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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

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☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

霧の狐道230

2009-05-27 20:13:23 | E,霧の狐道
お揚げ婆さんが立ち上がりながら赤い円に向かって叫んだ。

「 こりゃ、ヘビ次郎、何処へ行くのじゃ!」

返事は無い。

「 もう・・・・・。
 言うことを聞かんヤツじゃ!」

そして、振り返って俺に言った。

「 また、来るからの!」
「 もう、来なくていいぞ~。」

お揚げ婆さんは不満そうに俺を睨んだ。

「 くそっ、どいつもこいつも・・・・。」

そして、半分サイズのお揚げ婆さんはブツブツ言いながら赤い円の中に入って行った。
 お揚げ婆さんの姿が消えると赤い円は徐々に小さくなり、赤い点になってス~ッと消えてしまった。

「 あ~、居なくなった・・・。
 結構、お揚げ婆さん、ビビッテいたな。
 このお守り、効力があるぞ。」



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霧の狐道229

2009-05-24 18:42:48 | E,霧の狐道
俺は、お守りをヒラヒラした。

「 バカ言ってんじゃないよ。
 そんなもの怖い訳が無い。」
「 そうかなぁ~。」

俺は、さらにお守りをお揚げ婆さんの方に突き出してヒラヒラした。
 お揚げ婆さんは、身を引きながら突然言った。

「 おっ、そうじゃ。
 ちょっと急用を思い出した。」
「 急用って何だよう?」
「 急用は急用じゃ。
 すぐに帰らなければならないのじゃ。」
「 血が噴き出すってのは、どうなったんだよ?」
「 今日は、急用だからダメじゃ。
 明日、対策を考えてから、また、来るからな。」
「 対策って、何なんだよ?」
「 ええい、細かいことにウルサイガキじゃ。
 明日は、えらい事が起こるんじゃ。
 覚悟して、ビビッておれ!
 じゃ~な!」
「 おい、待てよ。」
「 何じゃ?」
「 もう、来なくていいぞ。」
「 だまらっしゃい!
 明日じゃ、明日!!
 わっ!!!」

お揚げ婆さんが床にひっくり返った。
ヘビ次郎がお揚げ婆さんを振り落とし、勝手に赤い円の中にスルスルと入って行ってしまったからだ。




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霧の狐道228

2009-05-22 19:16:56 | E,霧の狐道
でも、お揚げ婆さんは、昨日のように俺に近付いて来ない。

“ おかしいな・・・・。
 何か、昨日と様子が違うのは訳があるんだ・・・。”

やはり、お揚げ婆さんは壁に張り付いたままで話をしている。

「 今日こそ酷い眼に遭わせてやるからのっ!」

そう言っている声の調子も、カラ元気っぽい。
 それで、俺はお揚げ婆さんにちょっと訊いてみた。

「 今日は、どうして近付いて来ないんだよ?」
「 いや、ここからで充分なんじゃ・・・。」

お揚げ婆さんの視線を辿ると、どうも俺のお守りを見ているように見える。
 俺は試しに、お守りをお揚げ婆さんに向けて前に出し、近付けて見た。

「 今日、これ貰ったんだよ!」

突き付けられたお守りに、お揚げ婆さんは“ウッ!”っと顔を引いた。

“ あらっ、これって効き目あるみたい・・・。”

お揚げ婆さんは、お守りをチラチラ見ながら言った。

「 ああ、いいもの貰ったんだね。
 分かったから、それはそっちに置いといた方がいいよ。」
「 婆さん、ひょっとしたら、これが怖いんじゃないのか?」



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霧の狐道227

2009-05-19 20:17:21 | E,霧の狐道
 ヘビ次郎は、お揚げ婆さんを乗せたまま、チョロチョロ赤い舌を見せている。
こちらを静かに見詰める眼がチョット怖い。
でも、俺は気を取り直し、お揚げ婆さんに訊いて見た。

「 ガマ太郎は、どうしたんだ?」
「 今日は、お休みをとって家で寝ておるんじゃ。
 代わりにヘビ次郎じゃ。」
「 およっ・・・・!?」
「 ん、どうしたんじゃ?」

 俺は、昨日よりお揚げ婆さんのサイズが小さいことに気が付いた。
ヘビ次郎もガマ太郎ほどの大きさは無く、かなりチッコイ。
これじゃ圧迫感が無いのは当たり前だ。
昨日は等身大以上だったのに、今日は、半分ほどしかないのだ。

“ こいつら、なんか、迫力無いぞォ~!”

俺は強気になって、お揚げ婆さんに尋ねた。

「 婆さん、婆さん、昨日の半分ぐらいの大きさジャン。
 どうして?」
「 それは・・・・・。
 え~とな・・・・。
 んと・・、省エネで、来たからじゃ!」
「 何か、パワーが無くなった感じがするなぁ~。」
「 ウルサイのう。
 でも、今日は、しっかり呪文を覚えて来たからの。
 それじゃ、早速、体中から血が噴き出すヤツをやるかの!」



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霧の狐道226

2009-05-16 17:03:15 | E,霧の狐道
そして、龍平は向こうを向いてしまった。

“ 参ったなァ~。”

モロ、熟睡状態だ。

『 おんばあさらえんそわ・・・・、おんばあさらえんそわ・・・・。』

俺は龍平を諦めてベッドの右横の白い壁を見た。

レーザーポインターみたいな赤い点は、段々大きくなって丸い円になる。

『 おんばあさらえんそわ・・・・、おんばあさらえんそわ・・・・。』

声は段々デカクなって来た。。
赤い円もどんどん大きくなる。

“ ヤバイなァ~。”

赤い円の明るさは少し弱くなった。

“ もうすぐ、来るぞ・・・。”

気合が入っているのか、声の方は今日は妙にデカイ。

『 おんばあさらえ~~ん、そわか、う~~んん!!。』

決めの言葉が終わって、一瞬静かになった。

“ うっ、来るっ!?”

間髪を置かず赤い円の中から、お揚げ婆さんの顔がヌ~~ッと現れた。

「 ふふふ、来てやったぞォ~。」

お揚げ婆さんと何だか長いものが、赤い円からのそのそと這い出して来る。

“ ん・・・・?”

ここで俺はお揚げ婆さんの下を見て驚いた。

「 わっ、何だ、コイツは・・!?」

お揚げ婆さんは、ヘビに乗っていたのだ。

「 どうじゃ、驚いたかぁ?」
「 今日は、ガマ太郎じゃないのか?」
「 ああ、ヘビ次郎じゃ。」



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霧の狐道225

2009-05-13 20:18:50 | E,霧の狐道
 俺は、ハッと眼が開いた。
天井のスクリーンは映画が終了して真っ暗だった。
俺は少し汗をかいていた。

“ いつのまにか寝ていたのか・・・。”

俺は、天井を見ながらため息をついた。

「 ハァ~・・・・。
 ん・・・・・・?
 んん・・・・・・?
 んんん・・・・・・?
 んんんん・・・・・・!」

俺の頭の中に変な声が響いて来る。

『 おんばあさらえんそわ・・・・、おんばあさらえんそわ・・・・。
 おんばあさらえんそわ・・・・、おんばあさらえんそわ・・・・。』

俺は“これはマズイ”と思って、龍平に向かって叫んだ。

「 うわぁ~、お揚げ婆さんだ。
 龍平、起きろ、起きろ!」

『 おんばあさらえんそわ・・・・、おんばあさらえんそわ・・・・。
 おんばあさらえんそわ・・・・、おんばあさらえんそわ・・・・。』

左横の龍平は熟睡して起きない。

「 これでどうだ!」

俺は龍平の頬を抓った。

「 止めろォ、ばあろォ~!」

龍平は俺の手を振り払って、俺を蹴っ飛ばした。

「 イデデデデ!」

振動で傷が痛む。
でも、起きる気は無いらしい。



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霧の狐道224

2009-05-11 20:35:14 | E,霧の狐道
 川風に由紀ちゃんの髪が流されてサラサラと顔に掛かっている。
俺は満たされた気分でハンバーガーの残りを頬張る。

“ う~ん、いい雰囲気だなァ。”

そして、しばらく歩いていると足音が後ろから近付いて来た。

“ あれっ、何だ?”

なんだか、複数の足音だ。
俺は“誰かな?”って思って振り向く。

“ うわっ!”

 俺たちの後ろに、腕を組んだ狸小路と女の子とお揚げ婆さんとが出現。
みんな、ニコニコ顔。
ガマ太郎とキツネが、その前でピョンピョン跳ねている。
黒い影は空中に浮かんでへらへらと踊っている。

“ ゲッ、なんて展開だ!”

俺と由紀ちゃんは、ハンバーガーを放り出して土手を必死で逃げる。
二人で手を繋いで逃げる。
いろいろな種類の足音が追いかけて来る。
 俺たちは走って逃げる。
息を切らして逃げる。
逃げる、逃げる、逃げる。
俺たちはハアハア言いながら土手を逃げる。

“ もう、ダメだ、走れない・・・。”

足音は、さらに近付いて来る。

“ ヒタヒタヒタヒタ・・。”

狸小路と女の子とお揚げ婆さんが、スクラムを組んで直ぐ後ろにいる気配がする。

“ ああ、もうダメだ・・・。”

ガマ太郎の顔のアップがイメージされる。

「 ゲロ、ゲーロ!!」
「 うわっ!」



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霧の狐道223

2009-05-09 18:43:54 | E,霧の狐道
 狸小路も女の子もお揚げ婆さんも、そう簡単には諦めないだろう。
狸小路と女の子とお揚げ婆さんは、俺に“諦めろ!”と三人並んでVサインをして見せる。
黒い影はその前で右へ左へ、ヘラヘラと揺れている。

“ くそ~っ、いい加減にしろよなァ~。
 碌でもないイメージしか浮かんで来ない!
 そうだ、もっと楽しいことを考えよう!”

 俺はクラス新聞の原稿を作って遅くなった帰り、由紀ちゃんと駅前でハンバーガーを買って、川の土手を食べながら歩いて帰ったことを思い出した。

“ あれって、デートだったのかなァ~。”

俺はちょっと幸せな気分になった。

“ ムフフフフフ!”

 俺と由紀ちゃんが、夕方の土手をハンバーガーを齧りながら二人並んで歩く。
夕日に照らされて、二つの影が土手の道に長く伸びる。
向こうからジョギングの兄ちゃんが走って来て、一瞬のハッハッと言う息が聞こえて、瞬間ですれ違う。
 俺はハンバーガーを頬張りながら、由紀ちゃんの方を見る。
由紀ちゃんはハンバーガーを両手で持って、かわいい顔でリスのようにモグモグ食べる。
河原からカラスが二羽飛び立つ。
そして、夕日の中を、ガァ~と一声鳴いて飛び去って行く。



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霧の狐道222

2009-05-06 20:45:09 | E,霧の狐道
 龍平は、眼を瞑って向こう向きになった。
俺は後ろを向いた隆平に言った。

「 まだ、お揚げ婆さんの話があるんだけど・・・。」

龍平は向こうを向いたままだ。
返事も無い。
もう、寝てしまったように見える。

“ おまえ、瞬間睡眠か・・・。”

 俺は龍平と喋るのを諦めて、布団を首まで引っ張って仰向けになった。
そして、四角い天井を見ながら考えた。

“ だんだん、訳が分からないことになって来たぞ・・・。”

暗い天井がスクリーンのように見える。
そのスクリーンに狸小路と女の子の笑い顔がボンヤリ映り始めた。

“ これほど不幸な人間は、世の中にいないんじゃないかな・・・。”

狸小路と女の子は、二人で手を取り合ってクルクル回る。

“ 参ったなァ・・・。”

さらに、二人の輪の中に黒い塊がムクムクせり上がって黒い人影が現れた。
 俺のイメージは、悪い方にドンドン膨れ上がって来る。

“ 増えて来たぞ・・・。”

そして、次は三人でクルクル回っている。

“ ホント、楽しそうだな・・・。”

大きくなった輪に、ガマ太郎に乗ったお揚げ婆さんがズリズリズリとせり上がって来る。

“ うわっ、婆さん、来たぞォ~。
 弱ったなァ・・・・。”

俺は、とにかく、こいつらから脱出しなければならないのだ。



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霧の狐道221

2009-04-30 19:56:17 | E,霧の狐道
 俺は龍平に同意を求めた。

「 大丈夫だよな・・?」
「 どうかなァ、手術、ヘタだけど・・、するのは好きだよ・・・。」
「 ヘタだけど、するのは好きって!?
 龍平、クビにしろよ、そんなヤツ!」
「 そんな力は、まだ無いがな。」
「 ああ、もう、どうしたらいいんだ・・・・。
 ああ、不幸だ、不幸が雨の様に俺に降り注ぐ。
 どうしてくれるんだよ!」
「 どうもこうも、貴志が救急で入院したとき、狸小路しかいなかったんだよ!
 もう、優秀な方の吉田先生は入院患者を山ほど治療しているからな。
 それも、狸小路には入院患者を担当しないようにしているんだから、それは
 仕方ないだろ。
 吉田先生は手一杯なんだよ!
 外来の簡単な怪我人を捌く担当が狸小路、難しい患者は吉田先生。
 とにかく、おまえは、運が悪いんだ!」
「 まさか、狸小路の担当する入院患者は俺だけかァ?」
「 まさか、じゃなくて、そうだよ。」
「 そんなァ~。
 ああ、もう不幸が土砂降りだ・・・・。」
「 もう、幸せでも不幸でも、どっちでもええがな。
 固定して、手術さえしなければ自然とくっ付いて治ってしまうがな。
 湿布の交換だけなら、どんな医者でも出来るわい。」
「 そんなァ~。」
「 もう、ゴチャゴチャ言うな!
 もう眠いから、2時に備えて、わいはひと寝するで・・・。」
「 お~い、チョット待てよォ~。」




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霧の狐道220

2009-04-28 20:25:13 | E,霧の狐道
「 女の子より狸小路の方が怖いかも知れへんで。」
「 どうして?」
「 抱き合わせ人事って知ってるか?」
「 知らないけど・・・・。」
「 A病院に優秀な外科医がいる。
 B病院はそいつを引き抜こうとする。
 引き抜くには多額の現金がA病院と外科医に必要だが、それ以外にも引き受
 けなければならないこともある。
  医者にも問題を持った人がいるが、大学や他病院との人間関係でクビに出
 来ないんや。
 そこで、優秀な外科医にくっ付けて転勤させる。
 これが、抱き合わせ人事やがな。」

“ どう考えても、タヌキが優秀な外科医とは思えない。”

俺は呟いた。

「 タヌキか・・・・。」
「 アハハ、分かったんか!」
「 アハハじゃないよ。
 でも、優秀でなくても普通だろ。」
「 いや・・・・。」
「 いやってなんだよ、教えろよ!!」
「 前に、狸小路、足の骨折手術をしたんや。
 左足を事故で骨折して、手術して直そうとしたんやけど、手術の後、固定し
 たのはええんやが、なかなか左足がくっ付かない。
  おかしいな、おかしいなって思っているうち、一ヶ月近く予定を過ぎて、
 ようやく治ったんや。
 それで、立ち上がって歩いてみるとどうも歩き難い。
 おかしいなってんで、調べると左足が3cm長いんやがな。
  普通、事故した足って短くなることはあるんやけど、長くなるって変やろ。
 長さを間違えて固定してしもたんや。
 もう、ビックリやで。
  左足を引っ張り過ぎて、長くして固定したから、なかなか骨が出来なかっ
 たんや。
 体の不自由な人になってしもて、まあ、お金で示談にしたんやけど。
 でも、高速道路は無料で走れるって、変な感謝をされたけどな。
  貴志も左肩、長くなるんとちゃうか?
 バスケット、左手でシュートしたら入り易いで。」
「 あのなァ~、止めてくれ!
 手術はしないって言ってあるから・・・・。」



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霧の狐道219

2009-04-26 19:02:21 | E,霧の狐道
「 それに女の子からお守りなんて貰って、ええなァ~。」
「 ああ、由紀ちゃんか。」
「 吉沢由紀やろ。」
「 龍平、よく覚えてるなァ~。
 俺、一回、名前言っただけなのに・・・。」
「 当たり前やろ、毎日、勉強してんにゃから。
 それに、幼馴染ってええなァ。
 憧れるなァ~、そんなの。」
「 そうか、憧れるか。
 ムフフフフフ、お金持ちに勝った気分。
 メッチャ、ハッピーじゃん。」
「 何か、妙に喜ばしてしもたな。」
「 むふふふふ、幸せ・・・。」
「 そんなの言っているのは、今のうちだけやな。
 貴志の相手は、あの女の子だろ。
 遊ぶって約束したんやから、ハハ、楽しみ!」
「 ゲッ、ヤバイ!」
「 約束は、守るもんやで。」
「 うううう・・・。
 不幸だ、俺は、不幸だったんだ。
 うううううう・・・。」
「 ついでに、もう一つ不幸な話をしたろか。」
「 何だよ、もう一つって・・・・。」
「 貴志の主治医は狸小路やろ。」
「 ああ、そうだよ。」
「 フフフフフ・・・。」
「 何がおかしいんだよ!」



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霧の狐道218

2009-04-24 19:08:22 | E,霧の狐道
 俺は、マズイことを聞いたかなと思って話を変えた。

「 えっと・・・・、ここ大きい病院だな。」
「 ああ、そうやろ。
 親父があちこちで経営してる。
 チェーン店みたいなモンや。
 親父は外科が専門なんやけど、最近は医学よりも経済学や。」
「 一人っ子だったら、医者になるの?」
「 そうやな、医者やな。」
「 じゃ、勉強、大変なんだァ。」
「 ああ、毎日、塾や。
 医学進学コースやで。
 休みは土日だけやから、結構、大変なんや。」
「 俺、そんなに勉強するのイヤだなァ~。」
「 アハハ、わいは力を付けて、親を頼らず一人で生きて行くんや。」
「 ふ~ん、お金持ちにはお金持ちの苦労があるんだな・・・。」
「 貴志は、学校から帰ったら、いつも何してるんや?」
「 えっ、俺・・・・。
 えっと、学校から帰ったら・・・・。
 玄関に鞄を放り出して、友達の所に遊びに行くか、コタツから首だけ出して、
 テレビマンガの再放送を見るか、どっちか・・・。」
「 おまえ、幸せな奴っちゃなァ~。」
「 そうかなァ~。」
「 そう言うのを、何気ない幸せちゅうんや。」
「 そうかァ~、俺って幸せなんかァ~。
 そうかァ、そうなんだ、ふふ!」




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霧の狐道217

2009-04-22 18:55:47 | E,霧の狐道
 俺は、まだ、眠くないので龍平に話し掛けた。

「 龍平、田中さんから聞いたんだけど、この病院の院長の子?」
「 ああ、そうやで。」
「 それって、お金持ち?」
「 ああ、金はあるな。」
「 いいなァ~。」
「 お金があっても、いいとは限らんで。」
「 どうして?
 俺なんて、ズ~ッと貧乏だよ。
 食べ物だって、チクワばっかり・・・。
 体に、縦に穴が開きそう・・・。」
「 アハハハハ。
 まあ、食い物は取り寄せられるけど・・。
 でも、貴志には家族が揃ってるだろ。」
「 揃ってるって?」
「 親とか・・。」
「 両親と妹がいるけど・・。」
「 夕食とか、一緒に食べるやろ。」
「 そうだよ。」
「 わいは、いつも一人で食ってる。」
「 どうして?」
「 親父は忙しくって夜にしか帰ってこないし、母親とは話が合わへんにゃ。」
「 兄弟は?」
「 妹が一人いるけど・・・。」
「 じゃ、俺の家と同じだな。」
「 いや、違う。
 今の母親は、本当の母やない。
 妹は親父の子やけど、今の母の子や。
 わいの母は、死んだ。」




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霧の狐道216

2009-04-20 19:35:18 | E,霧の狐道
 俺と龍平は、ベッドに二人並んだ。
左が龍平で俺は右だ。
俺は右の白い壁を見ながら思った。

“ お揚げ婆さんに接近してるけどなぁ・・・・。
 でも、単に夢だったかも知れないし・・・。
 いくらなんでも、カエルに跨って出て来るなんて、マンガの世界だろ。
  やっぱ、ありゃ夢だな・・・・。
 夢だったら、全然影響無いよな。
 まあ、気にせずにおくか・・・・。
 それに、今日は隆平もいるしな・・。”

俺は寝転んだ。
 布団を首まで被って、二人並んで顔を出す。
布団一つでは、体の何処かが布団からはみ出す。
龍平が俺に文句を言った。

「 狭いなァ~。」
「 あのなあ、龍平。
 これは俺のベッドだぞ。
 おまえ、あっちの空いているベッドで寝ろよォ!」
「 おまえなァ・・・、あれはイヤやちゅうたやろ!
 おまえこそ、寝ろ!」
「 イヤだよ、まだ、死にたくない。」

 俺たちは空きベッドを見た。
隆平がベッドを見ながら俺に訊いた。

「 出るのは、何時ごろや?」
「 昨日は、2時ごろ女の子が来た。」
「 それで?」
「 で、女の子がベッドを触ったら、ムクムクと黒いヤツが出てきたんだ。」
「 ふ~ん、2時ごろかァ。
 女の子と黒いヤツのダブルやな。
 どっちも、ちょっと手強そうやな。
 女の子って、黒いヤツを呼んでるのかな?」
「 どうかな・・?」
「 まあ、その時間までは、どっちも出てこないよな。」
「 どうかな・・?」
「 同じ返事ばっかりするなよなァ。」
「 だって、分からないからさァ・・・。」
「 う~ん、そうか・・・。」

龍平が黙ると部屋は静かになった。




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