ある旅人の〇〇な日々

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読書録:琉球の「自治」

2007年04月14日 | Weblog
今や日本全国、格差だらけである。地域格差、経済格差、所得格差、医療格差、学力格差、環境格差、交通格差・・・。
元祖格差は沖縄だったのかな。本土と沖縄の格差是正のために、米軍基地と引き換えに開発という名の投資をやり続けてきた。しかしながら、いつまで経ってもその格差は埋まらない。ますます、財政依存漬けになってしまって経済自立は遠ざかっている。もう間違いに気付いて方向を変えてもいいのに、相変わらず、振興政策とやらが望まれている。沖縄が基地を拒否した場合、いかにして経済自立していくかの現実的なグランド・プランもなさそうだ。返還された基地の跡地をこれまでのようにいくら開発しても状況を悪くすることは、もう十分な経験をして学習されているはずだ。沖縄の多くの市町村は、いずれ夕張市のように財政再建団体なってしまうだろう。

松島泰勝著の「琉球の『自治』」(藤原書店、2006年)が面白そうなので読んでみた。松島泰勝氏は石垣島出身で早大で経済学の博士号を取得している。南洋諸島の大使館や総領事館で専門調査員として勤務し、数多くの論文を書いており、いくつか読んだことがあり、なかなか興味深い主張をしていた人である。特に岩波書店の月刊誌「世界」(2000年11月号)での「太平洋と結ぶ沖縄」という論が印象に残る。大雑把にいうと琉球王国の大交易時代のアジア諸国を意識した枠組みから開放されて、ミクロネシアなどの太平洋諸島とのネットワーク形成により、経済自立の方向を探るべきであると述べていたのだ。現在は東海大学海洋学部の准教授。
本著「琉球の『自治』」では、沖縄各島と奄美が開発によって自立したのか、開発と米軍基地との関係、琉球弧の経済のありかた、琉球の真の自治すなわち独立のことを述べている。
著者は「琉球人自身が経済振興と引き換えに、基地の存続を許してきたのである。われわれ自身が変わらなければ基地はなくならない」と明言している。
また、「自由貿易や開発は、琉球社会に不公正や競争原理をもたらし、環境を破壊しており、一種の暴力行為であるといえる」とも述べる。
本当の豊かさは市場原理主義では得られない。生産労働ではなく生活労働という広い意味の労働が琉球社会をより豊かにするという。できるだけ自給自足、地産地消がいいのだ。「芋と裸足」も意味深い言葉とみなす。豊かな生活を知ってしまった琉球人が果たして生活水準を自発的に落とすだろうか。
琉球は他国からの侵略を防ぐには非武装でいくべきだという。琉球を非暴力、慈悲心で溢れる島にすれば他国の警戒心を削ぐことができるそうだ。そうだろうか、中国は軍事力を毎年強化しているし、資源を求めて太平洋に進出している。チベット王国みたいに侵略されてしまうのではないか。性善説過ぎないか。このあたりはインドの非暴力主義のガンジーの影響のようだ。
興味深く読んだのだが、注目していた学者だけに、少し落胆してしまった。

小生が思うには、振興金を今までのようなザル開発に使わないで持続発展可能性のある振興策に有効に使い、早く自立の目処をたてて米軍基地を拒否できるようにすればいい。他力本願ではなくそれを琉球人自ら考えなければならない。松島氏が言うように市場原理主義を拒否して生活水準を落としても「本当の豊かさ」が得られるのならそれもいいのだが。