これは、或る直木賞作家が時効だからと言って書いた話である。
野坂昭如氏がテレビの旅番組にレギュラー出演していたころ、その
企画で新潟へ行ったときの出来事だ。まだ上越新幹線のなかった
頃である。入港中のソ連船を訪ねた。その船長に、日本の作家が
挨拶をし、プレゼントを渡すと言う段取りでテレビカメラは回って
いた。ところが船長が、そのとき、大変な剣幕で怒り出したのである。
取材拒否に遭い、スタッフは引き上げざるを得なかった。野坂は
東京を出発したときからずっと酒に酔っていた。それでスタッフに
迷惑をかけたのだと思い、反省し永平寺へ行こうと言い出した。
そして、そこで頭を丸めてしまったのである。
永平寺の僧侶がたくさん居る前で「マリリンモンローノーリターン」を
絶唱したと言う。これもカメラは回っていたが本人の希望で放映は
されなかった。
ところでソ連船の船長が怒ったのは、「プレゼントを受け取る場面が
撮影され、それが日本のテレビで放映され、本国の偉い人に知られたら
ワイロを受け取ったとみなされ、クビを切られるではないか!」と言う
事で怒ったのだった。野坂が酔っぱらていた事とは関係が無かった
のである。
野坂昭如氏がテレビの旅番組にレギュラー出演していたころ、その
企画で新潟へ行ったときの出来事だ。まだ上越新幹線のなかった
頃である。入港中のソ連船を訪ねた。その船長に、日本の作家が
挨拶をし、プレゼントを渡すと言う段取りでテレビカメラは回って
いた。ところが船長が、そのとき、大変な剣幕で怒り出したのである。
取材拒否に遭い、スタッフは引き上げざるを得なかった。野坂は
東京を出発したときからずっと酒に酔っていた。それでスタッフに
迷惑をかけたのだと思い、反省し永平寺へ行こうと言い出した。
そして、そこで頭を丸めてしまったのである。
永平寺の僧侶がたくさん居る前で「マリリンモンローノーリターン」を
絶唱したと言う。これもカメラは回っていたが本人の希望で放映は
されなかった。
ところでソ連船の船長が怒ったのは、「プレゼントを受け取る場面が
撮影され、それが日本のテレビで放映され、本国の偉い人に知られたら
ワイロを受け取ったとみなされ、クビを切られるではないか!」と言う
事で怒ったのだった。野坂が酔っぱらていた事とは関係が無かった
のである。
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