60歳からの眼差し

人生の最終章へ、見る物聞くもの、今何を感じるのか綴って見ようと思う。

鬱からの脱出(2)

2009年03月03日 09時28分24秒 | Weblog
今やうつは国民病といってもいいくらいポピューラーな病気になった。
うつになる人は概して柔和で優しく、温厚な善人である。傷つきやすいが凶暴性とは縁遠い。
私の周りにいる人たちも真面目に真剣に物事を考え、一生懸命に生きようとしている。
何かに追い詰められ、ストレスに押しつぶされ、もがいているうちに逃げ道を見失ってしまった。
そして負のスパイラルにハマってどんどん落ち込んでいく。
うつとは「抑うつ」を主な症状とする心の病である。抑うつとは落ち込むこと、気持ちがふさいで
何もする気がしなくなること、生命のエネルギーが不足している状態である。
本人が親から受けついだ性格や幼児期の環境やトラウマが潜在的な内因になるのかもしれない。
しかし大人になっての発症のきっかけになるのは人間関係の不調が原因になることが多いらしい。
人間関係を良好に保ち、不満、不快、息苦しさ、険悪さなどを少しでもやわらげることは、
人間が社会性の動物で一人で生きていけない以上避けては通れない道なのかもしれない。

負のスパイラルに落ち込まないために、落ち込みはじめた時に浮き上がるようにするためには
自分に浮き輪を持つしかないであろう。その浮き輪とは家族や友人や恩師や医者になるのだろう。
浮き輪がしっかりしていれば、後は世の中の泳ぎ方、いずれは浮き輪なしいでも泳げる時がくる。
うつを回避するために何をすればいいか、斉藤茂太《「うつ」がスーッと晴れる本》から抜粋してみた。

人はうつ状態になったとき、孤独感と寂しさを味わう。他人の存在をわずらわしいと感じることもある。
しかし心の底では助けを求めている。そのとき本当に助けてあげられるのは友人や家族であろう。
一対一の対等な人間として素直に語り合える相手や環境を作っておくことは必要なことである。
心の中にわだかまっていることは誰かに言わないとスッキリしないものだ。
今まで誰にも言わず押し殺していた不満や怒りを言葉にして発散させることは心の重しを取り除く。
自分の悩みを聞いてもらい理解してもらえるのは、なににもまして大きな慰めとなり「癒し」となる。

もうひとつの方法は腹を立てたり、いやな気分になったりしたときに、日記やメモを作ってはどうだろう。
書くためにはたとえ乱暴な感想をむき出しにしているようでも、ある程度は自分や相手に対して、
冷静に客観的にならなければならない。書いている時にはすでに激情は去っている。
書くという行為が気分の鎮静化に役立ち、こころにゆとりが出てきて発想の転換になるのである。

毎朝ほぼ決まった時間に起床し、ほぼ決まった時間に食べ、ほぼ決まった時間に働き、
ほぼ決まった時間に就寝する。生活がそんなふうに規則正しいのは良いことである。
体内時計は人間だけではなくほとんどの動植物が持っている。
そしてこの体内時計は日照が時刻を決めるよりどころとしているらしい。
だから朝日が昇ったとき、体内時計は朝と認識する。
朝日の入らない閉め切った部屋で寝ていると、何時まで経っても体内時計は朝とならない。
朝日を浴びること、これは体(脳)の混乱を起こさない一番てっとり早い方法である。

うつ傾向のある人はなるべく朝型にシフトした方がいい。
次の七点を守れば徐々に改善していく。
①睡眠薬やアルコールに頼ってはいけない。
②夜遅くまでテレビを見たり、精神集中を必要とする作業はなるべくしない。
③目標とする早い時間に目覚ましをセットする。
④部屋を閉め切らず、朝日が入る部屋で寝る。
⑤朝、早く目覚めたら二度寝をしない。昼寝もしない。
⑥夜眠くなったらすぐに寝る。
⑦そして翌日も早く起きる努力をする。

家事労働は一見単純で、創造性の余地はなさそうである。
しかしやってみれば、仕事の見通し、段取り、実行、実行にに伴う観察、集中、手際のよさ、
ミスをした時の対応、仕上げ、仕事の評価と、頭脳と筋肉のさまざまな働きを伴うことがわかる。
家事をやることは物事をあるレベルでやり終えた満足感とすがすがしさは味わえる。
「家事を積極的にやること」家事に没頭している間は、うつはあなたを襲わない。

歩くことは足だけでなく全身の血のめぐりを良くする。だから、片頭痛や肩こりにも効果がある。
脳にも大量の栄養と酸素が流れ込み、脳細胞を活性化することにつながる。

うつとは脳の働きが低下した状態だから、ブドウ糖をしっかり補給してやらなくてはならない。
それには砂糖をとるのがもっともてっとり早い。
うつのときは食欲も低下することが多いから、なるべく自分の好きな物を食べた方がいい。
ルールで自分を縛らず、自分に怠惰を許し、自分を甘やかすことだ。
「良く頑張っている」「良くやっている」と自分を誉めて良い。また自分をもっと甘やかしていい。
完璧を求めず、70%の出来であれば合格点、80%なら「最高」と自己評価すべきである。

自分がともすれば仕事にのめりこむタイプだと思う人は自分と仕事の距離を常に意識的に
測定してみる習慣をつけた方がいい。
自分が仕事に持っているのは「愛着」なのか「執着」なのかと自問してみるとよいだろう。

自分自身を鍛えるために、未知の分野へ初心者として入り込んでみたらどうだろう。
同好の人たちとの交流が生まれやすい。仕事でのつきあいとは違ったつき合いが生まれる。
まったく別の喜びがあり、別の価値観があり、新しい視野が開けるかもしれない。
自分の暗がりを見つめるのではな、外の世界に目を向け、外の世界とのつながりを持つことも必要。

家にいると落ち着かないなら、旅行をしても良い。何日か実家に帰ってもいい。
のんびりできる環境で思い切り自分を解放することが心にはとてもいいことである。

鬱にならないためにSTRESS(ストレス)を溜めないために、著者が自分に言い聞かせている6項目。
S・・スポーツ、  なるべく体を動かす。
T・・トラベル、  旅は適宜の刺激、緊張、ストレス、そしてくつろいだ気分を与えてくれる。
R・・レクレーション、本業以外に何か趣味や道楽をもつ。
E・・イート   食べることを楽しむ。なるべくいろんなものを食べる。おいしいものを食べる。
S・・スリープ  睡眠はストレスからの解放である。良い眠りはストレスのダメージをやわらかく癒す。
S・・スマイル  ほほ笑みは良い人間関係を作る。良い人間関係は大抵のストレスには負けない。

昔、親から「背中が曲がっている」とか、「好き嫌いしないで、なんでも食べて」とか、注意されていた。
時には背中に物差しを差し込まれ、食事中に残したものを強引に食べさせられたこともある。
他からは見えて、自分では気がつかない偏った姿勢や偏食、しだいにバランスを崩していくのだろう。
人間関係も同じなのかもしれない。どうしても好き嫌いがつきまとうから、嫌いな人を遠ざけてしまう。
そして自分の殻に閉じこもって行き、次第にバランスを崩していって世の中を生きづらくしてしまう。
しかし、胸襟を開いて話してみれば、本当は皆自分と同じように悩みもがいているのが解って来る。
解れば、相手に対して親しみが湧いてきて、人生の同士として認めるようになるように思う。
生活のバランスを正し、心のバランスを立て直す。「急がば回れ」そんなことが一番の早道かもしれない。