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ギャラリーと図書室の一隅で

読んで、観て、聴いて、書く。游文舎企画委員の日々の雑感や読書ノート。

霜田文子展atギャルリー志門 2月17日より

2025年02月18日 | 展覧会より

東京銀座・ギャルリー志門にて「霜田文子」展が始まりました。

「ダ・ヴィンチの卵あるいはものが見る夢」シリーズの、30×30cmボックスアートやミニシリーズ、天使の人形や「北方文学」挿絵原画などを展示しています。その多くに、和紙を線香で焼き切った紙片を貼り重ねた、バーントドローイングの手法が使われており、小品が中心ですが、一点一点、小さなドラマや詩のようなものが感じられればと思っています。

正面壁には「ダ・ヴィンチの卵あるいはものがみる夢」の「コロナ日記」(2020年)や「ケモノタチ、ソラヘ」(2011年)などと、ミニボックスを組み合わせた作品

バーントドローイングの衣装を着た天使たちと、やはりバーントドローイングで模様を付けた卵によるHeadたち。

「北方文学」挿絵原画は約70点。いろんな手法で。

ミニボックスの新作。向かい合う壁面のドローイングとも関連したデザイン。

着彩した板に和紙を貼って作った新しい作品。

ギャルリー志門個展は22日まで。ぜひご高覧ください。

 


うみまちアート ライオン像のある館にて

2024年09月02日 | 展覧会より

上越市直江津地区で開催されている「うみまちアート」。今年で4回目となる。

「ライオン像のある館」として知られる、旧直江津銀行では「へんシン」というタイトルで、上越市在住の、いたずらや尚さん、井上智子さん、季村江里香さんによる作品で会場が埋め尽くされている。日常使われているものをアートに変身させる試みだろうか。いたずらやさんの、ペットボトルや空き缶を使ったインスタレーション、季村さんの、段ボールに描かれた絵画、井上さんの卵のパッケージや流木で作ったアート作品が、家具や調度もそのままに残された古い建物を変身させていた。

日曜日の会場には、次々と観客が訪れ、作家を含めて会話が弾む。アートを介在させたつながる、ひろがる時空間だ。

 

季村江里香さんの段ボールに描かれた作品。夕日をテーマにした絵本の一コマである。細やかな線描、切れ味のよいコラージュと構成、観る人にもたくさんのイメージを膨らませる語りかけ、挑発するような人物たち。単独でも見応えのある絵画作品である。

井上智子さん。卵のパッケージをカラフルに彩色し、重ねた、いろいろなものが波打ち共鳴するような作品だ。

3人による「へんシン」展は9月6日まで。

 


「毒」展 ギャラリーみつけで開催中 8月25日まで

2024年08月16日 | 展覧会より

 

見附市の「ギャラリーみつけ」で県内作家7人によるグループ展「毒」展が開催されています。游文舎・霜田文子も参加しています。

「毒」とはまたずいぶん物騒なタイトルですが、どのようにとらえるでしょうか?人間の内面にあって時々うずくような毒。外部に向かって放たれる毒。それはまた痛烈な批判や、あるいは小さな抵抗かもしれません。はたまた世界への怨嗟のような毒もあるかもしれません。出品作家たちそれぞれが、そういった毒をいったん内在化して再び作品として表すという作業により、とても見応えのある作品展となっています。また絵画(油彩、ミクストメディア等)、版画、彫刻、造形と、手法も様々でまさに七人七色です。

倉持志宏さん(燕市)の絵画。

 

小沼智恵利さん(見附市)

 

猪爪彦一さん(新潟市)

 

高橋洋子さん(新潟市)

 

斉藤博文さん(長岡市)

 

霜田文子(柏崎市)

 

田中幸男さん(見附市)

 

前方の立体は斉藤さんの作品。

8月25日まで。(19日休館) 入場無料。ぜひご高覧ください。


井上智子さん個展「―溢れるオモイ―」

2024年03月19日 | 展覧会より

  井上さんと、作品「溢れるオモイ」

 

明治時代に建てられたという商家の大きな建物を活用した上越市の町家交流館「高田小町」、ギャラリーはその一番奥の蔵を改装したもの。天井や壁面の梁が印象的な空間に、井上さんの現代アートがしっくりとマッチしていた。「溢れるオモイ」は、紙粘土状にした新聞紙をぎゅっと手で握り、手形をそのまま残した断片と赤い絹地を並べた作品。握りしめた手の跡に込められた様々な思いが寄せ集められている。

游文舎「毒素の秋」展や「夏の庭」でおなじみの井上さんは、空間を生かした造形作品を展示していたが、今展ではたくさんの平面作品も見せていただいた。厚く塗り重ねた絵の具を掻き削った画面は、緊張感があったり、思い切りがよかったり、ほっとひと息ついたり、そんなリズムが心地よい。一つ一つの作品にオモイを乗せて、空間全体には優しく温かく、けれど真摯に制作に向き合い続ける井上さんの息づかいが溢れていた。

上越市本町6 高田小町内「ギャラリー蔵」にて、20日まで。


「今」を見つめる――池田記念美術館「八色の森の美術展」

2023年09月11日 | 展覧会より




相変わらずの残暑厳しい中にも、朝晩少し秋の気配を感じることがある。そんな日はちょっと出かけようかという気にもなる。
9月上旬、南魚沼市・池田記念美術館を訪れた。沿道には今年の乾燥と暑さに耐えて黄金色の稲田が続く。
駐車場から美術館入り口までの木立に掛けられた大きなビニールが風にはためいている。中学生の作品という。
そして入り口前の庭で向かい合って飛び跳ねている二頭の猪。陽射しに銀色の体がきらきらと輝く。水路の中にはアンモナイトと羽のような金属。6月、游文舎で個展をされた松尾大介氏の作品だ。



松尾氏の作品「太古の宇宙船」シリーズは館内にも。窓外の八海山と向き合うように、直立する。八海山まで取り込んだ「空間芸術」となっている。



菅野美榮氏のさまざまな植物を独自の手法で取り入れた作品、壁面には石井博泰氏の、何層も重ねられた色彩がそれぞれの色や輝きを放つ作品。



游文舎野外展「夏の庭」にも出品された、見附市の田中幸男氏は平面作品から半立体作品、立体作品への展開を見せる。







上二点は大嶋彰氏の作品。明快な色彩による直線的な画面の上に浮かぶのは、今、生まれ出てきて蠢いている、そんな自然の形態。実は大嶋氏の作品の間には子どもの、小さな作品が展示されている。素直で伸びやかでほのぼのとしたユーモアがあって、ともすると大人達の作品を食ってしまいそうな魅力がある。
大嶋氏は、そういう作品の力を率直に認め、なおかつそこから発散されるエネルギーを静かに受け止めているように思う。





室井久美子氏と葛生裕子氏の作品。それぞれ抽象を追求し、禁欲的に要素を絞りつつ、様々なバリエーションを見せている。

「八色の森の美術展」は連年開催で、今年で八回目を迎えた。県内外から現在活躍中の作家を集めた展覧会は、少なくとも新潟県内では他にない。公立美術館が評価の定まった作家の作品を展示するのは致し方ないとしても、今を知ること、同時代の作家たちが何を見て、何を考え、何を引き継ぎ、これから何をしようとしているのかを知ることは、我々自身を問うことでもある。そうした自覚的な展示を連年でこれだけ回を重ねていることに敬意を表したい。
そしてもう一つ、地元の小中学生たちとの連携だ。単に教育的な試みというだけではない。むしろ大人たちこそその感性から刺戟を貰っているのではないだろうか。
10月22日まで。