60歳からの眼差し

人生の最終章へ、見る物聞くもの、今何を感じるのか綴って見ようと思う。

コメダ珈琲店

2012年02月03日 09時19分11秒 | Weblog
 昨年の4月、地元の幹線道路脇に「コメダ珈琲店」という喫茶店がオープンした。名古屋が本店のチェーン店である。最近関東にも進出し急速に店舗を展開していると聞いていたので、早速行ってみることにした。店内は木目調で天井が高く、山小屋にでも入ったような感じである。入口にある大きなラックから新聞を選んで座席に向かう。席は基本的には2人席と4人席になっているが圧倒的に4人席が多い。朝は私のような年配者の1人客が多いのか、席が埋まっているのに閑散とした感じである。ウエートレスが水を持って注文を取りに来る。「アメリカンを、」と珈琲を注文すると、「モーニングをお付けしますか?」と言う。「料金は?」とたずねると、「11時までは珈琲をご注文されれば、ご希望で無料でお付けしています」という返事であった。さすが名古屋は喫茶店の激戦区である。モーニングサービス(無料)は当たり前のメニューなのであろう。営業時間は朝7時~夜11時まで、私が入ったのは10時前である。その時点ではまだ店内は7~8割程度のお客さんであった。そして11時前に出るころには入り口で順番待ちしている人もいたほどである。「モーニング目当てのお客さんだろう。トーストにゆで卵付きで400円、損はしないが利益率は悪いだろうなぁ~」そう思いながら店を出た。

                     

               

 「郊外に駐車場付きの大きな喫茶店を展開して儲かるのだろうか?」、そんな興味から、その後も3度ほど行ってみた。ランチ時に行ったこともある。ハンバーガーと珈琲を頼むと、ハンバーガーが380円で珈琲が400円で合わせて780円になる。こうなると決して安くはない。バンズも大き目であるが、しっとり感が無くパサついた感じである。これならマックの方が安いし、モスバーガーの方が美味しいと思う。しかし何時行ってもそれなりに人は入っている。「なぜだろう?」、昔小売業にいたから、やはりこのあたりは気になるところである。

               

 先日ネットでこのコメダ珈琲店を調べてみた。今現在、関西から関東にかけて430店舗あるようである。今も毎月3~4店舗程度の開店を続けている。これだけ急速に店舗展開できるのは形態がフランチャイズシステムであるからであろう。会社の本部が名古屋にあって、コンビニエンスのように基本モデルがあり、その運営方針に基づいて加盟店を募集し、本部は営業を指導し、加盟店のオーナーが実際の営業にあたる仕組みである。いわゆる「私考える人、あなた働く人」という関係である。 
 
 ネットには加盟条件も詳しく載っていた。保証金300万、加盟金300万、研修費15万、システム料350万、それから ロイヤリティ として1席当り月額1500円をとられる。その他に建築工事費・内装工事費・設計料・食器備品等が必要である。土地や建物は全てオーナー負担で、なお且つ1000万の金を払い、月々のロイヤリティーを払わなければいけない。この条件では一般的な個人ではリスクが大きすぎて加盟するのは難しいだろう。よほど土地持ちで資金がある個人か、企業で新規分野参入などの目的が無いと難しいように思う。私が何度か行った店は、以前はパスタの店があった場所である。そのパスタ店が思うに任せないから、コメダ珈琲のブランドで再起を図ったのであろう。

 私は以前コンビニの本部に3年間在籍していたことがある。その時フランチャイズシステムなるものを初めて体験した。このシステム、もともとアメリカから導入されたものだから「契約」の世界であり「マニュアル」の世界である。店舗デザインや什器、営業時間、利益の配分からロスの処理費用まで、その責任範囲は事細かく明記されていて隙が無い。店舗運営は事細かくマニュアル化されていてアルバイトで出来るようになっている。しかし、契約は基本的には企業対個人である。そしてその契約内容は圧倒的に個人に不利なように思われる。売り上げが良ければ問題は無いが、立地が悪く計画通りの売り上げが無かったり、競合が出て来て売り上げが落ちて行くなどすると、途端にオーナー側は苦しくなる。この種の店は開店2年目がピークで、それ以降売り上げが徐々に落ちて行くのが普通である。コンビニの利益配分は売り上げに比例しているから、売り上げが落ちるとお互いの取り分は少なくなる。しかし本部は店舗の数を増やせば業績は上るが、加盟店はそうはいかない。だから業績のリスクはオーナー側がもろに被るのである。

 30年前、まだコンビニに在籍していた時、店舗巡回をしたことがある。夜ある店に入り店番をしていたオーナーの奥さんと商品動向などを話したあと、店のトイレをお借りした。(当時はトイレはオープンでは無く従業員用のものしかなかった) バックヤードへの出入り口を開け倉庫を見渡すと、商品在庫が並ぶ一画に大きな茶紙(クラフト紙)が敷かれその上に布団が敷かれていた。トイレから出て奥さんにその訳を聞いて見た。その理由はこうである。売り上げが落ち、アルバイトの経費を削るため家族で働いている。しかし旦那が病気で休んでいるから自分が主力にならざるをえなくなった。子供がまだ小さいから夜一人にしておけない。子供には良くないと思うのだが、ここで寝せているのだと言う。多分息子なのだろう、小学校低学年の子供が店内の雑誌棚から漫画を抜き出し読んでいた。契約に縛られ、夜だけでも店を閉めることも出来ない。これが契約の世界で冷酷なものである。

 今回の「コモダ珈琲店」の契約内容を見てみると、 ロイヤリティ は1席当り1,500円/月額ではあるが、これは売上には連動しないと書かれている。標準店の席数を90席で計算すると毎月135,000円(年間162万円)の支払いである。これではどんなに店の売り上げが悪くても、本部は損をしない仕組みになっている。営業時間は年中無休で午前7時から夜11時まで、そして契約期間は10年である。「コメダ珈琲店」は郊外型の喫茶店として珍しさも手伝って、今は売り上げは良いのであろう。多分ライバルはマクノナルドの郊外店であろう。マックは若い層がターゲットで、コメダはどちらかと言えば大人を意識している感じで、今は住み分けができているのかもしれない。しかし10年の長い期間では必ず社会状況も、周りの環境も変化するはずである。その変化の波を被るのはオーナー側である。営業品目が珈琲と軽食だけのコメダ珈琲、はたして環境の変化に対応していけるのだろうか、若干疑問の目を持ちながらもさらに状況を観察してみようと思っている。