先日通勤時にラジオを聴いていたら、「大人の粉ミルク」が注目を集めているというニュースをしていた。3年半前、救心製薬が「大人の粉ミルク」として発売したのが最初。その後、森永乳業が「ミルク生活」を発売、さらに雪印が「プラチナミルク」として今年6月に発売と、続々とこの分野に参入しているそうである。もともと粉ミルクは、これだけで乳幼児が育つわけだから、栄養バランスについては問題ない。そこに大人に不足がちな栄養成分を強化したり、反対に脂質や栄養過多にならないようにバランスを考えて各社は作っているようである。
このニュースを聞いたとき、これを最初に考えた救心製薬の開発者は、「良いところに目を付けたなぁ!」と感心した。粉ミルクは乳幼児専用との固定概念を外し、大人用に栄養調整したら売れるだろうという、その発想がユニークだと思ったのである。救心製薬は粉ミルクなど扱っていなかったし、しかもこの業界には大手乳業メーカー(明治、森永、雪印等)がしのぎを削っている。そのメーカーを差し置いての開発には苦労もあったろうし、開発への意気込みは大したものだと思うのである。
高齢になって牛乳を毎日の週間として飲む人は多い。しかし飲むとお腹がゴロゴロするとか、アレルギーの人とか、味があまり好きではないとか、と言うことから週間になっていない人も多いようである。私もその一人である。特に嫌いなわけではないし、飲んだ方が良いのも分っている。しかし朝食を抜くから牛乳を飲む機会が少ないこと、冷蔵庫で冷えた牛乳をそのまま飲む気がしないこと、温めて飲むのも面倒だし、温めた牛乳の味はあまり好きではない(常温が一番飲みやすい)、そんなことが理由なのかもしれない。
私のこどもの頃、母親は子ども達の栄養を考えて、脱脂粉乳を飲ませていた。しかし脱脂粉乳は溶け辛く、味も不味くて飲むのが嫌だった記憶だある。そのうち父の収入も上がったのか、明治の缶入りの粉ミルクを飲ませてくれるようになった。これは飲みやすく中学生頃までは飲んでいたように思う。そんなことから、粉ミルクを懐かしく思い、この商品を買ってみようと思い薬局に行ってみた。「さてどこの売り場にあるのか?」と、ベビー用粉ミルクの売り場付近を探しても見当たらない。探しあぐねて店の人に聞いて見ると、「TVで紹介されたのか、今、大人の粉ミルク系の商品は全て売り切れで、製造がまに合わず、しかもいつ入荷するかは未定な状態」、とのことであった。
もう一つ、無印良品が9月から販売を始めた「ぽち菓子」が売れていると言う。全50種類、大小2種類のサイズの展開で、税込み100円と120円というリーズナブルな価格帯のお菓子のシリーズである。こんぺいとう、フルーツスティックキャンディー、きなこ玉、しょうゆ豆菓子、いかソーメン、フルーツミックスキャンディ、3色マシュマロ、ゼリービーンズ、ごま玉、梅キャンディ、麦チョコ等々、大手メーカー品と違い無印が得意とする昔菓子の類である。同じ商品類は今までにもあった。今回はサイズを小さくして小容量にし価格帯を揃えている。
スーパーの菓子コーナーにも100円均一のお菓子はあるが、どちらかといえば徳用感を売りにしたシリーズである。ではなぜ今この商品が売れるのだろうか?ある友人が解説してくれた。スーパーは家族のための買い物が中心、それに対して無印は30~50代の働く女性の個人消費が中心である。お菓子は女性には嗜好品としては不可欠なアイテム、ケーキなどの高級スイーツを食べることは自分へのご褒美として許容できる。それに対して市販のお菓子類は量を食べる(=太る)ことに抵抗感がある。そこに量を抑えて100円120円と手ごろに買えるお菓子があれば、購買へのハードルが下がり、ついつい買ってしまうのではないか?というのである。女性の心理はよくは分らないが、意外と当たっているようにも思えるのである。
「大人の粉ミルク」にしても無印の「ぽち菓子」にしても、売れるには売れる理由がある。世の中、物が溢れて、欲しいと思うものが少なくなっているのも確かである。そんな中での商品開発は、消費者自身が気づかないニーズを見つけ、そこにどうスポットを当てていくかという、なかなか難しい競走になってきたように思う。