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日々の恐怖 5月24日 ぎい(1)

2023-05-24 21:28:53 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 5月24日 ぎい(1)





 彼女には、たびたび思い出す古い記憶があった。
記憶のなかの彼女は、おそらくはまだ未就学児。
本当に小さい頃の記憶だという。
 小さい彼女は、廊下にいる。
実家の二階の廊下だ。
小さい彼女はすぐにそれを理解する。
 今ある実家ではない。
古い実家だ。
彼女が小学生の頃に建て替えた。
今はもうない古い実家。
 板張りの廊下はよく磨かれて、艶々としている。
右手には閉めきられた障子戸が整然と並ぶ。
左手には窓があり、そこから庭を見下ろせる。
廊下はまっすぐで、突き当たりで右に折れている。
折れた先がどこへ通じているのか、彼女は知らない。
 夢の中の彼女は、障子戸に手を掛ける。
するりと、音もなく障子戸が開く。
その先は二間続きの和室。
 二間を隔てる襖は開け放たれている。
そして、そこで女が首を吊っている。
こちらに背を向けていて、顔は見えない。
 奇妙なほどに俯いた頭。
滝のように流れ落ちた、いやに艶やかな髪。
牡丹の晴れ着。
両足を紐でくくっている。
ほどけた帯が、畳の上にだらりと落ちている。
倒れた踏み台。
女の身体は揺れている。

” ぎい。”

それに合わせて、軋む音がする。













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