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日々の恐怖 5月15日 ワイの話(14)

2020-05-15 11:27:34 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 5月15日 ワイの話(14)




 妹が小学校の高学年になった頃、また妹が学校を休みがちになった。
お守りとして付けていたキーホルダーがいつの間にかどこかに消えてしまい、ワイも何度か一緒に探したが結局、キーホルダーが出てくる事は無かった。
 そんな時、入院している曽祖母がもうあまり先が長くないというので、マッマとワイと妹はお見舞いに行った。
曽祖母は随分前から施設に入っていて、少なくともワイが記憶している限り、その病室でしか曽祖母を見た事が無かった。
以前お見舞いに行った時、曽祖母はワイのマッマを見てバッバの名前を言っていた。
 ワイをひ孫と認識していないようで、ワイら兄妹が病室を訪れても叔母や叔父の名前ばかり言っていた。
そんな状態なのでバッバやマッマはあまり曽祖母の話をせず、お見舞いに行く回数も非常に少なかった。
ワイは子供ながらになんとなく、バッバやマッマが曽祖母をいないものとしているように感じ、曽祖母の事を深く聞く事は無かった。
 しかし、その日お見舞いに行った時の曽祖母はいつもと違っていた。
もう話す力も残っていないはずなのに、妹を見るなりハッキリとこう言った。

「 妹ちゃんだね、大丈夫、全部持ってくから、安心せい。」

マッマは酷く驚いていた。
そして続けて、曽祖母は、

「 部屋の茶箪笥の上を見なさい。」

と言った。
ずいぶん前から、まともに話せる状態じゃなかった曽祖母が、しっかりと妹の方を見て話していた。









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