極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

スペースシップアース

2013年11月28日 | 時事書評

 

 

 

 

【スペースシップアースの未来】

2009年春、英国にあるケンブリッジ大学の海氷専門家ピーター・ワダムズ(Peter Wadhams)率い
る調査チームがボーフォート海の北側の海域の氷を全長450キロに渡って観測したところ、そのほ
とんどが新しく薄いものであることがわかった。
同調査チームによると、2008年春の北極海の氷冠
の厚さは平均1.8メートルで、これはわずか1年ほど前にできた氷であることを示しているという。
NASAの観測によると、形成されてから数年を経た壊れにくい氷の厚さが約3メートルあるのと対照
的である。ワダムズは声明の中で、ほとんどの氷は今後10年以内に溶けると予想されると述べてい
るが、『スペースシップアースの未来-プロローグ-』のインタービューで、北極で何度も海水温
上昇によるメタンガスの噴出と遭遇したと語り、今世紀末には北極は10℃上昇するだろうと語った。

地球温室効果係数:メタンは二酸化炭素の21倍、因みに、六フッ化硫黄は、23,900倍。

宇宙船地球号という言葉は、地球を,物質的に出入りのない一隻の宇宙船にたとえていう語。有限
な資源の中での人類の共存や適切な資源管理を訴えて、アメリカの経済学者ボールディングらが用
いたと言われる。NHKが明日から『スペースシップアースの未来』を連続放映されるというので
録画予約したいと彼女が言い出したので、わたしも興味があるので予約。地震大津波、原発事故。
東日本大震災をきっかけに世界の有識者たちが私たちの未来について真剣に考え始め、地球を1つ
の船に見立て、解決すべき問題を改めて見つめたものだという。出演:サティシュ・クマール, デ
イブ・ヒューズ,  ローヨル・チタラドン,  ピーター・ワダムズ,  ケビン・アンダーソン, ニラン・
チャイマニー,  マーチン・リース,  ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ,  松井孝典,  六川修一,  山
本良一,  足立直樹,  語り:窪田等,  声:野島昭生,  喜多川拓郎,  内田大加宏,  前島貴志, 玉
川砂記子など。

 

 
 

 

【日本経済は世界の希望(7)】 

 


 

本文の「不動産バブルは起こるのか」の節で、クルーグマンは、「不動産バブルが起こるのか、と
いう質問に答えるのは難しい。とにかく結果が出るのはこれからだ。そうなったとき、日本経済の
内需は将来に向けて拡大する可能性があると」述べているが、昨夜のテレビでは、米国が景気回復
基調に入ったので中高年の投資家が、低い貯蓄利息や年金破綻不安などのポートファリオとして、
賃貸住宅投資に走り、賃貸住宅投資プランナーの盛況ぶりを映し出し、これがリーマンショックで
下がっていた住宅価格を再高騰させ、本当に住宅を必要とする顧客の購買意欲(購入計画)を殺い
でいる状況を映し出していた。つまり、クルーグマンの言を借りれば、実体経済までにバブルが至
っていないということになるのだが、そもそも、好景気(あるいは景気の好循環)とバブルとを一
緒に議論すること自体が問題だと常々考えてきたのだが、それゆえ、実体経済の活性度を反映する
財政政策の評価が重要となる。極端な場合、実体経済での場面での特定政策の評価に当たっては、
一時的に逆相関することも正当に評価できるような政策アルゴリズムをあらかじめ導入しておかな
ければならない(これを『現代政策制御理論』と言うなら、これについての考察は残件扱い、要別
途掲載しなければならない)。その他については昨夜と同様に大きな異論はない。以下、クルーグ
マンの『日本経済は世界の希望』から抜粋掲載する。



                                      株式市場はそもそも不安定なもの

  アベノミクスという政策実験は、第1章で述べたように「モデルとしての日本をどのように
 世界に示せるか」という、経済の未来を占ううえで決定的に重要な役割を担っている。黒田日
 銀の掲げる「今後二年間でニパーセントのインフレ率」という目標が達成されたとき、日本経
 済の目前には、どのような世界が広がっているのだろうか。
  安倍政権による金融政策は、いまのところ株高・円安というかたちで成果を上げている。
  しかし長期金利が上昇したり、日経平均株価が乱高下していることを、「副作用」が表れて
 いる、という人もいるようだ。
  アベノミクスは、日本経済を未知の領域に連れていこうとしている。それだけに、昨日まで
 「グレート(素晴らしい)j」といっていた人が、その翌日に「待った7」をかけるように、
 株式市場で鋤僻的な行動がみられても驚くに値しない。だがそもそも日経平均は、かつてに比
 べれば、はるかに高い水準にある。
  一九八七年十月十九日、『根拠なき熱狂』(ダイヤモンド社)で知られるイェール大学のロ
 バート・シラーは、ダウ平均株価が一日で二二・六パ-セントの下落を経験した「ブラックマ
 ンデー」の真っただ中で聞き取り調査を行なった。投資家たちに「なぜ、あなたは株を売
るの
 か」と聞いたところ、彼らは「株価が下がっているから」と答えた。一種のパニック売
りが起
 きていたのだ。

  近年ではさらに、電子商取引がそうしたパニックの流れを加速させている。株式市場とは
 もそも不安定なもので、日々の動きにあまり注目しすぎないことが大切だといってもいい
すぎ
 ではないだろう。


                         インフレで財政問題は大きく好転する

  「インフレ率ニパーセント」の世界を具体的に覗いてみよう。まずは雇用。経済学には「オ

 ークンの法則」がある。経済学者のアーサー・オークンによって提唱されたもので、失業者
 財・サービスの生産に貢献しないため、失業者の増加と実質GDPの低下が同時に発生する。
 こ
の失業者と実質GDPとのあいだにある負の相関関係のことだ。
  しかし日本では奇妙なことに、経済が悪化していたときも失業率はほとんど変化しなかった。
 その点だけをみれば、日本は「完全雇用の経済」と呼んでよいのかもしれない。

  財政については、ニパーセントのインフレ目標が達成されれば、目下の問題はかなり好転
 る。もちろん利払いはある程度増えるだろうが、名目GDPの成長率が上がることで、最終的

 にGDPに対する国の債務比率を下げることが可能だからだ。そうしたかたちになれば、財政
 出動策も不要になる。

  最終的には財政緊縮が必要になるが、いまの日本ではたして実際に公的債務を減らしはじ
 ることができるだろうか。本書で何度も繰り返したように、あまり早く財政再建を始めること

 はよい結果をもたらさない。まずは、ニパーセントのインフレを達成することを第一に考える
 べきだろう。
  一方で、日本が抱える大きな問題が少子高齢化であることも、すでに述べたとおりだ。ア
 リカやフランスに比べ、労働生産性も低い。たしかに金融政策だけでは効率のよい経済
イノベ
 ーションが生み出される風土、子どもを産みたい、と思わせるような社会にならないことは事
 実である。

 とはいえ、日本の抱える金融という大問題を解決するだけでも、経済問題の深刻さを軽減でき
 る。そうなったときにいよいよ、安倍政権は改革に着手すればよい。

                                             不動産バブルは起こるのか

 

  貿易についてはどうか。いまの日本は「貿易黒字国」というイメージとは異なって、貿易
 字が基調になりつつある。二〇一三年上半期(一月~六月)の貿易統計(速報・通関ペース)
 は、輸出から輸入を差し引いた貿易収支が四兆八四三八億円の赤字になり、比較可能な一九七
 九年
以降、半期ベースで最大の赤字幅を記録した。
  たしかに日本経済はいま、構造的に貿易黒字から貿易赤字にシフトするプロセスを歩んで
 るのかもしれない。貿易赤字だけではなく、経常赤字の足音が忍び寄っている、という人もい

 るようだ。
  しかし、ニパーセントのインフレになれば金利が高くなる。おそらく日本国債の名目金利
  一パーセント以上になるだろう。しかし、インフレ率はニパーセントだから、実質金利はマ
 イナスになる。

  貨幣の価値が下がった結果、円安がさらに進む。
  
もちろんインフレ目標達成時の状況によるので、現時点でその時期を明言することはでき
 いが、そうした状況が実現したとき、貿易収支もまた黒字化に向かうだろう。

  そのなかで個人消費が伸張し、建設支出(住宅、商業施設、公共施設の建設に要した建設会
 社の費用の総計)も増え、企業の設備投資も増加する。多くの日本人がマンションを買い新築
 物件が増設される。一人当たりの住居スペースも広くなるだろう。自動車がさらに売れるなど
 間接的な影響もみられるが、直接的にはビルの建設に効果が表れる。

  不動産バブルが起こるのか、という質問に答えるのは難しい。とにかく結果が出るのはこ
 からだ。そうなったとき、日本経済の内需は将来に向けて拡大する可能性がある。
  ニパーセントインフレの達成によって、日本経済はいまよりも、はるかに安定した状況に
 る。二〇〇九年から一二年までの四年間、日本のCPI(消費者物価指数)は連続してマ
イナ
 スを記録しているが、これは経済状況の悪化と並行している。

  当然ながらインフレ率がニパーセントという状態のほうが、名目金利がインフレ率を下回っ
 て実質金利がマイナスになる可能性もあり、CPIがマイナスのときよりも経済政策を実行し
 やすい。そこで経済が大きく浮揚する確率は高まるだろう。
  何度もいうが、ニパーセントのインフレ目標達成が最優先である。先進国では、インフレ率
 はそう急には動かない。かなりの好況でなければ物価が年に一ポイント上がることはないが、
 かといって、到達できない数値でもない。実際に私自身が計算し、弾き出した数字もニパーセ
 ントだった。
  日本の景気がよくなれば、ニパーセントではなく、もう、ニパーセント高めのインフレでも
 よいのではないか、という議論が出てくるはずだ。
  もう一度いっておこう。私はいま、日本のインフレ率は四パーセントがベストだと考えてい
 る。

                          『出口戦略』はまったく時期尚早

  ニパーセントのインフレ目標を達成したあとに黒田日銀が負うべきミッションは、FRB
 直面している「出口戦略(exit strategy)」といわれる。しかし、インフレターゲットの重
要な
 点は出口(ロΞではなく「インフレ期待を続けさせること」であり、そうした議論自
体に意味
 がない、という見方もある。

  二〇一三年六月十九日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後に行なった記者会見で、バ
 ナンキは一三年度内の緩和縮小に言及し、これがタカ派的な発言と受け止められて、新興
国株
 の下落を招くことになった。

  雇用などの状況を鑑みれば、日本は当然のこと、アメリカも出口戦略を口にする段階では
 い。まだまだ出口の時期は先である。

  なぜいまバーナンキが非伝統的な金融政策をとめたい、という気持ちになるのか、私には見
 当がつかない。
  長期の国債を保有しているならば、むしろそれを売ったときの悪影響を心配すべきではない
 か。いま買い入れている長期国債は満期まで保持し、期限が来たら清算すればよいだけだ。
  現時点ではその可能性はかなり低いが、もしインフレ率が高くなりすぎる事態を心配するの
 なら、短期金利を上げればよい。中央銀行が多額の長期国債を保有することと、短期金利を上
 げることは矛盾しない。政策的にはそれが最善の戦略といえる。
  それよりもはるかに重要なのは、バーナンキが「インフレが手に負えなくなる事態は絶対に
 ない」としっかり明言し、アメリカ国民を安心させることだ。インフレ政策の本質は、人びと
 の「期待」に働きかけ、それを変えることであるのは、ここまで繰り返し述べたとおりである。
  それにもかかわらず、人びとを期待ではなく「不安」へと導くような、方針転換とも捉えら
 れる発言をすれば、政策の効果が弱まることは明らかだろう。
  日本の場合も同じだ。インフレ政策で景気の好転を期待させようとしているうちに出口戦

 をうんぬんするのは、市場からの信頼を失うだけである。いわば、自分が履いている靴の紐を、
 自分の足で踏んで転ぶようなものだ。


                           公共事業以外でも財敗出動できる

  大胆な金融緩和という「第一の矢」に続き、安倍政権が標榜するのは機動的な財政出動とい
 う「第二の矢」である。
  第1章と第2章で論じたとおり、「復活だあっ~」を書いたときより私は財政出動の重要
 性を認識しているが、『さっさと不況を終わらせろ』では、財政出動=公共事業という着想に
 ついては、やや批判的ともいえるスタンスをとった。
  財政出動に対する反対論のなかでも、よく耳にするのは「お金を使うためのよいプロジェク
 トがない」という声だ。『さっさと不況を終わらせろ』でも述べたとおり、州や地方政府はほ
 ぼ毎年、財政均衡を求められる。そこで不景気になれば、支出を削るか、増税するか、あるい
 はその両方が必要になる。
  
オバマ政権は州や地方政府に補助金を出し、こうした行動を避けようとしたが、その資金は
 初年度で使い果たされ、結果として、大規模な歳出削減が実行された。すでに労働者の数は五
 〇万人以上も減っている。その大半が教育分野に従事している人たちだ。
  たとえばそこで十分な補助金を出し、最近の予算カットをやめさせるだけで、年額三〇〇〇
 億ドルもの刺激策になる。百万人以上の職が直接的につくりだされ、間接効果も含めれば雇用
 人数は三〇〇万人以上にものぼるだろう。
  アメリカはまだ、教育への投資が足りない。とくにアメリカ人が人生の初期に直面する不平
 等、つまり、貧しい家庭に生まれた聡明な子どもは豊かな家庭に生まれたあまり聡明ではない
 子どもよりも大学を卒業する可能性が低い、という事実は、非道というだけではなく、人的資
 本の膨大な浪費を意味している。
  もちろん、私は建設分野の重要性を否定しているわけではない。アメリカ各地では近年のよ
 うに橋梁が陥落し、インフラヘの投資も不足している。公衆衛生や警察などの分野も投資が不
 可欠だ。これらの分野で何らかの不備があれば、即、社会に重大な問題を及ぼすからである。


                            検証に耐えなかったアレシナ

 
  財政出動と聞いたとき、日本人の多くは、未曾有の規模にまで膨らんだ公的債務の削減と
 共事業の兼ね合いをどう考えるべきかと思うだろう。『さっさと不況を終わらせろ』では、

 ーバード大学の経済学者であるアルベルト・アレシナの緊縮財政に対する考え方を痛烈に
批判
  した。
  アレシナの結論は、大規模な赤字を削減しようとしたさまざまな国家を調査した結果、その

 行動自体が強い安心効果を生み出し、そうした効果がとても強いために、緊縮財政が経済拡張
 をもたらす、という驚くべきものだ。

  一九九八年に発表されたその論文は当時、それほど注目されてはいなかったが、その後、
 況は一変した。景気刺激策と緊縮財政のバランスをどうとるのか、という論点は経済学者
が論
 じる主要なテーマとなり、緊縮主義者にとってアレシナの論文は錦の御旗になった。

  これはとても残念なことだった。なぜなら、その統計的な結論や歴史的な事象を詳細に分析
 したとき、彼の論文はまったく検証に耐えられるようなものではなかったからだ。
  アレシナの主張には二種類の根拠がある。その一つは経済的なケーススタディだが、近年の
 経済状況に当てはまらないものが多い。もう一つの回帰分析も、緊縮政策として取り上げる事
 例が実際の政策と一致していないという欠陥がある。
  たとえば一九九〇年代末、アメリカは財政赤字から財政黒字へと移行したが、この動きは好
 景気に連動していた。はたしてそれは、緊縮財政の強化を証明するものになるだろうか。
  当時の好景気と赤字削減はITバブルのせいで生じていたのだ。それが株価の高騰を導き、
 税収増を成し遂げたにもかかわらず、「緊縮財政が財政赤字を減少させた」と結論づけるのは
 間違いだ。財政赤字と経済の強さに相関関係があるからといって、緊縮財政が経済成長をもた
 らすという因果関係が必ず存在する、ということにはならない。

 


 





【ドライブ・マイ・カー】
 

  「古い車だから、ナビもついていないけど」
 「必要ありません。しばらく宅配便の仕事をしていました。都内の地理は頭に入っています」
 「じゃあ試しにこのあたりを少し運転してくれないかな?天気が良いから屋根は開けていこう」
 「どこに行きますか?」
  家福は少し考えた。今いるところは四の橋の近くだ。
 「天現寺の交差点を右折して、明治屋の地下の駐車場に車を停め、そこで少しばかり買い物を
 して、それから有栖川
公園の方に坂を上がって、フランス大使館の前を通って明治通りに入る。
 そしてここに戻る」

 「わかりました」と彼女は言った。いちいち道順の確認もしなかった。そして大場から車のキ
 ーを受け取ると、座席
の位置とミラーを手早く調整した。どこにどんなスイッチがあるのか、
 彼女はすべて承知しているようだった。クラ
ッチを踏み、ギアをひととおり試した。ジャケッ
 トの胸の
ポケットからレイバンの緑色のサングラスを出してかけた。それから家福に向かって
 小さく肯いた。用意は整ったということだ。

 「カセットテープ」と彼女はオーディオを見て独り言のように言った。
 「カセットテープが好きなんだ」と家福は言った。「CDなんかより扱いやすい。台詞の練習
 もできる」
 「ひさしぶりに見ました」
 「僕が運転を始めた頃はエイトトラックだった」と家福は
言った。
  みさきは何も言わなかったが、表情からするとエイトトラックがどんなものか知らないよう
 だった。
  大場の保証したとおり、彼女は優秀なドライバーだった。運転操作は常に滑らかで、ぎくし
 ゃくしたところはまったくなかった。道路は混んでいて、信号待ちをすることも多かったが、
 彼女はエンジンの回転数を一定に保つことを心がけているようだった。視線の動きを見ている
 とそれがわかった。しかしいったん目を閉じると、シフトチェンジが繰り返されていることは、
 家福にはほとんど感知できなかった。エンジンの音の変化に耳を澄ませて、ようやくギア比の
 違いがわかるくらいだ。アクセルやブレーキの踏み方も柔らかく注意深かった。また何よりあ
 りがたかったのは、その娘が終始リラックスして運転していることだった。彼女は車を運転し
 ていないときより、むしろ運転をしているときの方が緊張がうまくとれるらしかった。その表
 情の素っ気なさは薄らぎ、目つきもいくらか温和になっていた。ただ口数が少ないことには変
 わりない。質問されない限り、口を開こうとはしない。
  しかし家福はそのことをとくに気にしなかった。彼も日常的に会話をすることがあまり得意
 ではない。気心の知れた相手と中身のある会話をするのは 嫌いではないが、そうでなければ
 むしろ黙っていられた方がありがたい。彼は助手席に身を沈め、通り過ぎていく街の風景をぼ
 んやりと眺めていた。いつも運転席でハンドルを握っていた彼にとって、そういう視点から眺
 める街の風景は新鮮に感じられた。
  交通量の多い明治通りで、試しに何度か縦列駐車をさせてみたが、彼女は要領よく的確にそ
 れをやってのけた。勘の良い娘だ。運動神経も優れている。彼女は長い信号待ちのあいだに煙
 草を吸った。マールポロが彼女の好みのブランドであるようだった。信号が青に変わるとすぐ
 に煙草を消した。運転をしているあいだは煙草は吸わない。煙草の吸い殼に口紅はついていな
 かった。爪のマニキュアもない。化粧というものをほとんどしていないようだ。
 「訊いておきたいことがいくつかあるんだけど」と家福は有桶川公園のあたりで言った。
 「訊いて下さい」と渡利みさきは言った。
 「運転はどこで身につけたの?」
 「北海道の山の中で育ちました。十代の初めから車を運転しています。車がなければ生活でき
 ないようなところです。一年の半分近く道路は凍結しています。運転の腕はいやでも良くなり
 ます」
 「でも山の中で縦列駐車の練習はできないだろう」
  彼女はそれには返事をしなかった。とくに答える必要もない愚問だということなのだろう。

                          村上春樹 『ドライブ・マイ・カー』
                             文藝春秋 2013年12月号掲載中

 

【冤罪の倍返し法】

福島県発注の工事をめぐる汚職事件で有罪が確定した元福島県知事の佐藤栄佐久に対し、同県が退
職金7726万6700円の返還命令を出していたことが一斉に報じられた。福島県によると、県の職員
退
職手当に関する条例では、在職期間中の行為が、禁錮刑以上に該当する場合、退職金の返還命令の
該当になるという。佐藤栄佐久は『知事抹殺』の著者だ。そこで、テレビドラマ「半澤直樹」の台
詞ではないが、このような報復(集団犯罪)に対する正当な報復方法を考えてみようとしたが、今
夜も疲れてヘロヘロの思考停止状態。

                                         

これはチョットほほえましいホーム・ニュース。例の花柚子の実を1つ採り、夕食の湯豆腐のたれ
に供した。新鮮ないい香りだ。これとて彼女が朝早く害虫から守ってきたからこそ、傷一つなく育
ったのだと、感謝し熱々の豆腐を頂いた。

                                        

                                      
 

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