日々の恐怖 12月26日 跳ね返り(7)
結果として、最悪の事態は免れた。
Bさんは病院で一命を取りとめた、と次の日上司が教えてくれた。
本当に良かった。
ただし、脳に障害が残り、不自由な身体になってしまい、もう職場復帰はせず、Bさんはそのまま退職することになった。
みんなホッとしたり、後味が悪い思いをしたりと様々な中、A君はまだ死にそうな顔をしていたが、ばんばん背中を叩いて、
「 Bさん助かってよかったな!」
と声をかけると、
「 はい。」
とようやく笑ってくれた。
俺はそう言いながらも、もし、BさんがA君に死ねと言ったらどうなっていたのかと考え、背筋を凍らせた。
A君が思い詰めてどうにかなったりしないかと、無駄に構ったりいじったり、飲みに誘ったりした甲斐があったのか、今では気持ちも持ち直し、仕事に励んでいる。
後のことだが、Bさんは奥さんの実家に引っ越して、リハビリがてらに畑仕事をしたりしながら楽しくやっているらしい。
簡単な近況報告と美味しい農産物が届いて、職場のテンションが上がった。
ちなみに、宛先が俺宛で、俺のマンションに届いたので、それを持って会社に行くのはなかなか骨が折れた。
届いた時、箱を開けると職場宛の手紙とは別に一筆箋が入っているのを発見した。
そこには俺への感謝と、A君への謝罪が一言ずつ書かれていた。
このことはA君にだけこっそり伝えた。
それを聞いたA君は、なんというか、言い表せないような表情をしていた。
すごく嬉しそうだった。
Bさんが助かって本当に良かったと思う。
あと、今後、A君が悲しい思いをしないように心から祈る。
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