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南太平洋島嶼国「トゥヴァル」について(21):中本博皓

2016年11月29日 09時00分29秒 | 島嶼諸国
南太平洋島嶼国「トゥヴァル」について(21)





(4)医療施設支援:プリンセス・マーガレット・ホスピタル再建・改修に約7億円を供与 -2001年度の日本の援助実績-

ⅰ) 草の根無償資金協力、最近の実績
トゥヴァルの保健医療サービスは、首都フナフティ島にあるプリンセス・マーガレット病院と母子保健センター、および離島にある8つの診療所により提供されている。首都フナフティにあるプリンセス・マーガレット病院は、トゥヴァル唯一の総合病院で、保健医療サービスの重要な拠点となっている。

しかし、プリンセス・マーガレット病院は、1978年イギリスの支援により建設された病院であり、開院後20年以上経過し、施設の老朽化と暴風雨や塩害等により損傷が激しかった。また、医療機材も老朽化が進んでおり、適切な保健医療サービスの提供ができないほど支障をきたしていると言われていたこともあって、ツバル政府は、円滑な日常保健医療の実施とそのサービス改善を目的に「プリンセス・マーガレット病院建設・医療機材供与計画」を策定し、病院の建て替えと医療機材の更新を計画し、同時にトゥヴァル政府は、日本政府に対しODAによる無償資金協力を要請していた。

日本政府は2001年9月、トゥヴァルの保健医療事情の向上に期待して、プリンセス・マーガレット病院の改修建築および医療機材の更新に対して、無償資金協力行うことにした。改築工事は、 大日本土木・日商岩井による共同企業体を組織しすることで2002年着手し、2003年4月に竣工、そして2004年4月にはJICAによる1年経過後の最終検査が行われた4)。

この病院のリニュ-アルには、7億1,900万円の無償資金協力が行われた。大日本土木関係者の現地スタッフの話によると、工事期間中は多い日で、200人からの現地人労働者を雇用し、地元への還元投資が行われたと言われている。当時、診療科及び医療スッタフは、小児科、産婦人科、麻酔科、外科に医師8人(月額報酬:800AUD)を中心に、その他に多数の医療スタッフが保健診療にあたっている。小児科では、バクテリアが原因で発生する肺炎、インフルエンザ、その他感染症がある。また、産婦人科では、糖尿病、高血圧の患者が多いと言われている。管轄は保健局である。

ⅱ) 技術協力
技術協力では、これまでに87人の研修生を受け入れている。専門家の派遣は5人、調査団としては46人が派遣されている。2001年度も研修員受入れを中心に技術協力を実施し、水産分野への専門家派遣も行っている。技術協力には、機材の供与が行われている。この金額は、2001年までの累積で10億3600万円に達している。2001年にはプリンセス・マーガレット病院の改修のために7億1,900万円が無償資金協力で援助し、2002年には草の根無償資金協力として贈与された援助の額は2,400万円、また2002年までに無償で援助した額は40億7,800万円に達している5)。

なお、トゥヴァルに対する主要援助国は年度によって変動はあるものの、日本、オーストラリア、ニュージーランドの3か国はトゥヴァルだけでなく、南太平洋島嶼藷国に対する援助国のベスト3と見ることができる。ちなみに、下記の表16は、「最近のトゥヴァルに対するODAベスト3」まとめたものである。 

   最近のトゥヴァルに対するODAベスト( 単位:100万USドル)
1998 :1位 オ-ストラリア1.9 、2位 ニュージーランド1.6 、 3位 日本1.0
1999 :1位 オーストラリア1.5 、2位 ニュージーランド1.2 、 3位 日本0.6
2000 :1位 オーストラリア1.7 、2位 日本0.7 、       3位 フランス0.3
   
 出所 外務省経済協力局編『政府開発援助』(ODA)国別データブック2001、2002年度版から作成した。
(注1)オーストラリアの対南太平洋地域援助額は、1989~99年までの10年間に4億5,200万AUD(豪ドル)に達している。
(注2)資料:AusAID:Aid Budget Summary 1998/99.


 (資料注)
 1)外務省経済協力局編『政府開発援助国別データブック』・2002年7月、671頁。
 2)外務省経済協力局資料『ODA案件(草の根無償資金協力、地域・国別、2002.2.26締結』、平成14 年度。
 3)Tuvalu Gets $1.6 Million Taiwan Grant Pacific Islands Report: TODAY'S PACIFIC NEWS Thursday, February 3, 2005.
 4)外務省(政府開発援助に関する資料)の「トゥヴァルの『プリンセスマー ガレット病院建設・医療機材供与計画』に対する無償資金協力について」(平成13年9月6日)によると、その主な援助の内容は、トゥヴァル政府に対し、『プリンセスマーガレ ット病院建設・医療機材供与計画』(The Project for Construction and Supply ofMedical Equipment for Princess Margaret Hospital)の実施に資することを目的として、総額7億500万円を限度とする額の無償資金協力を行うと言うものである。そのための書簡の交換が2001(平成13)年9月6日(木)に、フィジ ー諸島共和国のスバにおいて、日本側村山比佐斗在ツバル大使(フィジーにて兼轄)とトゥヴァル側、当時、アマソネ・キレイ教育・スポーツ文化相保健相(Hon. Amasone kilei Minister for Education, Sports and Culture; Minier for Health )との間で行われた。2001年度のトゥヴァルに対する無償援助額 は、結果的 に7億1,900万円に達した。2004年筆者が調査のため現地を訪ねたが、その際JICAによる竣工1年後の審査が行われた時期だった。
 5) http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/tuvalu/data.html  http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hakusyo/03_hakusho/ODA2003/html/siryo/index.htm 

日本のODAによって、フナフチに2002-2003年再建され、南太平洋島嶼国では、充実した医療設備を有するプリンセス・マーガレット病院は、延べ床面積2465平方メートル、外来病棟、入院病棟、中央診療棟、事務管理棟など7棟が、延べ4479平方メートルの敷地に建てられている。機材として、超音波診断装置、X線診断装置、集中患者監視装置等が設置されている。日本の医療機器が接されているが、現地医療として、どれだけ活用されているのか、本来、追跡調査が必要なのかもしれないが、日本のODAではそこまでは行われてはいないようだ。

 なお、医療機材、病床、手術用機材などすべてが日本からODAの一環として供与を受けているようであるが、加えて、病院のメンテナンスも日本の援助によって行われることになっている。最近は、トゥヴァルの人々の食生活も大きく変化しており、とくに輸入食品に依存する割合が高まっており、そのことがトゥヴァル人の健康問題と関わっている。トゥヴァル人の今までなかった医療分野への需要も高まっており、糖尿病、心臓病、高血圧などの成人病も多くなっている。今は国民の医療費の負担ゼロであるが、今後はそうもいかなくなり医療費の負担を強いられるであろう。したがって、今後は、ODAにおいても、予防医療の技術支援が必要であると考えられるのである。


 (注) 《トゥヴァル、フナフチにある新装成ったプリンセス・マーガレット病院(写真上)、下の写真は、病院内ナースステーション。出典は、Hospital in Tuvalu に依拠した。》写真は割愛しました。






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