1月28日(日)のつぶやき

2018-01-29 04:05:55 | 音楽の思い出

伝説のピアニスト、アレクセイ・スルタノフ

2018-01-28 16:43:29 | 音楽の思い出

旧ソ連時代に脚光を浴びたひとりの青年ピアニストが

いました。彼の名は、アレクセイ・スルタノフ

今は亡き身となり惜しまれる逸材として、

日本やポーランドではファンが、彼の演奏を

愛し、懐かしんでいると言います。

彼の名は、ある方から聞いたのですが、私も

昨日まで彼の名すら知りませんでした。

好奇心が沸いてきたので、少し調べたところ、

何か輝くものを持っていた天才肌のピアニストだと、

直感できたのです。

1989年、弱冠19歳で、アメリカ・ヴァンクライバーン国際コンクールで

見事に優勝。その才能とスキル、表現力は、群を抜いていたと

言われていたようです。(あの辻井伸行氏が優勝した同じコンクールでの優勝)

ここから世界が注目した逸材として快進撃が続くかに思われました。

しかし、運命は彼が望むようにはさせませんでした。

1995年、ポーランドで行われたショパンコンクールにて、

決勝でショパンの『ピアノ協奏曲2番』を演奏し、万雷の拍手を浴びた彼。

誰もが彼の優勝を疑わなかったそうです。

しかし、審査結果は意外な結末に・・・。

優勝無しの2位タイ(ふたり)となり、彼は、怒り心頭に発し、

表彰式をボイコットしてしまったそうです。

審査員が彼の演奏について賛否両論に分かれたとか。

ショパン自身のスコアに忠実でなかったという減点をかけた

審査員がいて、彼には優勝は値しないと辛い評を出した人も

いたとか・・・・真実はどうかわかりませんが、2位タイに

甘んじなければならなかったのは、事実のようです。

ここが、伝統を重んじるクラシック音楽の矛盾と難しい

ところかもしれません。後年、先輩格にあたるホロヴィッツに

傾倒し、同じショパンの曲を弾くのにも、ホロヴィッツ版で

演奏したことが少なからずあったとも聞きます!?

もし、彼が95年のショパンコンクールで優勝していたら、

(たらればですが)あのブーニンやキーシンを上回る人気と

実力を誇る大ピアニストになっていたかもしれません。

それくらい実力と感性を感じます。

ショパン ピアノ協奏曲2番は、大曲であり難曲。

あの曲で終始音に輝きを持たせ、情感豊かに弾き切った

技術と情熱と持久力。そこにいくまでの努力。

演奏で伝わってきました。

今でも惜しむファンが多いのがうなずけました。

指先の1本1本が、全て鍵盤に吸い付いているかのように

柔らかなタッチが生み出されているのです。

どんなに速くても遅くても、このソフトタッチの流れは

キープされています。

女性でいえば、アルゲリッチ。男性でいえば、彼と

数人。歴代の偉大なピアニスト共通の凄さです。

聞き惚れてしまいます。

2005年に彼は、アメリカの自宅で脳卒中系の病に

倒れ、他界してしまいます。

この時も、音楽界は、偉大な天才を失っていたのですね。

95年の審査結果への怒りとストレスがずっと尾を

引いていたのかもしれません。

35歳で天寿を全うといえるかどうか分かりませんが、

30代半ばで亡くなった天才といえば、モーツァルトと

シューベルト。彼らも若くして苦悩を抱えていました。

天才ゆえの悩みがあるのでしょう。

スルタノフの輝く音・・・・

心に刻んでおこうと思います。

 


1月2日(火)のつぶやき

2018-01-03 03:39:32 | 音楽の思い出

ウィーンフィルニューイヤーコンサート 2018

2018-01-02 08:40:07 | 音楽の魅力

大みそかの紅白歌合戦とともに

元旦恒例のウィーンフィル・ニューイヤーコンサートを

観ました。

今年の指揮者は、イタリアのリッカルド・ムーティ

このイタリア人がどんな選曲で、どんな指揮をし、

どんな表現をするのか興味深々でした。

というのも、私の個人的な印象ですが、ムーティは、

あのカラヤンの影響をかなり受けていて(!?)、

音を鋭く歯切れよく運び、高速でも一糸乱れぬ正確さを

保たせる・・・・オケにそんな要求をするマエストロだと

思ってきたからです。

男性的で完全無比、演奏の完璧さを求める指揮者だと。

それは、ウィーンフィルではなくベルリンフィルにあてはまる

演奏哲学ではなかろうかと考え、このコンサートを

どうコントロールするのか不確定要素があったため、

そういう意味で楽しみにしていました。

しかし、私が頭で考えていたムーティの指揮は、

全編を通して聴くと、その予想を裏切られることになりました。

もちろん、いい意味で。

曲によって、表現を巧みに変えていたのでした。

70歳代半ばになったムーティの熟練の賜物なのでしょうか?

ウィーンフィルの良さを存分に引き出していました。

例えば、オーストリア・ハプスブルク帝国時代の

シュトラウスファミリーの音楽遺産、『ウィーンの森の物語』と

毎年奏でられる『美しき青きドナウ』。

後者なんかは、イントロのピアニッシモの音が素晴らしかったです。

どんなに小さな音でも緊張感に溢れ、その静かな輝きが

会場の隅々まで届く。まるで、ドナウ川の穏やかな流れにのって、

船上から両サイドの丘を越えて空まで、ゆったりと静かな音が

立体的に広がっていくような世界に引き込まれていきました。

これぞ、ウィーンフィル! だと思います。

ムーティも、世界一二を誇るオケと共演すれば、

こんな芸当ができるんだと感じました。

この2曲は、素晴らしい音の広がりと調和を

聴かせてくれました。

でも、ムーティの真骨頂、素早いタクトさばきで

高速テンポを正確に操る業も見せてくれました。

『電光と雷鳴』や、毎回アンコールとなる

『ラデッキ―行進曲』では、この業が光りました。

高速テンポを操作する指揮には恐れ入ります。

一糸乱れぬところが世界最高峰の指揮と演奏

なのでしょうね。

思わず唸らせてくれる技術と心意気には

感動しました。

このように2つの場面展開を見事なまでに

繰り出してくれたムーティの芸術性も素晴らしい、

と思いました。

熟練したイタリア人だからできるのでしょうか?

そのあたりは不明です。

ただ、彼は、ここ十年くらい、世界各地で

反戦をテーマにしたコンサートを繰り広げてきた

と聞きます。パレスチナで、イランで、・・・

そんな社会的な使命も抱えてきた人間性が、

今回の素晴らしい演奏につながったのではないかと

考えています。

来年は、ティーレマンの指揮だそうで、

またまた楽しみです。