ある旅人の〇〇な日々

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読書録「癒しの島、沖縄の真実」

2007年04月23日 | Weblog
ブログで「癒しの島、沖縄の真実」(野里洋、ソフトバンク新書、2007年発行)を知り、街の書店で探したがなかったので取り寄せて読んだ。
著者は、石川県出身で少年の頃、戦争映画をみて沖縄に関心を持っていた。1962年に大学に入学するため上京し、沖縄文化協会に入って、参院選挙に出馬した沖縄の安里積千代氏を手弁当で応援している。琉球新報東京総局で仕事を手伝ったことがあったので、卒業後、すんなり琉球新報に入社した。40年にわたる沖縄記者の始まりであった。その後、本土復帰前の沖縄の琉球新報本社に赴任する。そのような変わった道を歩んだ人だった。沖縄を内からも外からも冷静に見通せる稀有な人なのではなかろうか。

著書の前半は、沖縄社会のことや体験など述べており、読んでいて面白いだけの本かなと感じたが、終盤にとても引き付けられ、読んで良かったと思った。
琉球新報を創刊した太田朝敷氏が昭和7年に沖縄自立問題を論じているという。「本県は今日経済的に浮沈の瀬戸に立っておる。大正15年来年々5、60万円乃至7、80万円の経費が産業助成若くは糖業奨励の名目で政府から交付せらるるのである・・・・併しその効果に至っては、幾度見直しても成程と思われる点は見出し得ない。私は我が県民が将来助成中毒にかからぬよう、ひたすら神に祈るのみである」と憂えている。「助成中毒」という言葉がすでに使われていたのだ。今も同じではないか。
沖縄は戦後27年間、米軍による統治を体験したので、「植民地後遺症症候群」というべき意識が潜んでいるのではないかとも述べている。「問題が起こっても責任は自分たちの側にない」というべきもの。そういえば、沖縄のやっかいな問題はすべて、日本のせいにする知識人が多い。
県内には4つのバス会社があり競合してきたが、統合するのかと思ったが結局できなかった。北九州の企業が2つのバス会社を買収して新会社になったら利用者からの評判がよくなったという。
著者と政治家の後藤田正晴氏との関わりのエピソードが面白く紹介されている。後藤田氏が91歳で亡くなる年に沖縄で「憲法と安全保障」と題して講演していたとは驚いた。
その他、琉球政府の仕組み、県民の沖縄論好き、上原康助議員が衆院予算委員会で沖縄独立について質問したこと、沖縄サミットの裏話、著者が「世界ウチナーンチュ大会」の切っ掛けをつくったことなど面白く書かれている。
著者の他の著作を読みたくなった。