
この本の著者に以下のような質問状を出しました。
貴著「アジア・太平洋戦争」についてお尋ねします。 「***『はじめに』には慰安婦について触れられていますが、本文には何も書かれていません。なぜ記述がないのか、その理由をお教えください。***」
以下のような回答をいただきました。
「****当初の予定では前の巻の加藤陽子さんが1940年までは書くことになっており、そこで当然日中戦争期の慰安婦の問題を取り上げてくれるものだと考えていました。ところが、加藤さんの巻が日中戦争開始の段階でほとんど終わってしまったため慰安婦に関する具体的叙述がどこにもない結果となってしまいました。私の担当巻で日中戦争期までさかのぼって書くのも書きづらいということもありましたし。ただ一言ぐらいは触れるべきだと反省しています。****」
以上何かの参考になればと思い「番外編」として紹介しておきます。
……鳩山は、「東条の持てる金は十六億円なり」と語り、近衛は東条の資金源は、中国でのアヘンの密売からあがる収益だと指摘している。アヘン密売との関係については確証がないが、四六年七月の国際検察局による尋問の中で、近衛の側近の富田健治が、東条はアヘン売買の収益金十億円を鈴木貞一陸軍中将(興亜院政務部長)から受けとったという噂があると指摘している。興亜院は、アヘンの生産と流通に深くかかわってきた官庁である。……(同書69ページ)
それで、私は岡山県立図書館にいったさい、探してみたら、何冊か関連する本がありました。その中で、「倉橋正直著:日本の阿片王―二反長半蔵とその時代―」というのを読んでみました。
「これは南京事件や慰安婦問題と同じレベルの、あるいはそれ以上の大問題だなあ」というのが私の第一印象でした。倉橋氏は、日中戦争で日本が100万の大軍を8年間の長期にわたって中国大陸に派兵できたのはアヘン戦略という「財政的手段」あってこそだと書いています。
日本軍占領下の蒙彊地区(内モンゴルから華北の一部にかけての地方)で、農民にケシを強制的に栽培させ、それでつくったアヘンを占領地域で裏ルートを使って中毒者に高く売りつけた。この収益が日本軍の中国占領を財政面で支えたというのです。
ただ、アヘン関係の資料は日本の敗戦時に徹底的に焼却・隠匿された。東京裁判でも、ほとんど問題にならなかった。それで、まだ始まったばかりの日本のアヘン政策史の研究は困難を極めているというのです。