久しぶりに涙腺が思わずゆるんでしまう曲を
何度も聴いてしまいました。
と言いますのも、昨日のフィギュアスケートの大会で
ロシアのエレノア選手が自身のプログラムに使っていた
『弦楽のためのアダージョ』にジ~ンときてしまったからです。
”アダージョ”って元々音楽用語で、「ゆったり荘重に」演奏する
ようにという指示語(イタリア語)ですが、このサミュエル・バーバーが
作曲した『弦楽のためのアダージョ』は、音階がまるで
階段をゆっくり昇っていくような風景が思い浮かびます。
この美しいメロディに心を打たれてしまったのです。
心の中から湧き出るような高みへ少しづつ昇っていくような、高揚感を
感じながら、それでいて実に哀しい現実も感じます。
何度聴いても涙が出そうになるくらい感動してしまいました。
久々の高感動でした。
心臓の鼓動に合わせるように1歩1歩階段を昇っていく様は、
私達の人生を想起させてくれます。昇っている最中、いろんなことが
思い出され、またいろんな事が起きる。そんな人生です。
アダージョというと、アンダンテ(歩くような速さで)とラルゴ(ゆったり)
との間のスピードらしいですが、問題は、一定のリズムやテンポで
昇ろうとしている希望なり様です。ただ、それを妨げる微妙なテンポの
メリハリが演奏で生かされてくれば、聴く側の私としては、
もっとぐぐっとくると感じました。それは、人生の波であり、スパイス
みたいなものだと思います。
この曲が涙を誘うのは、ただただ美しい人生や悲劇をテーマに
扱ったのではなく、”生きているんだ”という人間の人生そのままを
ありのままに音で表現したためだと強く感じました。聴く人に
よって、イメージできることは、さまざまでしょう。そこがいいところです。
「現実」を音で上質な芸術にまで高めたバーバーの功績は、とても
高いものだと思いました。
”ああ、生きているんだあ”と感じさせてくれる名曲です。
「もうダメだ」と人生に絶望になっていた人も、この曲で
救われたと聞きます。自分の人生に対する見方が
少し変わってくるから、もがかなくなるのかもしれませんね。
希望の光を感じる名曲だとも言えるかもしれません。