軽演劇における女装の歴史について、どの程度研究がすすんでいるのか、はよくわかりません。
能や歌舞伎ほどではないにしても、すでにかなり長い歴史があることは確かでしょう。
江戸時代、幕府の禁制により女性が舞台に立つことが禁じられ、歌舞伎で男性が女装して演技をするようになり、現代の女形の芸へと定着したわけですが、これに近いことが、軽演劇の世界でも起きていたのではないかな、と思います。
コメディエンヌがいない以上、コントを成立させるためには男性の芸人が女装して演じるほかありません。脱線トリオの由利徹、てんぷくトリオの戸塚睦夫、クレージーキャッツの石橋エータローなど、女装が似合うことで人気を得ていた喜劇人は、たくさんいました。
実はわたしも、女形のうまい芸人さんが好きです。ちょっとした仕種や表情の変化で、男性から女性へ、女性から男性へふっと移り変わる瞬間が、非常に色っぽく感じるんです。
きわめて個人的観点ながら、わたしの知る範囲で、自然に違和感なく女性を演じられる現代の喜劇人は、由利徹、笑福亭鶴瓶、吉本新喜劇の桑原和男、そして木梨憲武だと思います。
彼らの女装芸の魅力はいろいろあるでしょうが、共通する特徴のひとつは「女装をほとんどしなくても女性役を演じられる」ということではないでしょうか。
つまり、女装の定石である、濃いメイクアップや、派手な衣装がなくても、スカートとかつらさえあれば女性になれるわけです。声や仕種を無理に女性的にする必要すらなく、ほとんど素のままで女性に見えてしまう。
鶴瓶さんの「おかん」は、本当のおかんよりもおかんらしく見えるし、桑原和男さんに至っては、もはやおばあさん役(役名・桑原和子)以外で舞台に立つことの方が少ないくらい。おもしろいことに、桑原さんがいつも着ている垂れ乳つき肌襦袢を、ノリさんも「ノリ江婆あ」の時に着ていましたよね。
常識的に言って、美しく装おうとするのが女装でしょうが、ノリさんの場合は逆。わざとデフォルメしたメイクでブサイク女性を演じるのが、彼のやり方ですよね。と、いうのも、普通に女装しちゃうと、女性より綺麗になってしまうから!
聞いた所によると、こんといんなえばVol.4では、ノリさんが娼婦を演じるコントがあり、その時の女装はノリ子的ではなく「普通の女装」だったので、非常に美しかったとか。ノリさんが登場すると、毎回どよめきが起き、ノリさんがアドリブで「お客さん、私を買って~」と呼びかけると、客席から「3000円!」「1万円!」と声がとんでいたんだそうです(mixiでご教示いただいた鰻谷さん、ありがとうございます!)。
ただ、ノリさんの女装芸が先人より一歩すすんでいるな、と思うことが一つあります。
従来の女装は、あくまでコントの中のにぎやかしに過ぎず、女装という行為自体で笑わせようとするものだったのにくらべて、ノリさんの女装は、それが「主」となれる力を持っている。彼が女性を演じると、不思議とセクシャリティは消え去って、女性の精神的な強さや、可憐さだけが結晶のように残るんです。
たとえば、苗場コント「卒業'96」。38才の男性が16才の女の子を演じられるということも驚きですが、それがこのうえもなく可愛らしい。不器用で一途な女の子にしか見えないのです。おそらく、女優ではこの雰囲気を出すことはできないでしょう。
ノリさんの演じる女性が人気を集めるのも、その辺が理由ではないかな、と思ったりします。ノリさんだけが持つ魅力です。
苗場のラストライブで、ノリさんは「もうおばさんの役をやるのはいや」だなんて冗談言ってたらしいです。でもその後、頻度は減っても、あいかわらず女装を披露してくれる所を見ると、どうやらまんざらキライじゃないようですね。
ノリさんの女装ファンとしては、いやうれしい限り。
みなさんからいただいたコメント:
ボクが女装姿で思い出すのは、青島幸男(字あってるかなぁ)のイジワルばあさんと、志村けんの芸者です。あと、ばってん荒川。 伝統芸能に比べると、軽演劇は歴史は短いかもですね。
meganeさん 2006/3/10(金) 午前 3:42
青島幸男は完全に女でしたよね。女装って感じが全然なかったです。あまりにも自然でした。
タイタンさん 2006/3/10(金) 午前 6:41
皆さんと同意見です。東八郎さんも上手かったように思います。伊東四朗さんも、小松の親分さんとコントやってた時にお婆さん役になって、かなり面白かったです。ちょっと外れるけど、寺内貫太郎一家の樹木希林(当時悠木千帆)さんも上手いですね。DVD観て改めてそう思いました。
なべさん 2006/3/11(土) 午前 1:30
不細工な女装がまた笑いを誘ってくれてて大好きです。憲さんの女キャラ は、音だけなのにLPの成増でも演じてるくらいだから本人もマンザラでも ないっていうのもうなずけます。個人的にはノリオみたいな情けない キャラのほうが好きです。
izumiさん 2006/3/11(土) 午前 3:56
能や歌舞伎ほどではないにしても、すでにかなり長い歴史があることは確かでしょう。
江戸時代、幕府の禁制により女性が舞台に立つことが禁じられ、歌舞伎で男性が女装して演技をするようになり、現代の女形の芸へと定着したわけですが、これに近いことが、軽演劇の世界でも起きていたのではないかな、と思います。
コメディエンヌがいない以上、コントを成立させるためには男性の芸人が女装して演じるほかありません。脱線トリオの由利徹、てんぷくトリオの戸塚睦夫、クレージーキャッツの石橋エータローなど、女装が似合うことで人気を得ていた喜劇人は、たくさんいました。
実はわたしも、女形のうまい芸人さんが好きです。ちょっとした仕種や表情の変化で、男性から女性へ、女性から男性へふっと移り変わる瞬間が、非常に色っぽく感じるんです。
きわめて個人的観点ながら、わたしの知る範囲で、自然に違和感なく女性を演じられる現代の喜劇人は、由利徹、笑福亭鶴瓶、吉本新喜劇の桑原和男、そして木梨憲武だと思います。
彼らの女装芸の魅力はいろいろあるでしょうが、共通する特徴のひとつは「女装をほとんどしなくても女性役を演じられる」ということではないでしょうか。
つまり、女装の定石である、濃いメイクアップや、派手な衣装がなくても、スカートとかつらさえあれば女性になれるわけです。声や仕種を無理に女性的にする必要すらなく、ほとんど素のままで女性に見えてしまう。
鶴瓶さんの「おかん」は、本当のおかんよりもおかんらしく見えるし、桑原和男さんに至っては、もはやおばあさん役(役名・桑原和子)以外で舞台に立つことの方が少ないくらい。おもしろいことに、桑原さんがいつも着ている垂れ乳つき肌襦袢を、ノリさんも「ノリ江婆あ」の時に着ていましたよね。
常識的に言って、美しく装おうとするのが女装でしょうが、ノリさんの場合は逆。わざとデフォルメしたメイクでブサイク女性を演じるのが、彼のやり方ですよね。と、いうのも、普通に女装しちゃうと、女性より綺麗になってしまうから!
聞いた所によると、こんといんなえばVol.4では、ノリさんが娼婦を演じるコントがあり、その時の女装はノリ子的ではなく「普通の女装」だったので、非常に美しかったとか。ノリさんが登場すると、毎回どよめきが起き、ノリさんがアドリブで「お客さん、私を買って~」と呼びかけると、客席から「3000円!」「1万円!」と声がとんでいたんだそうです(mixiでご教示いただいた鰻谷さん、ありがとうございます!)。
ただ、ノリさんの女装芸が先人より一歩すすんでいるな、と思うことが一つあります。
従来の女装は、あくまでコントの中のにぎやかしに過ぎず、女装という行為自体で笑わせようとするものだったのにくらべて、ノリさんの女装は、それが「主」となれる力を持っている。彼が女性を演じると、不思議とセクシャリティは消え去って、女性の精神的な強さや、可憐さだけが結晶のように残るんです。
たとえば、苗場コント「卒業'96」。38才の男性が16才の女の子を演じられるということも驚きですが、それがこのうえもなく可愛らしい。不器用で一途な女の子にしか見えないのです。おそらく、女優ではこの雰囲気を出すことはできないでしょう。
ノリさんの演じる女性が人気を集めるのも、その辺が理由ではないかな、と思ったりします。ノリさんだけが持つ魅力です。
苗場のラストライブで、ノリさんは「もうおばさんの役をやるのはいや」だなんて冗談言ってたらしいです。でもその後、頻度は減っても、あいかわらず女装を披露してくれる所を見ると、どうやらまんざらキライじゃないようですね。
ノリさんの女装ファンとしては、いやうれしい限り。
みなさんからいただいたコメント:
ボクが女装姿で思い出すのは、青島幸男(字あってるかなぁ)のイジワルばあさんと、志村けんの芸者です。あと、ばってん荒川。 伝統芸能に比べると、軽演劇は歴史は短いかもですね。
meganeさん 2006/3/10(金) 午前 3:42
青島幸男は完全に女でしたよね。女装って感じが全然なかったです。あまりにも自然でした。
タイタンさん 2006/3/10(金) 午前 6:41
皆さんと同意見です。東八郎さんも上手かったように思います。伊東四朗さんも、小松の親分さんとコントやってた時にお婆さん役になって、かなり面白かったです。ちょっと外れるけど、寺内貫太郎一家の樹木希林(当時悠木千帆)さんも上手いですね。DVD観て改めてそう思いました。
なべさん 2006/3/11(土) 午前 1:30
不細工な女装がまた笑いを誘ってくれてて大好きです。憲さんの女キャラ は、音だけなのにLPの成増でも演じてるくらいだから本人もマンザラでも ないっていうのもうなずけます。個人的にはノリオみたいな情けない キャラのほうが好きです。
izumiさん 2006/3/11(土) 午前 3:56
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