『アカシア香る』藤堂志津子
【内容情報】
母の看病のため、故郷の札幌に戻った美波。そこで高校時代の同期生と再び交流を持ち始める。離婚、リストラ、失踪、発病…。45歳になったいま、それぞれの人生がすべてバラ色というわけにはいかない。でも優しく見守りあい、懸命に生きる友人たち。美波には東京に仕事があった。そして、不倫関係の恋人がいた。すべてを清算したつもりだが、元恋人が病に倒れたのを聞き、心が揺れ動く。
藤堂志津子という作家の作品は初めて読んだ。
なかなかいい感じの文章を書く人だ。
45歳の独身女性の一部を切り取った、この作品。
私もこういうふうに生きたい。そりゃあ結婚したいことはしたいが、もし出来なければ、こういうふうに生きたい。そういういい匂いのする作品だった。
自分というものから目を逸らしているように感じるが、実はしっかりと見据えている。自分自身をよく知っている主人公はとても素敵だ。
嫌なことはきっぱりと相手に告げ、それによる後悔もない。相手に投げかけるきつい言葉も、自分を守るためだということを学び、それらを上手に使っていく。かと言って、横柄や乱暴な印象はなく、場所や場合によってきちんと使い分けている。自分の生きやすい生き方を知っている、素敵な女性だ。
こういうふうに年を重ねていきたい。環境がどうなっていようとも。