサン選手と宇野選手のことを、「非常に頼もしいとともに、非常に有り難いなって思っています。」と、輝かしいほどの笑顔で答えている羽生選手。

なんというか… あのー、すごく頼もしくて有り難いのは、羽生選手だと思いましたね、私は。(笑)

以下、インタビュー内容の書き起こしです。

 

羽生選手 「毎回同じパターンですけれども、ホントに贅沢だなって思うのは、結果もしっかり…まあ、しっかりとは言いませんけれども、まあまず、メダルはとれたっていう点と、あとは自分の中で手ごたえがあったっていう点で、収穫がありつつ、そして悔しさ、練習への意欲、というものをまたもらえたので、本当、いい経験させて頂いたなって思っています。」

(強い恐ろしい男(=ネイサン選手のこと)がまた一人増えたので、どういう手を、世界選手権にむけて打っていくつもりなのか、という質問)

羽生選手 「そうですね… もちろん、ネイサンは素晴らしいなって思っていましたし、まあ、あの宇野選手もループを決めたっていうことで、僕まだ(宇野選手の演技を)見れてないんですけど、まあでも練習で決めているところを見てたりとか、やっぱり非常に頼もしいとともに、非常に…なんだろ、有り難いなっていう風に思っています。(笑)」

(今までは自分の演技が出来れば勝利が見える状態だったと思うけれども、これからは「ワンミス」が命とりみたいな勝負の世界に入ってきているので、どうするのか、という質問)

羽生選手 「自分の演技イコール ”ノーミス”なんで…僕の中では。しかも、ただノーミスじゃなくて、完成された質のノーミスが僕の中では自分の演技だと思っているので、言ってみたらそれをやったら誰も敵わないと自分の中では自負していますし、あの、その自信を過信にならないように、さらに突き詰めて練習していかないとなっていう風に思いました。」

(今日の構成変更は準備はしていたのか?という質問)

羽生選手 「してないです。してないです、初めてやりました。アドリブです。(笑)」

(点差と今の状況の中でとっさに変えたということ?)

羽生選手  「はい。」

(次も、もしかしたらそうなるかも?)

羽生選手 「どうですかね。いやでも、サルコウ跳べれば、そんなことは絶対に起きないですし、あの言ってみれば、(いったん言いかけて表現を変えて言い直し)僕は4回転トウループの質よりも、トリプルアクセルの質の方が絶対にいいと思っているので、そう言った意味では、4回転トウループで冒険するよりも、トリプルアクセルの質をさらに上げて、後半で2本入れるっていうことがまあ一番かなっていう風に思っています。」

(それが今回やってもそうだなと?)

羽生選手 「もちろん、今回4回転トウループを後半に2本やってみての感想としては、『あ、同じジャンプって簡単だな』って思いました。やっぱり疲れている状況の中で、違うジャンプの注意点と感覚を照らし合わせるって難しかったんですけど、同じジャンプを跳ぶことで、疲れてても一本跳べれば、あ、次も跳べるっていう風に自信になるなって思ったので、これからの練習方法も含めて、色々考えていけたらなっていう風に思いました。」

(みんな色んな練習方法を試していますけど、羽生式、というのがあったら)

羽生選手 「とにかく、短時間集中ですね。やはり4回転こうやって沢山跳ばなきゃいけない状況で、やはり後半にやっていたりすると回転足りなくなって怪我をしてしまうリスクとかもあると思います。ただそれは、やはり集中しきれなくなってきたりすると起きるミスだと思うので、体重管理だとか、怪我のリスクの負い方とか、そういったものを考えながら、短時間で効率よく練習するっていうことが、僕は一番合っているなっていう風に思います。」

(世界選手権の目標は?)

羽生選手 「先ほど言った、完璧な、完成されたフリーの演技を目指してやってきます。そのための練習方法も少し、今回つかみかけたものもありますし、えー、今回の試合期間は、フリーが最終日にあったので、言ってみれば、色んな選手の練習方法を見ることが出来たり、跳び方だったり、刺激を色々受けたので、まあそれも含めて、これからの自分のスキルアップっていうものを考えていけたらなと思います。」

(ここでの今日のこともあるし、2年間のこともあるからね)

羽生選手 「はい、もう、4大陸、もう銀メダルばっかりなんで、本当にフジさん的に(←フジテレビのことですね)申し訳ないですけど(笑)、この銀メダルは前にとったメダルよりも、非常に多くのことを得られた銀メダルだったと僕は思っているので、これをまたさらに活かして、その後に、さらに磨いていって、最終的には、また1年後、ここで金メダルとりたいなって思っています。」

 

小塚さんの、この羽生選手インタビューを見てのコメント

「(羽生選手は)いつも上を向いている感じがしますね。で、今このインタビューって多分試合終わってすぐだったと思うんですけど、やっぱりその時に見て聞いて感じたものに関してをすぐ自分の中に入れて、取り込んで、それをちゃんと自分の中で処理をして、ちゃんと話ができるところにまでする速さが速い。 やっぱり回転の速さというか、そこがオリンピックチャンピョンになった所以なんじゃないかなって言う風に、今見て、感じました。」

 

NHKの「アスリートの魂」の羽生選手特集で、本田武史さんが言って下さったコメント (動画10:15~)

4回転を3本フリーに入れたことのある本田武史さんによれば、(4回転ジャンプを)「4本跳び続けるためには、練習量に裏打ちされた強い精神力が必要」だという。(ナレーター解説)

本田さん 「疲れているところで4回転を跳ぶって出来るかなって。

けど、そこで心が折れた時点で、跳べないんですよね。跳べる!って思わないと。

どんな状況でも4回転ジャンプを跳べるっていうところまで作っていかないと、本番では決まらないですよね。どんなに疲れている状態でも、4回転を決められますっていう自信がなかったら、プログラムには入らないと思う。うん。」 

 

 

…本田さんの言って下さったことは、上の羽生選手のインタビューを見る限り、羽生選手は良くわかっているようですね。

 

羽生選手が、世界選手権でも、その実力を大いに発揮できますよう、納得いく演技が出来ますよう、心からお祈りしております!

 

 

さて、そんな本田さんと同世代で、いまだに現役… だったはずの、

羽生選手の憧れでもあり、元祖絶対王者だったプルシェンコ選手ですが、

なんと、スケート学校を開設されて指導に乗り出したと判りました!

こちら、プルシェンコ選手のインスタグラム (2月下旬のものです)

Dear friends, today I finally can share with you a very happy event in my life, I have been waiting for this for a long time, just in 2 months I'm starting my Academy of figure skating in the heart of Moscow, with the best coaches and choreographers, and most importantly, of course, I will not only train, but also will be a mentor for professional athletes! I continue to skate for you, but I'm interested in engaging with those who love figure skating, because the ice is my life, most of my life I spent on the ice and do not intend to violate the traditions, doors of my academy are open to children from all over the world! We will do from the impossible - possible! I am sure we will succeed.)

Phone for inquiries: +7 915 460-58-83 Eugenia

コメントの英語訳

「 親愛なる皆様へ 

今日私はついに、人生におけるとても幸せな出来事を、皆様と分かち合うことが出来ます!私は長いこと、この日を待っていました。

ちょうど2か月以内に、モスクワの中心部で、私はフィギュアスケートのアカデミー(学校)を、最高のコーチと振付師と共に、始める予定です。

何よりも重要なことは、もちろん、私は指導するだけではなくて、プロのアスリートたちのための、メンターにもなるつもりだということです!

皆様のために私は滑り続けますが、フィギュアスケートを愛している人たちと共に働くことにも私は関心があります。氷は私の人生であり、自分の人生の大半を氷の上で過ごしてきましたし、スケートの伝統を壊すつもりはないからです。

私のアカデミーは、世界中から来る子供たちのために、門戸が開かれています!

私たちは、「不可能」を「可能」にします! 私たちは成功すると確信しています。

お問い合わせの電話番号は、 +7 915 460-58-83   Eugeniaまで 」

 

プルシェンコ選手は、少し前の1月には、アイスホッケーにも取り組み始めたと知って、私は驚いていたのですが。こちら、ロシアNOWの記事より

以下、1月の記事より、プルシェンコ選手のコメント抜粋

「アイスホッケーやりたかったんだ。練習中に手を切って、腱、靭帯を切って、手術を受けた。だけどずっと練習していたことを伝えたい。時間があるときは30分ぐらい残して、ゴールにパックを投げていた。今日の結果は悪くないだろ。すごく嬉しい。やっとできた」

 「これは自分の5回目の試合。5回目にして、苦労の末、ゴールが出た。すべてのファン、特に今までと同じように来てくれた僕のフィギュアスケートのファンにありがとうと言いたい」

 

プルシェンコ選手は、来年の五輪は、どうする予定なのでしょうね?

プルシェンコ選手は、今の選手たちの4回転の技術進化と活躍ぶりには、きっと心から満足していることでしょう。

 

いずれにしても、プルシェンコ選手の行く先・未来に、神様の祝福がありますように…!

 

 

また、今月初めに、オーサーコーチのお父様が天に召されたとのことでした。

オーサーコーチを始め、ご遺族の皆様の上に、天来の深い慰めがありますように…!!

 

 

 

さて、最後に、東京西川が、羽生選手の、春の羽毛布団キャンペーンをやっています!

詳細は こちらをどうぞ。東京西川、春のダウンキャンペーンHPへ

3月1日㈬~4月30日㈰の期間で開催だそうです。

 

羽生選手にも、明るく清々しく美しい春が訪れますように… ♪

 


ボストン世界選手権2016の時の、羽生選手の真実について、関係者からようやく明かされたこと

2017-03-07 | プロアスリート羽生結弦・羽生選手関連ニュース

※2017年3月7日、さらにコーチサイドから判明した驚きの内容を、( )内に、太字で2か所、加筆しました。 ( )内以外は、昨年7月11日に書いた内容のままです。

既に1年前の内容なのでどうしようかと思いましたが、これでより全容が判ると思うので…

昨シーズンの世界選手権の舞台裏で起こっていたことを、羽生選手以外の関係者の人たちの証言からまとめました。 

それぞれの情報を読むことのできない立場にいるファンの方たちのために、参考までに。

 

***********************************************

 (2016年7月11日 加筆を加えました)

 

「SPUR」(シュプール)という雑誌の8月号に、「スケートは人生だ!」というタイトルで、

ライターの宇都宮直子さんという方が、ボストンで行われた、世界選手権2016の時の、

羽生選手の真実について書かれておられました。

SPUR(シュプール) 2016年 08 月号 [雑誌]
集英社
集英社

 

 発売から一定期間が過ぎたので、そこに載っていた、決して羽生選手の口からは語られなかった本当の事情

(「蒼い炎Ⅱ」が出版されても、もちろんその中でも羽生選手からは触れられていない部分)

について、ちょっとだけ書いてみたいと思います。

 

そばで見ていて、事情を全て知っていた、城田監督の言葉と、その場で事情を知りながら見ていたライターさんの目線で、

羽生選手のショートからフリーまでの間のことが、詳細に描かれています。

 

ここで、このライターの宇都宮直子さんは、「「チーム羽生」にとって、銀メダルは負けに過ぎない。」とし、

羽生選手が勝てなかったことについて、「理由ははっきりしている。足の故障である。」と明言されています。

そして、このことは、試合中はごく少数の関係者しか知らされていない、秘密事項だったことが明かされています。

「蒼い炎Ⅱ」の中では、羽生選手本人が、世界選手権の会場入り前までの期間を、どんな状況でどう過ごしたのかが詳細に書かれており、それを読めば、その前からずっとこの怪我のことが秘密にされていたことが解ります。

 

記事によれば、あの見事だったショートの後、みるみる腫れ上がり、「すぐに冷やせばよかったのだけど、会見があって難しかった。大きな長靴に氷を入れて、会見の間も冷やしてあげればよかった」と、後になって城田監督が後悔するほどだったそうです。

 

そのような状況だったのなら、羽生選手のあのショート後の会見は、確かにとても立派だったと言えるでしょう。

本当に幸せそうだったし、大変な壁をひとまず乗り越えたという喜びで一杯で、なおかつ、フリーに向けて気を引き締めて頑張ろうという意欲が良く見て取れました。

しかし、あのショート後の数多くのインタビュー映像、特に最後の方のインタビューだったと推測される、Jsports のものを見た時に強く思ったことですが、最初のインタビューの頃の明るい様子と比べると、明らかに羽生選手の顔色が悪くなっていて、かなりの疲労の色が見え、いつまでもインタビューに応じるのが、いつになく辛そうに見えたのです。

正直、あの映像を見ていて、ちょっと気の毒に思った私ですが、詳しい足の事情が分かった今となっては、より一層、ますますそう思えました。

あの時の足の状況がそんなだったのなら、もっとインタビューをまとめてやってもらい、羽生選手を短時間で解放してあげればよかったのに、と、どうしても思えてしまいます。

 

その夜、足の腫れは一向に引かずに、羽生選手は夜通し苦しんで、朝になっても足はそのままだったそうです。

 

(※ 3月7日追加加筆 その1: 

このショートの当日、公式練習の後、いったんホテルに戻ってマッサージを受け、本番に向けて予定時刻のバスでリンクに出発しようとしたとき、

荷物を取りに自室に戻った羽生選手の、部屋の鍵の調子がおかしくなって開かなくなり、何度もフロントと部屋を往復したために、会場に向かうバスに乗り遅れてしまったそうです。 

本当は足の怪我を抱えただけでなく、こんなアクシデントに見舞われて、予定より会場到着も遅れた状態で、当日のショートの試合に臨んでいたということが判明しました。)

 

羽生選手は、「蒼い炎Ⅱ」の中でも、ショートからフリーまでの間は、「全然眠れなかった」と語っていますが、これは、足の腫れの痛みで苦しんだことがまずは一番の主原因で、興奮状態だったことに加え、さらに色々な思いが重なって、結果的には「精神がぐちゃぐちゃ」になっていったという、羽生選手の悲痛な言葉につながっていきます。

それは、「蒼い炎Ⅱ」の羽生選手の言葉によると、フリーの滑走順で「2番」を引いたときに、「あ、僕終わった」などと思ってしまうほど、羽生選手の心を打ち砕いてしまっていた、とーーーー。

 

ライターの宇都宮さんによれば、足を痛めて以降の羽生選手は、「靴を履いてしまえば、なんとかなる。」という言葉をよく言っていたそうです。 

 

それはどういう状態かというと、城田さんの説明によると、

1: 痛む足に、無理やり靴を履く。 靴ひもをきつく締める。

2: 足がしびれるのを待つ。 

3: 完全にしびれてしまうことで、「しびれてしまったから、もう大丈夫です。感覚がないので、痛くもありません。できます。」と、羽生選手が言いだす状態になる。

 

こんな状況で闘っていたのが、ボストン世界選手権の時の、羽生選手だったのだ、と。

 

私は、1月半ばからはずっと「羽生選手はかなりの怪我を抱えていて、隠している」と思っていましたし、(オープニングにも出られない異常事態と、演技から推測)同じように見ていたファンも、少なからずいたはずだと思います。

(私はこのブログの2月の記事の中のコメント欄に、2月当時の怪我の可能性についてちょっとだけ意図的に触れていますので、そこまで読んで下さっていた方の中には、当然気づいていた方もいらっしゃるはずだと思います)

また、世界選手権・公式練習での例の妨害事件でも、報じられた状況と、羽生選手の反応の様子を聞いて、怪我を悪化させられてしまったか、新たな怪我を負ってしまってやりきれない思いになったけど、それを周囲には明かせない辛い状況なのだろうと推測していました。

それだけに、あのショートは本当に凄かったと思っていましたけど、この記事を読むと、「私が想像していた以上に」もっと足は酷かったのだなと、よくわかりました。 

ショート演技で、4回転と3回転のトウループだけのコンビネーション・ジャンプで、後続ジャンプがほんの一瞬遅れたのも、そのせいだったのでしょうし、それでもあれだけ完璧に決めて、よく耐えたな… と、ますます驚くほどです。 

 

城田監督は、公式練習は休ませるべきだったのに、休ませる勇気を持てなかった自分の詰めの甘さに責任を感じているようです。

もし、(公式練習を)休ませていたら、羽生選手が勝っていただろうとも語られています。

 

ここについて私は個人的には、「休ませていたら、もっと良い演技になっただろう」は大いに同意しますけど、それでも優勝だったかどうかについては、ちょっとだけ懐疑的です。 理由は、今までさんざん書いてきたけど、結果的には、羽生選手は2位にならなければならない理由があったと見ているからです。

(陰謀うんぬんじゃありませんよ。 念のため。)

 

また、本当に世界選手権で優勝させたければ、年明けのアイスショー「ニューイヤー・オン・アイス」のチケット発売時に使われてしまった、

「凱旋公演!」なんていう、本来シーズンが終了してから使うべきであるような宣伝文句は、世界選手権が終わってもいない、まさにこれからの段階では、絶対につけてはならなかったのではないかと思っています。 

(これはチーム羽生の責任ではないのだろうと思いますけど、日本側のスケート関係者や周辺マスコミの責任として。)

そんな宣伝の仕方をされたら、そのせいで羽生選手が急きょ休むことも絶対に出来なくなる立場に置き、責任を負わせたも同然ですし、終わってもいないシーズン中なのに、そういう扱いをすることは、まるで呪いのようにさえ見えてしまいます。

また、その年の王者を決める世界選手権の試合当日に、「王者のメソッド」なんていうタイトルで本を発売することも、実際に羽生選手は現・五輪王者なので王者でおかしくはないのだけれども、世界選手権の王者になるかどうかはまだ未定なのであって、プレッシャーを益々かけて逃げ場を一切なくすような事前宣伝になってしまうし、まるで結果が先に確定しているかにさえ見えてしまうから、ファンから見ても、正直、残念な気持ちになるものでした。

私は、羽生選手をものすごく高く評価しているけど、それでも、そんな私から見てさえも、これらのやり方は、せっかくの羽生選手の頑張りを逆に引き下げる悪しき要因になってしまっているようにしか思えなかったです。

たとえ正々堂々と勝っても、その時はその時で陰口を叩かれてしまうような誤解を与える立場に、ここまで自分の身体をかけて、本当に真剣に努力している羽生選手を、追いこむようなやり方の「商業主義」は、日本はすべきではないです。

 

たとえ羽生選手が強い気持ちで否定してくれたとしても、ファン目線から見て、少なくとも私にはそう思えていましたし、

同じ気持ちのファンは、他選手のファンの方々も含めて、きっと他にも沢山いたと思うので、一応、ここに表明しておきます。

 

せめて、アイスショーならばせめてあと3か月後、本ならば、結果が出てから1か月後ぐらいの発売だったらまだ良かったのに、と思います。

  

作戦や戦略以前の問題で、そもそも常識としてどうなのか、という問題に思えますので。

 

ちなみにこれは、ソチ五輪シーズンに、高橋大輔選手(当時)に起こったことと、全く同じような問題だと私は感じました。

あの時も、同じことを私は感じていたからです。

ソチ五輪シーズンの秋、高橋選手が出た何かのCMで、まだ日本からの五輪出場代表メンバーが誰になるかが決まってもいない段階で、五輪に出ることが決まっていることを前提にしたようなCMがテレビで流れたのを見た人、それを記憶している人は、多いでしょう。 

私は、結果的には高橋さんが五輪に出る一人になるだろうと予想していましたけど、(羽生選手と高橋選手は、やはり世界選手権等、大舞台の本番で見せる精神的強さが、他の日本人選手たちよりも抜きんでていましたので)、

それでも、あのような「商業主義による、勝手な結論先取り」のようなことをすると、呪いのようになってしまうだけでなく、選手を必要以上に追い込んでしまうし、不正のような印象を与えて、いらない余計な反発をも買ってしまい、結果的には選手がとても気の毒になるように思えるのです。

 

選手たちに活躍してほしいなら、日本はそういうところを、もっと本気で注意すべきではないでしょうか。

 

 

 

話を元に戻します。

 

ライターの宇都宮直子さんと城田監督は、公式練習を現地で見ていたようですが、

この雑誌の記事の中で、その時の羽生選手の非を否定しています。

 

あのリンクはホッケー用だったので、リンクが狭かったのもあるけれども、リンクの狭さだけであの進路妨害と衝突の問題が解決するとは思わない、と私見を書かれておられます。

「長く、長くこの競技を見てきて、(故意であるか否かは別として、男女を問わず) 進路妨害を「ある」と感じる。」

「だから、選手間の「暗黙の了解」にいつまでも甘えるべきではない」、と。

 

私は前から書いていますけど(参考ページ)、長く見てきている人なら、この宇都宮さんが書かれていることに同意するでしょうし、それが当然の感覚だと思います。

きちんとルール化されて、不公平と不正の起り得ないような、より良い状態になっていくと、いいですね。

 

 

羽生選手が、「練習着を忘れてきた」というほどだったフリー当日の公式練習の動画で、

最後のコレオ・シークエンス以外はまともに滑れていなかった事情は、これでよくわかりましたし、

「情熱大陸」の時の羽生選手の映像での様子から感じていたこと、その背後の事情も、「蒼い炎Ⅱ」と合わせて読めば、とてもよく分かりました。

 

(※ 2017年 3月7日加筆 その2:

新たにコーチ側から判明したことは、なんとこのフリー当日の朝の公式練習では、練習開始時間が羽生選手のサポートチームに間違って伝わっていて、羽生選手はウォーミングアップの時間を短くせざるを得なかった、という驚きの事実が判明しました。

羽生選手がなぜかいつもの練習着を忘れてきて、Tシャツ姿で公式練習をやっていた、あの異様で不思議な光景は、身体の大変な事情だけでなく、そういう背景があったからこそだったようです。

一体、何をどうやったら公式練習の開始時間なんかを「間違って伝える」ことが可能なのでしょうか。(苦笑) 責任者は誰だったんでしょう。

羽生選手は、本当に本当に大変でしたね…!  今更だけど、本当に信じがたいほど、よく頑張ったと思います!)

 

 

 読める方は、「オール読物7月号」に掲載された、同じ宇都宮さんの記事をも併せて読むと、よくわかるかと思いましたが、「蒼い炎Ⅱ」が発売された今では、そちらの方が、さらにその前からの事情が羽生選手の言葉で詳細に書かれているので、納得できるかと思います。

オール讀物 2016年 07 月号 [雑誌]
文藝春秋
文藝春秋

 

蒼い炎II-飛翔編-
羽生 結弦
扶桑社

 

 

今はただただ、羽生選手には、

「お疲れさまでした。本当によく頑張ったね! その後長らく、頑張って休んでくれてありがとう。(笑)」

という言葉を贈りたいと思います!

 

羽生選手にとって、休むことはきっと、「頑張らなければできないこと」のように思うので…。(笑)

 

 世界選手権のエキシビションが終わった時に、

「清々しい気持ちだった」と語った羽生選手の言葉と、それを立証するかのような、あの時の素敵な表情が、

何より良かったと思うし、私は嬉しかったですね!

 

「SEIMEI」は羽生選手の理想通りの演技ではなかったとしても、

生きることーー 困難を耐えながらも乗り越える、その生命力を、こうして最終的には人々に強く印象付け、

澄み渡るように、清々しく明るい状態という意味での、「清明」な気持ちで世界選手権を終えられたことは、

きっととても深い意味があったのだと私は思っています! 

 

羽生選手は、この世に偶然はないと思うって、よく言っていますけど、その通りだと思います。(笑)

 

 

清々しく、新シーズンへ、GO!GO! (笑)

 

 

「あなたがたの内に働いて、御心のままに望ませ、行わせておられるのは神であるからです。

何事も、不平や理屈を言わずに行いなさい。

そうすれば、とがめられるところのない清い者となり、よこしまな曲がった時代の中で、

非の打ちどころのない神の子として、

世にあって星のように輝き、命の言葉をしっかり保つでしょう。」

 

(フィリピの信徒への手紙 2章13~16節   新約聖書: 新共同訳より)

 

 

 


アイスリンク仙台への印税全額寄付&今季全プログラムに共通する羽生選手の一貫した想い

2017-03-06 | 羽生選手の素晴らしさ

 

アイスリンク仙台のHPで、羽生選手から寄付金があったことが報告されています。

こちらをどうぞ御確認下さい(アイスリンク仙台HPへ)

 

今回は、羽生選手の自叙伝(蒼い炎Ⅱ)の出版によって得られた印税全額だそうです。

つまり、羽生選手が収入として受け取れる分、全ての金額を、寄付されたということですね。 

そして、前回の自叙伝(蒼い炎)の時も、印税の全額を寄付されたということで、その金額も併せて報告されています。(この時はまだ17歳でしたね。)

 


両方の合計で、既に2500万円を超えています…! 

もちろん、この金額には、この本を買ったファン一人一人の思いも入っているとは思います。

しかし、羽生選手は、本来自分が受け取れるはずの収入分を全て寄付されたわけですので…

なかなか出来ることではありません。

 

現在出ている羽生選手の本で、自叙伝と呼べるのは、この2冊だけで、羽生選手のことを知りたければ、この2冊が私は絶対におススメです。(あとはその時々のインタビューです。)

羽生選手本人の意志が入り、羽生選手の言葉で構成されており、羽生選手本人が確認をとっていて、その時折々のご本人の本音と真実が、(カットされているものはあったとしても、)きちんと正確に伝えられているであろうものは、上の2冊だと思うからです。

そのどちらも、羽生選手は「印税の全額を寄付」している、というのだから、凄いですね。

 

いつか引退する日が来たら、その時には、競技生活を振り返って、著者「羽生結弦」で、ぜひともご本人の分析で、本を出してもらえれば、と思います。(笑) 

( ところで、便乗本で儲けたライターの方々は、羽生選手の力で儲けたその莫大なお金は、どうされているのでしょうね?)

 

  

羽生選手は、ソチ五輪の時の「金メダル報奨金300万円」も、全然迷わず、全額被災地に寄付されていましたよね。

羽生選手の年齢が、まだ22歳で、まだ大学生であることを想うと、凄い貢献度です。

 

そして何より、金額以上に凄いと私が思うのは、その一貫した強い思いと行動力でしょうか…。

 

 

「各自、不承不承(ふしょうぶしょう=いやいやながら仕方なく)ではなく、強制されてでもなく、こうしようと心に決めたとおりにしなさい。

喜んで与える人を神は愛して下さるからです。

神は、あなたがたがいつもすべての点ですべてのものに十分で、あらゆる善い業に満ちあふれるように、あらゆる恵みをあなたがたに満ち溢れさせることがおできになります。」

(コリントの信徒への手紙第二 9章7、8節 新約聖書 新共同訳より)


「だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」

(イエス=キリストの言葉  マタイによる福音書 7章12節 新約聖書:新共同訳より)


「あなたの富のあるところに、あなたの心もあるのだ。」

(イエス=キリストの言葉 マタイによる福音書 6章21節 新約聖書:新共同訳より)

 

「だれも、二人の主人に仕えることはできない。

一方を憎んで他方を愛するか、一方に親しんで他方を軽んじるか、どちらかである。

あなた方は、神と富とに仕えることはできない。」

(イエス=キリストの言葉 マタイによる福音書 6章24節  新約聖書 新共同訳より)

 

 

そういった羽生選手の思いは、羽生選手の今シーズンのプログラム(ショート&フリー)にも、強く表れていると思うのです。

 

アイスジュエルズVol.5 という雑誌の中で、羽生選手は、(昨年のNHK杯の後の時点でとったインタビューの内容だそうですが、) フリーのプログラムについて、このように答えています。

「今回使用している久石さんの『Asian Dream Song』は曲がメインではなく、歌がメインの曲です。いってみれば伴奏なので、あまり主張する曲ではありません。オーサーコーチとシェイリンさん(振付師)には、僕の考えを話したのですが、今回のこのプログラムは僕が主人公ではありません。 (中略) 

今回のこのプログラムで意図しているのは、久石さんの曲が前面に出過ぎずアリーナ全体を包み込むような曲なので、自分の中では、その空間の一部として僕が存在するくらいの位置づけでやりたいのです。」

 

「僕が主人公ではない」 「歌がメインの曲で、いってみれば伴奏」 「アリーナ全体を包み込むような曲」だとの言葉からわかるのは、羽生選手は、この曲を使うことで 自分が主人公になりたいのではなく、

むしろ羽生選手の演技を観て、「主人公になってほしい」のは、むしろ「観客一人一人」なのだと言いたいのではないか? と私は読んでいて感じました。

 

「歌がメイン」とされる、この歌の歌詞は、以前もご紹介しましたけど、こんな歌詞ですから。

(「旅立ちの時~Asian Dream Song」(1998年長野パラリンピックテーマソング)

 (サビの部分を太字にしてあります)

 

1: 君の瞳に花開く 夢を奏でる心  

風に吹かれるこの道さえも  星明かりに照され 今ただ一人歩こう  

胸を震わせるときめきを  空と大地に歌おう

悲しみも笑顔も温もりも  熱い思いに揺れて 今抱き締めて歩こう

旅立ちの勇気を地平線の光と 分かち合うこの時  微笑みながら振り向かずに

夢を掴む者達よ 君だけの花を咲かせよう


 2: 争いの日々を乗り越えて 青空に歌うとき

かけがえのない生命の果てに  名もない花を咲かそう  今ここに生きる者よ

旅立ちの勇気を虹色の彼方に  語りかけるこの時  微笑みながら振り向かずに

夢を掴む者達よ 君だけの花を咲かせよう

夢を掴む者達よ 君だけの花を咲かせよう

 

 上のコメントは、昨年11月末のNHK杯の時のものなのですが、アイスジュエルズvol.4 の時、

今シーズンのフリーについて、

「自分の中でテーマは明確に決まっている」「最初に考えていたテーマに合った曲を探したので、何を表現したいのかということは明確」「テーマは絞ったけど、それはタイトルとしてだけです」とも答えています。

「心から笑顔を出せる曲」で、「自分をさらけ出して滑れるプログラムだなって。」とも答えています。

「テーマはタイトル」と語っているので、テーマは「Hope&Legacy」なんでしょう、きっと。

 

そして、つい先月の4大陸選手権の時、羽生選手は、ISUのインタビューで、今度はこう言っていたんですよね。(※おそらく日本語で語られたと思われるインタビューを、ISUで翻訳したと思われる英語をまた私が日本語に戻した言葉だということをご了承下さい。)

 

「フリーの曲は日本人の作曲家によって作られたものなのですが、音楽の背景を深く説明すると、これは実は1998年の長野パラリンピックのオープニングの曲なのです。 僕の母は、長野五輪と長野パラリンピックを見ていて、僕の姉にスケートをさせたいと思い、姉をスケート教室に連れて行きました。 それを考えると、長野五輪と長野パラリンピックは僕のスケート人生のスタート地点なのです。だから、この曲を使いたいと思いました。」

「この曲は日本人作曲家によるものなので、昨年のプログラム「SEIMEI」で学び得たようなものを、継続して活かせるかな、と思ったのです。」

最近、僕は「人間の生命倫理」に凄くハマっています。

これまでの人生で、僕は「生命」についてすごく沢山考えてきましたし、フリーの「ホープ&レガシー」を演じる時にも僕は「生命」について考えています。だから、「人間の生命倫理」について学ぶことは、スケートの助けにもなっているんです。」

 

フリーを演じる時に、「生命」について想いを馳せながら滑っていることを明かしています。

遺伝子工学が発達した現代社会は、色んな生命倫理問題が生じています。

このテーマ曲はもともと、長野パラリンピックのテーマ曲なのです。

 

(生命について想いながら滑っているのは、昨シーズンの「SEIMEI」の時から同じですね。)

 

羽生選手の今回のフリー衣装を見ていると、明らかに地球カラーだろうと思うのですが、キラキラと星のように散りばめられている輝きも沢山あり、上の方は白ですので、壮大な天体のイメージもあります。

 

上の全部を総合していくと、羽生選手は、「人として、あるいは、文化や国、地域、障害の有無や個性の多様性をも超えて、人間一人一人としての命の尊さ」に想いを馳せ、「それを大切に想う心」「キミだけの花を咲かせよう」という応援のメッセージが込められているように私は思います。

試合は勝敗が決するものであり、国の代表として出るのが普通なので、羽生選手は、日本代表であることに誇りと強い責任感をもち、それを強く意識しているとは思いますが、

演技そのものは、決して、何かから何か、誰かから誰かへ、地域や文化への「優越感」などではないと、私は確信しています。

 

もしそのような「高慢」に通じるものが混じったなら、それは他国の人へ自然と伝わりますし、そのような演技だったら、決して高く評価されなくなるばかりか、神の怒りの鉄拳が下るだけになるでしょう。


「傲慢(ごうまん)、驕り(おごり)、悪の道、暴言を吐く口を、わたしは憎む。」

(※ わたし=天地創造主である神のこと)

(箴言 8章13節  旧約聖書  新共同訳より)



羽生選手の演技は、そうではないからこそ、高く評価されているのです。
 
高く評価されたのは、「評価してくれる側」が、「敬意」をもって見てくれた証拠でもあります。
高慢な状態にある人は、相手に「敬意を払う」ことは出来ません。
 

 

ISUインタビューで、羽生選手が最後に語った言葉は、これでした。

「フィギュアスケートは今、日本でとても人気ですけれども、一朝一夕でこうなったわけではありません。近年では、男子シングルも女子シングルもレベルがどんどん上がってきました。

世界中の人々が、国際的な視野でこのスポーツを見ることが出来、世界のどの地域かに関係なく、この競技の発展をわくわくと楽しめるといいなと、僕は願っています。」


日本でフィギュアスケートが人気だと言っても、日本にも長いフィギュアスケートの歴史があり、多くの先輩選手たちがいて、その一人一人の活躍の延長線上に今の自分がいて、「決して自分だけの力で今の日本人気があるのではない」と、ここでハッキリ言っているのだと、私は感じました。

「国際的な視野でスポーツを見ることが出来、世界のどの地域かに関係なく」とわざわざ言って、そう願っているのは、決して「アジア優越思想」などではないし、もちろん、「日本人優越思想」などでもないでしょう。

「何人だからダメ」とか、「どこの国が特別優れている」などという、優越思想でもないと私は思います。

 

一般的に、優越感というのは、劣等感の裏返しです。

本当にフラットに、平等に対等に人を見ていたら、そんな感情や発想は出てこないのです。

 

羽生選手の勝利や活躍を根拠に、そこに「見ている自分」のアイデンティティー(自己存在価値)を置いてしまう人は、羽生選手のちょっとした勝敗に一喜一憂しすぎて、我を見失います。

 

そうではなくて、

演技を見て下さっている一人一人が、「自分が主人公」の価値ある人生を送ってほしい、君だけの花を咲かせてほしい、そのように命を輝かせてほしい、と強く願っている羽生選手の気持ちが、今シーズンのプログラムからは、ショートからもフリーからも、さらには、エキシビションからも、読み取れるように、私は思っています。

 

それが復興の力でもあり、立ち上がる力でもあり、その人の成長でもある。

羽生選手から、見ている人たちへの贈り物としての、励ましであり勇気づけであり、応援の心だと思うのです。

 

私はかつて羽生選手を見た時、「フィギュアスケート大国ではなかった日本から、こんな天才が出てくるなんて!」と感動しましたけど、それは、白人優越のスポーツだったからとか、西洋文化優位だから、などの理由では決してなくて、単純に、

「プルシェンコ選手のような『スケートの桁外れの天才』というのは、1年中凍っている地域がある国から出てくるのが当然で自然だ」と普通に思い込んでいたから、です。

「1年中凍っている地域がどこにもない、日本のような熱中症大国で、スケートの世界トップを張る天才が出てくる可能性は、普通に考えれば極めて低い」と思っていたからです。

ロシアやカナダと比べたら、日本は、普段からスケートをできる総人口が、全く違いますので。

日本は、その辺に自然と分厚い氷がある、誰でも簡単にスケートが出来る国、ではなかったのです。

 

高橋大輔さんのファンの中で、日本にフィギュアスケートの人気を広めたのは高橋さんが最初だと思っているような人は多いし、浅田真央選手のファンは、日本がフィギュアスケート大人気になったのは、絶対に浅田選手のおかげ以外の何ものでもない、などと思っていたりします。

荒川さんのファンは、「荒川さんこそが日本の最初の金メダリスト」だと思っているだろうし、本田さんのファンは、本田さんこそが日本男子を世界で闘える対等レベルにしたと思っているし、

伊藤みどりさんのファンは、フィギュアスケートの世界で、「日本」を世界トップレベルにしたのは、間違いなく伊藤みどりさんが最初だ!と断言する人が多いことでしょう。

フィギュアスケートの世界で日本人選手がトップ争いに絡んで大きく話題になったのは、伊藤みどりさんの時代、つまり既に30年近く前のことです。

 

実際、上に書いた選手たち以外も含めた大勢の歴代の選手たち、そういった一人一人のご活躍がなければ、羽生選手がスケートを始める環境も、続ける環境そのものも、あるいは、ここまでレベルを引き上げる要因となる環境も日本にはなかったかもしれない、というのは、本当だと思います。

少なくとも、荒川さんの金メダルがなければ、仙台のスケート環境は整わなかったのだから、羽生選手がさらにうんと苦労したか、続けられなくなった可能性というのは、高かったわけです。

 

羽生選手は、上の発言で、そのことを言っているのだと私は思いました。

それが、羽生選手が引き継いだ「ホープ」でもあり、「レガシー」でもあるのです。

 

伊藤みどりさんの時代から、和のプログラムへの挑戦、というのはずっとあって、みどりさんはもちろん、過去、外国の選手たちも、大勢が果敢に挑んできました。

以前私はほんの一部を紹介しましたが、あえて載せなかったものも沢山あります。全部載せようと思ったら、驚くほど沢山あると思います。

その過程で、色々な失敗につながる理由が沢山見えてきて、それらの積み重ねをを吟味しながら、それらの教訓を大いに活かして、羽生選手の昨シーズンの「SEIMEI」というプログラムは出来あがっていますし、それらの参考があってこその、プログラムの完成度でもあり、大成功でもあるのです。

他でもない、振り付けは、外国人のシェイリーンさんなのですし、羽生選手本人も、「和に傾きすぎるのは良くない」「外国人の視点を入れるため」「そこから日本的な良さを引き出してもらうため」という狙いをもって、あえてそうしたのだと最初から発言していました。

 

実際、あのプログラムや衣装を、「もっと和の良さを出せ」「全然和じゃない」「面白味がない」などと苦情や苦言を言っていた日本人のファンというのも、それなりに大勢いました。

そういった意見の大半は、フィギュアスケートをあまり知らないからこそ、何が出来て何は不可能かという境界線がわかっていなくて、「他の分野でやればよい理想像」を押し付けているに過ぎないことが多かった印象でした。

 

日本固有のものだけが正統で絶対に譲れないものだなどと決めつけてしまうと、それは別のものへの偏見につながり、

例えば、日本人のすし職人が試行錯誤の上に作り上げて、大成功させた、「カリフォルニアロール」の良さや凄さ、斬新さを知ることも気付くこともなく、それをただ呆れて見下すことしか出来なくなってしまいます。

たとえそれが、その土地に合わせて材料を吟味し、人々の好みに合わせつつ、なおかつ日本食の良さや食感を活かされた状態で、究極の融合を目指して出来上がった、新しい素晴らしい作品だったとしても、食べてみることなく、良さを知ることなく、終わる可能性が高くなります。

 

「高慢には軽蔑が伴い 謙遜には知恵が伴う 」

(箴言 11章2節   旧約聖書  新共同訳より )

 

また、どこの国だろうと、何人だろうと、どんな人種だろうと、年齢にも関係なく、人は100人いれば、100通りの感性があり、好みがあり、みな違うのは世界共通であり、当たり前です。

誰一人、同じ人間はこの世に決して存在しないように、人間という存在は一人一人が、遺伝子に書き込まれ、組み込まれたハイレベルな仕組みによって出来ているのです。

生物学を学べば、生命の誕生が、そして人間一人一人の特徴、その個性というのが、まさに奇跡のような確率の連続の上で成り立っていることに気が付きます。

 

羽生選手は、それまでフィギュアスケートに興味のなかった、国籍を超えた人たちを大勢惹きつけたかもしれないけど、与えられていた特別な才能はもちろんですが、何より、一貫して示してきた、羽生選手の心にも大きな理由があるように私は思っています。

 

日本赤十字社の献血CMで、羽生選手はこんなコメントをしていました。

 


今年のテーマは、「僕たちの一歩は、だれかの一生。」です。 

僕が一生懸命頑張ることで、見た人に感動を与えられたり、

もしかしたら勇気を与えられたり、元気が無い人を励ますことが出来るかもしれない。


僕はそういう思いを持って日々苦しいトレーニングに励んでいます。 

自分が動けば、きっと周りの人や空気も変わると信じています。


 Q2. 今年のメッセージは「とどけ、いのちへ。」ですが、残りわずかとなった今年、羽生選手自身は誰に何を届けたいですか? 

僕自身、みなさんの応援に支えられています。いつも応援してくれているみなさんには、僕の演技で勇気を届けたいと思っています。



羽生選手が一貫して「届けたい」と願っている、勇気」(ゆうき)。

 

今シーズンのプログラムで表現されているもの、それをどう見るのか、受け取るのかは、ショートもフリーも実はどうやら、観る側である、

「You」(=あなた) 「Key」(=カギ) になっているのでは…?!

 


ファンの一人一人が、「価値」ある人生を送れて、羽生選手の「価値」ある「勝ち」にもつながっていきますように…!(笑)

心よりお祈りしています!



「どんな国の人でも、神を畏れて正しいことを行う人は、神に受け入れられるのです。」

(使徒言行録 10章35節  新約聖書 新共同訳より )


 

「神に従う人の結ぶ実は命の木となる。

知恵ある人は多くの魂をとらえる。」

(箴言 11章30節  旧約聖書  新共同訳より )




 

蒼い炎II-飛翔編-
羽生 結弦
扶桑社


 

蒼い炎
羽生 結弦
扶桑社