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読書録:トロイメライ

2010年11月22日 | Weblog
池上永一著の新作「トロイメライ」(角川書店、2010年)読了。
時代は幕末で、場所は琉球王国の商都・那覇、新米の筑佐事(おかっ引)の武太が庶民の間で起こる事件を解決するための奔走を描く。6話からなる連作長編である。題名のトロイメライはドイツ語であり、夢想することを意味する。

事件は、墓の売却に関わる詐欺、冊封使によるジュリの殺人、身請け口入証文窃盗、三線の名器・盛島開鐘紛失、銀の簪詐取、戸籍からの除籍の6件である。

登場人物は、歌三線の名手でもある武太のほかに、涅槃院の大貫長老、料理屋「をなり宿」の部分美人三姉妹の鍋(ナビー)・竃(カマドウ)・甕(カミー)が毎話登場する。それに義賊の黒マンサージなる人物もよく登場する。前作の長編の琉球絵巻「テンペスト」の主要な人物を登場させるのも著者のユーモアである。当時の海中道路である長虹堤などを舞台装置に、庶民の生活、沖縄料理の薀蓄をビジュアルに描いている。

この作品、琉球の人情捕物張といっていいだろう。参考文献に比嘉春潮の「沖縄の犯科帳」をあげているので当時の事件や判決を参考にしているのが想像できる。

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