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- 無用の用 -

56『償い』矢口敦子

2008-10-23 17:49:27 | 本 2008
矢口敦子『償い』


【内容情報】
36歳の医師・日高は子供の病死と妻の自殺で絶望し、ホームレスになった。流れ着いた郊外の街で、社会的弱者を狙った連続殺人事件が起き、日高はある刑事の依頼で「探偵」となる。やがて彼は、かつて自分が命を救った15歳の少年が犯人ではないかと疑い始めるが…。絶望を抱えて生きる二人の魂が救われることはあるのか?感動の長篇ミステリ。



ストーリーの展開が良く、次から次へと色んなことが起こる。先へ先へ急ぐうちにあっという間に読めた。


本を読む前に、初めて読む人の作品なのでどんな人かと思い、表紙をめくったところを読んで驚いた。
「1953年北海道生まれ。病気のため、小学校五年で通学をやめ、通信教育で大学を卒業する。」
すごい、と思った。なんの病気かもどこでどうなったのかも検索しても詳しく書かれていないが、小学校で通学をやめて通信教育で大学まで卒業出来るのか、と。
一体どのような人生を歩んできたのだろう。一体どのような人なのだろう。とてもひかれるものがある。
1953年生まれなら、現在は55歳だろうか。その年代の人でしかも女性で、そんなことが可能なのか。不可能ではないと思う。しかし・・・。


作品はとてもよかった。
あらすじを読んだだけだと、薄っすらとしたものしか伺えない。
読み進めていっても、最初の方はちょっと中を踏み込んだ程度なのだけど、それがページを進めるごとに変わっていく。
一言で表すと「とても深い話」だった。
深く、重い。

事件が起こることも重要なのだが、それに絡み付いてくる心情というのか、それがすごく深く、重いのだ。重いというか厚いというか。


「人の肉体を殺したら罰せられるけれども、人の心を殺しても罰せられないんだとしたら、あまりに不公平です」
「他者の心を傷つけた者は、どうやって裁かれるべきなのだろう。」

色々なことを考えさせられた。

不思議な世界感のある作品だった。

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