The Phantom of the Opera / Gaston Leroux

ガストン・ルルー原作「オペラ座の怪人」

五番ボックス

2007年11月21日 | ルルー原作「オペラ座の怪人」

 

作品中よく登場する
『5番桟敷』は
どこにあったのでしょうか?

 

 原作の中の「五番桟敷」の描写を書き出してみます。

「それは一等桟敷よ、五番の(la première loge ,numéro 5)、よく知っているわね。下手の舞台前のわきの一等桟敷よ」 (ハヤカワ p.30)

 「五番の特等席よ。よく知っているでしょう。左手の前桟敷の隣にある特等席なの」(創元 p.30)

「五番のボックス席、ほら、左側の特別ボックス席のすぐ隣の二階ボックス席よ」(角川 p.23)

 

「なんとなくあの豪華そうな席かな?」という予測が浮かんできます。

 

 

「5番桟敷」は原作のフランス語で「la première loge ,numéro 5」や「la  première loge n°5」と書いてあります。

loge」は「桟敷席」という意味です。

 

で、その前についている「la première」ですが・・・。

「première」とは英語で「first」です。日本語で「最初」(web翻訳ですが)

 

「first」「最初」という事は「一階なのでは?」と思いますが、フランスの階数の数え方は日本とは違います
エレベーターなどに乗った時に「あれ?」となります。

旅行のガイドブックにも載っているのですが、

 


日本の一階 = フランスのゼロ階
日本の二階 = フランスの一階

 

です。なので「première」というのは「日本での二階」です。

フランス語の原作を直訳すると「一階五番桟敷」となります。ですが読者により分りやすいように意訳しているのでしょう。(角川親切♪)

 

さらに詳しく見てみます。

「五番桟敷の右隣りの桟敷は」と、モンシャルマンが尋ねた。
「ふさがっていたのか」「いいえ。番桟敷は左隣りの番桟敷同様、まだふさがってはいませんでした。 (ハヤカワP84)

「五番の右隣りにあるボックス席は」とモンシャルマンが尋ねた。
「ふさがっていたのかね?」「いいえ、番のボックス席も、左側の番のボックス席も、まだふさがっていませんでした。・・・」(創元p.84)

 「いいえ、番ボックス席にも、左隣の番ボックス席にもお客さんはいませんでした。・・・」(角川P75)

 

■「どうして五番が三番、七番にはまれてるの?」ですがオペラ座の席番号は「奇数」「偶数」で別れているのです。

なので「3、5、7・・・」「2、4、6・・・」と桟敷席は並んでいます。

  

写真ですと分らないですが、扉には一番奥から「3番」「5番」「7番」と書かれています。

 

 桟敷番号の書かれた扉。「6」という数は椅子の数らしいです。

 

この廊下から見た「五番桟敷」は奥から二番目なので舞台から二番目と誤解しやすいのですが、舞台から二番目ではないです。舞台からは3番目なのです。 

 

分りやすく図解してみます。
「バリ・オペラ座」(ミシェル・サラザン 音楽之友社)の座席票を参考に写真に桟敷番号を入れてみました。  ↓  

何故一番豪華な席が「6」なのかは謎ですが、上記の本やチケットを買った時についてくる紙にはこうなっているのです。
この写真の二階6番桟敷の正反対に位置する桟敷席は「一番桟敷」となっていて上記の本によれば「フランス大統領の席」となっています。

 ↑ 「一階五番桟敷は出入り口の近くにある」とも書かれています。

 

ですから「五番桟敷」とは具体的に矢印の席なのです。

 

Do反転 ↓

「その五番ボックスと舞台脇の特別ボックス席を仕切る太い柱を叩いてみなさい・・・そこには人が二人は入れるほどのスペースがある」角川p446

って書いてあるから3と6の間かと思っちゃいましたよ。3と5の間の柱に人間が二人は入れるとは思いませんでした。
3と6はやはり高貴な方専用桟敷で無理なのかな?なんとなくジリーおばさんには敷居が高そうだし・・・。

 

 

 

*おまけ*

原作では「二階5番桟敷席」を見た支配人達がそのあとに「一階5番桟敷席」に降りて行く場面があります。

 

そして支配人が「二階」から「一階」に降りるルートは書いてない・・・と言うかよく意味が分らない文章になっています。

「五番桟敷に通じる下の一階桟敷におりた」ハヤカワp121
「五番ボックスにつながっている、下の一階桟敷へ降りて行った」創元p120
「二人は一階へおりて、念のため、そこの五番ボックス席へ行ってみた」角川p111

角川訳文は日本語としてすんなりしていますね。しかし上の二つの訳文だと意味不明です。

「二階、一階をつなげるもの」といったら階段ですね。管理人の推測では「階段を通って」が抜けているような気がするのです。


よく見るとガラス張りの扉があります(ドアなのです)。緑の非常口のランプの下ですね。
これはバレエ・オペラの休憩時間には開いていない扉なのです。見学時にはロープが張ってあります。

 

そしてこの扉の向こうに階段があるのです。ですから・・・

 

五番桟敷に通じる階段を使って下の一階桟敷におりた」ハヤカワp121
「五番ボックスにつながっている階段を使って、下の一階桟敷へ降りて行った」p120

と考えればすんなりするような気がします。「下のボックス席につながっている。通じている」というのも分ります。

それにどう考えても扉が開いていれば一番の近道です。

どんな階段なのか興味のある方は管理人の旅行記を見てみてください。
旅行の際に二階の5番桟敷を見た後に、たまたまこの扉が開いていたので降りて一階に行ってみました。

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。