素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

アケボノゾウをさぐる(11)

2022年07月01日 14時12分25秒 | 絶滅した日本列島のゾウたち
        アケボノゾウをさぐる(11)



 (3)アケボノゾウをさぐるまとめ その(1)

    
  アケボノゾウ(Stegodon aurorae)は、ステゴドン科(Stegodontidae)ステゴドン属(Stegodon)の種がStegodon aurorae (Matsumoto, 1918)であり、和名は「アケボノゾウ」と呼ばれています。今からおよそ100年以上前の1918年(大正7年)に、最初のアケボノゾウの化石が発見されましたが、その36年後の1954年(昭和29年)にも、三重県いなべ市藤原町で、アケボノゾウのほぼ1頭分に相当する化石が発掘されたことが知られています。

 これはいなべ市藤原町上之山田で発見されたことから、「上之山田標本」としてゾウ化石研究では大変貴重な標本のひとつとされています。この発見の後も、三重県内からは、いなべ市員弁町と四日市市、鈴鹿市でも、「アケボノゾウ」の化石が見つかっています。

 これまでにも何度か述べましたように、アケボノゾウ(Stegodon aurorae)は、250万年前~100万年前に生息していた古代象ですが、日本列島各地において、化石が発見されています。大陸の超大型のコウガゾウから派生したと言われている日本に生息した古代ゾウでは大型のミエゾウが日本列島の環境に適応するため何百万年もの時をかけて島嶼化と言う進化を遂げた比較的小型のゾウだと考えられています。

 日本に生息していた古代ゾウで、ミエゾウの次の時代を担ったのが、日本固有のゾウとして日本各地で見つかっているアケボノゾウの化石だとされてきたのです。しかし、2010年にハチオウジゾウの存在が認められて、ハチオウジゾウがミエゾウとアケボノゾウの間を繋ぐ日本のゾウ(ステゴドン)として注目されました。

 ところで、日本固有のゾウとされるアケボノゾウですが、これまでに大陸においてもアケボノゾウの近縁種は見つかっていません。この点ついては早くから松本彦七郎博士によって指摘されていたことなのです。

 最近でも、高橋啓一の2013年の論文「日本のゾウ化石、その起源と移り変わり」(『豊橋市自然史博物館研報』・No.33、66頁』によりますと、アケボノゾウは松本が石川県金沢市室山から発見された標本を基に1918(大正7)年に命名したものだとされています。また、同じことはいくつもの専門家の論稿において指摘されています。

 アケボノゾウの化石については、前にも述べましたが、岩手県以南の各地で多く発見されています。現在では、日本に生息していたゾウと言っても珍しいことではなくなりました。関東でもアケボノゾウの化石は、東京の昭島市や入間市や狭山市笹山で発見されています。また、関西では滋賀県多賀町そして兵庫県神戸市西区伊川谷からも産出しています。