ギャラリーと図書室の一隅で

読んで、観て、聴いて、書く。游文舎企画委員の日々の雑感や読書ノート。

新井三呼展その1

2024年03月24日 | 游文舎企画

       2014-23  53×45、5cm

 

 

             

 

23日、新井さんの作品が搬入され、一日がかりで展示を終えました。順次、ご紹介します。まずは油彩をいくつか。

入り口正面の作品「2014-23」は、蠢いている何かをぎゅうっと押し込めたような中央の黒い塊が不思議な存在感を持って迫ってきて、サイズ以上の迫力を感じさせます。とはいえこの感覚も見る人次第。新井さんの作品は「何かを描く」という目的語を持っていません。従ってタイトルは、制作年とナンバーをつけるのみ。いずれの作品も、まさに生成途上のみずみずしさ、動き、勢いがあり、なお画面は変化しそうな気配があります。抽象とか具象といった区別でも語りがたい作風です。(続く)

 


井上智子さん個展「―溢れるオモイ―」

2024年03月19日 | 展覧会より

  井上さんと、作品「溢れるオモイ」

 

明治時代に建てられたという商家の大きな建物を活用した上越市の町家交流館「高田小町」、ギャラリーはその一番奥の蔵を改装したもの。天井や壁面の梁が印象的な空間に、井上さんの現代アートがしっくりとマッチしていた。「溢れるオモイ」は、紙粘土状にした新聞紙をぎゅっと手で握り、手形をそのまま残した断片と赤い絹地を並べた作品。握りしめた手の跡に込められた様々な思いが寄せ集められている。

游文舎「毒素の秋」展や「夏の庭」でおなじみの井上さんは、空間を生かした造形作品を展示していたが、今展ではたくさんの平面作品も見せていただいた。厚く塗り重ねた絵の具を掻き削った画面は、緊張感があったり、思い切りがよかったり、ほっとひと息ついたり、そんなリズムが心地よい。一つ一つの作品にオモイを乗せて、空間全体には優しく温かく、けれど真摯に制作に向き合い続ける井上さんの息づかいが溢れていた。

上越市本町6 高田小町内「ギャラリー蔵」にて、20日まで。


新井三呼展 OIL SPIRIT 4月6日から

2024年03月13日 | 游文舎企画

      2019-11 キャンバス・油彩 116、7×116、7cm

 

まもなく今年の游文舎の展覧会活動が始まります。

4月6日(土)から14日(日)まで「新井三呼展」です。

群馬県榛東村にアトリエを構える、新井さんの作品を一部、ご紹介していきます。

   2020-10 キャンバス・油彩 145、5×97cm

お名前にお聞き覚えがなくても、作品をみると思い当たるのではないでしょうか。2016年に游文舎で個展をされた佐藤美紀さんです。その後、郷里・群馬県に帰り、作家名を変えて、再び柏崎の会場で作品を見せてくださることになりました。

心機一転というよりは、むしろバージョンアップした、といった方がよいかもしれません。油絵の具の多彩で鮮烈で濃厚な色彩、それを適宜溶きほぐすペインティングオイル。それらを三呼さんほど、自在に豊かに駆使する人はいないのではないかとさえ思います。まるで画材と一体になったように、画材に身を委ねるように思いのままを描出する――それは「何かを描く」というよりも「描く」ことそのもの。自然に囲まれた榛東村のアトリエで描かれた三呼さんの絵画は、見る人の心に直接語りかけてくれることでしょう。