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悠山人の新古今

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短歌写真014 ただ一輪

2005-08-08 10:50:00 | 短歌写真

2005-0808-yts014
ただ一輪見え初めしは旧約の
いにしへよりのサフランの花


 見え初め(まみえそめ)。春にいただいたサフランに、けさ初めて一輪咲いた。鉢花。
 番紅花ともいう。森鴎外の還暦過ぎてからの随筆、「番紅花」(ばんこうか)にこう
ある。幼少時から読書好きの林太郎、父から与えられたある字が読めない。

   蘭和対訳の二冊物で、大きい厚い和本である。それを引っ繰り返して見てい
 るうちに、サフランと云う語に撞着(どうちゃく)した。まだ植字啓源などと云う本の
 行われた時代の字書だから、音訳に漢字が当て嵌(は)めてある。今でもその字
 を記憶しているから、ここに書いても好いが、サフランと三字に書いてある初の字
 は、所詮活字には有り合せまい。依って偏旁(へんぼう)を分けて説明する。「水」
 の偏に「自」の字である。次が「夫」の字、又次が「藍」の字である。
   「お父っさん。サフラン、草の名としてありますが、どんな草ですか。」
   「花を取って干して物に色を附ける草だよ。見せて遣ろう。」
  父は薬箪笥(くすりだんす)の抽斗(ひきだし)から、ちぢれたような、黒ずんだ
 物を出して見せた。父も生の花は見たことがなかったかも知れない。私にはた
 またま名ばかりでなくて物が見られても、干物しか見られなかった。これが私の
 サフランを見た初である。
   http://www.aozora.gr.jp/cards/000129/files/685.html

 彼の父は蘭医(らんい。オランダ医学=西洋医学=者)なので、サフランは薬草
として扱われている。この流れが、現在のハーブ・ブームにつながる。元をただせ
ば旧約聖書の時代に遡るというから、半端なハーブではない。
 サフランの名は、アラビア語からオランダ語経由で日本へ入ったらしい。学名
Crocus sativus(クロクス・サティウス) にあるように、クロッカスの仲間とされる。
英名は Saffron、中国名は西紅花だそうな。
 クロッカスとサフラン。クロッカス(と日本での通名)は春咲きなので、「花(または
春)サフラン」。サフラン(と日本で)は秋咲きなので、「秋サフラン」とか「秋咲きク
ロッカス」という。ある関係者も、学名・属名・和名の関係が捩れていて、ややこし
い、と書いている。
 ついでながら、クロッカスは、「クロゥカス」と言わなければ、普通の米英人には
まず通じない。
□短写014 ただいちりん まみえそめしは きうやくの
       いにしへよりの サフランのはな


035 天の川わたる

2005-08-08 05:20:00 | 新古今集


■現代詠も、しばらく想像の世界に遊ぶ。「まことにあるにはあらず、譬[たとへ]な
り」(八雲御抄3、岩波版所引)。いくら往時でも、とは思うのだが・・・。星合の歌も
つい欲張って3首になってしまった。現世(うつしよ)も立秋過ぎ。

【略注】○藤原公経(きんつね)=西園寺公経。太政大臣。百人一首「花さそふ嵐
    の」の作者。
【補説】妻問い婚について。万葉以来、夫が妻のもとへ通う婚姻形態がふつうであ
    った。これを妻問い婚という。だから天の川の歌でも、川を渡るのは彦星で
    あり、織姫星のもとで一夜を過したあと、明け方に戻ることになっている。こ
    のさい、舟へ乗るか橋を歩くかは、作者の考えによる。
    なお本歌は、時系列的に不整合と思われるが、この点について、全集三書
    とも全くふれていない。ここでもメモにとどめる。小学版の解釈は、「作者が
    秋の夜の涼風の橋を眼前にして星合の夜を思う。」