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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆(  しづめばこ P574 )                          

霧の狐道215

2009-04-14 18:56:22 | E,霧の狐道
    消灯2


 消灯を過ぎ、看護婦さんの見回りが終わったころ、龍平が病室に忍び込んで来た。
黒い上下のジャージを着て、黒っぽいスヌーピーの枕を持っている。

「 よっ!」

龍平は右手を挙げて挨拶した。

「 看護婦に見つからないように黒尽くめで来たんや。
 どや、見えへんやろ。」

龍平は枕を持ったまま、病室の白い壁にゴキブリのようにピッタリと体を付けた。

「 白い壁に、黒は見えるけど・・。」
「 あ、そやな。
 でも、夜はやっぱり黒やで・・・。
 ほれっ!」

龍平は壁から離れ、枕を俺のベッドに放り込んだ。

「 あらよっと!」

そして、掛け布団を引っ張って尻から体を俺のベッドに入れて来た。

「 ベッド、詰めろ、詰めろ。
 わいも、入るで。」
「 イデデデデ、押すなよ。
 俺は、病人だろ。」
「 もうちょっと詰めろよ。
 狭いんだから・・・。」
「 仕方が無いなァ~。」




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霧の狐道214

2009-04-10 20:01:35 | E,霧の狐道
 それで、俺と田中爺が果物カゴを見たのだ。
すると、山本爺が既にカゴからリンゴを取って齧っていた。

“ シャリシャリシャリ。”

俺は驚いて言った。

「 わっ、もう、食ってる!!」

山本爺は無表情なまま、クルッと向きを変えてベッドに戻り、布団を被った。

“ シャリシャリシャリ。”

 俺は盛り上がった山本爺の布団を見た。
布団の中からリンゴを齧っている音が聞こえる。

“ どうせ、一人では全部食べられないし・・・。
 どうも山本爺の行動は予測できないなァ・・・。”

田中爺は俺の唖然とした姿を見て笑いながら言った。

「 わしも、リンゴ、貰うでェ~。」

 田中爺はカゴからリンゴを一つ取ってパジャマの裾でゴシゴシ擦った。
そして、ニヤッと笑ってリンゴを齧った。

“ シャリシャリシャリ。”

俺は田中爺の満足そうな顔を見て思った。

“ ま、取り敢えず話題は逸らしたな・・・。”

 で、龍平との話の続きだ。
俺はベッドの足元でリンゴの成り行きを見ていた龍平に訊いた。

「 それで、龍平、今日の夜、何時に来る?」

龍平はチョット考えてから質問に答えた。

「 そうやな。
 消灯が過ぎたら、看護婦に分からないように忍び込んで来るわ。
 看護婦、ウルサイさかいな。」
「 分かった。」
「 じゃ~な。」
「 ああ。」
「 これ、貰っておくからな。」

龍平はリンゴを一つ持って部屋から出て行った。

“ シャリシャリシャリ・・・・。”
“ シャリシャリシャリ・・・・。”

部屋には田中爺と山本爺のリンゴを齧る音が響いていた。



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霧の狐道213

2009-04-08 19:08:57 | E,霧の狐道
 田中爺が横のベッドから俺に声を掛けた。

「 よっ、色男!
 いい物、貰ったやん。
 憎いねぇ~、女の子から貰うなんて!
 それも、みんなに分からないように、そっと貰って。
 あれは、おまえの女か?」

龍平はそれを聞いてアハハと笑った。
 俺は田中爺を困った顔で見た。

“ 田中爺よ、それが小学生に言う言葉か・・・・。”

そして田中爺に説明した。

「 いや、クラスの友達です。」
「 ふ~ん、イヤに親しそうな感じやったでェ~。」
「 小さい頃からの幼馴染で・・・・・。」
「 ほう、それで、それで、・・・・。」
「 ・・・・・。」

俺は言うのを止めた。
田中爺はニヤニヤして俺を見ている。
 で、俺は話題を逸らそうとした。

“ そうだ、果物だ・・。”

俺は田中爺に果物をお裾分けして黙らせようとした。

「 いやァ、まあ、お見舞いの果物でも・・・・。」
「 おお、そうかい、そうかい。
 リンゴでも食って、ゆっくり聞くことにするかのォ。
 その幼馴染の馴れ初めってヤツをのォ~。」

俺は、“これは却ってマズかったかな”と思った。



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霧の狐道212

2009-04-05 20:15:26 | E,霧の狐道
 俺は由紀ちゃんの後ろ姿を見ながら、お守りを握った。
由紀ちゃんの温もりが残っているような気がした。
龍平が俺に言った。

「 カワイイ子やん。」
「 クラスの子だよ。
 俺の隣の家に住んでるんだ。」
「 で、風呂の件ってなんや?」
「 いや、覗いたって疑われて・・・。」
「 風呂を?」
「 そう。」
「 ま、やりそうやけど。」
「 ち、違うって。」
「 怪しいな。」
「 ホント、ホント。」
「 ふ~ん・・・・・。」

そして、手に持ったお守りを見て龍平は言った。

「 ちょうど良かったやん。
 これ持ってたら、今日の晩は大丈夫なんとちゃうやろか。」
「 そう、そう言う気がする・・。」

俺は由紀ちゃんのくれたお守りを見た。

“ お守りか・・・。”

 俺は今までお守りなんて持ったことも無かった。
でも、持っていれば、安心なのかも知れないとも思えた。
お守りの絵を見ると、キツネがちょこんと座っている。

“ このキツネ、あのキツネかな?”

イタズラされて困った、あのキツネの顔が頭に浮かぶ。

“ でも、鍵は咥えてなかったよな・・・。”

俺はお守りをそっと枕もとの引き出しに入れた。



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霧の狐道211

2009-04-03 19:00:26 | E,霧の狐道
 俺は由紀ちゃんの婆さんに以前会ったことがある。
うちの婆さんも強烈だが、由紀ちゃんの婆さんも、また、ちょっと異質な強烈さがある。

「 あの神社のだろ。」
「 そうよ、私の家の氏神様よ。」

故郷にある唯一の神社のお守りだ。

“ これ、効きそうだな・・・。”

俺は有難く頂いた。

「 ありがと・・。」
「 早く治ってね。」

俺が頷くと由紀ちゃんは言った。

「 じゃ~ね、みんな待ってるから・・。
 あ、それから風呂の件は無実が分かったわ。
 貴ぴ~のお父さんに聞いたから。
 アリバイ成立ねっ!」
「 そうだろ。
 言った通りだろ。」
「 疑ってゴメンね。」
「 いいよ。」
「 じゃ・・・・。」

由紀ちゃんはニコッと笑って右手を小さく振った。
 龍平が由紀ちゃんに馴れ馴れしく言った。

「 また来いよなァ~。
 今度来る時は、わいの分も持って来るんやでェ~。」

由紀ちゃんは笑いながらクルッと向きを変えて病室を出て行った。



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霧の狐道210

2009-04-01 19:14:53 | E,霧の狐道
俺は話をもとに戻して由紀ちゃんに言った。

「 それで、何?」
「 あ・・・・。」

由紀ちゃんは、ポケットをゴソゴソした。
そして、俺に言った。

「 あの、これ・・・。」

由紀ちゃんは、小さなお守りを差し出した。
 俺はお守りを受け取って見た。
赤地に金色の宝玉と稲穂の模様が入っている。
裏を返すと鍵を咥えた金色のキツネがチョコンと座っている絵がある。

“ このキツネ、どっかで見たことあるような・・・。”

お守りには紫の紐が輪になって、ぶら下げられるようになっている。
俺は由紀ちゃんに聞いた。

「 神社のお守り?」
「 そう、突然、うちの婆ちゃんから電話が掛かって来たの。
 貴ぴ~の婆ちゃんから、連絡でもあったのかしら?」
「 昨日、親が来たときは、連絡するとは言ってなかったけど・・・。」
「 それで、お見舞いに行くって言ったら、おまえが持っているお守りを持っ
 て行って渡せって言われたの。
 私の分のお守りは、後で郵送するからって・・・。」
「 ふ~ん・・・・。」




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霧の狐道209

2009-03-30 19:43:31 | E,霧の狐道
 気を利かせて引っ込んでいた龍平が窓際からこっちに来て、夜の打ち合わせの話をしようとしたとき、病室の扉が開いた。
そして、扉の影から由紀ちゃんが現れた。
 俺はムフフフフと嬉しかった。
でも、ここは喜んでいることを悟られないようにしなければならない。
俺は平静を装って由紀ちゃんに言った。

「 あれっ、もう、みんなと一緒に帰ったと思ったのに・・。」
「 ううん、ちょっと忘れ物をしたって言って戻ってきたの・・。」
「 ん・・・・。」

由紀ちゃんはチラチラと龍平を見ている。
それに気が付いた俺は由紀ちゃんに言った。

「 こいつは龍平って言うんだ。
 病院友達だし、気にしなくていいよ。
 ちょっと、変なヤツだけど・・・。」
「 何処が変なんや!」
「 あちこち・・。」

由紀ちゃんが笑いながら言った。

「 関西の人?」
「 そうやで。」
「 由紀ちゃん、もうちょっと喋らしたら面白いよ。
 コテコテの関西弁ばっかり喋るから。」
「 何、アホなこと言うてんねん。
 関西は文化の中心やで。
 関西人は偉いんや。」
「 ホラ、吉本みたいやろ。」
「 生粋の関西人?」
「 あったり前田のクラッカーや。」
「 それ、何?」
「 昔、てなもんや三度笠ちゅう番組があって・・・。
 何でこんなこと説明せんならんにゃ!
 もう、ええかげんにせェ、ホントにね!!」
「 ほら、ボケと突っ込みやってるよ。」
「 ふふ、おかしい・・・。」



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霧の狐道208

2009-03-28 18:13:20 | E,霧の狐道
 俺は静かになったクラスの連中に言った。

「 今日は、ありがと。
 早く良くなるから、また、遊ぼうぜ!」

クラスの男どもは頷いた。
 男どもの後ろには、クラスの女の子三人がこちらを見ている。
由紀ちゃんもその内の一人だ。
話はしていないが、男どもの後ろで俺の言葉に頷いていた。
 山下先生が話を打ち切って言った。

「 よし。
 じゃ、みんな、行くぞ!
 長くいると、神谷が疲れるからな。
 早く学校に戻って来いよ。」
「 うん。」

男どもが口々に言った。

「 じゃあな。」
「 ああ。」

俺は軽く返事をして、みんなをベッドから見送った。
 最後の一人が病室の扉を閉めて出て行った。

“ 昼間は開けたままなんだけど・・・・。
 まあ、いいか。”

クラスの連中の騒がしさが去って病室は静かになった。
椅子の上には、お見舞いの果物がポツンと置かれていた。



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霧の狐道207

2009-03-26 19:29:09 | E,霧の狐道
「 あ、先生、パソコンのウイルスはどうなりました?」
「 ああ、あれか。
 最後まで行く前に駆除出来たみたいで、中ボスの辺りで突然プシュッと消えて
 しまったよ。
 ま、それほど凶悪なものでは無かったと言うことだろな。」
「 それは、良かったですね。」
「 ああ、やはりウイルス駆除ソフトモグモグ7は値段が高いだけあって素晴ら
 しい。
 ほら、お見舞いの果物!」

“ あら~~。
 まだ、この人、パソコンの電源プラグがコンセントに入っていないことに気が
 付いていないんだ・・・・。”

 俺が呆れた顔をして見ているのをよそに、山下先生は果物カゴを空いている椅子に置いた。
クラスの男どもがそれを見て言った。

「 こんなに、たくさんの果物、おまえ一人で食えるか?」
「 無理だろ~~!!」

俺は連中に言った。

「 ああ、やるよ。
 食べたいんだろ。
 一人、一つだぜ。」
「 やった~!」

でも、山下先生はクラスの連中の方を向いて怖い顔をして言った。

「 こらっ、少しは遠慮しろ!」

不満そうな顔だが、仕方が無いと思ったのかみんな黙った。



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霧の狐道206

2009-03-24 19:28:28 | E,霧の狐道
 龍平と俺が話をしていると、通路の方からガヤガヤと話し声が近付いて来た。
複数の足音も聞こえて、俺は病室の入り口を見た。

“ ドタドタドタ・・・。”

担任の山下先生の声が聞こえる。

「 ここだ、ここだ!」

どうやら、クラスの連中がお見舞いに来てくれたようだ。
 賑やかな塊は病室にゾロゾロ入って来た。
扉の影から最初に現れたのは山下先生で、クラスの友達がそれに続いた。
 来てくれた友達は男が五人で女が三人だ。
前にごちゃごちゃいる男達の後ろに由紀ちゃんの顔が見える。
俺は由紀ちゃんが来てくれたので、ちょっと嬉しい。
龍平は気を利かせ窓際まで移動し、窓から外の景色を眺めている。
 山下先生がベッドに寝ている俺に言った。

「 お~、神谷、どうだ?」
「 骨折してしまって・・・・。」
「 おまえ、川に飛び込んだって聞いたぞ。」

俺は橋の上にいた女の子の話は止めておいた。
また、尾ひれがついて、何を言われるか分かったもんじゃない。

「 自転車が滑って・・。」
「 ホントに色々なことを起こすヤツだなァ。」
「 いや、それ程でも・・・。」
「 それで、学校に来るのは、いつ頃になる?」
「 まだ、退院予定は聞いてないけど・・・。」
「 そうか、じゃ、仕方が無いな。
 また、分かったら連絡してくれ。」



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霧の狐道205

2009-03-22 19:38:43 | E,霧の狐道
   お守り1

 午後4時ごろ、龍平が病室にやってきた。

「 おい、貴志、相談や。」
「 何だよ?」
「 今日、おまえのベッドで寝かせろよ。」
「 じゃ、俺は何処で寝るんだよ?」
「 だから、一緒に寝るんやがな。」
「 どうして?」
「 女の子と黒い影が見たいんや。」
「 俺は見たくない。
 龍平がここで寝て、俺はどっか他で寝させろよ。」
「 あのなァ~。
 一人やったら、怖いやん。
 二人で、見ようよ。」
「 そこのベッド空いてるよ。」
「 おまえ、なんちゅうこと言うねん。」
「 何が?」
「 わいは、知ってるんやで。
 このベッドが危ないこと。」
「 あ、そうか。
 残念!!」
「 おまえ、わいを殺す気か、アホ。」
「 アハハハ、言ってみただけ。
 俺もどうしたらいいのか分からないし、二人の方が心強いな。」
「 一回、見てから対策を考えよかと思とるんや。」
「 それにお揚げ婆さんも来そうだし・・・。」
「 なんや、それ?」
「 俺に逆恨みしてる婆さん。」
「 夜中に?」
「 そう。」
「 おまえ、友達多いんやな。」
「 まあな。」
「 とにかく、俺、来るで。」
「 うん、分かった。」




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霧の狐道204

2009-03-19 19:14:44 | E,霧の狐道
俺は不信感でいっぱいだった。

“ 人が相談してるのに・・・。”

俺は不満な顔をしてトメさんを見た。
 トメさんの後ろにある大きな木から、風に吹かれて落ち葉が散っている。
そして、そのうちの一枚がトメさんの頭に乗っかった。
トメさんは、それを手で払い除けもせず眼だけで上を見た。

「 あら、落ち葉だね。
 何回、箒で掃いてもきりが無いねぇ。」

そして、それは顔の方にずり落ちて地面に落ちて行った。
トメさんは俺を再び見て、ニヤッと笑った。
 看護婦の井上さんが近付いてくるのが、トメさんの後ろに見える。

「 あ、トメさん、ありがとう。」
「 いや、この子と話が出来て良かったよ。」
「 そう、急に呼ばれたから・・・。」
「 風が吹いて来たよ。
 そろそろ、病室に連れて行った方がいいね。」
「 うん、そうだね。
 じゃ、戻るか!」

井上さんは、車椅子の後ろに回って車椅子を押し始めた。

「 じゃ、またな!」

トメさんは箒を持ったまま、そう一言言って俺たちを見送ってくれた。


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霧の狐道203

2009-03-17 20:20:34 | E,霧の狐道
「 あんたも見えるんだね。
 私には分かるよ。
 たぶん、龍平にも見えていると思うんだけどね。」
「 トメさんって、龍平も知っているの?」
「 ああ、小さい頃から知っているよ。
 あの子は、こう言う方面は鋭いよ。
 青み掛かった白い光が、あの子の体の残像に見えたことがあるんだ。
 そう言う人は同類だね。」
「 トメさんも、同類?」
「 ああ、もう、慣れっこだけどね。
 井上さんも、微かだけれどそれがあるんだ。
 でも、あんたはちょっと違うね。
 さっき、中庭に出て来たとき、あんたの残像は青じゃなくて紫が掛かっていた
 からね。
 以前に、一度だけ見たことあるけどね。」
「 それって、俺に何か危険が近付いているってこと?」
「 いや、そうじゃないと思う。
 でも、それ以上は分からないね。」

俺は、トメさんなら理解できると思って橋で出会った女の子の話をした。
そして、トメさんに質問した。

「 女の子は、俺に付いて来た?」
「 そうだよ、おまえは気に入られたんだよ。」
「 ゲッ!」
「 いいじゃないか、モテモテで・・。」
「 いや、ちょっと困るんだけど・・・。」
「 アハハハハハ。」
「 笑ってる場合じゃないよ、ホントに・・・。」
「 そうだね、どうしたもんかね・・・。」
「 追っ払うには、どうしたらいい?」
「 そんなに無下に追っ払うのは可哀想かも知れないよ。」
「 でも、ずっと遊べるって、かなり危険なんじゃないかなァ~。
 ず~っとって、一生ってことかなァ~。」
「 一生って、あっと言う間さ。」
「 えっ、それって命を取られて、あっと言う間に連れて行かれるってこと?」
「 いや、人によるんじゃないかな・・・。」
「 えっ、人によるって・・・。
 俺の場合はどうなの?」
「 さあ・・・。」
「 あ~、もう・・・。
 はっきり、しないんだからァ~。」
「 まあ、そのうち分かるさ、ハハ。」
「 そのうちなんて、手遅れになるかも知れないんだよ。」
「 いや、あんたの思い付くままにやってみればいいんだよ。
 それで、いいんだ。」




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霧の狐道202

2009-03-15 19:11:14 | E,霧の狐道
トメさんは箒を掃く手を止めて、こちらにやって来た。

「 ふふふ、ようやく呼んでくれたね!
 わたしゃ、いつ呼んでくれるのかと待っていたんだよ。」
「 ちょっとの間、この子見ていてくれる。
 この子、神谷貴志君って言うの。
 直ぐに戻ってくるから・・・・。」
「 ああ、いいよ。」
「 じゃ、お願いね。」

井上さんは、一棟に走って行った。

「 いつも忙しい人だわい・・・。」

掃除のトメさんは、井上さんを眼で見送りながら呟いた。
そして、俺の方を見て、ニヤッと笑った。
口の奥の方にある金歯が一瞬光った。

「 あんただろ、処置室で赤い口紅の看護婦を見かけたのは。」
「 えっ、どうして、それを知ってるの?」
「 看護婦の井上さんに聞いたんだよ。
 他の人には見えないのに、井上さんだけには見えるようで悩んでたみたいなん
 だよ。
 でも、他にも見える人がいたって教えてくれたんだ。
 ちょっと、安心したみたいだね。
 あれは、悪さはしないよ。
 気にすることは無いって言ったんだけど、気にしているようだね。」
「 そうか、悩んでたのか・・・。」



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霧の狐道201

2009-03-13 20:27:57 | E,霧の狐道
 俺は落ち葉を掃いている初老のおばさんを見た。

「 おばさんも同じだね。」
「 そう・・・。」

おばさんはチラチラこちらを見ている。
 俺はそれを不審に思って井上さんに言った。

「 掃除のおばさんが、こっちを見てるよ。」
「 あの人は、昔から病院の掃除をしてくれているトメさんよ。」
「 トメさん・・・?」
「 あ、ホントの名前は容子さん。
 木下容子って名なんだけど、みんな、トメさんって言ってるから。」
「 どうしてトメさん?」
「 ん、分からない。
 昔からトメさんよ。
 掃除のトメさん。
 みんな言ってるから。」
「 掃除のトメさんか・・。」

そのとき、一棟の一階の窓が開いて若い看護婦さんが顔を出した。

「 井上さ~ん、ちょっと、手伝って下さ~い。」
「 えっ、何?」

井上さんは手を挙げて行くと合図をした。

「 えっと、ちょっとだけ待っててね。
 そうね、トメさんに相手をしてもらおうかしら。
 ちょっと、呼ぶね。
 トメさ~ん!」



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