日々の恐怖 12月2日 チエ(5)
そしたら不意に、声が聞こえたんだ。
「 チエ、こんなとこにおったんけ。」
婆さんが登ってきたか、と思って、そこで俺は跳ね起きた。
でも、そこには何もなかった。
チエも、婆さんもいなかった。
怖くて、そのまま寝ることにした。
気のせいだったと思うことにして。
チエと婆さんは、婆さんの自室で死んでいた。
翌日の朝、俺が見つけた。
死因は窒息。
婆さんの喉にはチエの髪の毛と千切れた服、目玉が入ってて、婆さんの口の中には、チエの頭部が入ってた。
そりゃ、飲み込めねえよ。
明るい部屋ん中、陽が沢山差し込む中、婆さんがそんな感じに死んでるわけよ。
幸せそうな顔じゃなくてさ、いかにも苦しみましたってさ、目を血走らせて、失禁して、片手にチエの胴体を強く握って。
婆さんの葬式は簡易的なものだった。
火葬だった。
チエも一緒に燃やした。
墓に収める時に、墓に歴代の先祖の名前あるじゃん。
そこには既にチエ(本物の叔母)って書いてあって、変な感じがした。
それで、これは葬式にきた親戚の話だ。
叔母さんのチエさんの死因って実は原因不明じゃなかったんだ。
うちの婆さんが首を閉めて殺したらしい。
理由は知らん。
そういや父方の親戚付き合いがないなって思ったら、婆さんは絶縁されたらしい。
何で逮捕されなかったのか聞いたら、誤魔化された。
もみ消したんだろうな。
婆さんが死んで、今年で四回忌だ。
俺は高校に行ってない、何もしてない。
婆さんが死んでから、ずっとやる気が出ない。
いっそこのまま死にたいとすら思うよ、疲れた。
今まで起きたこと、全部チエ叔母さんの呪いなら、この俺の状態もそうなのかもな。
俺の一族を滅亡させるつもりなのかも知れないなって思うと、ちょっと笑えるよな。
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