素人、考古学・古生物学を学ぶ

人類の起源・進化・移動や太古の昔、日本に棲んでいたゾウ類にも関心があり、素人の目線で考えてみます。

絶滅した日本列島のゾウのはなし(Ⅱ)—消えたゾウたち、その謎を追う―(11)

2021年08月10日 15時57分03秒 | 絶滅した日本列島のゾウたち
  絶滅した日本列島のゾウのはなし(Ⅱ)
— 消えたゾウたち、その謎を追う― (11)




  消えたステゴドンの謎を追う(その6)

 (1)日本列島にはいろいろなゾウの仲間たちが生息していた

 日本列島には、南方系のゾウと北方系のゾウが生息していたとする専門家も多いように思います。日本列島が中国大陸から引き離れて、日本海が形成されて以降は氷期に陸橋ができ、渡来したゾウの仲間もいたと考えられます。ではなぜ日本海ができたかという話になりますと、それは少し難しい説明が必要になります。

 一つの考え方としては、海底で火山活動が生じて大陸の地殻に割れ目ができて、それが拡大し、その裂け目がやがて海に達し、海水が侵入するようになり、何万年何十万年と言う歳月をかけて日本海と呼ばれる海域ができたと言われています。それではなぜ、裂け目ができたかと言いますと、高温のアスノスフェア、いわゆるマントルのことですが、それが流入したと考えられています。

 専門家の先生方の考え方を借りますと、大陸プレートの下に海洋プレートが沈み込んでいくと、次第に高くなる温度と圧力を受けて、沈み込んだ海洋プレート(沈み込んだプレート部分はスラブという)から水を始め様々な物質が絞り出されます。その水によってマントルは溶けやすくなり、マグマができます。マグマは噴出して、海底や地表へ噴き出て冷え固まると岩石ができます。

 玄武岩はその代表的な岩石ですが、マグマの冷え方で、岩石の種類も変わると考えられています。実は、それらの岩石が大陸の地殻をつるわけです。

 日本海が形成されるまでには以上のような難しい背景があるわけです。地質学的年代を前提に考えますと、中新世の頃になりますと、日本列島が大陸から引き裂かれることになりますが、おそらく想像を超える地殻変動が発生したものと考えられます。それが2100万 年前から1100万年前には、大陸から引き裂かれる地殻変動はさらに大きくなりました。
 
 日本列島はこうして100万年単位の時間をかけて数百万年後には、不完全ながらも今日の弧状列島の形として現れたのは、第三紀鮮新世の初めの頃だったと考えられています。その後も、前述のように、氷期には海面が低下して列島と大陸との間に陸橋が出来て大陸と陸続きになることがあったと推測できるのです。

 その一例として、海底の浅い間宮海峡が指摘できます。しかし、津軽・対馬両海峡は130 から140メートルと海底が深いため、陸橋になった時期は限られていたと管変えられています。

 さて、日本列島が弓形に近い地形をなすのは、いつ頃か学者によっても諸説ありますが、湊正雄らによりますと今から600万年前から300万年前すなわち新第三紀・鮮新世の頃のことだとされています。その頃になりますと、日本列島には何種類ものゾウの仲間が生息するようになったことを示す化石が見つかっています。

 ステゴドン科のツダンスキーゾウも中国を起源とする長鼻類ですが中新世末から鮮新世の初め頃、年代で言えば今から530万年前には日本列島に渡来してたと言われています。宮城県仙台市から上顎第三大臼歯が発見されています。

 日本列島で進化したミエゾウは、ツダンスキーゾウを先祖としたステゴドン科ステゴドン属の長鼻類の仲間です。三重県総合博物館はミエゾウについて、「日本の化石ゾウの中では最大のもので、鮮新世前期の約400万万年~300万年前の時代に生息していたと考えられる」、としています。その化石は、三重県内の亀山市、鈴鹿市、伊賀市、桑名市などで発見されている、と説明しています。

 日本の各地で発見されている日本固有のゾウとされるアケボノゾウは、ミエゾウが生息環境に適応的に進化し、小型化したものだと言われています。その進化の過程では、アケボノゾウより大きなハチオウジゾウが生息していたと考えられています。
 ハチオウジゾウは、発見者の相場博明の記録によりますと、2001年12月八王子北浅川の河川敷の230万年前の地層から偶然見つかったと言っていますから、その年代の前後に生息しており、数十万年の時を刻んでアケボノゾウへと進化したものと考えられています。

 アケボノゾウは、第四紀更新世前期、180万年前頃から70万年前頃に生息していたと言う説がありますが、200万年前から現れて100万年前ごろまで生息したと言う説もあるようです。ステゴドン属に分類されています。ステゴドン属に分類される長鼻類としては、60万年前に備讃瀬戸で見つかったトウヨウゾウがいます。

 (2)ゾウ科で最も古いのはムカシマンモスだ
 ムカシマンモスはケナガマンモスの先祖とみられていますが、日本では最古のゾウ科でマンモス属に分類されているゾウで、110万年前頃には日本列島に渡って来たと考えられています。下顎の臼歯化石が滋賀県で発見されています。はっきりしたことが分かって居るわけではありませんが、40万年くらいの間日本列島生息し70万年前絶滅したと考えられています。

 一説には、アケボノゾウと共存していたとも考えられており、絶滅した時代もほぼ同じ頃ではないかという見方があります。その後しばらくは日本列島にステゴドン科の長鼻類もゾウ科に属するゾウも生息していなかったのではないか、という説もありますが、確かなことは分かってません。

 日本で最も有名なナウマンゾウは、ゾウ目(長鼻目または長鼻類)ゾウ科のパレオロドクソン(ゾウ)属に分類されています。今から40万年前から30万年前に渡来し、更新世の末期1万数千年前まで生息していたと言われています。

 ところで、これらの太古の昔、日本列島に生息していたゾウがなぜ姿を消してしまったのか、いろいろな説がありますが共通して言えることは気候変動という大きな括弧で括れるように思います。火山の大噴火による広域降下テフラがもたらした急速な気候変動も含めて考えることが可能だと思います。

 白尾火山灰層などは、古御嶽火山噴火に見られるテフラの堆積地層ですが、77万年前の地層と一致し、チバニアンの地層と関わってきます。アケボノゾウをはじめステゴドン科の長鼻類、ゾウ科のムカシマンモスゾウ絶滅の謎と関わりがあると考えられるのです。

 竹下欣宏、三宅康幸、酒井潤一「古期御岳火山起源の中期更新世テフラと房総半島上総層群中のテフラとの対比」・『地質学雑誌』第111巻第7号、417-433頁(2005)では、火山の大爆発によるテフラの広域降下による堆積層に関する詳細な分析がなされています。大型長鼻類を含む古動物相、古植物相の絶滅に関する考察に当たってはテフラの広域降下による地層形成に触れることが大切であると考えられます。

 しかしながら、更新世末期1万数前年前頃まで生息していたと見られるナウマンゾウの場合には、日本列島各地にはすでに人類が生存しており、大型草食獣を狩猟対象にするようになると、過剰狩猟による殺戮説も絶滅原因に挙げられるようになり、絶滅原因をめぐる議論は専門家の先生方の間で議論百出しており、諸説紛々です。