昨年10月にオープンした時から、毎月行っていた友人のパスタ店、ここ3ヶ月はご無沙汰していた。
先日電話をかけたら、「今日は夜の予約が入っているから9時まで営業している」とのこと、今回は
夜の店に行ってみることにした。北総線の白井駅を降り、近道になっている真っ暗な畑の道を歩き、
彼の店に着いたのはPM7時である。すでに予約のお客様は座敷席で和やかに食事をしていた。
夜は予約のみで、スープ、前菜、パスタ(小)、飲み物、デザートのコースメニュー専門で、1580円と
2100円の2種類でやっている。(お酒類は別料金)
私は誰もいないカウンター席に座ってビールを注文する。しばらくして、「これはサービスだから」と
ビールと一緒に、今日の予約客の前菜に盛り付けで余分になったものを付け出しに出してくれた。
座敷の予約客には大半の料理は出し終え、今は手が空いているのだろう。店長は厨房から出て
来て、今までの経過を話してくれた。
10月オープンの月は珍しさもあってお客様は来てくれた。しかし11月、12月と客数は落ちていく、
これはマズイいと思い、夜の営業(予約)も始め、近隣のマンションへ宅訪でチラシを撒いて行った。
その効果もあって1月、2月と徐々にではあるが客数は伸びて行く。しかし、3月11日の震災から
ガクンと客数は落ちてしまう。郊外でしかも駅から離れているこの立地では、ガソリン不足の影響が
モロに出てしまった。4月、5月とお客さんは戻ってきてくれたが客数の伸びは無くなってしまった。
今は月曜定休の週6日間の営業、お昼の営業(AM11:30~PM3:00)がメインであるが、予約が
あれば夜もやる。月によってまちまちであるが夜の予約が入るのは週に2、3回程度だという。
それで夫婦2人で働いて月に15~25万円程度の手取りのようである。これでは夫婦それぞれに
働いた方がはるかに収入は良い。そのあたりは誤算ではないのか?そんなことを聞いて見た。
子供達2人は結婚して家を出て行った。あとは夫婦の生活である。まだマンションのローンは残って
いるが、それでもある程度の蓄えは残しているから、このままでもギリギリでやっていけると思う。
店をオープンして8ヶ月、まだ先が読めずいつも不安は抱えているが、踏み出したことに後悔はない。
サラリーマン時代は社長の意向をせん索しながら、自分の不本意なことでもやらざるを得なかった。
今は自分の好きな料理を作ることでお客様の評価を受ける。良いも悪いも自分のやっていることが、
全て自分に跳ね返ってくる。その方がサラリーマンをやっている時より納得がいくし、ストレスがない。
もうこの歳になると、収入の問題より自分の精神的な安定の方が優先するように思う。
今まで営業していて1日に2、3人のお客さんの日も何日かあったが、11月に一人のお客様も入ら
なかった日が1日あった。朝の買い出しを終え店に帰って、9時から買ってきた具材の仕込みをする。
10時半からはズンドウにいっぱいのお湯を沸かし始め、出入口を清掃して11時半の開店を迎える。
しかし12時、1時と過ぎても、誰一人お客様が来てくれない。そしてとうとう2時を過ぎてしまった。
結局あきらめて、まっさらで沸いているお湯のガスを止める。その時の気持ちは経験した人でないと
判らないと思うが、膝がガクガクと震えるような不安を感じてしまった。と言う。
たぶんその経験があったからだろう。今来てくれるお客さん一人一人をほんとうに大切に思っている。
自分が作った料理を食べてくれ、「美味しかった。また来るから・・・」そう言われた時が一番うれしい。
この前「少し麺が柔らかいかな?」と思ったが、お客さんが立て込んでいて、そのまま出してしまった。
そのお客さんが食べ終わって、何も言わずお金を払い、入口を出るときに少し首を傾けた気がした。
「あっ、これはマズイことをした」、一瞬そう思ったそうである。本当はそのお客さんがどう評価してくれ
たかは言葉に出してくれなければ判らないが、しかし自分の落ち度やミスは敏感に感じるようになる。
季節に合わせ美味しい食材を探し新しいメニュー開発していく。手を抜かず一品一品を丁寧に作る、
「美味しいものを作らなければ、お客様に飽きられてしまう」、それが今の最大のテーマになっている。
店は不便な所にあり、お金がかけられないから、装飾もほとんど自前でやっている。価格もチェーン店
のように安く売ることはできない。結局勝負できるのは美味しさだけである。手を抜かず丁寧に作り、
それを評価してもらって、ファンを広げていく。今はそれができると信じて、やって行くしかないと思う。
まだ採算には合わないが、決してあきらめてはいない。一緒に働いてくれる女房はストレスがたまり、
迷惑をかけていると思っているが、私の方はサラリーマン時代より、はるかに楽しいし充実している。
そんな話をしてくれた。
ビールを飲み終え、「フレッシュトマトとあさりのスパゲティ」を注文した。店長ができ上がったパスタ
を持って来て説明してくれる。このあさりは富津産で小さいけれど、色々比べて一番味が良かった。
市場で買って来て、一つづつ手むきにして、急速冷凍して保存しておく。トマトは毎朝近隣の農家を
回って買ってくる。だからどの食材にも自分のこだわりがあるらしい。
シジミと間違えるような小さなアサリであるが、たっぷりと入っていて麺にからんでいる。確かに彼が
言うようにアサリの味が良く出ている。化学調味料を使わず、まろやかで深みのある味は彼の目指す
味なのであろう。私は味音痴で正しくは評価してあげられないが、味覚の優れた人には彼のこだわり
が判るのかもしれない。一人でも多くのお客様が認めてくれ、この店のが繁盛してくれることを、今は
願ってやまない。
先日電話をかけたら、「今日は夜の予約が入っているから9時まで営業している」とのこと、今回は
夜の店に行ってみることにした。北総線の白井駅を降り、近道になっている真っ暗な畑の道を歩き、
彼の店に着いたのはPM7時である。すでに予約のお客様は座敷席で和やかに食事をしていた。
夜は予約のみで、スープ、前菜、パスタ(小)、飲み物、デザートのコースメニュー専門で、1580円と
2100円の2種類でやっている。(お酒類は別料金)
私は誰もいないカウンター席に座ってビールを注文する。しばらくして、「これはサービスだから」と
ビールと一緒に、今日の予約客の前菜に盛り付けで余分になったものを付け出しに出してくれた。
座敷の予約客には大半の料理は出し終え、今は手が空いているのだろう。店長は厨房から出て
来て、今までの経過を話してくれた。
10月オープンの月は珍しさもあってお客様は来てくれた。しかし11月、12月と客数は落ちていく、
これはマズイいと思い、夜の営業(予約)も始め、近隣のマンションへ宅訪でチラシを撒いて行った。
その効果もあって1月、2月と徐々にではあるが客数は伸びて行く。しかし、3月11日の震災から
ガクンと客数は落ちてしまう。郊外でしかも駅から離れているこの立地では、ガソリン不足の影響が
モロに出てしまった。4月、5月とお客さんは戻ってきてくれたが客数の伸びは無くなってしまった。
今は月曜定休の週6日間の営業、お昼の営業(AM11:30~PM3:00)がメインであるが、予約が
あれば夜もやる。月によってまちまちであるが夜の予約が入るのは週に2、3回程度だという。
それで夫婦2人で働いて月に15~25万円程度の手取りのようである。これでは夫婦それぞれに
働いた方がはるかに収入は良い。そのあたりは誤算ではないのか?そんなことを聞いて見た。
子供達2人は結婚して家を出て行った。あとは夫婦の生活である。まだマンションのローンは残って
いるが、それでもある程度の蓄えは残しているから、このままでもギリギリでやっていけると思う。
店をオープンして8ヶ月、まだ先が読めずいつも不安は抱えているが、踏み出したことに後悔はない。
サラリーマン時代は社長の意向をせん索しながら、自分の不本意なことでもやらざるを得なかった。
今は自分の好きな料理を作ることでお客様の評価を受ける。良いも悪いも自分のやっていることが、
全て自分に跳ね返ってくる。その方がサラリーマンをやっている時より納得がいくし、ストレスがない。
もうこの歳になると、収入の問題より自分の精神的な安定の方が優先するように思う。
今まで営業していて1日に2、3人のお客さんの日も何日かあったが、11月に一人のお客様も入ら
なかった日が1日あった。朝の買い出しを終え店に帰って、9時から買ってきた具材の仕込みをする。
10時半からはズンドウにいっぱいのお湯を沸かし始め、出入口を清掃して11時半の開店を迎える。
しかし12時、1時と過ぎても、誰一人お客様が来てくれない。そしてとうとう2時を過ぎてしまった。
結局あきらめて、まっさらで沸いているお湯のガスを止める。その時の気持ちは経験した人でないと
判らないと思うが、膝がガクガクと震えるような不安を感じてしまった。と言う。
たぶんその経験があったからだろう。今来てくれるお客さん一人一人をほんとうに大切に思っている。
自分が作った料理を食べてくれ、「美味しかった。また来るから・・・」そう言われた時が一番うれしい。
この前「少し麺が柔らかいかな?」と思ったが、お客さんが立て込んでいて、そのまま出してしまった。
そのお客さんが食べ終わって、何も言わずお金を払い、入口を出るときに少し首を傾けた気がした。
「あっ、これはマズイことをした」、一瞬そう思ったそうである。本当はそのお客さんがどう評価してくれ
たかは言葉に出してくれなければ判らないが、しかし自分の落ち度やミスは敏感に感じるようになる。
季節に合わせ美味しい食材を探し新しいメニュー開発していく。手を抜かず一品一品を丁寧に作る、
「美味しいものを作らなければ、お客様に飽きられてしまう」、それが今の最大のテーマになっている。
店は不便な所にあり、お金がかけられないから、装飾もほとんど自前でやっている。価格もチェーン店
のように安く売ることはできない。結局勝負できるのは美味しさだけである。手を抜かず丁寧に作り、
それを評価してもらって、ファンを広げていく。今はそれができると信じて、やって行くしかないと思う。
まだ採算には合わないが、決してあきらめてはいない。一緒に働いてくれる女房はストレスがたまり、
迷惑をかけていると思っているが、私の方はサラリーマン時代より、はるかに楽しいし充実している。
そんな話をしてくれた。
ビールを飲み終え、「フレッシュトマトとあさりのスパゲティ」を注文した。店長ができ上がったパスタ
を持って来て説明してくれる。このあさりは富津産で小さいけれど、色々比べて一番味が良かった。
市場で買って来て、一つづつ手むきにして、急速冷凍して保存しておく。トマトは毎朝近隣の農家を
回って買ってくる。だからどの食材にも自分のこだわりがあるらしい。
シジミと間違えるような小さなアサリであるが、たっぷりと入っていて麺にからんでいる。確かに彼が
言うようにアサリの味が良く出ている。化学調味料を使わず、まろやかで深みのある味は彼の目指す
味なのであろう。私は味音痴で正しくは評価してあげられないが、味覚の優れた人には彼のこだわり
が判るのかもしれない。一人でも多くのお客様が認めてくれ、この店のが繁盛してくれることを、今は
願ってやまない。