読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

漱石の臨死体験

2009-03-21 09:31:37 | 読書
漱石は四十三歳のとき、胃潰瘍で伊豆の修善寺で療養中に吐血し生死の境をさまよった。
(それが原因で四十九歳で死去している)
漱石は「思い出す事など」の中で書いている。「大吐血後五、六日経つか経たないうちに、時々一種の精神状態に陥った。それから毎日のように同じ様子を繰り返した。遂には来ぬ先にそれを予期するようになった。そうして自分とは縁の遠いドストエフスキーの享けたと云ふ不可解の歓喜をひそかに想像してみた。それを想像するか思い出すほどに、余の精神状態は尋常を飛び越えていたからである」漱石はこの状態を形容して「魂が身体を抜けると云っては語弊が有る。霊が細かい神経の末端に迄行き亘って泥で出来た肉体の内部を軽く清くすると共に官能の実覚から遥かに遠からしめた状態であった。」「余の心は己の宿る身体と共に、布団から浮き上がった。」ここにドストエフスキーが出て来るのは彼がてんかん持ちで、発作が起きるたびに至上の恍惚感を味わった事を漱石が幾度も書いているからである。


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