コイズミアヤさんの個展DMの作品がとても気になっていた。白い図面に設置された建物の骨組みのような作品である。不思議な骨格は、上方にも左右にもまだまだ延伸しそうで、とらえどころのないスケール感を伴っていた。
会場には緻密な、建築模型のような作品が並ぶ。思っていた以上に小さい。(この意外性こそがコイズミさんの特徴でもあるのだけれど) 繊細で静謐な世界、そこに入り込むための“通路”は一本のひも――あやとりのひもであった。なんと、あやとり“亀の子”の、指の動きに合わせて形が変わっていく10段階(輪っかのままの状態を入れて11段階)の、それぞれを作品にしているのだった。それにしても、ふにゃふにゃの、指に絡め、支えられてしか形を与えられないものを、建築物のような堅固(そう)な立体に“うつしかえ”(タイトルの本当の意味は聞きそびれてしまった)てしまうとは・・・。
図面には、精緻な計算による細かな数字が並ぶ。そこに支柱を立て、細長くカットした厚紙を渡していく。あやとりのひもの、交差するところも5㎜空けていくことでより立体化する。内部とも外部ともとれるような骨組みは、見る人の脳内にも自由に構築物を想像させるのだが、建築のための模型と違うのは、用途を持たないばかりでなく、架橋のような紙の斜線が多いことや、必ずしも左右対称というわけではないことだ。それが一見静穏に見える作品群に、小さな違和を生み、眼眩むような感覚を覚えさせる。
コイズミさんの、空間感覚、着眼点の斬新さなどを改めて感じると共に、新たな展開を堪能した。新潟市内野山手・ギャラリーろば屋で、26日まで。