ギャラリーと図書室の一隅で

読んで、観て、聴いて、書く。游文舎企画委員の日々の雑感や読書ノート。

野中光正展 その2

2022年10月21日 | 游文舎企画




いよいよ明日から始まる「野中光正」展。参考出品で画集から選んだ複製品ではありますが、野中さんの昭和四五,四六年のスケッチです。失われたかつての下町の風景が蘇るだけでなく、喪失の予見のようなものさえ感じられます。簡潔な線が、やがて最小限の、エッセンスだけを取り出したとき、却って溢れんばかりの情感が込められているようにも思います。そして抽象的な作品は、もうすぐその先です。

「野中光正」展 22日から

2022年10月21日 | 游文舎企画

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いずれも混合技法、門出和紙、60,8×45,6 cm

10月22日(土)から、野中光正さんの個展が始まります。矩形で構成された抽象的な画面に、様々なタッチで筆が加えられた作品が並びます。すべて日付をタイトルとした作品を作り続ける野中さんですが、豊富なバリエーションに驚かされます。野中さんは東京浅草生まれ、在住。1989年から91年まで、旧高柳町(現柏崎市高柳町)に移住、紙漉きを学んでいます。今展ではすべて門出和紙を使用、切れのよい構成と穏やかな色彩が、和紙の風合いと見事に調和しています。参考作品として1970,71年に描かれた下町のスケッチ群(複製、画集より)を展示しました。コンテの力強い線と巧みな風景描写は具象・抽象といった区分を軽々と超えていきます。日々の日記のように作られる野中さんの作品もまた、世界を抽象=抽出すると同時に、イメージと光を凝縮しているようです。