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一期の命

2016-06-06 | ほんとうのところは
わぎもよ、わぎも。一語のよびかけではない。そしてどうなったか、どうにもならない、8月28日に夜は更ける、どこまでも、どこまでにも、その思いに、なにあろう、なにもない、あるは思いと思いに、更けゆく人生である。

おのづから朝のめざめに眼尻(まなじり)を伝ふものあり南無阿弥陀仏


吉野秀雄 歌集「寒蟬集」 (寒蝉集)
妻の死に際しての歌

幼子(をさなご)は死にゆく母とつゆ知らで釣りこし魚(うを)の魚籃(びく)を覗(のぞ)かす

提(ひつさ)げし氷を置きて百日紅(さるすべり)燃えたつかげにひた嘆くなれ

母の前を我はかまはず縡切(こときれ)し汝(なれ)の口びるに永く接吻(くちづ)く

庭先きの檀(まゆみ)の朱(あけ)をうるはしみ妹(いも)が骨壷(こつつぼ)ふりかへりみつ

おのづから朝のめざめに眼尻(まなじり)を伝ふものあり南無阿弥陀仏

酒のみて我は泣くなり泣き泣きて死ににし者の母にうつたふ

不生不滅空之又空(ふしやうふめつくうのまたくう)さは然(さ)あれ切り刻まるるこのわが現実(まさか)






これやこの一期の命 炎立ちせよと迫りし 吾妹よ吾妹
                        (吉野秀雄)
(これやこのいちごのいのち ほむらだちせよとせまりしわぎもよわぎも)

ただこれだけをいふ。南無阿弥陀仏(『自注・寒蝉集』)。
翌二十九日、はつ死去。享年四十二。

>四十二歳の病身の男と四人の子供が残された。同年末、秀雄の兄の世話でお手伝いが来る。八木とみ子、四十歳。キリスト教詩人八木重吉の妻であり、夫が三十歳で昇天した後、二人の遺児を育ててきたが、その二人とも病気で亡くしている。二十二年、結婚。席上、誓詞がわりに秀雄は詠んでいる。

これの世に二人の妻と婚ひつれどふたりはわれに一人なるのみ

 はつ、とみ子、二人ともまさに天から賜ったような良妻であった。こののち秀雄は八木の詩業を顕彰することに献身する。晩年、肺患と喘息と糖尿病とリューマチの四重苦に身動きもならない歌人は、歌を詠むことで耐え抜いた。
 四十二年、永眠。享年六十五。

http://blogs.yahoo.co.jp/yoshimizushrine/62949728.html



絶唱である。

戦争末期に、胃の肉腫を病んで死を目前にした妻が、その死の前夜、夫秀雄に向かって、今生の思い出に炎立ち

>ところが最近になって、この絶唱は病苦と赤貧の中で、必死にリアリズムを貫こうとあがいていた吉野秀雄のギリギリの演技ともいえるフィクションではなかったかという気がしてきている。

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