日々の恐怖 12月9日 跳ね返り(1)
会社の後輩A君の話です。
その後輩、A君は去年うちの部署に配属されてきました。
年は20代後半、イケメンで人当たりもいい、いかにも好青年という感じだった。
それまでいたところとは畑違いな部署に来たこともあり、最初は手違いもあったけど、努力家だし一度教えればそれで覚えてくれるので、教育係だった俺はとてもありがたかった。
俺を含め、大半は彼を認めていたし、評価していたと思う。
気さくだけど礼儀正しく、ユーモアもある彼は職場にもすぐ馴染んだ。
しかし、彼を良く思わなかった人がひとりだけいた。
その人を仮にBさんとする。
Bさんは30代半ばの男性で、仕事は結構出来るんだけど、人格に難ありというか、よく人を貶めた物言いをする人だった。
短所は言うまでもなく責め、長所まで言い方を変えて貶したりしていた。痛烈に批判したり、泣くまで追い詰めたりすることはない。
ちょっと嫌な気分になる程度のものだったので大きな問題になったことはない。
みんな出来るだけBさんには関わらないようにする、聞き流すという対応をしていた。
新しく加わったA君に仕事を教えたりするのは俺の役目だったので、俺が意識的にそうしていたこともあり、A君とBさんの接点は初めはあまりなかった。
今思うと、おそらくその頃からBさんはA君を良く思っていなかったのだろう。
ある日、A君が資料を作成していたら、そこにBさんがやってきて、A君の仕事ぶりを観察し、そこに文句を付け始めた。
Bさんが、
「 その文おかしくない?
まあそれでA君がいいと思うんならいいけど。
あと、この形式じゃ見にくいと思うな。
プリントして配って誰が見るか、まで考えてるの?
あと、語彙が少ないよね~。」
という感じで嫌味を言っているのを、トイレから戻ってきた俺が止めた。
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