井上さんと、作品「溢れるオモイ」
明治時代に建てられたという商家の大きな建物を活用した上越市の町家交流館「高田小町」、ギャラリーはその一番奥の蔵を改装したもの。天井や壁面の梁が印象的な空間に、井上さんの現代アートがしっくりとマッチしていた。「溢れるオモイ」は、紙粘土状にした新聞紙をぎゅっと手で握り、手形をそのまま残した断片と赤い絹地を並べた作品。握りしめた手の跡に込められた様々な思いが寄せ集められている。
游文舎「毒素の秋」展や「夏の庭」でおなじみの井上さんは、空間を生かした造形作品を展示していたが、今展ではたくさんの平面作品も見せていただいた。厚く塗り重ねた絵の具を掻き削った画面は、緊張感があったり、思い切りがよかったり、ほっとひと息ついたり、そんなリズムが心地よい。一つ一つの作品にオモイを乗せて、空間全体には優しく温かく、けれど真摯に制作に向き合い続ける井上さんの息づかいが溢れていた。
上越市本町6 高田小町内「ギャラリー蔵」にて、20日まで。