■バンプ・ザ・ガリバー(第196話) 発表1982年12月
評価 ★★★
依頼人 元東大ボート部5人衆(交渉:旭製作所 石井泉)
ターゲット 旭製作所 ファーム・ウェア・ボード
報酬 不明
今回弾丸発射数 2/ 通算弾丸発射数 1,220
今回殺害人数 0/ 通算殺害人数 1,326
今回まぐわい回数 0/ 通算まぐわい回数 78
<ストーリー>
旭製作所の最新鋭コンピューター・ボードが奪われた。産業スパイが蠢く中、ボードの中心部が狙撃された・・・
<この一言>
俺の人種がどうあれ・・・仕事には関係ないことだ・・・
<もう一言>
では・・・日本人は、どうなるのだ?・・・アジア人同士は?・・・国境や人種を前提としている以上、”おなじ穴の狢”・・・だ。所詮、狭いところで寄り添って生きていく類の”人間だ”!・・・
<解説>
日立産業スパイ事件を題材にした日米半導体戦争を描く社会派作品。
「旭製作所 石井」は産業スパイ容疑でアメリカにて有罪判決を受けた。この件を不当なアメリカの国策的圧力と考えた石井を含む元東大ボート部5人衆は、アメリカに警告を与えることを計画。旭製作所の開発中のウォーム・ウェア・ボードが盗難にあったと見せかけ、KGBと組んでアメリカに高値で買い取らせるが、その取引現場で一発の弾丸がボードの中心部を貫く。アメリカは日本が高性能チップを開発したと考え開発費をつぎ込むものの、全ては「日本を舐めるな!」とアメリカに警告を与えるために石井たちが仕込んだ芝居だった。
ゴルゴの語る日本人論が興味深い。
「では・・・日本人は、どうなるのだ?・・・アジア人同士は?・・・国境や人種を前提としている以上、”おなじ穴の狢”・・・だ。所詮、狭いところで寄り添って生きていく類の”人間だ”!・・・」
このセリフを受けた石井のゴルゴ像の描写も深い。
「この世に生まれ、ヒフの色、国、家族に関係なく、生きていこう、なんてことが・・・とてもあの男のようにはなれん!あの男はどのように育ち、なにを見たのか!?・・・あの男の知っているのは”自由”か、それとも”無”か!」
世の中の変遷は早い。本作は1982年の発表。作品中の「ICM」は言うまでも無くIBMを、「旭製作所」は日立製作所を指すのだろう。日米半導体戦争は、その後パソコン競争へと発展、パソコンはIBMが一世を風靡するが、その後ハイテク産業の主戦場はソフトウェア・ネットワークへと移行する。IBMはパソコン事業を中国レノボに売却、一方の日立もパソコン事業を売却することが先日発表された。本作で描かれている日米双方の企業がパソコン事業を売却しているが、本作が歴史を先読みしているようで面白い。
ズキューン
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コメントありがとうございます。
>ゴルゴが他人の思想に対して批判を浴びせるなど、珍しいことですよね
そうですね。ゴルゴが自分の意見を述べるという機会は非常に少ないですね。
>視点が客観的だから、時事問題を扱いつつも、時代を経ても読み応えがあります
鋭いご指摘です。『視点が客観的だから』という点、ひざを打ちました。
この作品を今読むと、隔世の感がありますね。
自動車で成功し、次は半導体だ、次世代の世界をリードするのは我々だとばかりに、経済大国となったことに自信を持ち、行け行けゴーゴーの時代の日本。
次世代を担う有望な若者…ではあるのだろうけど、自分の金ではない辺りが所詮はどら息子。親から貰った余ったお金で、相手に恥をかかすという、なんだか遊びみたいな目的のためだけにゴルゴを雇う。
ゴルゴファンからすると、神をも冒涜するような行為に映るのですが…。
金が余り、いい気になってた頃の日本の姿がそこにあるような気がして、ゴルゴの痛烈な批判がグサリと効きます。ゴルゴが他人の思想に対して批判を浴びせるなど、珍しいことですよね。
日本側が勝負に勝って、日本人としてはしてやったりな話なのに、読後に爽快感があまりないのは、「日本人よ、いい気になるな」という警鐘を、バブル以前に既に内包しているからではないか、というのは考え過ぎでしょうか。
視点が客観的だから、時事問題を扱いつつも、時代を経ても読み応えがあります。